陰の復讐者となりて   作:橆諳髃

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読者の皆様お久しぶりです!
実に3ヶ月ほど経ってしまいましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私は……そうですね、今もですが、仕事先で微妙な立場に立たせられていると、自分では思っていますね。
まぁ根本は私が悪いのですが……

後は、この作品もアニメ版2期を投稿していこうと思ったのですが、どうやって導入部分を書いていこうかが迷いに迷い、いつの間にか時間が経ってしまいました。

そしてようやく書けたのですが、この話の字数はいつもより少ない内容で着地しています。

前書きはこの辺りにして、読者の皆様には長らくお待たせしてしまいましたが、どうぞ本編をご覧ください。


第6章 吸血鬼と告白編
48話 復讐者、姉を物凄く心配させる R-15


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 武神祭が終わってからおよそ1ヶ月ほど経った。

俺は今クレア姉さんの付き添いで無法都市へと足を運んでいた。

勿論俺と姉さん以外に兄さんがいて、兄さんは姉さんに首根っこを掴まれて引きづられていた。

 

 なんで姉さんがこの地に来ているかといえば、今年の武神祭で優勝した事もあり、各地のギルドへの顔合わせという名目で来ていた。

にしてもだ……

 

(俺が今この場にいる意味とは……)

 

 兄さんがこの場にいるのは分かる。

何故なら姉さんが兄さんに対し、学園を卒業してもマトモな職に就けないだろうと考えたからだ。

そして今回の武神祭では姉さんが優勝して、それによって各地のギルドへ顔合わせをするという名目を利用して、自らの弟のことも紹介しようと思っての行動だと、そう聞いた。

 

 次に俺についてだが……いやなんでこの場に一緒にいるのだろうかと、疑問に思う。

もし仮に俺が学園を卒業したのなら……なんか選び放題だな。

魔剣士として国に仕えるのも良いし、魔道具の研究についても、そもそも魔道具を一から創り出せるぐらいにはノウハウがある。

それ以外にも就こうと思えばなんでも出来るわけだが……

 

(可能ってだけで俺は卒業後も変わらずアルファ達と一緒に過ごしていく訳だが)

 

 だからこそ、俺が普通の職に就くなんてことはありえない。

そんなことをしてしまえば、ディアボロス教団とか、俺のことを好ましく思わない神々の妨害にすぐ対応出来ないからな。

 

 でも姉さんから将来のことについて聞かれた時、姉さんが納得のいく答えを出せなかったからな……

 

(まぁそれ以外の理由で元から拒否権なんて無いんだけどな……)

 

 それは武神祭が終わった日まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

——回想——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 武神祭の本戦を途中でリタイア扱いとして自分の中で終わらせて、俺はこれまで我慢してきたであろうアルファと数日間は共に過ごしていた。

彼女は、日中やるべきことがある時は、他の誰よりも仕事量をこなしていた。

やることと言っても主に書類仕事で、勿論俺もそのサポートをしていた訳だが、本人曰くいつもよりも早く仕事が終わったとも言っていた。

 

 そしてその日分の仕事が終わった瞬間、まるで瞬間移動でもしたかの様に俺のところまで来ては、いつもの如く俺を抱きしめてきた。

アルファとは交際関係にあるが、やはり俺はいつまで経ってもそこら辺の女性に対する免疫というか、そういうのが滅法弱い為か、何が起こったか一瞬わからなくなるし、自覚した後も恥ずか死ぬ思いをしてしまうのだが……

 

「フフッ♡ こうして貴方を抱きしめていると、とても落ち着くわ。それに、こうしているともっともっと貴方のことを甘やかしたくなる」

 

 アルファの優しくも凛とした声で耳元に囁かれると……強張ってた身体の力が一気に抜けて、同時に彼女に甘えたいと心の奥底から求めてしまう。

そしたら俺の身体は、いつのまにかアルファを強く抱きしめて、更に彼女の胸深くに顔を埋めてしまう。

 

「んっ♡ この子ったら……甘えん坊さんね♡」

 

 そんな俺の様子を見たアルファは、俺のことを慈愛の籠った瞳で見つめて、俺のことを優しく、それでいて強く抱きしめながら撫でてくる。

まるでこれこそが至福の時だと思うくらいに、彼女の包容力に俺は叶わず、逆に身を任せてしまう。

これについては多分……いつまで経っても治らないことだろうな。

 

(それに俺はもう……アルファ無しでは生きていけない……)

 

 それほどまでに、俺はアルファのことを愛している。

勿論他の七陰達も、俺のことを大切に想ってくれる人達も大切なことに変わりはないが……

 

(もしアルファが何らかの原因で傷ついてしまったのなら……俺はその原因となった奴に対して躊躇わず復讐するだろう)

 

 そんなことを心の底に誓えるほどに、俺はアルファのことを愛している。

 

 まぁここ数日間のアルファとのやり取りは、大体がこんな感じだな。

他の七陰達、ベータとは主に彼女の執筆活動に対してのお手伝い、特に肩を揉んだり身体全体をマッサージをしたり、ガンマとはミツゴシ関係で新商品に関する会議で議論して、時折一緒にお茶をした。

アルファと過ごした時間の次に多く時間を共有したのは、現在俺に直接好意を示してくれた2人とだった。

 

 後は、最近になって俺と過ごす頻度が多くなったイプシロンが、何かとストレッチだったり楽器の演奏に誘ってくるし、デルタとは狩りをしたり模擬戦したり、ゼータは俺が1人で読書とかしてる時にいつの間にか傍に寄って来ては、何気ない雑談に興じては俺のことを膝枕に誘ってくる。

最後にイータは……前からそうだが実験に付き合って欲しいと言ってくる。

その度に俺はその実験に付き合う訳だが……実験といってもすぐに結果が出るわけではないから待ち時間もその分長いのだが、その待ち時間の間俺のことをいつものごとく抱き枕がわりにして抱きついて、そのまま眠る。

 

(でも時折視線を向けてくる仕草が……あざといんだよな〜……)

 

 そんな感じで七陰達とは数日間を共にした。

数時間といっても3泊4日ぐらいの内容だが、それでも満足のいく時間であったことに変わりはない。

 

(ただそんな顔しながら帰ったのが不味かったんだろうな……)

 

 凡そ4日ぶりに自分の寮の部屋に帰ってきた。

いつもの様にただいま、と口にして玄関を開けたら……急に部屋の中に引き摺り込まれた。

敵襲かと思ったのだが、それならば俺の魔力感知に引っかかるはずだ。

それに一瞬のことだったが、俺を部屋の中に引き摺り込んだ相手からは敵意をそこまで感じなかった。

 

 そんなことを考えていたら、俺はいつの間にかベットに仰向けになっていた。

今は夕日も沈んで部屋の明かりもついていない状態だから、視界が慣れるまでほんの少し時間がかかるが、俺を今この体勢にしている人物は分かった。

 

「姉さん……急にこんなことをしてどうしたの?」

 

 仰向けになった俺の上にまたがる様に乗っかっているのは、俺の姉さんだった。

部屋の中に引き摺り込まれた時は、急なことだったから呆気に取られてしまったが、ここまで接近してしまえば、漂ってくる薫りで姉さんだと分かる。

それでも俺は、何で姉さんが俺の上に、しかも電気もつけずに乗っかってきているのかが分からなかった。

分からなかったからこそ自然とその疑問が口から出てきたんだが……

 

「……分からないの?」

 

 いつもの口調とは違って、とても暗い感情が伝わってきた。

俺が姉さんの問いに少しの間答えれずにいると、姉さんは続けて言ってくる。

 

「なんで……武神祭を途中で棄権したの?」

 

 その一言で俺はようやく分かった。

姉さんは、俺が武神祭を棄権したことを怒っているのだと。

それも姉さんに一言も相談せずに、急に姿を消してしまった。

それについて怒っているのだと。

 

「ねぇ……私の剣技は……私との勝負は……アルジにとってそこまでつまらないものなの?」

 

「っ⁉︎ そ、そんなわけ「じゃあなんで私に何も言わずにこの数日間いなくなってたのよ⁉︎」そ、それは……」

 

「アルジが……私に言えないことで何かをしているってことは、あの夜話してくれたから理解してる。理解しているつもりなの! でも……だからって……何も言わずにいなくなって……心配したんだから‼︎ アルジに何か起こったんじゃないかって……」

 

 俺の頬に、数滴雫が落ちてくる。

俺は……姉さんを物凄く心配させてしまったようだ。

今回についてもだが、完全に俺が悪い。

確かにここ数日間はアルファ達と過ごしていたし、スキンシップが多かったのも確かだ。

だがそれも、次の任務に必要なことも打ち合わせをするために必要な日数だったことも確かなわけで……

 

(……どのみち言い訳には変わりない、よな)

 

 どうやってこのことを詫びればいいのか、正直今すぐに答えが出せない自分に対して苛立ちを覚えてしまう。

 

「せっかく……せっかくアルジと学園主催の武神祭で戦ったあの日よりも強くなった私を見て欲しかった。感じてもらいたかった! そのためにあの日から頑張ってきたのに……貴方がいないと……なんの意味もないじゃない‼︎」

 

 その言葉を吐き出しながら、姉さんは俺の両肩を強く掴んでベットに押し付けるように何度も押さえつけてくる。

この時には暗所にも目が慣れて視界がクリアに見える。

ただその代償に……俺は姉さんの泣きじゃくった顔を……辛そうにしている顔を見てしまった。

 

 そんな顔を見てしまった後でも、俺はただ一言、ごめんと謝って、姉さんのことを抱きしめることしか出来なかった。

日頃から大切な人を守りたいと思っておきながら、俺自身が姉さんの心を傷付けてしまった。

 

(ホントに……何をやっているんだろうな俺は……)

 

 こんな気持ちにさせてしまった時点で、俺には姉さんを抱きしめる資格なんてないと……そう思っている。

しかも姉さんが俺自身に好意を寄せていることも知っているというのに……俺はあまりにも姉さんの好意に甘え過ぎて、無自覚に利用していた。

それを頭の中で、心の中で理解していても……今の俺にはただ、姉さんを慰める様に、落ち着かせる様に抱きしめるしか選択肢が無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう離さないから……」

 

 あれから数時間は経っていて、声を上げて泣いていた姉さんも落ち着きを取り戻していた。

俺としては姉さんが落ち着きを取り戻せた様子で、一応は安心した。

 

(だからってまた逆転してるんだよな……)

 

 姉さんを落ち着かせるために抱きしめていた俺……だったのだが、気付けばまたいつものポジションになっていた。

 

「……今日も、私と一緒にお風呂に入って」

 

「……拒否権h「あると思う?」……分かったよ」

 

 そしてこの前と同じ様に一緒に風呂に入る。

勿論水着を着ての入浴になったが……

 

(前のとデザインが違うな……)

 

 この前は黒に白いラインが入っていたが、今回のはオレンジに黒のラインが入った水着だ。

 

(……って、もはや姉さんと一緒に入るのを疑問視してねぇな……)

 

 まぁ……多分今後姉さんから一緒に入浴とか添い寝とか頼まれたら断れないんだろうなと、そう思っている。

何せ自分の行いが悪いのだから……そしてこれからも姉さんには、心配をかけ続けてしまう自分が容易に予想出来てしまう。

 

 そんな事を思いながら身体を洗っていると、いつの間にか俺と姉さんは一緒に浴槽の中にいた。

自分がどうやって身体を洗ったのかが覚えていないほどに、俺は考え過ぎていたのかと、今更ながら気づく。

 

「ねぇアルジ」

 

 そんな時姉さんに声をかけられて、視線を姉さんの方へと向けようとしたのだが……俺の視界は姉さんの顔しか映していなかった。

それも身体を強く抱き寄せられ、唇は柔らかい感触の物が強く押し付けらる。

おまけに自分の口内に柔らかい物が入り込んで、それは俺の舌と激しく絡んだり歯を裏表関係なく舐め尽くしてくる。

 

 まぁこの状況から見て姉さんが俺にディープキスをしているなんてことは容易に仮想がつくが……

 

「ちょっ⁉︎ ねぇさ⁉︎ 少しおちつ、んぐっ⁉︎」

 

 俺の制止する声には一切耳を貸さず、抱き締める力を更に強くしてキスも苛烈さを増していった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side クレア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は今非常に腹を立てている。

なんでかって? そんなの……

 

 

 

 

 

 

 

私のアルジから! 沢山の私の知らない女の匂いがするからに決まっているでしょっ‼︎

 

 

 

 

 

 

 アルジが裏で何かをやっていることは、前の会話で分かっていた。

でも何をやっているのかまでは教えてくれない……。

 

(私の力が……貴方の足元にも及ばないから……)

 

 アルジが私に危険な目にあって欲しくなくて詳しく話してくれないことも分かってる。

だけど……それでも私は貴方の力になりたい! 貴方が背負っているものを少しでも私に背負わせて欲しい‼︎ そして……

 

(貴方と……ずっと一緒にいたい‼︎)

 

 なのに……帰ってきた貴方からは、私の知らない女達の匂いがする。

多分アルジが何かをやっている時に近くでサポートをしている奴らだとは思うけど……

 

(私の力は……その子達よりも弱いってこと……)

 

 それを……無意識に自覚してしまった。

だから今アルジに無理やりキスをしているのも、ただの八つ当たりに近い。

 

(……こんなことをしているから、私はアルジに頼りにされないのかしら)

 

 キスをしながらも自己嫌悪になる。

本当はこの瞬間も、アルジに対しての愛おしさで、寸分の隙間も許さないほどに私の頭を埋め尽くしている筈なのに……今はアルジに頼られないことによる自分に対しての許せなさと、私よりも私の知らない女達を選ぶアルジへの嫉妬の感情が、私の中を埋め尽くしていた。

 

 だから目の前で私からキスをされているアルジの顔はとても苦しそうで……

 

(ごめんね……アルジを苦しめてしまうお姉ちゃんで……)

 

 アルジに対して謝罪の気持ちを持っていながらも、私はお風呂に入っている間アルジに対する嫉妬の感情を抑えることができないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからも姉さんのキスは止まらなかった。

力尽くであればやめさせることもできたけど、でも今回も俺が悪いことをしたって分かってる。

だから俺は、俺が何回酸欠になろうとも姉さんのやりたい様にやらせた。

 

(だって姉さんの目が……とても苦しそうだったから)

 

 そして今は風呂から上がって、姉さんと添い寝をしている。

寝巻きに着替えてからの姉さんは、いつものように俺を抱き枕の如く抱きしめる。

 

「さっきは……ごめんね」

 

 姉さんから謝られる。

さっきのことだと思うけど、俺は気にしてないって一言だけ返した。

 

「私ね……不安なの。アルジが近い将来……私の目の前から本当に姿を消してしまうんじゃないかって……二度と会えないんじゃないかって……そう思うと、私は……」

 

 姉さんの身体が震えていることが分かる。

俺が誰よりも強いと頭で理解していても、姉さんは俺のことを心配してくれる。

 

(本当に……ダメな弟だよな……)

 

 そう思いながら、俺は姉さんのことを強く抱きしめる。

 

「んぅっ⁉︎ アルジ……?」

 

「姉さんはこんなにも俺のことを一生懸命考えてくれているのに……俺はそんな姉さんのことを、多分考えれていないんだと思う。俺がやろうとしていることは、姉さんのためでもあるって……でもそれは、正直姉さんに対しての言い訳に過ぎないって、本当は分かってる。だけど……これだけは信じて欲しい。これまで姉さんの気持ちを裏切ってきて、もう俺のことを信じれないかもしれないけど……それでも言わせて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

俺は必ず、どんな姿になったとしても姉さんの元に帰ってくるから。姉さんを永遠に寂しい思いになんてさせないから

 

「あ……アルジ」

 

 強く、解けないように、それでいて俺の想いが伝わるように姉さんを抱きしめながら口にした。

そう言っても、頭のポジションはいつもと変わらないから格好なんてつかないし、多分どの登場キャラと比べてもダサくて格好悪いと思う。

それでも……今の気持ちを伝えたかった。

 

「うん……うんっ! 私も……アルジのこと、信じてる。貴方が安心して帰ってこれるように……アルジがどんな姿になったとしても、私だけは貴方を受け入れるから。どんな貴方になったとしても……私だけは貴方のことを愛し尽くしてみせるから‼︎ だから……私の前から、何も言わずにいなくなるのは、ダメなんだから」

 

 約束ね? といって、姉さんも俺のことをさっきより強く抱きしめてくれる。

でもそこには、風呂場で感じたような感情は感じなくて、いつもと同じ姉さんの優しさを感じた。

 

「うん、今度からは姉さんが不安にならないように、絶対一言は残すよ」

 

「本当に? なら……私は今のアルジだと口約束だけじゃ不安よ」

 

 だから、ね? とでも言うように俺へと視線を向けてくる。

 

(あぁ……そうだよな)

 

 意図が分かった俺は、少し抱きしめる力を緩めた。

すると姉さんも俺を抱きしめる力を弱めて、互いの顔が正面になるように位地になると……

 

「んっ……んちゅっ……んぁ……♡」

 

 風呂場でやったような力任せのキスじゃあなくて、いつもの優しさが溢れる姉さんのキスを体感した。

その証拠に姉さんも、目がトロンとしていて、俺の事を愛おしそうに見てくれる。

 

「んっ……はぁ……アルジ……大好きよ」

 

 お互いが分かり合っているかのように同時に唇を離すと、姉さんはそう言いながら俺を抱き締める。

いつもの如く俺の頭を胸に抱き寄せて、でもそのいつもが……俺にはとても嬉しく感じた。

 

「でも、お姉ちゃんのことを心配させたんだから、当分の間は絶対に私のそばを離れちゃダメなんだからね?」

 

「あ……う、うん」

 

「ふふっ……それじゃあ、もう寝るわよ。おやすみ、アルジ」

 

「うん。おやすみ、姉さん」

 

 まるで数時間前のやり取りが嘘だったかのように、俺と姉さんは眠りに落ちた。

ただ当分の間は……姉さんから離れることは許されないようだけど、ね……

 

 

 

 

 

 

 

——回想終了——

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことが数日前にあって冒頭に戻るわけだけど、姉さんの顔は無法都市の中を歩いていてもいつもと変わらない。

 

「あらどうしたのアルジ? 私の顔をまじまじと見ちゃって……私の顔に何か付いてる?」

 

 どうやらマジマジと姉さんの顔を見ていたようで、姉さんからの問いにどう答えようかなと思ったら、俺の左腕を姉さんが片腕で抱き寄せてくる。

姉さんの柔らかい胸もダイレクトに腕に当たっているのだが、多分俺の反応を楽しむためにわざと当ててきているんだろうなと、そう思って顔には出さないようにした。

 

「ふふっ♡アルジったら反応しないように頑張っているみたいだけど、顔が赤くなっているわよ? もぅ、本当にアルジは可愛いんだから♡

 

 姉さんに言われたように、確かに今の俺の顔はほんのり熱いなと感じる。

やはり姉さんには、俺の細かい仕草や情緒が分かってしまうようだ。

 

(まっ、それはそれで嬉しいんだけどね)

 

「それで〜? どうしてマジマジとお姉ちゃんの顔を見ていたのかな〜?」

 

「えっ? まだその質問終わってなかったの?」

 

「あら? さっきのやり取りで流れたとでも思ったの? とにかく! なんでお姉ちゃんの顔を見ていたのか……ちゃんと口に出して答えなさい」

 

 意地の悪い顔付きになってさっきの問いに答えるように更に迫ってくる。

左腕を抱き締められている時点で距離なんて無いようなものだけど……

 

「その……姉さんの顔に見惚れてて……つい」

 

「っ⁉︎ うふふ……嬉しいことを言ってくれるじゃない。それじゃあアルジには、後でお姉ちゃんが直々にお礼をしてあげるから。楽しみにしていて、ね♡」

 

 姉さんが綺麗な笑顔を向けながら俺に言ってくる。

その笑顔を見て俺は……ドキッとしてしまった。

 

(全く……姉さんにはこれからも叶いそうにないな……)

 

 そう思いながら俺は姉さん達と無法都市の道を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これって……僕のこと忘れ去られてないかな? それなら僕のこと離してくれないかな〜……)

 

 なお、シドさんは2人のやり取りを聞きながらそう思ったといいます……。

 

 

 

 

 

 

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