最近は中々筆が乗らず、挙げ句の果てには違うところで違う小説を書いてしまったりと、一応執筆活動は続けていました。
しかしながら本作の続きも書きたいし読みたいと思っていたことも事実で、ただどう展開していくかを考えながら書くと手直しが必要だったり、最初思い描いていた構想とはズレが生じているなと思ったりしてます。
最近だと、黒幕として出している各章ごとのボスキャラについても、こんな登場の仕方でいいのか?
そもそも起用するの間違っているんじゃと……思ったりはします。
思ったりしますし、文章も書き足したりで滅茶苦茶だったりするのは理解しているのですが、どうにか自分が思い描いていた内容に沿って、最低でもアニメ版は完結させたいと思ってます。
まだまだ長い付き合いになるかと思いますが、これからも何卒よろしくお願いいたします。
長くなりましたが、早速本編をご覧下さい。
アウロラから塔の最上階で何が起こっているのかを聞いてから、塔の出入り口付近に蔓延るゾンビ兵達の対処をハカマ達に任せた。
俺の分身を入れている状態だから、彼女達が危機的問題に陥ることはないだろうと思っている。
そして塔の中層辺りの位置まで、宙を飛んで進んでいけば、ようやく魔力のジャミングを抜けたらしい。
下では大体の位置までしか感じられなかったが、今では誰がどの程度魔力を保有しているのかが分かる。
(っ⁉︎ ベータと姉さん、それに他の子達の反応もいつもより低い⁉︎)
逆に彼女達に対面しているであろう1人の反応が、その場にいる誰よりも強く出ていた。
(それにこの感覚……感染を受けているのか⁉︎)
ならば、早々に行かなくてはならない。
最悪の事態に陥る前に……
そんな事を考えながら宙を飛んでいたのが数秒前で、今俺は塔の最上階に辿り着いていた。
強い魔力を纏っている方へと顔を向ければ、そこには吸血鬼の始祖であり、紅の塔を納めていた女性、エリザベートがいた。
エリザベートは、俺が放った攻撃を辿ってこちらの方を向いたんだろうが……
(あぁ……今からでも奴に復讐してやりたい)
エリザベートがなんでこんな状況になっているのか……。
まぁそんなの、奴を復活させようと企んだ奴がいて、今回1000年周期で月が赤くなる現象、魔力が乱れた状態を利用されてこうなっている言っておこうか。
それでエリザベートを復活させようと動いた奴は、その魔力が乱れた状態を利用して……後は自分がこの世界を統べるとか、そんな風に考えていたかもしれない。
後考えられることとしては、復活させようとした奴がエリザベートの事を好きだったからという線も考えられるか……
今となっては復活させようとした奴も兄さんに倒されて、結局何が理由でそうしたかったかなんて分からないし、知るつもりもない。
(ただエリザベートが暴走状態にあるって事と……あの細胞に何故か感染しているってことだ)
どうしてそんな事になっているのか分からない。
感染の進行速度としては、奴の様子を見る限りではそこまで侵食されていない。
だが感染の程度がどうであれ、奴が何かする度に奴とその細胞の結合具合は増していく。
そう考えていると、エリザベートがベータ達に放ったであろう範囲攻撃を俺に仕掛けてくる。
(まぁ範囲攻撃といっても最終的に俺へと集約するだろうから、俺しか対象がいなければ容易く捌ける)
左手にアスタロトの隠しナイフを作り出して、エリザベートから放たれた攻撃を正面から斬って相殺していく。
威力的には、確かに七陰に相当する攻撃だとは思った。
だが……
「そんなチャチな攻撃で俺をどうにか出来ると思うなぁーっ‼︎」
冷静に思考する部分はあれど、ベータ達を傷付けられた怒りの感情が真っ先に浮かんで、いつの間にか俺はそんなことを叫んでいた。
彼女達が傷付いたのは、俺が下でもたついていたからという事は認める。
それでも俺は今身体の奥底から湧いてくるこの感情を……制御することが出来ない。
「テメェは俺がいいと言うまでそこで磔にされていろ‼︎」
右手に持つ対物ライフルでエリザベートの胴体目掛けて放った。
奴はそうされる前に動こうとしたようだが、俺の方が行動が早く、“俺の許可が出るまで動くことを許可しない”という呪詛じみた物を込めた魔力弾が対象を貫いて、動きを封じた。
それを受けたエリザベートは必死に身体を動かそうとしていたが、俺が込めた呪詛じみた魔力には対抗できないようだった。
その先に俺は、姉さん達を守っていた666……ローズ先輩達の元に行った。
「アルジく……あ、アスタロト様……」
ローズ先輩は俺の名前を言いかけて、その後すぐに修正して俺のことを呼んだ。
(つっても、もう名前言ってたけど……)
そんな事はさておいて、俺はローズ先輩達の傷を完全に癒した。
魔力制御が上手く出来ない弊害で腐敗化していた身体も元に戻って、擦り傷すら残る事なく、彼女達の身体も体力も任務前の状態にまで回復させる。
「あ、アスタロト様! も、申し訳ございません……私達が不甲斐ないばかりに……」
「も、申し訳ありませぇ〜ん‼︎」
664と665がまるで土下座をする勢いで頭を下げてくるが、俺はそれを制して、無事で良かったことを告げた。
「アスタロト様……その……クレアさんが……」
「その事は下でヴァイオレットから聞いています。だから安心して下さい。それと……姉さんを守ろうとしてくれてありがとうございます」
「そ、そそそれは当然のことですから‼︎ だ、だから頭をあげて下さい‼︎」
姉さんを守ったことに対して頭を下げてお礼をしたら、ローズ先輩が困惑した様子でそう言われた。
それを聞いて俺も頭を上げる。
頭を上げたら、本当に困っている顔を浮かべた彼女がいて、それにあわせて身体もアタフタとした様子を見せていて……
(学園時代のローズ先輩だったらこんな様子は見られなかったかもな)
そう思いながら、俺の身体は自然と彼女の頭を撫でていた。
多分彼女のそんな様子が可愛らしく感じたのか、それともただ単に落ち着かせたかったのか分からないが、俺の手は彼女の頭に置かれていた。
「あ、あああアルジくんっ⁉︎」
「あっ……いえ、なんか慌ててたので落ち着かせようとしてつい……と、取り敢えずここからは俺があなた達を守りますから、安心して下さい」
彼女の更に戸惑いを見せる声で俺が何をしていたのかに気付いて、手を引いた。
手を引いたローズ先輩の顔はどことなく寂しそうに見えたが、それよりも今は唐突にそうされた驚きの方が勝っていてか、顔全体を赤らめているのが見える。
俺も俺で、少しの気恥ずかしさを感じながら、まるでその場を上手く纏めるかのように言葉を残して、今度は姉さんに憑依している状態のヴァイオレットもとい、アウロラの元へと向かった。
「あら、ようやく来たわね」
「あぁ、あのまま君が知らせてくれなかったら……多分俺は俺じゃあなくなってたかも知れない」
「……そうね。そんな貴方のことを見てみたいという興味はあるけれども、もしそうなってしまったら誰も止められないかも知れないわね」
「……それで、姉さんは?」
「えぇ、今はぐっすり眠っている状態よ。彼女が負った傷自体は軽傷だけど、それ以上にエリザベートが復活する時に相当魔力を吸われてしまったみたい」
「分かった。なら姉さんが失ってしまった魔力と、ヴァイオレットが使った魔力も回復させとく」
俺は手をかざしてヴァイオレットに魔力を供給した。
今は姉さんの身体に彼女も憑依している状態だから、2人が消耗した分の内容を注ぎ込む。
「にしてもヴァイオレット……姉さんの身体で無茶しようとしたな」
「あぁ〜……やっぱり分かってしまうかしら?」
「朝飯前だ。姉さんを危機的状況から救ってくれたこと、それだけじゃなくてベータ達も助けてくれたことはものすごく感謝してる。でも……我儘かもしれないが、もう少しだけ姉さんの身体に気を配って欲しかったというのも正直な気持ちだな」
「そうね……それはごめんなさい。今後は気をつけるわ」
「今後というと……」
「えぇ、彼女とは、身体的にも精神的にも魔力のパスを繋げたわ。だからもし彼女が危機的状況に陥ってしまったら、今回のようにいつでも憑依ができるようにね」
「……確かにその方が安心かもしれない。負担をかけさせているようで申し訳ないが……」
「うぅん、良いのよこれくらい。さっ、私の方はもう良いから、向こうで不安そうな目をしているあの子ところに行ってあげて」
「ありがとう。今回のお礼は、なんらかの形で必ずさせてもらうから」
「ふふっ♡分かったわ。その時を楽しみにしているわね」
アウロラとはそれで離れて、最後はベータの方へ足を運ぶ。
ベータは……この中で1番傷を負っていた。
そして俺と向かい合っている彼女は俯いていて、表情が前髪に隠れて伺えない。
でも彼女の顔からは……涙が流れていて……
「ごめん……なさい……ごめんなさい……アスタロト様……私は……自分の与えられた任務を全うすることが出来なくて……」
そう言葉に出しながらも、彼女の目からは涙が溢れていた……
(……なんでだろうな)
その言葉が頭の内で何回も浮かんできて……考えさせられた。
俺は、俺の事を大切に想ってくれている人達が幸せに暮らせるようにと、そう思って行動してきたつもりだ。
正直アルファ達にも、あまり無理な事はしてほしくないと思っていることは確かで、でもこれは彼女達が望んだことでもあるから、そのことについては尊重したい。
(それでも俺は……彼女達が傷付いてしまう事は……嫌だな)
同時に……こんな顔をさせてしまった自分自身に対して憎くて、やるせなくて仕方ない。
彼女達は別に、自分が傷ついたことは俺とは関係ないと言うかもしれない。
現にベータは自分が傷付いているのに、自分が与えられた任務が遂行出来ていないから、それと多分……姉さんを巻き込んでしまったことに対して申し訳なさのようなものを感じているんだろうと思う。
(最後に……これはもしかしたら自惚れかもしれないけど、俺に迷惑をかけたから……みたいに思っているかもしれない)
「そんなことはない」
「えっ……?」
震えている彼女の身体を、優しく抱きしめる。
同時に彼女の傷と、腐食しかけていた部分の治癒、そして少しずつ侵食していた穢らわしい細胞を一掃した。
「俺は……俺の事を大切に想ってくれる君達がそばにいるだけで、それだけで安心する。君達が掲げる大義のために、それが俺や兄さんのためだと思っていつも行動してくれている事、俺は感謝しているよ。
でも俺はそれを抜きにして……純粋に俺の事を大事にしてくれる君達が好きだ。どんな傷を負って帰ってきたとしても、俺は君達を見捨てない。傍にいる。だから今はもう、悲しまなくていいから」
ベータにそんな言葉を語りかけながら、少しずつ抱きしめる力を強くした。
何故だか今は、そうしないといけないと思って、でも不思議とこうしていると、ベータを安心させようとした俺が逆に安心してくる感覚がした。
「あ……アルジ……様」
腕の中で震えながらも、顔を上げてしっかりと俺の顔を見つめてくる彼女の視線は、その体勢からか上目遣いに見えるけども、それが俺にとっては……とても綺麗に思えた。
同時に俺の中で何か、気恥ずかしいような感情も迫り上がってくる。
(これ以上は羞恥が勝ってまともに見れそうにないな……)
真面目な場であることは理解しているのに……どうも俺の本音の部分というか正直な部分は、自分が大切に思っている子達の何気ない仕草に対しては見境がないらしい……
「(それは今は置いておいて……)遅くなってごめんね。少し厄介な事が起きてたから手間取ってた」
「そ、そんな!そもそもこの任務は私に与えられたものです!アルジ様が気にするようなことでは……」
「本来はそうなんだろうけど……それでも俺からすればそう思わずにはいれなかったから、まぁここは俺が我儘言ってるとか、強引にその場を纏めようとしているとか、そんな風に思って欲しい」
そう言葉をかけると、泣いていながらもどこか俺を呆れているような表情で彼女は見てくる。
少し元気になってくれたのならありがたいが……
「……あ、アルジ様は……本当に強情です」
「うん、自分でもそう思ってる」
「でも……そんなところも、アルジ様の魅力だと思っています」
ベータは、瞳に涙を浮かべながらも、笑みを浮かべてそう言ってくれた。
泣きながらの上目遣いも綺麗だけど、今の表情の方が何倍も良いと思った。
「……それじゃあ、行ってくる」
「……はい、お気を付けて」
俺が離れた時、彼女の顔はどことなく寂しそうにしていたが、それでも今はやるべき事がある。
大切な彼女達を傷付けた……コイツに……いや、こんな事を間接的に引き起こしたであろう黒幕には地獄に落ちた方がマシと思わせるような恐怖を刻み付けてやる!
だからまずは……
「待たせたな……取り敢えずお前は今回の件、巻き込まれただけかも知れないが……それでも俺の大切な者を傷付けたんだ。だからほんの少し……八つ当たりじみた事をさせてもらう‼︎」
その言葉がトリガーになって、エリザベートを縫い付けていた呪詛の魔力を練り込んだ弾丸がエリザベートから消失する。
同時に奴はさっきと同じような攻撃をしてくるが……さっきの攻撃よりも弾幕を多く張るかのように、俺のいる方向へ魔力を凝縮させた複数の赤い針を飛ばしてくる。
それは見るからに数だけじゃなくて質も数倍高くなっているが……
「魔力によるオールレンジ攻撃……ってところだよな。ならこっちもそうさせてもらう!」
side 三人称視点
アルジは周囲に複数の空間の歪みを創り出して、そこから武装を展開した。
それは紅色で両刃ナイフのような物で、数は10個ある。
展開されたそれらは空間の歪みが消えてもその場を浮遊して、ただ刃先はエリザベートの方を向いている。
そしてアルジは叫ぶかのように、周りに浮かぶナイフのような物に命を下す。
「俺の大切な者を脅かす全ての対象を蹂躙して殲滅しろ! 行けよファングゥッ‼︎」
瞬間、紅色のナイフ、ファングと呼称された武装は一斉にエリザベートの方へと向けて放たれた。
しかしただ真っ直ぐエリザベートの元へと向かうかと思えば、アルジ達を攻撃するために放たれた魔力の針が次々と消失していく。
戦場を見れば、彼が放ったファングが飛翔していない……否、その場にいる誰の目にも見えていない。
そのためエリザベートの放った攻撃は、アルジの放ったファングによるなんらかの方法で次々と打ち消されていったことは分かるが、何故そんな現象が起きているのかが分からない。
それを目の当たりにしたエリザベートは、何が起こっているのか分からないながらも先程放ったものよりも数倍の数の魔力で編み上げられた針を形成し、アルジ達へ放つ。
だが放った矢先……それも力尽くで砕かれるようにして無効化された。
そしてようやく彼女の目にも、今何が起こっているのかが映る。
小さくて尚且つ速すぎて見えないが、彼女の目には、アルジが放ったファングと呼称された武装が、自分の放った攻撃を横合から刃先でぶつかるかのように当たっているのが一瞬だが見えた。
それも刃先からは、武装の色と同じ紅色の魔力でできているであろう刃が形成されていて、それが自分の攻撃を打ち消している光景を……
「……っ⁉︎」
そしていつの間にか自分の右肩あたりに熱い何かが当たって、身体を構成する肉はおろか、骨ごと溶けた感覚がした。
それも少しずつ再生しているが……
(こ、こんな攻撃……初めてくらうわ……)
今まで覚醒しきれていない状態でこの場におり、自分を攻撃してくる相手に対して反撃していた。
だが目の前に立つ、今まで自分を攻撃してきた彼女達を庇うかのようにこちらを見据える男相手に、覚醒しきれていない状態の自分では太刀打ちできないと悟った。
「ふふっ……私を滅ぼそうとする人なんて……何年振りかしら」
エリザベートの顔には……いつの間にか笑みが浮かんでいた。
彼女は吸血鬼の始祖と呼ばれるだけあって、確かに戦闘能力は高い。
だがそれとは逆に彼女は元々争いを望まない存在だった。
だからこそ1000年前自分が起こした国は、世界でただ一つ、吸血鬼だけでなく他の種族も幸せに暮らせる国として発展した……そのはずだった。
それも、信頼を置いていた者にいつの間にか仕込まれ、自身は暴走し、その結果国は滅んでしまった。
そして自分を討伐しようと、何人もの力ある存在が自分の元に来た。
結果としては封印という形にとどまる結果となったが……
(そんな存在との戦いが色褪せてしまうほどに……私を憎悪のこもった目で睨みつけて相対してくるこの人との戦いは……何故か楽しいと思ってしまうわ)
そして彼女は今放っている攻撃では埒があかないと判断してか、自分の魔力で血のように赤い大鎌を作り、それを両手で構えてアルジに向かって行った。
side out
(接近戦で相手をしようってか)
奴がこちらに鎌を構えて突っ込んでくるのを見てそう判断した俺は、それに対抗するために武器を呼び出す。
「来い! アスタロトォッ‼︎」
右手を掲げると、手を挙げた直線上の空から黒金色の物体が飛翔してくる。
それは俺がこれまでの世界でも愛用していたデモリッションナイフで、持ち手が掌に収まったのを確認してから俺も奴へと真っ直ぐ突っ込んだ。
俺と奴が交差する瞬間、ナイフと大鎌がぶつかり合って衝撃波を生み出す。
多分地上でやっていれば地面が軽く捲れるほどの衝撃になるだろうが、それを気にすることなく、俺と奴は互いの獲物を振るい合う。
その間も奴は俺やベータ達に対して魔力で形成した鋭い針を飛ばしてくるが、俺も変わらずファングで攻撃を相殺、隙が出来れば直接ファングを突っ込ませるか、ファングからビームを発射させて直接攻撃を加えていく。
だというのに奴は持ち前の再生能力をフルに活用させて傷を塞ぎ、俺に突っ込んでくる。
他に相対してきた吸血鬼とは違い、やはり実力もタフさも段違いであることは理解した。
だが……
「これ以上好き勝手にさせるかよぉっ! 来いっ! リナシメントォッ‼︎」
そう叫べば、自分の左腕に新たな装甲が顕現する。
自分の腕の太さの2倍以上はある補助アーム兼ナックルガードで、ナックルガードの甲には、作中でアスタロトを所持していたウォーレン家の紋章が白く縁取られている。
紋章以外の色合いは淡い青色と紅色の2色構成で、甲の部分左上から右下にかけて境目を設けて、左側が紅色で右側が青色だ。
顕現されたガードにも持ち手の役割を持つマニュピレーターがあって、それにデモリッションナイフを握らせる。
そしてそのままエリザベートの攻撃に合わせて振り翳す。
奴は俺の姿が一部だけでも変わった事に驚いたのか、その表情がそのまま顔に現れていて、力も一瞬抜けていた様だ。
だから俺と奴との攻撃で鍔迫り合いが起こると思われた瞬間は来なくて、奴が力負けして後ろに吹き飛んだ。
「そこだ! ファング‼︎」
そこに容赦する事なく同時にファングを突撃させる。
ファングの刃先からは紅色のビーム刃が形成されて、奴を四方八方から貫いていく。
「ダメ押しだ! これも持っていけぇっ‼︎」
左腰にマウントされた隠しナイフを抜き放ってエリザベートに投げ放つ。
それには貫いた対象をさっきと同じくその場に留める効果を付与しており、そして投げ放ったナイフは、寸分違わず奴の胸に突き刺さり、そのまま背後に貫通して
「デェェェアッ‼︎」
その攻撃に合わせて俺もエリザベートに対して肉薄し、ナイフを幾重にも振るった。
side ベータ
(アルジ様に……無様な姿を見せてしまいました)
今回の任務は、最終的に1000年前に猛威を振るった吸血鬼の始祖が蘇ってしまった場合を見越して入念に準備をしてきた。
アルジ様から授けてもらった波紋も吸血鬼に対して有効打になるとして、今回のために、そしてこれからも活用できる場面が多々あると思って、時間を有効に使って今まで行ってきた訓練に並行して習熟度を上げてきた。
(でも……今の私の実力で対応できる相手ではありませんでした……)
他の吸血鬼に対して大きなアドバンテージを持てたとしても……対象の存在に対して有効打になり得ないのであれば意味がないと、私はそう思ってしまう。
そして傷だらけになり、あまつさえ保護対象であるアルジ様のお姉様であるクレアさんも傷付けて守ることが出来なかった……。
そんな時にアルジ様が現れて……確かに私は、私達の危機的状況に駆けつけてくれたアルジ様がカッコいいと感じたことは事実です。
でも……
(私は……アルジ様が孤独な状態にあったことを……過去を知っている)
女性の目から見れば、アルジ様は好意を寄せていた女性に対して最低なことをしてしまっていると正直思う。
でもその話は別にして私は……そんなアルジ様の傍にずっといたいと思った。
だから私は、少しでもアルジ様の力になれればと思って……そう思ってやってきたはずなのに……
(私は……アルジ様の力になれない)
逆に私がアルジ様の足を引っ張ってしまっている。
そんな状態である自分が情けなくて悔しくて……それでアルジ様が私の方へと来てくれた時まず出てきたのは……懺悔の言葉だった。
この言葉で許されるわけがないと思っているけど……それでもその言葉を……出さずにはいられなかった。
でもアルジ様から出た言葉は……私を非難したり侮蔑するようなことではなくて……私を安心させるような、いつものような温かいものだった。
そう言われると同時にアルジ様に抱きしめられる。
私の腰と背中に彼の腕が回されて、触れた箇所からどんどん温かくなっていく感じがした。
同時にアルジ様の抱きしめが強くなって、密着度合いも高くなる。
それに比例して私の中で渦巻いていた絶望感がなくなって、逆に安心感が芽生えた。
そんな私の様子を見計らってか、アルジ様は私が任務を失敗している状況になっているにも関わらず、ここに着くのが遅れてごめん、といった謝罪をいつの間にかしていて、私がそれに対して反論しようとしても、今回自分が言ったことも自分が我儘だからそう思うようにして欲しい……といったことを言われた。
(もぅ……強情すぎますよアルジ様……)
私達はシャドウ様やアルジ様の目的に賛同して、そして自分達が虐げられてきた事に対しての復讐と、今後も自分達と似た境遇の子達を生まないように活動してきた。
それから数年経って組織も大きくなっていく。
それぞれの特性を活かした役職にも就くようになって、責任感も一般的な年代の子達と比べたらかなりあると自覚していて、その分しっかりしないとという気持ちにもなった。
だから今回の任務も、アルジ様が自由に動ける様に、自分の役割の合間を縫って限りなく訓練して……それでもまだアルジ様の足下に、いえ、アルファ様の足下にも至らないと自覚している。
(そんな私にもアルジ様は……優しくして下さる)
そしてアルジ様は今、私達の前に立って吸血鬼の女王の攻撃をいとも容易く、その場を動く事なく防いでいて、逆に自ら攻撃を繰り出してもいる。
その後ろ姿が……
(あぁ……アルジ様ぁ……カッコいい! カッコいいよぉ〜っ‼︎)
最早そんな稚拙な感想しか浮かばなかった。
小説を書いている身としてはあまりにも残念な状態だけど……でも今の私にはその感想しか出てこない。
それから目の前の戦いは更に激化していく。
吸血鬼の女王が自身の血液を操作して血のような大鎌を作り出すと、アルジ様に直進する。
そしてアルジ様も……
「あっ、あれは!」
大きな両刃の大剣……確か前にデルタがアルジ様と模擬戦を申し込んだ時に見たと聞いていた。
その時の彼女は……戦うよりも前に降参したとも言っていたけど……
(まさかこれ程までに魔力の圧を感じるなんて……)
でもその魔力の圧が……私に取ってはとても心地良くて温かい。
アルジ様はその重量感のある大剣を、まるでナイフでも振るっているかのように軽々と扱う。
血の大鎌と大剣がぶつかり合うごとにこちらにも衝撃波が届くその様子は、地に足をつけた状態でやっていたなら周囲の地盤が剥がれて塵になるのではと思うほどに凄まじい。
ただアルジ様はそこで終わらなかった。
「来いっ! リナシメントォッ‼︎」
アルジ様から芯の通った声があがったと思えば、今度はアルジ様の左腕に大きな何かが形成されていた。
簡単なイメージではナックルガードと呼ばれるものに近いと思うけど……
(あれを纏っただけで更に魔力の圧が上がった⁉︎)
アルジ様から放たれる魔力の圧が、更に私の身体を包み込んでいく。
優しく温かいけどどこか刺激的で……
(か、身体がなんかピリピリするぅ……♡)
その魔力の圧を受けた私は……完全に酔った状態になってしまった……。
side out
デモリッションナイフを本来の状態にして突貫する。
そしてエリザベートの再生速度を上回る程の速さで斬撃を繰り出していった。
グロいと思われても仕方ないが、それでもこうしなければ自分が思い描く結果には至らないかもしれない。
(まぁ私怨は多分に含まれているがな……)
そして刃先をエリザベートの心臓がある位置に突き立てる。
「……見事だわ。ここまで私と対等に……いいえ、私を圧倒した人なんて初めてよ」
エリザベートは綺麗な微笑みを浮かべながら俺にそう言ってくる。
一般男性であったり、アルファ達と出会う前の俺ならば素直に赤面してしどろもどろになったことだろう。
だがコイツは……操られて暴走したといえども俺の大切なベータや姉さん達を傷つけた。
だから今エリザベートが、どんな心情を浮かべて俺に対してそんな言葉を投げかけたかなんてどうでも良かった。
「さぁ……私はもう疲れてしまったわ。だからあなたの手で……私を殺してちょうだい」
と、最後を締め括ろうとする台詞で自分の生を俺に委ねてきたんだが……
「……フザケルナ」
「っ⁉︎」
怒気を込めて呟いたその言葉にエリザベートは、先程までの穏やそうな顔から驚愕と、困惑したような表情に変わる。
俺はそんな様子は関係なく、俺の八つ当たりじみた感情をぶつけるかのように続ける。
「テメェが死にたがろうがどうなろうが俺には関係ない。ただ俺が今1番腹が立っているのは……テメェが俺の大切な人達を傷つけたことだ! 操られていようが暴走した状態だとか関係なく、俺はそれが1番解せない‼︎」
「……そ、その……ごめんなさい」
「俺に謝るんじゃあなくてあの子達に謝れ‼︎」
反射的に謝ってきたんだろうが、それに対して俺も一息入れずに返す。
近い位置から怒気を込めて言ったからか、エリザベートもビクッとなっていた。
「……テメェが操られていた事は知ってる。それでその状態のままだと、もう元の自我にも戻れないことも理解してる。それほどまでにテメェは今危うい状態だ」
怒気を含めた台詞を吐きながら、俺は片手をデモリッションナイフから離し、ある物を形成した。
先端は円錐の様に尖り、片方にだけ鈍い光を放つ鉄色の刃、そしてシンプルな持ち手のみの特徴がある片手剣のような物、バスタード・チョッパーと呼ばれる武装で、大きさとしてはナイフと長剣の中間ぐらいだ。
その顕現させた物を、デモリッションナイフの刃がない、刀でいうところの鍔から棟にかけて連結させて、再度両刃の状態にした。
「……確かに、私の中に蠢いているこれは今まで感じたことのない、呪いのような物を感じるわ」
俺の台詞に、エリザベートも自分が感じていた感覚を吐露する。
彼女が言うように、今彼女を蝕んでいる物は呪いに近い。
それに感染しきってしまうと自我を失い、呪いをばら撒いている存在の操り人形と化す。
例え感染しきっていなくても暴力の衝動を抑えきれずに暴走するという、これまた厄介な代物だ。
その代わりに宿主が死なない限り自己再生、増殖をするからかなり厄介だ。
「(いくら俺が気に食わないと言っても、こんなもの送り込むとか何考えてるんだよ‼︎)まぁアンタが言うようにそれは強力な呪いのような物だ。だから今からそれを完全に消し去る。心臓付近に呪いの核のような物があるから……今からするこれは死ぬ程痛いものに感じるだろうが……これがアンタに対して行う最後の八つ当たりだ。これが終わったら後ろの子達に誠心誠意謝れ。それで今回の事はチャラにしてやる」
「……分かったわ。これは私の力が暴走してしまったとはいえ、あなたの親しい人達を傷つけてしまった事には変わりないこと……この後、傷つけてしまった人達には誠意を持って謝罪するわ」
エリザベートの言葉を聞いて、俺はただ頷くだけにとどまる。
取り敢えず今この場で言葉を交わす事はないからと言うのもあるけど、エリザベートにからみつく呪い……DG細胞の核に狙いを定めるため、集中する。
彼女もそれが分かって、俺から行われる最後の八つ当たりを静かに待っていた。
「……いくぞ」
デモリッションナイフの刃先を少しだけ彼女の皮膚に突き刺す。
それに対してエリザベートは傷んだ様子もなく、目を閉じたままだ。
「貫け……ダインスレイヴ」
静かにそう言って、俺は引き金を引いた。
引き金を引くと同時に、バスタード・チョッパーの先端にある円錐に尖った部分が、大きな爆発音を発生させながら射出、バスタード・チョッパーの刃先部分と同じ長さの鉄杭が、エリザベートを至近距離で貫いた。
「ガハッ⁉︎」
エリザベートの心臓より少し下の部分が、ダインスレイヴの鉄杭によって貫かれた。
貫かれた箇所は、その穴からエリザベートの背後にある景色が見えるほどに綺麗な丸の形にくり抜かれている。
そんな状態のエリザベートに対して、俺は八つ当たりが終了したことも意味して素早く回復の呪文を彼女にかける。
すると彼女に空いた穴は逆再生するかの様に塞がり、やがて傷跡もない綺麗な肌になる。
「温かい……あなたから感じるこの魔力……心地良いわ」
「そうかい。まぁこれでアンタに対しての八つ当たりは終わりだ。後は分かっていると思うが……」
「えぇ、あの子達に精一杯の謝罪をさせてもらうわ」
「そうしてくれ。さて、後は……」
俺はエリザベートの背後、ダインスレイヴが彼女の身体を貫通した射線上に目線を向けた。
そこには彼女を貫いたダインスレイヴが空中に静止していて、同時にスパークが弾けている。
「こんなに近付かないと気配を察知出来ないなんて……俺も錆び付いたかもな。だがもうこれ以上テメェらの好き勝手にはさせねぇよ」
俺がそう言い終わると、ダインスレイヴの周辺が歪み、そこから人型のロボットが出現した。
特徴としては全体的に黄色の装甲で、右手には白い金棒を持つ。
そして最大の特徴と言えば頭部パーツが巨大な一つ目であり、まるで魑魅魍魎の物語に出てくる様な一つ目の妖怪をそのままロボットにした様な感じだ。
まぁ出てきたと言ってもソイツはダインスレイヴに貫かれて機能を停止しているが……
「フハハハハハッ! まさかこうもアッサリ勘づかれるとはな……やはり貴様が1番の障害というわけだな」
「……DG細胞が出てくる辺り予想はしていたが、テメェが今回の黒幕か」
空間が歪んでいき、紅い満月が映る夜空から一面赤黒い景色に変わった。
同時に俺の正面、距離は離れているが、ダインスレイヴが貫いたやつと同じ形や、それを別の形にしたロボットの軍勢がざっと見て数万単位で展開していた。
その最奥に……一つ目のロボットとは形も大きさも違うロボットの頭に、下半身は緑色をした軍服のパンツに、上半身は裸、顔の右目の周囲を銀色の仮面で覆った長髪の男が腕組みをして立っていた。
「あの時に受けた屈辱……晴らしにきたぞ、アルジ・ミラージィーッ‼︎」
(ハァ……マジで面倒臭いやつが来たな)
確かに今までも面倒臭い奴が来ていたが、コイツに限っては今までよりも度が過ぎている。
名前は『ウルベ・イシカワ』と言って、元々コイツは元の世界、『起動武闘伝Gガンダム』という世界にいた軍人で、軍人になる前は10年に一度の天才的な格闘技術を持つガンダムファイターと呼ばれていたらしい。
ただファイターとして出場した際の決勝で敗れてからは……どこで選択を誤ったのか正攻法ではなく、愚かしいやり方で頂点に立とうとした。
それも全世界を巻き込んで……
(そんな奴がこの世界に来るとか……例え兄さんが対峙していたとしても“完全に”奴を滅び尽くすのは難しいだろうな)
何せコイツ、元の世界の主人公に倒される時とかDG細胞に完全に感染した状態で、それで世界の支配を掲げていたのが、感染しきった事で人類の抹殺にシフトチェンジしたド阿呆だし……後DG細胞の再生力も本当に厄介だからタチが悪過ぎるというのもある。
(まぁ……どの道滅ぼす事に変わらないから、深く考えなくてもいっか)
「どうしたアルジ・ミラージィッ! 私が再びお前の前に現れたのが怖くて身体が竦み声も出さぬかぁっ⁉︎」
「いや? ただ単に面倒な奴が来たなって呆れているのと……どうやってテメェを滅ぼそうか考えてたところだ」
(ッ⁉︎ な、何だこの押し潰されるほどの圧は⁉︎)
「何驚いてんだよ? “あの世界”ではただ、大元の事はあの人達に任せた方が絶対に良い方向に進むと思ったから、テメェとの対峙はせずサポートの方に回ったんだ。その時の俺がテメェから見て、テメェから逃げているって感じたなら別にそう思ったままでも良いが……」
「なっ、何を言っている貴様ぁっ⁉︎」
「テメェには一生理解できねぇことさ。まぁ何にせよ……俺の大切な人達を傷つけたんだ。復讐される覚悟は……勿論あるよなぁ?」
「き、貴様ぁ……DG細胞と完全に同化し、あの時よりも力を持った私に勝てると思っているのかぁっ⁉︎ 良いだろう……ならその愚かさを抱きながら朽ち果てるがいいっ‼︎」
ウルベの叫びと共に、一つ目のロボット……デスアーミーが俺の方に向けて殺到してくる。
これにより、この場での最終決戦の火蓋が落とされた。
今回の終わり方ついては紆余曲折があって、状況も中途半端になってしまった感が否めませんが、とりあえず今回はここまでとします。
新しく出てきた用語とかもありますが、解説は次の回にしようと思っております。
それではまた次回にお会いいたしましょう。