冬の悪魔到来
冬のバンドリ祭にこっそり参加してみる。

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こっそり参加してこっそりいた事にする作家です。
暇つぶしにどうぞ。数字は察してください()


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「どうして……」

 

 それは学校に帰る途中、彼女、上原ひまりに降り注いだ。全く持って予想外の展開。自分の想定を上回る内容に彼女は驚愕する。

 

 そして自分の置かれた状況を理解する。自分はまな板の上の鯉なのだと。後はされるがまま。なすがままに身を委ねるしかない。そう体が理解していた。

 行けないとは十分承知だ。これ以上関わってはいけない。手を出してはいけないと分かっていても抗えない誘惑。それがある。

 

 視線がその一点に注目する。目が離せない。離さなければ、そう思うたびに視線は釘付けになる。

 

 これはもはや中毒症状なのかもしれない。そんなことを考えながら体を制止させる。それでも目の前に燦然と輝くそれは彼女を引きつけて離さない。

 

 手を伸ばせばすぐに手に入る事がさらに彼女を誘惑する。

 

 欲しい、だが手にしてしまえば大変なことになる。それを頭で理解しているから。脳はやめろと警鐘を鳴らす。

 

 しかし本能はそう簡単に収まってくれない。欲望は最大の大敵。分かっていてもそう簡単に打ち勝てるものではなく……。

 

「ありがとうございましたー!」

 

「買ってしまった」

 

 私は十分抗った。そう心に言い聞かせるが買ってしまった事による罪悪感が彼女の瞳に涙をにじませる。その手にはビニール袋が握られている。その袋に書かれているのは有名チェーン店のロゴ。

 彼女はその中からものぐさに一つ取り出すとそれを眺めた。手にしてしまえば大したことのないもの、それでも自分を悩ませる災禍の種。それが目の前にあった。

 

 その名も冬季限定コンビニスイーツ。

 

 スイーツと侮るなかれ。彼女は買うたびに葛藤に苛まれるのだ。

 美味しそうに出来上がったスイーツ。金額は少し割高。高校生とはいえ頻繁に変える金額ではない。金銭的苦悩は避けられない。だがそれよりも彼女を悩ませるものが勝った先に存在する。

 カロリー。それが彼女の敵だ。

 食べた後に訪れる罪(体重増加)、それは避けられない。そしてそれに対抗しなくてはならない。

 買わないという選択肢もある。しかし一時の幸せに身を任せてしまう。人間の心は弱いものと彼女は勝手に割り切る。

 

「じゃあ食べよ」

 

 家に戻ってきた彼女はリビングの机に買って来たスイーツを置く。今回はカップケーキ。ティラミスの様に段々に折り重なっているホワイトクリームとチョコクリームが美しいスイーツ。そのカップの蓋をゆっくりと開け付いてきたプラスティックスプーンを容器に沈ませる。

 滑らかに、初雪を踏むかのような柔らかさで沈んでゆくスプーンに甘い雪原が乗る。そうして乗った雪をゆっくりと口元に運んでゆく。

 口に運んだ瞬間ほんのりと伝わるチョコのほろ苦さとクリームの甘さが舌の上で溶けて広がる。

 

「うぅ、やっぱり美味しいよぅ……」

 

 その優しい口触りと甘いクリームに美味しさを噛みしめ彼女は一時の幸せに身を委ねる。その後に来る戦いを端に追いやって。

 下に広がる甘さを全身で甘受して幸せを最大限まで搾取することに専念する。今この時、今かの時だけは後の事を何も考えずに幸福を口に入れてゆく。

 

 それでも美味しかった幸せと、抗えず買ってしまったという後悔が入り混じり、少しだけ複雑な心境の彼女。

 

「これくらいだいじょうだよね!うん」

 

 気休め程度の自己暗示これでどうにかなるとは彼女も思っていない。ただ食べてしまった事に関してはもうしかなない。それを受け入れて対策を練る方が重要だと考える。

 

「えっと飲み物、飲み物……」

 

 これからどう摂取したものを消費しようか、そんなことを考えながら冷蔵庫に入っている炭酸飲料を手に取る。その時ふと目に入ったものに再び目を奪われる。

 

「ちょっとくらい……いいよね?」

 

 そこに置かれていた物を手に取り、皿に乗せラップをかけてから電子レンジの中に入れる。

 時間を設定しスタートを押すとレンジ内が温まる。暖め終わるまでの時間は4分から5分。それまでの間彼女は先ほど冷蔵庫から出した炭酸飲料を飲みながら待つことに。

 しばらくすると電子レンジが音を立てて温まったことを伝える。それを確認したのち中身を取り出し温めたものを机の上に置き、ゆっくりとラップを取る。皿の上に置かれた二つの白い山その一つを手に取る。

 純白の生地を綺麗に二つに割る。絡まった生地の繊維がゆっくりと解放されてゆき中から濃厚な肉の餡が姿を現す。湯気が上がりゆっくりと肉汁が滴り彼女の食欲をそそる。

 

「おいしそう……おっとよだれが」

 

 目の前に鎮座する肉まんをゆっくりと屠りだす。皮と餡をバランスよく、丁寧に、それでいて勢いよくむさぼる。

 口の中に先程の甘みとは違う肉のうまみが広がる。

 

「んー、やっぱり冬はこれだよね」

 

 寒い冬に体を温める贅沢。それを堪能する。割った片割れを食べた後、もう片方を食べる。それを食べ終わると次はさらにもう一つを手にかける。

 こうして彼女はお腹を、心を満たしてゆく。食べ終わりその幸せを思い出しながらお腹をさする。とてもおいしゅうございました、と言った所だろうか。

 

「さて、腹ごしらえも終わったことだし勉強、勉強」

 

 彼女は皿をシンクに置き自室へと戻る。冬休みが始まったのだ。遊びたいのはやまやまだが少しは宿題をしておかなくてはならない。去年も後回しにして親友にどやされてしまった。今年は少しでもそれを軽減すべきだと思い勉強を始める。それも数分で挫折しスマホを触ってしまうのだが。

 

 こうして月日が過ぎて彼女は後悔するのだ。具体的には学校が始まる前日に、体重計の前で。

 風呂上がりにバスタオルをまとった状態で頭では分かっていた事に絶叫するのだ。

 そしてその後の彼女の様子を見て仲間も理解する。またか、と。

 

 後日、彼女がダイエットに励む姿が目撃されたというのはまた別の話。




カロリーとひーちゃんの話でした。
どうも凍った哺乳類、冷凍クジラです。
隅っこに住んでるしょうもない作家なのでこのレベルで許してください()

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