先行実装転生ゾロアニキ   作:あまも

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やっと秋ですね…

よろしくお願いします


涼しさは好きで猛暑は無理

 

 

 

 

 少しだけ、乾いた空気と冷たい風がぷぅと吹く。季節が違えば、もっとじわりと暑かったんだろうか。それとも、この冷たさは変わらないんだろうか。

 

 

 パルデア地方はほとんどテーブルシティの記憶しかないが、太陽光で白い壁が輝いて、眩しいと感じることが多かった。

 

 ここは、なんだかとっても静かな気持ちになる、そんな場所だった。

 

 シンオウ空港はね。

 

 

 アオキさんがレンタカーを借りて、一路プルプルと向かったコトブキシティは、テーブルシティともまた違った賑やかさ。

 

 なんか……この……なんだろうな!

 

 

 助手席の窓を大きく開けて、おれを抱えて外の景色を見せてくれているジニア先生がいやー、と感嘆の声を上げる。

 

 

「ハッコウシティとチャンプルタウンを足して割ったみたいな街ですねえ」

 

 

『素直にハッコウシティみたいな街、でよかったのでは?』みたいなこと言いたそうな顔だなアオキさん。運転に集中しているのか、表情そのものは変わってないけど。

 

 

「ふん。どこもかしこも近代化近代化と……くだらん!ミオで見つかった資料によれば、当時の最初に外部から持ち込まれた近代の文明がここで発展したというではないか!ならば!その資料を!当時の文化を!変わるならば過程の全てを!築かれてきた歴史を!遺せと!!言うのに!!なんだこの……下品な街は!!」

 

「レホール先生、外ですよお」

 

「こんなの、何処もかしこもどの街だろうが変わらないだろう!」

 

 

 ぎゃんと大いに憤慨しているレホール先生は、なだめるジニア先生の話も入ってこない様子。

 

 そこにアオキさんが、運転しながら無言でボールを取り出した。

 

 かちりと、ボタンを押して開いた中から、丸太を抱いた、目を閉じた青いコアラみたいなポケモンが後部座席のレホール先生の隣に出てくる。

 

 

「…ネッコアラ、あくび」

 

 

 そのネッコアラなるポケモンが、くぁと大口開けて1発。

 

 

「ぐう」

 

 

 どうやらうるさかったらしい。

 

 

 ものの数秒で大騒ぎしていたレホール先生は静かになった。

 

 

 ひと仕事を終えたネッコアラくんは、後部座席で丸太に抱き着き、丸くなってこちらもすやすやと。

 

 

 戻すのも億劫なのか、それとも起きたらまたわざをかけさせるつもりなのか…アオキさんは、ネッコアラくんをボールに戻さず、そのまま空のボールを懐に戻した。

 

 ジニア先生が、たははと苦笑。

 

 静かだからよいでしょう。うん。

 

 

「…コトブキシティには、昔の遺構は何も残ってないそうですねえ。シンオウ地方で、最も近代化が進んでいる街でしたっけ」

 

「カンナギか……それか、ヨスガのいぶんかのたてものにでも置いてくるべきでしょうか」

 

「ああ、あそこですかあ。いいかもしれませんねえ」

 

 

 いぶんかのたてもの……?

 

 ってなんだい、ジニア先生。ゲーム時代にそんなのあったっけかな?

 

 

「? ゾロア、どうしましたか?」

 

「いぶんかのたてもの、ですかね」

 

「きゅぬ」

 

 

 そうそれ。アオキさんわかってるね。

 

 

「いぶんかのたてものは、ヨスガシティという街にある、シンオウの文化的意匠と大きく異なった建築様式の見られるたてものになりまあす。ヨスガシティ自体が、異なる文化を持った人々の行き交う場所として、あの場所に作られていったそうですが、そのことを象徴する建物として有名ですねえ。

 

 具体的な資料が残っていないため、装飾や、飾られた絵の意味、建物としての目的など、未だにどれもハッキリとはわかっていません」

 

 

 へぇ。

 

 ジニア先生が結構詳しく教えてくれたと思うんだけど、それって、レホール先生だともっと詳しくわかったものなのか、それともそれしか情報がないのか微妙なところだ。

 

 

「建物自体は、カロスや、ガラル、それこそパルデアのものにも近いかもしれませんが、その実、どれとも異なります。そもそも建物としての名前も、装飾のモチーフも、絵の題名も全て記録はありません。絵に至っては『無題』なんてタイトルがつけられていますが、それだって作者がそう名付けたのか、はたまた後の人がそうつけたのかわかりません。

 

 ある意味では、『すべては見る人に任せる』という寛容性の象徴、などとも言われていますねえ」

 

 

 だから深堀して色々考えてしまうレホール先生を放り投げて来ようかなんて話をしだしたのね。

 

 彼女のことだから、テンション爆アゲで飛び込んでいったかもしれない。

 

 あの人、各地の歴史に造詣が深いみたいだから。身につけてるもの的にも。

 

 

 それで、カンナギ、ってのは?

 

 確か、遺跡のある町だったような?

 

 

「カンナギタウンは、古くからのシンオウ地方に伝わる神話や、文化、歴史が、色濃く残る遺跡の多い町です」

 

「ディアルガやパルキアについての資料は、ここから取り寄せていたんですよお」

 

 

 ほほう。そいつぁ楽しみだ。

 

 

 運転しながらでもおれの欲しそうな情報を拾い上げてくれたアオキさんは、順調に街中を進むと、レンタカーを大きなビルの裏手に停めた。

 

 

 何ここ?

 

 

 シートベルトを外し、降りる様子のアオキさんの顔を見ると、目線が合い…ふいと逸らされる。

 

 

「シンオウポケモンリーグの支部です。ここでガイドの方と待ち合わせをしています。あわせて、“そらをとぶ”などのひでんわざの使用登録をするために寄りました。ポケッチの貸出もできますので、ジニア先生もよろしければ」

 

「うわあ!ポケッチ!!」

 

 

 うわぁびっくりした。

 

 ジニア先生が一気に気色満面で車から、おれを抱えたまま飛び出した。

 

 

「ポケッチはですねえ、このシンオウ地方においてのみ普及した、多機能型デジタル腕時計ですねえ。古いものですがあ、当時から非常に画期的であると評判が良くって、シンオウ地方では爆発的に大ヒットしたんですよお!

 

 スマホロトムの普及が世界的に拡がった今でも、シンオウ地方ではほとんどの人が使用しているのはポケッチ!話に聞く、ひでんわざアプリをこの目で見れるとは…感激ですねえ!あれは周辺のひでんわざの使用可能なポケモンに、ひでんわざを使ってくれるよう頼む事が出来るんですが、ずっと気になっていたんですよお」

 

 

 テンション高いな。ルンルンぴょんぴょん、サンダルでそんな動きしてたら転びそう。いま転ぶとおれごと行くから落ち着きなよジニア先生。

 

 そんな彼に、自分のビジネスバッグと、ジニア先生の荷物から白衣を取り出して差し出してくるアオキさん。

 

 そういえばちょっと寒いか。おれは丁度いい塩梅だが、紫のシャツ1枚のジニア先生はひととしては薄着かもしれない。

 

 

 …………違うな。

 

 先方に会いに行くのに、このだらしない格好ではまずいから、せめて白衣を着せて『研究者だから』のアピールさせて、『じゃあ変人か』と納得してもらおうって魂胆が丸見えだぞアオキのおじちゃん。

 

 

 どうしような、このままではレホール先生が起きたら大変だ。彼女は白衣無いのに。

 

 奇行されたら弁明しなきゃだぜ。

 

 

「……ポケッチの開発を手がけた販売会社はここ、コトブキシティにあります」

 

「それはぜひぜひ、見学してみたいですねえ!シンオウ地方の滞在中、なんとか見学の予定取れませんかねえ」

 

 

 おっと。早速予定が狂いそうで、アオキさんが目を閉じ、暫く動かなくなった。

 

 どうしようかと逡巡しているらしい。

 

 

 

「……検討してみます」

 

 

 それって考えるだけはしてみるって意味?

 

 お断りって意味じゃない??

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 広いパルデア地方では、街と街を繋ぐ道はあれど、宝探しや研究、散策で道無き道を行く旅人も多いため、基本的にはモトトカゲなどのライドポケモンでの移動が推奨されている。

 

 自然をなるべく多く残して、パルデア地方特有の生態系を守るため。人の手による開発は、大きな制限がある。だから車はほぼ走っていないし、走れるような道も街中にしか無い。

 

 その点、ポケモンリーグの営業もやっているアオキさんはよく知っている話だろうが、つまりはパルデア地方では街の外はもちろん、中にすらも新たな建物を建てる事は、環境保護の観点から制限が厳しく。ハードルがかなり高いため、結構大変な事だったりする。

 

 

 一方のこちら、シンオウ地方。

 

 まず一言目に、デカい。

 

 次には、広い。

 

 パルデア地方も中々広い半島だけれども、シンオウ地方はどの地方と比べてもとにかく広く、人も多く住んでいて都市部は開発も進んでいるのに、それでも尚数多くの自然が残っている。

 

 

 そんな広いシンオウ地方で行政を執り行うシンオウポケモンリーグ委員会の目下最大の悩みは、自然災害らしい。

 

 なんせ広くて大自然豊かな土地。街に人は住んでいるが、ちょっと道から外れようものなら深い森林地帯に飲み込まれ、たちまち迷ってしまう。

 

 

 こういう所は、パルデアとの植生の違いだろう。パルデアではしるしの木立やオージャの湖の湖岸、北の2番エリアなど、険しい自然や鬱蒼とした森林はあれど、電波が届かずスマホロトムが連絡を取れなくなることはほぼ無い。

 

 もし連絡が取れなくとも、最悪真っ直ぐ、パルデアの大穴を囲む灰色の山から離れることを心がければ、視界の開けた電波の届く所には必ず出られる。

 

 そういう意味ではナッペ山と大穴周辺は危険地帯だが、そちらは人とポケモンの目で監視をしているため早々人が遭難することもない。

 

 

 シンオウ地方……その中央の、最も大きな山、シンオウ地方を西と東に二分する山脈に聳え立つ鋭い階。シンオウ地方のシンボルとも言える山、テンガン山。

 

 あの山は大規模な地殻変動で出来たもので、強力な磁場を形成する鉱石が至る所に含まれており、その影響か、スマホロトムを初め電子機器が使用できない所も多々ある。

 

 特に山頂付近では、その特殊な磁場によって、しんかのいしを使用せずとも特殊な進化を可能とするポケモンがいるほどに強い磁場があちこちに形成されているという。

 

 とにかく、シンオウ地方は都市部を出て、道路から少し離れただけでも遭難の危険がいつだってついてくる。

 

 

 シンオウ地方において、“自己責任”の言葉はパルデアのそれよりも広く、重い意味を持つ。

 

 

 パルデア地方は、ポケモンリーグやアカデミーが総力を挙げて、各地に散らばった人々の旅の安全を守っている。

 

 シンオウ地方だってポケモンリーグが相当努力しているのだろうが、それでもどうしようもないほどシンオウの大地は広く、険しい。

 

 整備した道は直しても直しても、西が終われば東、東が終われば西、とオタチごっこのように。

 

 自然は容易く牙を剥く。

 

 

 だからこそ、個々人に“ひでんわざ”として、道を切り開く力の使用が許可されている。

 

 道を遮る木を“いあいきり”、落石には“いわくだき”、倒木を“かいりき”で退かし、崩れた岩肌を“ロッククライム”、流れの変わった川を“なみのり”、雲の中でも“きりばらい”……

 

 

 そして、空高くから街へと帰還する“そらをとぶ”。

 

 

 最低でもこういったポケモンのわざによる協力がないと、シンオウ地方はまともに旅することもできない。

 

  試される大地、シンオウ地方。試しているのは果たして、人の進む意思か、ポケモンとの絆か、或いは……

 

 

 

 という15分ほどのビデオと10分程度の講習を受け。

 

 

「うわあ……これがポケッチ……」

 

「こちらリーグ委員会の貸し出し用で、アプリはひと通り入っています。ひでんわざはNo.20に登録されています」

 

「うわあ…うわあ…!」

 

 

 アオキさんが借りてきてくれたポケッチ。

 

 スマホロトムとの連携が出来ないのが玉にキズ、などと言われているこれも、きっとそのうち進化することだろう。

 

 かがく の ちから って すごい !

 

 

 本来、特定のジムで実力を認められてから、ちゃんとした講習を受けた者にひでんわざの使用が許可される。

 

 それを今回は、かつてシンオウ全土を旅したコウキさんを現地ガイドとして、パルデアリーグ委員会所属でひこうタイプのエキスパートであり、四天王でもあるアオキさんもついてきてくれるからこそ、こんな30分もかからずに仮とはいえ許可が下りたのだ。

 

 

「それと、今回シンオウ地方を案内して下さる…」

 

「はい!」

 

 

 背の高いアオキさんの後ろから、ひょこりと、まだ若い青年が顔を出した。赤いマフラーがチラと目につく。

 

 顔も、元気の良いひと言だけの声にも覚えがある。

 

 

「こうして、実際に面と向かってお会いするのは初めてですね!ナナカマド研究所所員、コウキです!」

 

「コウキさん!どおも、どおも。ジニアです」

 

 

 握手を交わす手もまだまだ線の細い、本当に若い彼は、面識のある研究者の人だった。ライブ通話では何度か見たことがある。

 

 結構前に、壇上でナナカマド博士の助手として動いている姿を見かけた時は、もっと背が低かったような気がする。

 

 成長期ですかね。

 

 

「今回は、はるばるパルデアからお越しいただきまして…ありがとうございます!」

 

「いえいえ。ぼくもシンオウ地方は中々機会がなければ来れませんからねえ」

 

 

 コウキさんが名刺をくれたのだけど、白衣のポケットにも胸ポケットにも、名刺が無くて……そもそも持ってきていただろうか?

 

 

「えへへ、すいません…名刺、忘れてしまいましたねえ……ありがとうございます」

 

「あ!いえ!……オレはまだ、この業界では何も実績のない見習いですから、著名な研究者の方々に少しでも覚えていただけるよう、こんなのを作ってみたんです。受け取っていただけただけで嬉しいです」

 

「ええ?ぼくなんて全然……ぺーぺーのぺーぺーですよお」

 

「そんなこと!」

 

 

 コウキさんが、ずずいと勢いよく1歩前へ詰めてきた。

 

 

「パルデア地方での、ディグダとウミディグダや、ホエルコとハルクジラの違いのお話など!ジニア先生のポケモン生態学における研究論文の数々は、どれも素晴らしいものでした!最近では、パルデアケンタロスの分類についての論文や、パルデア地方独自のポケモン達の生態研究成果、アカデミーでの出来事の情報発信にも力を入れておられて――」

 

「えへへ……」

 

 

 前の生態学討論会に提出した内容は、パルデア地方のリージョンフォーム、すなわち“パルデアのすがた”のケンタロスがコンバット種、ブレイズ種、ウォーター種の3種に分類される事と、オドリドリやロトムのようなスタイル変化、それとバオッキー、ヒヤッキー、ヤナッキーのような、生態としては良く似た、けれどタイプが違う、別種と確定しているポケモンとの違いをまとめたのだっけ。

 

 けれど、ウミディグダの論文も、データベースに上げといて良かったようだ。

 

 この若い研究者が、興味を持ってくれたなら何よりだと思う。

 

 

「ええと、それで……その子が噂のヒスイゾロア、ですね?」

 

「きゅっ」

 

 

 ぼくの腕の中でじっとしていたゾロアに、コウキさんが目を向ける。見下ろすと、ゾロアもしげしげと、いつも困ってるみたいな目を物珍しそうに見開いて、コウキさんを見ていた。

 

 

「あれえ、ゾロア。 コウキさんのこと、気になりますかあ?」

 

「きゅぬ」

 

 

 人見知りをしないゾロアだが、今回は積極的に自分から鼻を向けてすんすんと、匂いを嗅ごうとしている。これはあまり見かけない行動だ。

 

 興味があるかとの問にも首を縦に振り、降ろして欲しいのかもぞもぞと身を捻っている。

 

 要望通り降ろしてやると、小さな足を動かして、ゾロアはコウキさんの周りをぐるぐると回り始めた。

 

 これは…本当に珍しい。自分からここまで興味深々に人間の確認をするというのは、これまで一度も見られなかった行動だ。

 

 コウキさんもしゃがみ、ゾロアの好きにさせている。むしろ、彼自身も嬉しそうだ。

 

 

「わぁ…! こんにちは、ゾロア。オレはコウキ。ナナカマド研究所で、所員をやっていて、研究者見習いだ。ナナカマド博士の助手としてお手伝いさせていただいている」

 

「きゅきゅ。きゅあんぬ!」

 

「はは!映像では見ていたけれど、本当に独特な鳴き方するんだな!」

 

「きゅっ!?」

 

「ああごめん、変だ、ってことじゃない。オレは普通のゾロアもあまり見てないから、違いなんてよくわからないけど、バリエーション豊かって意味で面白いと思う。…すごいなぁ、おまえ、人と過ごしてなかったのにこんなに表情豊かで、人の言葉もわかって……きっと、とても賢いんだな」

 

「きゅっ!」

 

「ははは。ほめられて誇らしそうにしてる」

 

 

 これは…どういう反応だろうか?

 

 このゾロアは、元々人見知りはしない。

 

 普段なら、初めて見る人にも、ポケモンにも、何か物事に興味があれば、首を傾げて近くの人の目を見て、『コレは何か』と聞きたそうな顔をしてくるので、このゾロアの興味というのはとてもわかりやすいが……そうだ。

 

 

 強いて挙げるなら、チリさんのウパーと会わせた時の反応に近い。

 

 

 あの時は、確かその後に通常のウパーと出会った時に嬉しそうに跳ねていた。アオキさん曰く、『これだよコレ』と、納得がいったような態度に見える、とのことだったっけな。

 

 後々、本来なら生息地の違うとされるこのゾロアが、“ウパー”として認識していたのは通常種で、パルデアのどくタイプのウパーには…アオキさんの言い方だと、『納得いかなかった』のだろうとわかったが……それに近い反応、ということは……

 

 

 自分では知っているから人に聞かないが、自分の知っているものとは“何か”違うから、何が違うのかを自分で確かめようとしている?

 

 

 

 …………

 

「コウキさん、ご出身、どちらですか?」

 

「へ?あ、ああ。生まれも育ちも、ここ、シンオウ地方のマサゴタウンです」

 

「いつ頃からこちらに?」

 

「え? いつ頃……とかはすいません、詳しくはオレも知らなくて……でも昔からシンオウで暮らしていると思います。ばあちゃんの墓とかありますし、家も新しくは無いですから」

 

「……そうですかあ」

 

 

 足元のゾロアを見ると、なにやら『違う違う』と言いたげに首を横に振っている。困ったような顔は、少しだけ……焦ったような気がする表情をうかばせているように見える。

 

 

 コウキさんのご先祖のどなたかが、このゾロアの知り合いなのかと思ったけど、違うんだろうか?

 

 

「では、ゾロアはコウキさんが気に入りましたかあ?」

 

「きゅっ!?きゅ……きゅぬぬぬ…くぁんぬ」

 

 

 なんかもごもご言ってますねぇ。

 

 

 暫く首を捻って難しい顔をしてから、結局ぼくの方へと戻ってきたゾロア。コウキさんは残念そうだった。

 

 

「嫌われちゃいましたかね…」

 

「いえ、……アオキさん、今のは」

 

 

 ほけと、微動だにせず移動屋台に目を向けていたアオキさんに声をかける。

 

 

「……初対面で無遠慮に迫り過ぎたことを、ジニア先生に言われて気付いたのでは?」

 

「ああ」

 

 

 照れていたのか。

 

 言い当てられてしまったのか、ゾロアがしゃがんでいたぼくの背中を踏み台にしてアオキさんにきゅあきゅあといちゃもんみたいな文句を言っている。

 

 受けているアオキさんは面倒くさそう……というか、聞いていないように見える。今度はコトブキラーメンと大きく描かれた看板を掲げた店の方を見ていて、全くゾロアの鳴き声は聞いていないらしい。

 

 

「はは。流石、おふたりはゾロアの扱いに慣れてらっしゃいますね」

 

「きゅぬっ!?」

 

 

 心外だとでも言いたげにゾロアが跳ねている。

 

 コウキさんもわかっただろう。そう、このゾロアは異様に感情表現が豊かである。

 

 そういうところが、珍しいポケモンとされるひとつの要因でもあるのだろう。

 

 

 

 

「それでは改めて、本日の宿――ミオシティへと参りましょう!」

 

 

 

 張り切ってレンタカーの扉を開けて、腕組みで不敵な笑みを浮かべながら見返してくるレホール先生と目が合ってしまったコウキさんが素っ頓狂な声をあげる、5秒前の事。

 

 

 

 





あれっ、ミオに辿り着かなかった

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