笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~   作:マーキ・ヘイト

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先週上げた短編『~壁~』は、読んで頂けましたでしょうか。
まだという方は下にURLを張りますので、そちらから読んで下さい。

https://syosetu.org/novel/315992/

それでは、本編スタート!!


人魚の女王

 水の都から少し離れた郊外。人魚達が住む町を一望出来る丘の上にやって来た人影が一つ。他ならぬルーであった。

 

 「ここから見る町の景色は、いつ見ても最高だね。ただいま、元気にしてたかい?」

 

 『…………』

 

 「今しがた。他の皆は船の積み荷を降ろしている所だよ」

 

 『…………』

 

 「サボりじゃないよ。ちゃんと船長の許可は取ってある。一秒でも早く君に会いたかったんだ」

 

 『…………』

 

 目の前の誰かと会話している様なのだが、ルーが一方的に喋り倒すだけで相手は一言も口を開こうとはしない。只、じっとルーの話に耳を傾けている。

 

 そしてそれはルー自身も了承済みらしく、お構い無しに話を続ける。そんな中、何かを思い出した素振りを見せて、懐に手を忍ばせる。

 

 「そうそう、実は今回もお土産を持って来たんだ。きっと気に入ってくれると思うよ」

 

 『…………』

 

 そう言って取り出したのは、色鮮やかな一輪の花。何処も傷付いていないか、全体を確かめ終えると、目の前に差し出した。

 

 「綺麗だろ? 君が前々からずっと見たがっていた地上にしか咲かない花だ。お金が足りなくて一輪しか買えなかったけど……」

 

 『…………』

 

 「だから今度の航海ではもっと沢山の花を買って、花束にして君にプレゼントするよ」

 

 『…………』

 

 「本当だって、何年掛かろうが何十年、何百年掛かろうが必ず成し遂げて見せる。そしていつか、この丘を花でいっぱいにしよう」

 

 『…………』

 

 「ここを地上と変わらない景色にするんだ。きっと凄く綺麗だと思うよ」

 

 『…………』

 

 真緒達といた時とは考えられない程、明るく笑顔で目を輝かせながら夢を語る。なのに、目の前の人物は口を開こうとしない。

 

 やがて興奮が冷め、ルーの表情も落ち着き始める。そして何かを悟るかの様な穏やかな表情を浮かべる。

 

 「大丈夫、心配しないで。必ず……必ずやり遂げて見せるよ。僕だって海賊の端くれ、欲しい物は奪ってでも手に入れる。何て、冗談だよごめんごめん。他の人には迷惑は掛けない」

 

 そう言いながら、ルーは徐に持っていた花を目の前の人物に渡さず、足下の砂を掘り起こし、花を丁寧に植えた。

 

 「まずは一輪……」

 

 ルーの目線の先に映る物。それは人では無かった。石の塊。所々削れている不格好な石が砂の中に半分埋もれていた。今まで彼が話し掛けていたのは、人間どころか生き物ですら無かった。そんな石の塊の前に、持って来た花を植えたのだ。

 

 「もう絶対に逃げたりするもんか…………そうそう、実は今回の航海では、驚きの大ニュースがあるんだ。ここに向かう途中、クリアビーチでね……」

 

 そうしてルーは、再び石の塊に向かって話し掛けるのであった

 

 

 

***

 

 

 

 一方その頃、真緒達は人魚のシレーヌの案内で女王の下へと向かっていた。水の都の入口には、左右それぞれに槍を持った二人の人魚が尾ひれを立たせ、直立不動で浮いていた。また、どちらもシレーヌと同じ位、美しい顔立ちをしている。

 

 シレーヌが何事もなく無事に通過し、真緒達も続けて通ろうとすると、突然二人が持っていた槍を目の前で交差させ、睨みを利かせて通行を止める。そして、その内の一人が口を開く。

 

 「止まれ、ここから先は我ら人魚が住まう町。関係者以外は立ち入り禁止だ」

 

 「えっ、あ、あの私達はその……」

 

 普通に通れる物だと思っていた為、急に止められた事に焦る真緒。そのせいで動揺してしまい、上手く話せずにいると、先行していたシレーヌが異変に気が付き、慌てて二人に事情を説明する。

 

 「あぁ、その人達は女王様の大切なお客様だから、通して大丈夫です」

 

 「女王様の? そんな話は聞いていないぞ?」

 

 首を傾げる二人に、シレーヌは片手を口に添えてコソコソと耳打ちをする。

 

 「ほら……例の“予言”の件です……」

 

 「「なっ!!?」」

 

 シレーヌの言葉に思わず驚きの声を上げる二人。信じられないという表情を浮かべ、真緒達の方を見つめた後、互いの顔を見合わせる。そして同じ考えに至ったらしく頷き合うと、それぞれ左右に移動し、姿勢を真っ直ぐに正して真緒達に道を開ける。

 

 「失礼しました。どうぞ、お通り下さい」

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 態度が急変した事に戸惑いながらも、真緒達は入口を通る。すると目の前には、町が広がっていた。

 

 「ようこそ、ここが水の都の中で私達が住んでいる町。通称“人魚の町”だよ」

 

 「これは……」

 

 住居は勿論、店も開いていた。そして、そこには普通に人魚達が暮らしており、子供や老人はおらず何処もかしこも美女ばかりであった。しかし、そんな事よりも真緒達が驚いたのは、建物の“造形”だった。

 

 「まさかここの建物は全て“貝殻”なのか?」

 

 十メートルは軽く越える巨大な巻き貝や、巨大な二枚貝の形を屋根として利用するなど、余す事無く活用している。

 

 「それだけじゃないわよ。例えば、あそこの家は巨大な珊瑚をインテリアとして使っていたり、向こうの家なんかイソギンチャクを庭に置いてるわ」

 

 よく見れば、貝殻だけでなくその他の海産物も普通のと比べ、遥かに巨大な物ばかりだった。

 

 「どうしてこんなに大きいんですか?」

 

 「うーん、詳しくは知らないけど……何でもその昔、とある魔法使いがこの水の都を作った時、一緒に作ったと聞いてるわ」

 「魔法使いが水の都を作った!!? その話、本当ですか!!?」

 

 興奮した様子で話に食い付く同じ魔法使いのリーマ。その勢いから、シレーヌも若干引いてしまっている。

 

 「え、えぇ……私は当時子供だったからよく覚えていないけど……千年位前の時、一人の魔法使いが人魚の私達が住まう場所として、この水の都を創造したと言われているわ」

 

 「いったい誰なんですか!? その魔法使いは!!?」

 

 「そ、そこまでは知らないわよ。他の皆に話を聞いても、一人の魔法使いが作ったとしか言わないし……」

 

 「そうですか……」

 

 それ以上、目ぼしい情報は手に入らず、ガクッと両肩を落として分かりやすく落ち込むリーマ。そんな彼女を見かねて、真緒が話題を変えようとする。

 

 「そう言えば、ここって海の中なんですよね? それならどうして、私達は息が出来るんですか?」

 

 「そうした細かい仕組みも、魔法使いが作ったと言われているわね」

 

 「本当に凄い人なんですね……」

 

 知りたいのに知る事が出来ないというジレンマに、遠い目をするリーマ。見事、話題変更に失敗してしまった真緒は思わず片手で両目を覆ってしまう。すると今度はハナコが、何かを見つけたのか大きな声を上げて指を差す。

 

 「あっ!! あれは何だぁ!!?」

 

 ハナコが指差す方向にある物。それは城だった。他の建物を遥かに凌駕する大きさ。縦に高く伸びるその姿は、見上げると首が痛くなってしまう程、圧巻な大きさだった。

 

 また、この城だけ他とは違い貝殻では無く、地上と同じ様に大理石で建てられている。更に壁には細かな模様や装飾が施されており、気合いの入れようが段違いであった。

 

 開いた口が塞がらない真緒達に、シレーヌが胸を張りながら自慢げに答える。

 

 「あれこそ、我らが女王様の住まうお城なのです!!」

 

 城に近付くと、門には入口と同じ様に二人の人魚が警護していた。しかし、先程の二人と異なり、確りと薄手の鎧を身に付け、持っている槍も先が一本のタイプでは無く、三つに分かれているタイプだった。

 

 近付いて来る真緒達に逸早く気が付き、入口と同じ様に槍を構えるのかと思いきや、左右に移動して道を開けて見せた。

 

 「お待ちしておりました。どうぞ、中で女王様がお待ちしております」

 

 「えっ、あっ、はい……」

 

 門が開き、真緒達が通ろうとする中、シレーヌが前を泳がず止まっている事に気が付く。

 

 「残念だけど、一般人である私は入れないの」

 

 「そうなんですか……シレーヌさん。案内、ありがとうございました」

 

 「ちょっとちょっと、私の案内はまだ終わってないわよ」

 

 「え?」

 

 「まだ、町を全部紹介した訳じゃないでしょ。女王様とのお話が終わったら、また案内してあげるわ」

 

 「……はい!! ありがとうございます!!」

 

 シレーヌの嬉しい申し出に、真緒達は笑みを浮かべる。案内を楽しみにしつつ、意気揚々と城の中へと入るのであった。

 

 「うわぁ……外見も凄かったけど、中はもっと凄い……」

 

 床や壁、天井一面に揺らめく水模様が幻想的で美しく、真っ白な背景を綺麗な水色に染め上げている。真緒達が感動に浸っていると、燕尾服を着た人魚がやって来る。

 

 「皆様、お待たせ致しました。これより、女王様のいる玉座の間までご案内致します」

 

 「お、お願いします」

 

 言われるがまま、後を付いて行く真緒達。やがて、門にも負けない位大きな両扉の前まで辿り着く。燕尾服を着た人魚が扉をノックすると片方の扉が少し開き、中から門の人魚と同じ格好をした人魚が姿を見せ、真緒達の姿を確認すると再び扉を締める。そして次の瞬間、両扉が同時にゆっくりと大きく開き始める。

 

 「「女王様、客人が参られました!!」」

 

 両扉を開けた二人の人魚の言葉を聞きながら、真緒達は燕尾服を着た人魚の後に続いて玉座の間へと入る。

 

 そこはまた更に神秘的な空間となっており、大理石の柱が縦に何本も並び、色の付いたステンドグラスの様な窓ガラスが、左右の壁それぞれに幾つか埋め込まれていた。

 

 その一番奥には、二枚貝が口を開けた形をした玉座が置かれており、周りには護衛とおぼしき人魚が数人いた。そして、その玉座には一人の人魚が座っていた。長い水色の髪の毛は、海の中だというのに全く溶け込まないその美しさは、優雅さと可憐さを物語り、笑みを浮かべる顔はまるで子供の様な可愛らしい幼さを見せるが、凛とした佇まいからは大人の様な妖艶な雰囲気を感じさせる。

 

 真緒達は、そんな不思議な魅力に思わず目が奪われ、離せなくなってしまう。そうしていると、玉座に座る人魚が口を開く。

 

 「ようこそ、おいで下さいました。私がこの城の主“ラドンナ”と申します」




遂に人魚の女王“ラドンナ”登場!!
果たして彼女の目的とはいったい!?
今回はここまで、次回もお楽しみに!!
面白ければ評価や感想、お気に入りもよろしくお願いします。
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