心配していた事が現実になった。どうやらポセイダル軍もまた、ゼントラーディ領域かメルトランディ領域、あるいはガルファ領域に引っ掛かって太陽系への到達が遅れていた様なのだが……。ついにその先遣隊が、地球圏に姿を現したのだ。
『ギャブレー! ポセイダルに力を貸すなんて! お前なら、コアムの地方豪族だったお前ならわかるはずだろうに! ポセイダルは』
『言うな、ダバ・マイロード! わたしは正規軍で、愛に出会った! 愛のためならば、わたしは自分をも曲げる事を厭わぬ!』
『ギャブレー!』
ダバ君の
やはり押されている。『スタイシュッツ』の他の面々は、ギャブレー君が率いて来たバルブド、グライア、アローンと言ったB級
『くっそ、こいつら雑魚のくせに数だけは!』
『シロウ、油断するでない!
『すまねえ師匠! くそこの野郎! 落ちやがれ、リープ・スラッシャー!!』
どうやらシロウたちは問題無さそうだ。あちらは……。
『イワンさん、あぶない! ロボ、ミサイル連射だ!』
ガオオオォォォン!!
『すまない、草間大作うううぅぅぅ! ビームだ、ウラエヌウウゥゥス!!』
あちらも大丈夫そうだ。どうやら戦線の大半はどうにか有利に事が進んでいる模様。ならば、『わたし』は……。
『なんのこれしき! わたしは愛のために生きる! あの気高くも美しきお方、クワサン殿のため、クワサン・オリビー殿のため! 落ちろ、ダバ・マイロード!』
『何!? クワサンだと!』
まずい。ダバ君の集中が途切れた。ここでクワサン・オリビーの名前を出すか。だから敵との不用意な交信は、軍紀とか軍法で駄目だって言うんだ。アシュラ・テンプルのバスター・ランチャー砲口に、光が集まる。『わたし』は全速力で割って入った。腹部装甲を反転させ、反射鏡にする。
『落ちろおおおぉぉぉ! なに!?』
強圧的な光線がアシュラ・テンプルから迸り、それは『わたし』の腹部反射鏡で反射されてアシュラ・テンプルとその周囲のB級ヘビーメタル群を巻き込んで行く。
『うおおおぉぉぉ!?』
『た、助かりましたワンセブン』
【ああ。だが少しこちらもダメージを負った。バスター・ランチャーのビームは、その周辺に余波を撒き散らすタイプの様だ。腹部反射鏡部分はダメージは無いが、その周辺部、上半身下半身はダメージがけっこう入った。バスター・ランチャーのビームは、うかつに反射しない方がいいな】
反射角度が微妙だったのか、それともギャブレー君の回避機動が凄かったのかは知らないが、かろうじて直撃は避けたアシュラ・テンプルが叫ぶ。なおしっかり周辺余波によるダメージは入っている模様。
『く、已むを得まい! 時間は充分稼いだ、撤退だ! 撤退しろ!』
『待てギャブレー! クワサンが、クワサンがポセイダル軍に居るのか!?』
必死に叫ぶダバ君だったが、逃走するギャブレー君には声は届かない。ギャブレー君は全速力で去って行った。
*
後から判った事だったが、このとき外宇宙からやって来たポセイダル正規軍は、地球圏外縁をかすめる形で通過し、火星圏を橋頭保とすべく目指していたところだった。そしてギャブレー率いる先遣隊は、正規軍本隊とポセイダル軍の根拠地兼人工都市であるスヴェートが地球圏外縁を通過する短時間の間、地球連邦軍の目を引き付けるための陽動攻撃を行っていたのだ。
そして改造されて航宙能力を持たされたスヴェートが火星の大地に落着し、そこを中心にポセイダル軍の再編が完了すると同時に、ポセイダル軍の地球圏への攻撃は始まった。まず狙われたのは、各スペースコロニーである。それとほぼ同時に、ガルファ勢力を撃退した事で空白地帯が多く出来た月面にも、ポセイダル軍は攻撃を仕掛けて来た。
我々『スタイシュッツ』はそのポセイダル軍の攻勢に対処し、モグラ叩きの様な感じで次から次へとあちらこちらの戦線へ派遣されていた。
『くそ、ポセイダル軍はどれだけの戦力を』
『あんたがダバ・マイロードかい! あんたみたいな男は、気に食わないねえ!』
『貴様は! 13人衆のリィリィ・ハッシーか!』
1機のバッシュに
それと、リィリィ・ハッシーだと? なんでバッシュに乗っている。彼女の乗騎はグルーンだった気がするんだが。……ああ、いや。
だがバッシュはどんな戦場にもオールマイティで対応できる万能型だ。しかも特に格闘戦に有利な様に武装配置されている。過去のオリジナル
そして黒色のアシュラ・テンプルが叫ぶ。バーン・ガニア・キラーズだろう、通信映像を見る限りでは。だが『わたし』が名前を知るはずも本来無いので、名前を口走らない様に注意しないとな。
『リィリィ殿! そんな奴に構っている暇は無い! まずは奴らの母艦を撃沈しさえすれば』
『黙りなよバーン! バーン・ガニア・キラーズ! あたしゃね、あたしの思った様にやる! 男なんぞに上から目線で言われてたまるもんかい!』
ありがとう、リィリィ・ハッシー。おかげでうっかり口を滑らせて、バーン・ガニア・キラーズの名前を口走っても、言い訳が立つ。
……お礼に、この一撃を喰らえ! 『わたし』はダバ君とリィリィとの戦いに強引に割り込んで、飛び膝蹴りを見舞った。一撃で胴体を
『ぐあっ! な、なにしやがるんだい、返しな!』
誰が返すものか。『わたし』はそのバスター・ランチャーをダバ君に放り投げると、テキストメッセージ送信。
【ダバ君、その
『わかった、やってみる! エネルギーは完全に底をつくけれど……!』
ダバ君のエルガイムが、3チャンネルのエネルギー接続口全てをバスター・ランチャーに繋ぐ。その砲口に、輝きが灯る。バーン・ガニア・キラーズのアシュラ・テンプルが必死になって飛び込んで来た。だが、させんよ。
『なっ! この化け物め! 邪魔をするな!』
こいつのアシュラ・テンプルは、胸板を展開。電磁誘導で無数の加熱鉄球を打ち出す、リバース・ボマーという兵器を使用するつもりだ。だが、甘いと何度言えば。
バギィ!
『ぐああっ!?』
『わたし』の鉄拳が、いちはやく敵胸板に叩き込まれる。ついでに腕部ミサイルも斉射。リバース・ボマー発射口を潰されたバーン・ガニア・キラーズの黒色アシュラ・テンプルは、胴体がねじ折れて機体が崩壊した。必死にフロッサー・シートで脱出するバーン・ガニア・キラーズ。そのフロッサー・シートを、手近なアローンが拾って逃げていく。
そして『わたし』は、黒色アシュラ・テンプルの残骸からもう1基のバスター・ランチャーを拾い上げる。拾い上げたが、使えるA級
ダバ君の声が聞こえる。
『く、照準調整が不十分だ。この狙いで、いけ、るか!?』
『……ダバ。そのまま右に2.5度、上に1.0度修正して』
『その声は!』
その声は、川村万〇阿! じゃない、この声は確か……。
『こちらも合わせて撃つ。ターゲット、捕捉。カウントダウン開始。5、4、3、2、1、
『いっけえええぇぇぇ!!』
2条のバスター・ランチャーのエネルギーが、サージェ・オーパス級旗艦に炸裂する。その途上にあった無数のB級HM《ヘビー・メタル》や、一部バッシュなどのA級もちょっとだけ飲み込んで、粉砕して行く。リィリィ・ハッシーが無念の叫びを上げた。
『ち、ちくしょう! 撤退だ、撤退するよ!』
波が
そして2発目のバスター・ランチャーを撃ったのは……。
『あれは、ホエール……。アマンダラ・カマンダラの宇宙ヨット? だが艦尾に、俺たちのターナと同様の改造が施されてる。そして……』
ホエールは、TVアニメ版では武器商人(笑)アマンダラ・カマンダラより『彼女』が譲り受けた宇宙ヨットとは名ばかりの巡洋戦艦であるはずだ。だがしかし、その艦体には大規模なバトルダメージが見て取れる。おそらくは、この艦もペンタゴナ・ワールドからこちらの銀河へ航行中に、どこかゼントラーディ領域かメルトランディ領域、あるいはガルファ領域へ到達してしまい、大打撃を被ったのだろうな。
そして艦首の上甲板に、1機の
その『彼女』の名は……。
『レッシィ……。ガウ・ハ・レッシィ』
『え゛! レッシィが!?』
『ちょ、なんであの女が!』
B級
ホエールの甲板と、宇宙空間のまっただ中で、2体の
*
今、ホエールはほとんど航行不能の状態であるため、乗員や機材、特に
そして今、ヌーベル・ディザードから降りたレッシィ女史と、ダバ・マイロード君一行が
アム嬢がいきなり怒声を上げる。
「レッシィ! あんた今更どの面下げて……」
「やめろ!」
「だ、ダバ!?」
そのアム嬢を鋭い口調で制したのは、ダバ君だ。キャオ君もアム嬢も、目を丸くしている。だがアム嬢は不満げな口調で言い募る。
「だ、だってダバ! こいつはあのとき、逃げ出したのよ!? あたしたちを見捨てて」
「逃げ出したんじゃ、ない! あれは俺たちが、俺たちの情けなさが! レッシィに見限られたんだ! 見捨てられてしかるべき真似をしたのは、俺たちの方だ!」
「「だ、だば……」」
ふっと息を吐くと、レッシィ女史は目を閉じ、そして開く。彼女は語り始めた。
「あの時、わたしが去った意味は、あったみたいね」
「ああ、かなり痛い思いをしたよ。改めて、あの時の君の決断に感謝を、そして謝罪を。……申し訳なかった。ありがとう」
「それが、わかってもらえただけで、いいわ」
不満そうなアム嬢と、身の置き場が無さそうなキャオ君をよそに、2人は笑い合う。そして話の内容は、これまでレッシィ女史がどの様な行動をしていたかに移った。
「そうか……。君はアマンダラの協力を取り付けて、内々に反乱軍に背後からの支援を」
「そう。でも、気を付けてダバ。アマンダラは、あちらの銀河系に居る間にそのバスター・ランチャーと、そして多数の
「アマンダラは、その直後あたりに反乱軍を見捨てた、か?」
「その可能性が高いわ。このホエールに銀河間の航宙システムを無理に取り付けたのも、別口で伝手を辿ってどうにかしたんだから」
その時、キャオが素っ頓狂な声を上げる。
「うっわ!? このスクラップ、宝の山だぜ! って言うかこの
「な、何キャオ、そんなに凄いの」
「あったり前だアム!これを充分に活かせる胴体さえありゃ、そこいらのA級が目じゃねえ
「それじゃ駄目じゃん」
「レッシィ! レッシィ! これ、くれるのか!?」
キャオ君に
「え、ええ。わたしが持っていても意味無いから」
「そっか! やった! ……な、なあレッシィ。ホエール、駄目っぽいんだろ? ならよ……」
「キャオ……」
「ダバ、だってそうだろ? なあレッシィ。ほんとは俺もアムも、分ってるんだ。ダバに諭されたから、よ。あんときゃ、俺たちダラけてた。ゆるみ過ぎてた。ほんっとーに、すまなかった! ……頼む。また俺たちといっしょに、戦ってくれねえか」
レッシィ女史は目を丸くする。しかし笑みを浮かべて、彼女は言った。
「こちらこそ。また改めて、よろしくね。ダバ、キャオ、そして……アム」
「……ふ、フン! わかったわよ! ごーめーんーなーさーい! ちくしょう!」
アム嬢の素直じゃ無さすぎる謝罪に、一斉に笑いが零れた。……しかしアマンダラ・カマンダラ、反乱軍を見捨てたと言うか、つまりはこの太陽系への侵略に全身全霊を注ぐ気になったため、反乱軍『ごっこ』で遊ぶのを辞めただけ、なのか?
だがポセイダル軍内部に何の動揺も無さそうだと言う事は、仮に彼がTV版の通りに真のポセイダルだとして、だ。騙した女であるミアン・クゥ・ハウ・アッシャーを影武者とした、二重政治は続けて行くつもりではあるんだろうな。
*
その後、地球圏の天体望遠鏡ネットワークによる監視に、何がしかの人工天体であろう物体が捉えられた。現在小惑星帯のド真ん中に鎮座しているその人工天体のコンピューター処理された望遠写真は、我々の手元にも送られて来ている。
ダバ君が、深刻そうな表情で言った。
「これは……。部分部分がはっきり映ってはいないけれど……。おそらく、サート・スターです。ポセイダルからこの人工天体の自治権を与えられている女性、フル・フラットが支配しています。
ポセイダルの一派かとも思われていますが、しかし不審な行動をしていたり……。読めない相手、です。ですがブライト准将」
『そうだな。実際のところ、こうして太陽系へ来ている。となればポセイダル軍への協力も最低限はするであろう事は間違い無さそうだ。全面協力になるかは、不明だが』
彼女がポセイダルから離反するキーが、いったい何なのかはTVシリーズを見た限りでは正直分からない。いやそれどころか、小説版とかでは彼女が黒幕だったという話すらもある。小説版にはそこまで詳しく無いが、彼女に対する扱いは、慎重にも慎重を喫する必要があるな。
*
ゼダンの門に帰って来たら、とんでもない報告が待っていた。
「ええっ!? アルテア伯父さんの入院してる個室の、サイドボードの引き出しから、伯父さんのギアコマンダーが盗まれた!?」
「そうなのよ北斗君。兄さ……んっ、んっんん、アルテアのギアコマンダーが盗まれたんだけど、電子的に病室のドアやらに潜入した形跡が残ってるの」
「北斗、お前の伯父さん結局どうなんだ」
「銀河。洗脳は解けたらしいけど、脳へのダメージが深刻らしくて。今、培養組織の移植とか色々」
わー、これはたいへんだー。いや、実は大変は大変なんだが。大変の意味合いが違う。
『と言う事は、だ。ついにガルファの二の矢がやって来た、という事でもある。慎重に行かねばならんな。それと、そこまで不安がらなくても良いよ。盗まれたの、イミテーションだから。フェイク。偽物。パチモンだよ』
「「「「「「え゛! ワンセブン」」」」」」
『あんなセキュリティ低いところに、あんな貴重品でヤバい代物を置いておくものかね。今アルテア氏のギアコマンダーは、徹底解析中だ。『わたし』の体内工場でね。
それと盗まれたイミテーションには、発信機を仕込んである。敵の根拠地が、これで判明するはずだ』
「「「「「「さ、さすがワンセブン!」」」」」」
さて、北斗君が誘拐される危険を減らすため、色々考えてはいるが、その一手。フェイクのギアコマンダーに発信機を仕込んで、先手を打って攻撃する。これが、どうなるか。ただ、ガルファ皇帝の分身であるゼロ……。面倒なんだよなあ。不死身だし。
レッシィ登場です。で、本来アマンダラ持って来るはずだったスクラップの山、彼女が持ってきました。ブラッド・テンプルの頭も。あと、この時点でヌーベル・ディザードはバスター・ランチャー装備です。エルガイムも、たぶんこの後、バスター・ランチャー装備になってキャオが調整に必死になります。あと予備にもう1本、バスター・ランチャーありますが。
そしていよいよ、裏でゼロ暗躍開始です。フェイクのイミテーションのギアコマンダー、盗まれました。でも表面的にはこの偽物、あんまり変わりありません。操縦資格者が持つと、ちゃんと光ります。でもGEAR(機体のこと。組織名じゃない方です)とのシンクロは出来ませんし、操縦もデータウェポンのセーブもできません。
でもって。感想欄で量産型GEARとか言う話が出て、それについては否定いたしました。乗り手の確保が難しいという事もありますし。量産の意味が無い、と。ですが……。今は敵側に居るスバル、彼をどうにか味方に引き入れる事ができるなら、量産型じゃなしにワンオフの複製機って言うか、ワンセブン謹製のあたらしい特注のGEARが出る可能性はありますのですわ。
ま、スバルの説得激烈に難しいのはそうなんですけどね!(核爆)
-追記-
ああ、いけない。本編ではブラッドテンプル3番機の頭発掘したのはキャオ自身でしたっけ。いろんなエルガイム参加するスパロボだと、ブラッドテンプルの頭持って来るのは、アマンダラの持ってきたスクラップの中だったんで、ちょっと頭の中混信してましたわ。