ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
メニュー46 フレンチトースト
やっとファミリアが決まったのは凄く良い事だ。だけどヘスティアファミリアには数多くの問題があった。まずは団員が僕しかいないので自動的に僕が団長になるという事。次にフェルズさんの温情でギルドに納めるヴァリスは1年間免除して貰ったけど1年後までにはファミリアの階級に応じたヴァリスを納める必要がある。そして今まで神様が1人暮らしをしていたので生活に必要な物が1つしかない事、そしてそれに伴って食べる物が殆どないという事だった。
(ちょっと恥ずかしかったし、ベッドは早めに欲しいなー)
ベッドが1つしかないので神様と一緒のベッドで寝たけど、アルフィア母さんやお母さんと寝ることもあったのでそこまで……いや、正直に言えばめちゃくちゃ恥ずかしかったのでベッドとまではいかないけど、ソファーくらいは欲しいなと思いながらダイダロス通りまで走る。
「おはようございます! ペニア様! 少しお時間良いですか?」
「ベルかい? なんだ何か問題でもあったのかい? 昨日帰ってこなかった事含めて話をしようか?」
「あはは……すみません、ギルドの用事で大分遅くなってしまって、神様の所で泊まってたんです」
「神様……そうかい、主神を見つけたんだね? ベル。おめでとう」
「はい! やっと僕の神様を見つけることが出来ました」
部屋に招き入れてくれるペニア様にありがとうございますと返事をし、ペニア様の部屋の中でやっと所属するファミリアと主神を見つけることが出来ましたと報告する。
「ヘスティアを主神に選んだのか……良い目をしてるよベル」
「そうですか? ペニア様」
「そうともさ、あたしの同郷の神だが、助平爺とヘラでさえ一目置く女神だ。まぁ少々ずぼらなのが玉に瑕だけどね」
お爺ちゃんとお婆ちゃんが一目置いているというのは少し驚いたけど、僕がお爺ちゃんとお婆ちゃんに似ていると思ったのはやはり間違いでは無かったようだ。
「それでこんなに朝早く尋ねて来たのは……食べ物かい?」
「はい。食べる物もヴァリスも何もなくて、少し分けてもらっても良いですか?」
「カワサキに言われてるから好きに持って行きな。ダンジョンに入る時は危ないと思ったら助っ人を頼みに来るんだよ?」
「は、はい! ありがとうございます!」
食べ物だけではなく、助っ人も必要ならいつでも頼みに来て良いと言ってくれたペニア様にお礼を言い。分けてもらった食べ物を手にホームである街外れの教会へと駆け足で戻る。
「よーし、早速やるぞ」
神様が起きる前に朝ご飯を作ってしまおうと早速調理に取り掛かる。ペニア様の所で貸してもらったナイフでじゃがいも、玉葱、人参の皮を剥き、食べやすい大きさに切る。そして剥いた皮も捨てるなんて勿体無い事はせずに水を張った鍋の中に入れて火に掛ける。
「牛乳、牛乳っと」
木のボウルに牛乳を入れ、卵を1つ割り入れて、砂糖を大さじ1入れてフォークで良く掻き混ぜて卵液を作る……だけどフォークなので中々掻き混ぜるのに苦戦してしまった。
「泡たて器欲しいなあ……あと鍋も……頑張らないと」
必要な物は沢山ある。今はヴァリスはないけど、少しずつ頑張ってそろえて行こう。そんな事を考えながら食パンを半分に切って卵液の中に浸す。
「うん。良い感じ」
野菜の皮を煮た鍋に塩を1つ摘み入れて軽く混ぜて味を調えてから釜戸の上からどかしフライパンを手にする。
「牛乳とバターと小麦粉っと」
しっかり作っている時間はないので牛乳、バター、小麦粉を全部フライパンの中に入れて焦げ付かないように掻き混ぜながらトロミがつくまで加熱して即席ホワイトソースを作る。
「ほっと」
新しいフライパンにバターを落として、分けてもらった燻製肉から炒め燻製肉から脂が出てきたら、食べやすい大きさに切っておいた野菜を加え、全体にバターと燻製肉から出た脂が馴染むまで炒め、次にさっき野菜の皮を煮て作った出汁を加えて煮込む。
「♪~♪~♪」
やっぱりこうやって誰かのために作る料理っていうのは良いなと思わず鼻歌が零れる。
「良し、これくらいかな」
野菜に完全に火が通ったら作っておいた即席ホワイトソースをフライパンの中に入れ、塩胡椒で味を調える。
「ん、良い感じ良い感じ」
野菜の旨味と燻製肉の塩味のおかげでしっかり味がついているシチューの出来に1人満足して蓋をする。
「やっぱりもう1個フライパン欲しいなー」
フライパン2個だと作りたい料理が間に合わない。やっぱり3個は欲しいかなと思いながらホワイトソースを作ったフライパンを手早く洗い、火に掛けて水気を飛ばし、バターを溶かしておく。
「良し、こっちも良い具合っと」
シチューを作っている間に乳液が良く染み込んだ食パンをバターを溶かしているフライパンの中に入れ、焼き始めると甘い良い香りがしてくる。
「どれどれ……良し、OK」
焼き色がついているのを確認したらひっくり返し、少しだけバターを加えてもう片面もしっかりと焼き色がつくまで焼き上げる。
「んーこんなもんかな」
野菜の出汁で作ったクリームシチューとフレンチトースト。もし出来たら軽いサラダとか軽いデザートも欲しいけど、昨日はファミリアの発足の書類作りで疲れたので今日はこれくらいで神様に我慢して貰おう。
「神様ーッ!。朝ごはん出来ましたよー起きてください」
寝室の扉の方に向かって声を掛けながら僕は紅茶の準備を始め、神様が寝室から出てくるのを待つのでした……。
深いまどろみからうっすらと意識が浮上していくのを感じる。そしてそれと同時に喜びが僕の胸の中に込み上げてきた。親友のヘファイストスの所を追い出されてから苦労したがやっと僕にも眷属が出来たのだ。その喜びを噛み締めるように腕を伸ばし……僕の腕は空を切った。
「え!? べ、ベル君?」
寝る所がないので2人で眠ったから隣にベル君がいるはずなのに、ベル君がいない……。
「あ……あはは……だよね」
僕のような駄目な女神の所にいて良いような子じゃなかった。きっと一晩立って我に帰って出て行ってしまったのだと思い目尻に浮かぶ涙を腕で拭っていると寝室の外から声が聞こえてきた。
「神様ーッ!。朝ごはん出来ましたよー起きてください」
その声にバッとベッドから飛び起き、涙を拭って寝室を出るとエプロン姿のベル君がお皿を机の上に並べていた。
「おはようございます神様。ご飯出来ますから顔を洗ってきてくださいね」
「う、うん! ちょっと待ってて!」
慌てて顔を洗いに行きリビングに戻ってくるとベル君は紅茶をカップに注いでいた。
「これどうしたんだい? もしもベル君のお金を「大丈夫ですよ神様。僕の先生がペニア様に声を掛けてくれていたので食料を分けてもらったんです。ファミリアが安定したらお返しすれば良いので心配無用です」
にこにこと笑いながら言うベル君の言葉に安堵しベル君と向かい合って座る。
「これはパンかな?」
「フレンチトーストっていうんです。甘くて美味しいですよ」
「へーそれは楽しみ「神様。いただきますは?」え? あ……いただきます」
「はい、召し上がれ」
いただきますと言いわすれたことを指摘するベル君の視線がちょっと冷たかった。慌てていただきますと言ってから再びフレンチトーストに手を取り小さく齧る。
「おいしっ!? なにこれッ!? 甘くて美味しいよベル君!」
1口目はカリッとした食感、そして噛み締めると口の中にジュワっと甘さが溢れてくる。だが甘さだけではなくバターの塩辛さもあって甘しょっぱくて美味しいと思わず声を上げる。
「牛乳と卵と砂糖で作った卵液に漬けているんです。本当は一晩つけたほうがしっとりしていて美味しいんですけどね」
「いやいや、これでも十分美味しいよ! いやあ朝からご馳走だね!」
僕1人だと硬いパンにバターを塗って終わりだ。だからフレンチトーストとシチューなんて朝から食べるには贅沢すぎる組み合わせだ。
「朝はしっかり食べないと元気が出ませんよ、でも大丈夫です。これからはちゃんと僕が朝ご飯を作りますから」
「良いのかい?」
「はい! 村ではお爺ちゃんとお婆ちゃんと叔父さんや叔母さんの分も作っていたんで全然平気です」
笑顔のベル君の言葉に嘘はない。多分ベル君は料理が好きなんだろうなと思いながらシチューを口にして更なる驚きが僕を襲った。
「え、美味しい。僕の知ってるシチューと全然違うんだけどッ!?」
まず牛乳臭くない、次にふんわりとした優しい甘さが口の中に広がるし、それに口の中がさっぱりとしている。もっとシチューは脂っぽいイメージだったのでこの後味には驚かされた。
「野菜屑で出汁を取ってから作ってるんです。野菜の甘さとコクが出ていて美味しいでしょう?」
「うん。これは良いね! 今日はフレンチトーストだけど、固いパンにつけても美味しそうだ」
野菜も良く煮られていて美味しいし、少量の燻製肉の歯応えと塩辛さが食欲を刺激してくる。
「そうですね、固いパンを小さく千切ってシチューを掛けてチーズを乗せて焼くと美味しいですね」
なんでもないように次々と料理の事を話すベル君。その知識に驚きながら空になったお皿をベル君に差し出す。
「おかわり……貰っても良いかな?」
「はい! 勿論です、いっぱい食べてくださいね」
にこにこと嬉しそうに僕のお皿を受け取り、シチューを注いでくれるベル君。
(本当に良い子だ。なんか申し訳ない気分になってくるなあ……)
彼ならもっといいファミリアがあったんじゃないかという考えが脳裏を過ぎる。
(いや、頑張ろう。大丈夫僕にだって出来るさ)
今は零細ファミリアだけど、ここから頑張っていけばなんとでもなると気合を入れる。
「はい、神様どうぞ」
「ありがとう!」
1人きりの冷たい教会に慣れていたからこそ、こうやってご飯を作ってもらって2人でいるのはとても嬉しいし、幸せだ。ベル君に差し出されたシチューを受け取りながら僕は心からそう思った。
「ベル君。僕はじゃが丸くんの屋台のアルバイトに行くから夜には戻るね?」
「じゃあ僕はダンジョンに行って来ますからまた夜に」
僕はアルバイト、ベル君はダンジョンに行く事になり、ベル君より先に出かける準備を終えて教会を出ようとするとベル君に呼び止められた。
「神様。お弁当作ったので持っていってくださいね」
「あ、ありがとうベル君」
「はい! それじゃあ神様行ってらっしゃい」
「い、行って来ます」
見送られてアルバイトに向かうが、鞄にはお弁当が入っているし、ベル君に見送ってもらえた。1人じゃないのは良いなと心からそう思った……。
「よーし、やるぞッ!」
なんか今日はやる気が溢れてくる。今日はいつもより上手く仕事が出来そうだと僕は気合を入れてアルバイト先の屋台へと駆けて行くのだった……。
恩恵を刻んで貰ったので初ダンジョンアタックに挑戦しましたが、恩恵というのを僕は正直大分甘く見ていたみたいというのを痛感した。
「ゴガア「シッ!!」ギッ!?」
襲ってきたコボルトをジャブで動きを止めて、回し蹴りを頭に叩き込んでダンジョンの壁に叩きつける。それでどうやら倒せたようで足元に転がる魔石を拾って皮袋に納める。
「んー感覚が狂うなあ……」
武器としてはナイフが2本と折りたたみの金属性の棒を持ってきていたけど、ナイフは力加減を間違えて1本を行き成り折ってしまった。それに今のジャブだって僕のイメージよりもずっと早かった。
「エイナさんにも言われたけど今日は無理せずに1階を見て回ろう」
棒を背中に背負い、ナイフも腰の鞘に戻して僕はジョギングのつもりで走り出した。
「なあ、今の見たか? あのルーキー素手でコボルト倒してたぞ?」
「見た……え、あんな子いた?」
「確かギルドに入り浸ってたと思う。確か資料庫の近くで見た気がする」
恩恵があるとはいえ素手でモンスターと戦う冒険者はいない。ベルは壁を利用したがそれでも素手でコボルトを撃破した。それを見ていた先輩冒険者達はとんでもないルーキーが来たと唖然としていた。
「グルルッ!」
「ふっ!」
「ギッ!?」
襲ってきたゴブリンの振るった爪を身体を傾けることで回避し、力強く踏み込みながら左の掌底を打ち込み壁にそのまま叩きつける。
「んーやっぱり感覚が狂うなあ」
もっと近くで避けれたと思うけど、自分で思うよりも大分距離があった。魔石を拾ってから軽く拳を繰り出すが……。
「うわ……遅い」
恩恵で上がった身体能力のせいか力加減が難しい。結構時間を掛けて馴染ませないと身体に振り回されそう。
「とっと」
天井から伸びて来た舌を後に飛び退いてかわし拾った石を指で弾き、天井にぶら下がっているダンジョンリザードを撃ち落す。
「ここっ!」
地面にダンジョンリザードが落ちる前に前蹴りで蹴り飛ばすと遠くからコツンという音が聞こえて来て、魔石になったのだと分かる。
「鉄入りの靴は大分良いね。重いから蹴りの感じがしっくり来るや」
カワサキさんに何度も教えてもらったけど、手札は多いほうが良いけど、まずは自分の身体が動かせないと何も出来ない。モンスターと戦いながら身体の感覚を……
「あぶっ!?」
暗がりから伸びて来た鋭い爪を避け、真正面を睨みつけると暗がりからゆらりと人影に見えるモンスターが出てきた。
「ウォーシャドウ……? お父さんの手帳には1階層に出ると書いてなかったけど……っと!」
ゆらりとした動きから振るわれる鋭い爪をサイドステップでかわし、軽くステップを踏みながらウォーシャドウを観察する。
(手帳に記されたとおりだけど……なんかおかしいな)
執拗に攻撃を繰り返してくる性質らしいけど、そういう素振りはない。ゆらゆらと揺れながら向こうもこちらを観察しているように見える。それに6階層で出現するウォーシャドウは明らかに異常だ。
(テイムされてるのかな? いや、どっちにせよ、嫌な予感がする。今日は撤退だね)
腰の鞘に刺しているナイフを腕を振り上げると同時に投擲する。
「■■――ッ!?!?」
ナイフが突き刺さり耳障りな悲鳴を上げるウォーシャドウを正面に見据え、地面を思いっきり踏みしめる。
「シッ!!!」
気合と共に一気に間合いを詰めウォーシャドウに突き刺さっているナイフの柄を思いっきり殴りつける。
「――ッ!!」
声なき悲鳴と共に崩れ落ちるウォーシャドウの肉体。塵になっていくその身体からドロップした指刃と魔石……そして。
(首輪? とりあえずこれも回収ッ!)
ジャブで首輪を掴みポケットの捻じ込みと同時にウエストポーチに手を突っ込み取り出した煙玉を地面に叩きつける。
(やっぱりッ! これやばいッ!)
煙玉を突っ切って飛んできた氷の礫と弓矢を避けてそのまま全力で走ってダンジョンの外へと走り出した。背後から叩きつけられてくる殺気と敵意――間違いなく今のは僕を……いや、初心者の冒険者を殺そうとした何者かの攻撃だった。
「はぁはぁ……え、エイナさん。ちょっとお時間よろしいですか?」
「どうしたのベル君。そんなに慌てて」
「ちょっとここでは、あのギルド長にも報告したい事があって」
僕の真剣な表情を見てエイナさんはすぐにギルド長の部屋に僕を案内してくれた。
「どうした? ベル。何かあったのか?」
「あの1階層でウォーシャドウに襲われて、これ証拠のドロップアイテムとウォーシャドウが身につけていた首輪です」
机の上においた物を見てフェルズさんとエイナさんが顔色を変えた。
「良く無事だったな、ベル」
「ザルド叔父さんと組手してなかったら危なかったと思います」
ザルド叔父さんやマキシム叔父さんと組手をしていたので、あの2人より弱いと思うことで思い切って行動出来たけど、もしも経験がなかったらあのまま死んでいたと思う。
「エイナ。特別手当を出してくれ、それとギルドナイトの招集もだ」
「分りました! すぐに手筈を、ベル君は医務室に一応行っておいて」
エイナさんの言葉に頷きギルド長の部屋を出て医務室へ向かう。恨まれる様な事はしてないから多分僕が狙われたのは偶然だと思う。先輩冒険者も付き添いでおらず、1人で行動していたから狩りやすいと思われたのかもしれない。だけど1回逃げるのに成功したから次はない、確実に仕留めに来るだろうから慎重になる必要がある。
(……とにかく明日からはもうちょっと気をつけよう)
エイナさんから受け取った特別手当と魔石、そして指刃の代金をサイフに入れて市場へと向かいながらダンジョンに潜るのは慎重になった方が良いなと考えながら夕食の食材と欲しいと思っていた調理器具を買い足す。1番欲しかったベッドは買えなかったけど、これで料理はもっと効率よく作れるようになると思う。
「あ……すみません、この髪留めください」
「贈り物かい?」
「はい」
「喜ばれると良いね、1080ヴァリスだよ」
「ありがとうございます! それじゃ!」
「またおいで」
ヴァリスを渡し、露天商から買った鐘のついた髪留めを鞄へしまい、神様喜んでくれると良いなと思いながら教会に向かって走り出した。
メニュー47 カルボナーラ へ続く
というわけでこの世の春を楽しんでるヘスティア様ですね。ベル君も程よく甘やかしている模様、強いベル君なのでファーストアタックでウォーシャドウとエンカしてもらいましたが、これは当然原作の敵側ファミリアの謀略です。もう分かっていると思いますがお口チャックでお願いしますね? それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは
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間違っている
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間違っていない