悪の頂点の筈なのに何故かうちの喫茶店で魔法少女達が居座っている件   作:鉄血

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第四十話

「まさか吐くとはな・・・」

 

スラム街の九番区。その中心部にある噴水で慎一郎と白音達は休憩を取っていた。

 

「大丈夫?みゃーこ・・・」

 

「・・・うん、大丈夫」

 

白音の心配に都はそう返事を返し、そのまま慎一郎に目を向けて謝った。

 

「ごめんなさい、慎一郎さん。私・・・」

 

「あー、いや、あの婆さん相手については謝らんでいい。あの婆さんは無理矢理連れて行こうとするからこの件は気にしなくていい」

 

この件は俺も予想外だったしな。という慎一郎は周りを見渡す。

久しぶりに来てみたが、物品は高いし、治安維持という名目の魔法少女も何人か巡回している。

 

「・・・・・」

 

「慎一郎さん?」

 

眉を顰める慎一郎に白音は首を傾げた。

 

「なあ、柊。《アルケミスト》って一体どういう奴か知っているか?」

 

「・・・《アルケミスト》について、ですか」

 

白音がその単語を聞き、少し不機嫌そうな顔をする。

 

(その表情は止めろよ・・・。モノを思い出すから)

 

嫉妬なのか《アルケミスト》と仲が悪いのか・・・どっちかわからないその不機嫌そうな表情に、慎一郎は顔を引き攣らせた。

そんな慎一郎の顔が見えていない白音は苦々しげに答える。

 

「・・・《アルケミスト》は一言で言えば“実験狂”です」

 

「”実験狂“?」

 

慎一郎のその問いに白音は頷いた。

 

「国の外に住まう魔獣のこと・・・慎一郎さんは知っていますよね?」

 

「ああ」

 

頷く慎一郎に白音は言う。

 

「《アルケミスト》はその魔獣を捕獲して実験をしているんです。ただ、どんな実験をしているのかは・・・」

 

「なるほどな。ありがとう」

 

そう言って首を振る白音に、慎一郎は白音に礼を言って腕を組む。

 

「しっかし魔獣を使っての実験か。そんな話、俺は知らなかったな・・・ラインハルトなら何か知っているか?」 

 

情報についてはアイツが全て管理している。

なので俺が知らないことも知っていることだろう。ただまあ、アイツもアイツで隠し事をするからある程度しか話さないだろうが。

唸る慎一郎に対し、都が「あっ」と声を上げる。

 

「どうした?」

 

「どうしたの?みゃーこ」

 

そんな都に二人は顔を上げると、都は指を指した。

 

「あの人・・・確か・・・」

 

都が指を指した方向。そこには四人の少女が歩いていた。

そしてその内の一人。

薄い紫色の髪の少女を見て、白音は顔を顰めた。

 

「・・・《アルケミスト》」

 

「アイツが《アルケミスト》か」

 

初見で見た慎一郎の感想は気怠げな少女。

薄い紫色の髪を肩まで伸ばし、眼鏡の奥にあるまぶたを重そうに開けて、紅い目を爛々と光らせていた。

他の少女達も生真面目そうな少女に、文学そうな少女、そして気が強そうな少女までとにかく性格が合わなさそうな四人だった。

 

「なんというか・・・性格が合わなさそうな四人だな」

 

「まあ、私達〈シリウス〉みたいに皆が皆、仲が良いチームで組むことなんて滅多にないから・・・」

 

「ボクも仕事で《アルケミスト》と組んだ時、戦闘スタイルが合わなくて結局・・・ってパターンもありますから」

 

そう言って、彼女等の後ろ姿を見送る。

そして彼女達は噴水エリアの先にある階段の裏手に向かっていった。

 

「階段の裏手に回ったみたいですね」

 

「裏手?てことは・・・」

 

慎一郎達は彼女等の後を追うように階段の裏手に向かうと、そこには重厚な金属製のゲートがあった。

 

「これ、普通の扉じゃないですよね?」

 

「ああ、地下鉄公社が管理するゲートだ。ここをずっと先に行くと“外”に出れる」

 

「なるほど・・・だから魔獣の討伐依頼は地下鉄公社関連が多いんですね」

 

「そう言うこと」

 

そう答えた慎一郎は白音と都を見る。

 

「俺の目的はあくまであの爺さんに言われた通り、リメンズ・オブ・ラビンスに彼女等を送り込んである程度痛めつけることなんだが、それでもついてくるのか?」

 

「・・・正直、他の魔法少女が痛めつけられるのは私は見たくないです。ですけど、本当に彼女達はあのお爺さんが言っていたように周りに被害を出しているのか確かめたくて・・・」

 

「ボクも一緒です。もしそれが本当なら報告しないと」

 

「本来は俺が組織のボスだってことを報告しないといけないの分かってる?」

 

「国の闇を知った今、頼りにしているのは慎一郎さんだけですから」

 

「矛盾してるよなぁ・・・」

 

「あ、はははは・・・白音ちゃんはいつもそうだから・・・慣れた方が案外楽だったりしますよ?」

 

「み、みゃーこ?」

 

苦笑いするように笑う都を隣に、慎一郎はため息をつく。

 

「まあ、俺も彼女等が被害出してなかったらそのまま退散するつもりだ。もし、被害を出していたら───」

 

「出していたら?」

 

首を傾げる二人に慎一郎は言った。

 

「第百六十六層ボスモンスター”バベル”をぶつけてやるだけだよ」

 

「バベル・・・あの旧約聖書の?」

 

「正確には巨大なゴーレムだ。しかも塔だけじゃない。ステージである都市自体がボスのギミックボスだ。ダンジョンの丁度中間の難所をどう乗り越えるかな?」

 

そう言って、慎一郎は金属製の重い扉を開けた。

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