転生魔術師クリプターくん ワイの担当した異聞帯が絶望すぎる 作:Uとマリーン見守りたかった隊
時間が足りず、相当な不定期亀更新になりそうなので、他のノゲノラ異聞帯の小説が増えることを願って残しておきます。
作者も時間が出来たら少しずつ更新できるように頑張ります。
これは、カルデアが太平洋異聞帯を訪れる前に、実は起きていた出来事。
ここは太平洋異聞帯。そこには、大戦による灰塵によって天が塞がれた空を見上げる虚空より降り立った神の姿があった。
「あれは…なんだ…理解できない…この、私が…ありえない…」
しかし、その姿からはオリュンポスの時と異なり、余裕のようなものとはカケラも感じられない。
最も、それは仕方のない事だ。
オリュンポスで自身を攻撃し、コケにした存在を始末するため、遥々異聞帯を訪れた彼女は挑んでしまったのだ。
『余を前にして神を名告る痴れ者よ、己が分際を弁えよ』
其れは『戦』という概念の顕現。生と死を以って競い争い魂を研磨する円環の理の具現たる世の頂点。この異聞帯において最強と呼ばれる存在。異星の神は、異聞帯の暫定的な王、戦神・アルトシュへと。
きっかけは『異星の神』の慢心だった。
二等級惑星程度まで出力が回復したことで、彼女は自身をコケにしたかつてクリプターだった男に思い知らせるべく、南米のORTと融合する前に件の男、マーレのいる太平洋異聞帯へと向かった。
言峰の忠告も聞かずに向かった彼女は知るよしもなかった。オリュンポスにてマーレが率いていた戦力は太平洋異聞帯全体の戦力のほんの一握りでしかなかったことを。そして、彼女を騙したマーレが異聞帯の現状だけはしっかりと事実を語っていたことを。
そして、太平洋異聞帯へと移動し、丁度近くに浮いていた島のようなまるで一つの世界そのものを秘めたような生物を手始めに重力圏で吸い上げようとした事で悲劇が起きてしまった。
「は!?」
理を超えた力によって、重力圏が一瞬で掻き消されると共に、『異星の神』は天から叩き落とされた。
数多の眷属たる天翼種達が見守る中、異星の神に挑まれた戦神は久方ぶりにゆっくりと玉座から立ち上がる。たったそれだけで…
「質量の増大…違う…エネルギー…いや、存在情報そのものが増大しているのか!?存在しないものが生じるように!?」
ありえない。異星の神の観測結果が異常を示し続ける。この観測結果は、あらゆる熱学力学法則に反している。しかし、戦神はそれが当然であるとのたまうように増大し続ける。天を、地を、世界を、宇宙を包み込む概念が形を帯び現れようとしている。
「ありえない……何が起きている…」
その理を超えた力に……尚も増大し続ける戦神に困惑する異星の神。その思考を読んでか、戦神が言う。
『……最強とは最強故に最強。力の増減など何の意味がある?』
「…………」
そのあまりの理不尽さに言葉も出なかった。
それ即ち、如何なる力を持って挑んだところで、アルトシュは常に『最強』であり続けるのだ。
我を手にした『最強』…『戦』という概念の化身、それが戦神・アルトシュである。この星の…否、遊星を、太陽系に存在した他天体の最強種達の殆どを討ち滅ぼしたことで、最早太陽系における最強種ともいえるアルトシュは、紛れも無く『最強』という意思を持った法則そのものだ。
『気に病むことはない。強者とは余であり、弱者とは余以外の凡てだ』
そう言ってアルトシュは『異星の神』へと自身の腕に収束した光を再び叩きつける。星から直接汲み上げられた『最強』という概念の具現が放ったその渦巻く絶対的な力を前に、異星の神が対抗できるはずがなかった。
「今の霊基では不足でしたな。やはり、南米異聞帯に存在する極限の単独種の力が必要かと」
理を超えて最早観測不能な領域まで力が増大し続け、毎秒単位で事象変動、法則転換さえ起こしてくる化け物を相手に、流石の異星の神であっても対応できず叩き落とされた。
マーレの言っていた言葉に半信半疑だった言峰は、戦神の存在を思い返す事でその言葉が真実であったことを実感する。
あわよくば、他天体の最強種の霊基を手に入れようと考えていたが、あれが相手であれば全て討たれているというのも納得だ。
そして、やはり異星の神には『極限の単独種』の力が必要だと結論づけた言峰とその主である異星の神は、力を得るため南米異聞帯へと転進したのだった。
なお、ボコられた異星の神は涙目だった。
「……異星の存在であるからと期待したが、やはり敵足りえなかったか」
撤退した異星の神の背を見つめ、アルトシュは玉座に再び腰を下ろす。
久しぶりの挑戦する存在に、少しだけやる気を出したアルトシュだったが、結果はこれまでと何も変わらないものだった。
「……やはり、余が永遠の問いを識る刻は来ないのか…」
遥か昔、一度だけ予感はあった。余に相対する『最弱』が現れると。
しかし、その刻は訪れなかった。代わりにやって来たのは他天体からの最強種ども。求めていた『最弱』ではなかった。
『強さとは何か?』『最強とは何か?』未だ答えを識る事のできない永遠の問い。かつての最強、終龍ハーティレイブに尋ねた際、かの龍は最強は『汝敗れたる時汝は最強を識る』と答えた。
だが、その刻は未だ来ない。いや、訪れるはずだったのに訪れなかった。
神の視点を持つが故に、アルトシュは識ってしまった。故にもう二度と、問いの答えを余は知り得る事はできないのだろうと。
『挑むものなき最強に……如何なる意味がある?『最強』故に敗れる日とやらが来ない世界に如何なる価値がある?』
これまでと変わらず、アルトシュは冷徹な眼差しで世界を見下ろしながら、言葉を零した。
『この世界は間違えたのだ』
一方、その『最強』を討とうとしているクリプター、マーレはぺぺロンチーノの確保とベリルを始末する算段を立てていた。
「お使い?」
「そうだ、これからお前にはサーヴァントのいないペペロンチーノをサポートしに行ってもらう」
「むむ…だがマスター、私にはわるい文明を破壊する使命が…」
「今はまだ無理だ。今のアルトシュは異聞帯が生んだ致命的なバグと言える存在だ。如何なる力を持って挑んだとしてもアレは『最強』であり続ける」
「だから、今お前が出来る事は、ぺぺロンチーノを救い、ベリルを始末し、カルデアに聖剣のエッセンスを確保させろ」
そう言って、マーレは命令を刻むと、セファールをブリテン異聞帯へと送り込んだ。
「ベリル・ガット。お前は俺の目指す世界と相容れない。よって、誰も殺せなくなる世界を認めないお前に余計な事をされる前に、確実に始末させてもらおう。そしてセファール。世界を破壊することしかできないと思い込んでいるお前にも、きっと彼の地で得られるものがあるだろう」
今、ブリテン異聞帯の王であるモルガンは、セファールの事を最も警戒しているだろう。そして、きっとモルガンが選択するであろう対策を思い浮かべながら、マーレは一つの広げられた古びた地図へと目を移した。
「たまには博打というのも悪くない。最悪、セファールという最強クラスの駒を失うことになるかもしれないが、そのリスク以上に得られるものがあると信じようじゃないか」
広げられた地図には異聞帯を構成する二つの大陸の地図が記されており、複数のチェスの駒が置かれ、数多の印が付けられている。そして、マーレはその地図に新たに七つの印を付け加えた。
「大陸全土を利用した通行規制の設置は残り七箇所。いずれも警戒されている機凱種やジブリールでは行く事のできない難所だ。それでも、アイツらやカルデアの運命力を利用すればきっと果たせるだろう」
チェスの駒が表すのは大戦を繰り広げる勢力の動向。マーレが付け加えた印とは異なる地図に記されている数多の印は、設置された通行規制の設置完了地点。地図に描かれているのは、異聞帯世界の人類種と機凱種が長き時をかけて成そうとしている大偉業の足跡だ。
「待っていろよ『最強』。長き時を超えて、『最弱』は今度こそお前の下に現れる。もう星も余計な手出しは出来ない。正真正銘の運命の刻が訪れる。その時お前は識るだろう。『強者の如何なるか』『弱者の如何なるか』……『最強』とは、如何なるものなのか」
ーーーーそして、アルトシュは至るだろう。『永遠の問い』の果てに、必然の敗北の『運命』へと。
「『遺志に誓って』ーー君の託してくれた、やり残したことは必ず果たしてみせるよ。リク」
ちなみに、セファールブリテン編は、異聞帯に来て早々に水鏡で過去に飛ばされたセファールが、まだ希望を運んでいた頃のホープと一緒に旅をして途中でバーヴァン・シーやトネリコ達と出会う物語の予定でした。
そして、妖精達の度し難さを思い知り、友達になったホープとパーヴァン・シーを傷つける妖精達の世界が、別の世界の自分自身が原因だと知って絶望して厄災へと至る物語の予定でした(白目)