月と導きの青い星   作:源石古龍観測隊

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【4話編集前に見た方にご報告】

4話でムフェトと話していたフェリーンの男、エリック。

シトリック、ワーウィックと『ク』ラッシュとなってしまいました。(シトリックとはリックも被ってるな)

エリック、お前は今日からニコラスや。


第5話 ドラコとアスラン、古龍と獅主

6年前

p.m.2:44 天気/晴天 ターラー王国 ゲル城

 

 

「そろそろ戦況の話をしなければな。シトリック、説明してくれるか?」

「もちろんです。押し込まれつつあるといったのは書簡で言った通りですが、段々と前線が喰い破られ始めましてな」

 

 シトリックは苦々しい顔をしながら、今までのことを語ってきた。その当時の感情を思い起こしたのか語気は少し荒い。 

 シトリックの言を聞くに、戦車や高速戦艦を相手取る布陣を敷いていたところ、白兵戦による急襲を受け一部前線が押し込まれたようだ。喰い破られるとは言い得て妙だとサルゴンの戦士達を見てきた経験から同意する。シトリック達、ターラーの戦士達が戸惑うのも無理は無いだろう。

 

「やはりお前たちもサルゴンの戦い方には慣れていないか。移動都市を持たないあの砂原の地の戦士相手には、今までの戦争の経験は通じにくかっただろうな」

「その通りですな。我らが戦ってきたのはヴィクトリア貴族が主なもの。移動区画を高速戦艦や戦車で囲み、乗り込んで叩く。アスラン相手にこれをしようにも……」

 

 言葉を濁すシトリックに嫌な予感を感じ取る。 

 

「……アスランどもの拠点は何処にある?」

「……ロンディニウムです」

 

 二人は揃って溜め息をつく。

 

「ロンディニウムを攻撃などすれば我が意を得たりとばかりに日和見を決め込んでいる貴族どもがターラーに雪崩れ込んでくるだろうな」

「我らターラーの地で迎え撃つ以外にないということになりますな」

「それにそもそもの話、アルトリウスはどういうつもりだ? 自分以外の統治者を増やして何か得でもあるというのか」

「さあ、そこまでは何とも。ただ、ロンディニウムでは特段争った様子は無いと聞いております」

 

 シトリックにはそう言ったが想像はつく。

 アルトリウスは度重なる政策の失敗から貴族どもから突き上げをくらっていた。その事とアスランの台頭により、一時的にアスランに王権を譲ることを余儀なくされたとみるべきだろう。そんな自分と比べて安穏とターラーの地を治めるシトリックのことを疎ましく感じたというのが考えられるところだろうか。

 ヴィクトリアとアスラン、お互いの野心が合致し、ターラーに攻め込んできたということだろう。

 ヴィクトリアの王冠は後で取り返せると考えているのかもしれないが、アルトリウスの思惑通りにいくとはどうにも思えない。どこかアスランを侮っているようにも感じ取れる。

 

 ドラコの王冠をアルトリウスに譲った時のことがふと思い出される。ヴィクトリアは良い国になると自信を持って言えたし、安心して国を出ることが出来た。

 

どうにもうまくいかないものだな

 

 溜め息と共にこぼした言葉を最後に気持ちを切り替える。

 

「シトリック、聞きたいことは大方聞けた。俺はどうするべきだ? 移動都市が無かったころから生きている者としてはむしろやり易い。前線に赴き、アスランどもの手勢を壊滅させてこようか」

「それは頼もしいですな。ですが、ムフェト様…ムフェトには。ああ、どうにも慣れませんな」

 

 呼び名の件で狼狽えているシトリックを見て、少し気持ちが軽くなる。あの雪に覆われた陣地で共に飲み、笑った同胞たちの姿が思い起こされた。

 

「フッ、慣れてもらわなければな。それで何を言おうとしていたんだ?」

「ムフェトに頼みたいことがありましてな。少し歩きながら話しましょう」

 

 ゲル城の回廊を歩きながら、日が差し込む中庭を見る。手入れの行き届いた木々と美しい花々が植えられている。その中でも一際大きなオレンジ色の花が目を引いた。

 

「美しい花だな。ターラーの国花だったか」

「はい、この肥沃なターラーの地でしか花をつくらない。我らの誇りですよ」

 

 シトリックは一度立ち止まり、花をじっと見た後、また歩き出した。

 

「どこに向かっているか聞いていなかったな」

「野戦病院に向かっています。この前大きな衝突がありましてな。此方も被害は大きかったが、奴らにも相応の損害を与えました。ブライアンが此方に帰ってきていたのも前線の圧力が弱まったからでしょう」

「なるほど、読めてきた。今回ターラーの兵士に被害を負わせた存在がお前の懸念する相手か」

「ええ。恐らくは術師。それもリターニアのベテランの高塔の術師に勝るとも劣らない相手です」

 

 初めに感じたのは驚きであった。あのアーツの研究が盛んなリターニアの高塔の術師に匹敵するほどの相手がサルゴンにいたことを。しかし、アスランがリターニアにも系譜を持つことを考えれば納得できないというわけでもない。

 困惑を感じたのは別の部分。シトリックの発言はどこか要領を得なかった。

 

「恐らくというのはどういうことだ? 術者を見たのではないのか?」

「それが姿が確認できなかったのですよ。風に切り刻まれたような跡だけを残して他は何も」

「姿が確認できない程の遠距離からの攻撃か姿を隠すアーツの仕業か」

「私としては遠距離攻撃だと思うのですがね。直線上に並ぶ戦士の鎧ごと切り裂かれている。姿を隠すアーツを使いながらあのようなことをするなんて人には無理でしょうな」

 

 どこか頭の隅に引っかかるものを感じながらも、シトリックの考え自体は正しいと感じていた。

 炎の刃を飛ばし、直線上に立つ兵士達を切り裂くことは自分にも出来るが、姿は晒すことになるだろう。姿が見えない程の遠距離攻撃でありながら、複数の兵士達を巻き込むというのもアーツの強大さが感じ取れる。または他人を透明にするアーツや最新のステルス製品ということも考えられるが…。

 結局のところ、正体の真偽はどうあれ強大な敵が現れたというのは間違いないと言えるのだろう。

 

「それで野戦病院に来たということはその正体が掴めるかもしれないということか?」

「ええ。その攻撃から生き残ったものが一人おりましてね。ようやく話せるようになったらしく何か見ていないか聞こうと思っているのですよ」

 

 野戦病院に入ると多くのベッドに寝かしつけられた兵士達とせわしなく動く医師の姿があった。

 兵士の苦しみ喘ぐ声は聞こえてはくるが、まだ戦争が始まってすぐだからか見舞いに来た兵士達の楽し気な話声も聞こえてくる。

 

 医師の一人が近づいてくるシトリックに気づいたのか声を掛けてくる。

 

「陛下、ニコラス偵察兵の件ですね。こちらです。…陛下、そちらの方は?」

「我らの祖王、ムフェト・ジーヴァ様である。私の要請に応え、此度の戦争に参戦してもらった」

 

 一時の静寂の後、野戦病院を越えて中庭まで聞こえる程の大歓声が沸き起こった。

 

「「ゲル王陛下万歳、ムフェト様万歳!」」

 

 ヴィクトリアの龍であるということから疎まれる覚悟はしていたのだが、ここまで喜ばれて悪い気はしなかった。

 彼らに応えようと手を挙げかけたところ、横目に少し機嫌の悪そうなシトリックが映った。

 

「病院で大きな声を出すな。お前たちも傷に触るだろう」

「申し訳ありません、陛下…」

「ハハハ、真面目だな、シトリック。だが、よく慕われているようだ」

 

 シトリックに叱られた兵士達は嫌そうな顔一つしていなかった。

 このシトリックの融通が利かない生真面目さも含めて慕われているということがよく分かる。

 

「からかわなくて結構。ムフェト、行きますよ」

「はいはい」

 

 医師に案内され、奥まった部屋につく。本当に大きな怪我だったのだろう。ベッドの周囲には多くの医療機器が並んでいた。

 そこに寝かされていたフェリーンの男はこちらを見ると興奮した様子で話しだした。

 

「陛下、ムフェト様! お、俺、いや、(わたくし)は……イテテ」

「落ち着け。傷がまた開くぞ」

「ふぅー、申し訳ありません。ニコラス・ワーウィック偵察兵です。お二方に会えて光栄です」

 

 極東で最近流行りだしたというアイドル(?)を見るような目で見られ、少し笑う。

 やっと話せるようになったというからあまり無理はさせてはいけないと思っていたが、この元気さならば大丈夫そうだった。

 

「ニコラスといったか。先の歓声が聞こえていたようだが改めて。ムフェト・ジーヴァだ。よろしく頼む」

「よ、よろしくお願いいたします。ムフェト様」

「ニコラス、早速だが話を聞きたい。お前が傷を負った攻撃の時、何か見えたか」

「見えなかったとしてもそれはそれで構わない。これから対策を立てる上の参考になる。正直に話してくれ」

 

 自分とシトリックに促され、ニコラスはあの時の戦場へ記憶を飛ばすかのように目を少しつむった。

 

「私も衝撃を受けたと思ったら空を見上げていたので何とも正確には覚えていないのですが…黄金色、そう、黄金色の何かが目の端をよぎったような…」

「*ヴィクトリアスラング*!」

「ムフェト! 何だ突然」

 

 突然大声で*ヴィクトリアスラング*を叫んだ自分に驚くシトリックらだったが、彼らに直ぐに説明することが出来なかった。

 頭の靄が晴れた気分だった。むしろなぜすぐに気づけなかったのか。アスランに、姿の見えない攻撃、風のような傷跡、情報は揃っていたというのに。

 奴らは人の営みに関与してこないと考えていたからか。簡単なことに気づけなかった。

 

「攻撃の原因は獅主によるものだろうな」

「獅主…ですか?」

「ああ、獣主。獣の姿をした不滅の存在。アスランを見守る獅子の主だ」

「そんな存在がいたとは…」

「ああ。奴らは自分から見せようと思わない限り存在を認識できない。不可視の刃も奴の爪によるものだろう。ニコラスお前本当によくやってくれたな。奴にとってお前は姿を見せるに値する存在だったと言えるだろう」

「ええとまだよく分かりませんがお役に立てて光栄です、ムフェト様」

 

 突然の話に混乱するニコラスとは対照的に、シトリックは獅主に対抗するために考えをまとめているようだった。

 

「ムフェト、その獅主をあなたは認識できるか?」

「ああ。昔サルゴンで見たことがある。まあ、今回認識されていなくても、無視できないほどに暴れてやればいいだけの話だ」

「それでは獅主の相手はムフェト、あなたに任せても構わないだろうか」

「ああ、不滅の存在など只人が相手にするものではない。お前の当初の計画通り、俺が引き受けよう」

 

 喫緊の課題は解決したが、まだ本来すべきことが残っている。獣主に対応を割かれるということは、押し込まれるターラーの戦士達の問題が解決していないということだ。原因が分からないまま放置の方が大変だったのは確かだが、実に忌々しい。

 

「戦士達の件はどうする、シトリック。獣主どもは一筋縄ではいかないだろう。お前たちに加勢できるか怪しいが」

「先の傷が癒えるまで、まだ大きな戦端は開かれぬでしょう。前線は白兵戦に対抗できるように重装中心に。後方の戦車で睨みをきかせておきましょう。その間に再訓練でしょうな」

「王立前衛学校の臨時教師を務めたこのムフェト、ビシバシと訓練してあげよう」

「…本当に頼もしい。傷が癒え、こちらの準備も整った時…」

 

「ああ、ライオン狩りだ」

 




【ムフェト】
*ヴィクトリアスラング*

【シトリック】
戦士たちの武器全てを炉で溶かしたなど、原作からも凄まじい生真面目さが感じ取れる。

【獅主】
狼主ザーロ、羊主ドリーに習うなら、音読みでシシュになるのか。言いづらい。

正直、獣主の恐ろしいところって不滅性より、凄まじいステルス性だと思う。
ヴィーナがガウェインに乗って諸王の息を取って来た時、うわー、ヴィーナ殿下宙に浮いてる、じゃなくて、ヴィーナが諸王の息を持ってきたことになってるのすごい認識干渉能力だよね。何なんだろうこいつら。

【ニコラス(旧エリック)】
投稿者の不備で名前を変更された男。
人の名前決める時が正直一番大変。

苗字がワーウィックであることが判明。(皆覚えてるかな。エブラナとラフシニーを育てていた伯爵だよ)

別にまだ貴族というわけではない。
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