なんて歌にもありますが、それだって限度はあるというもの。
良いものはすぐ売れる、道理と言えば道理ではあるけれど納得は行きかねる。
何処まで行こうと男と女、難しくて尚楽しや。
まったく、困ったもんだ。冬も迫ったある日の夜更け、私は部屋で溜め息を一つ。
ウインターカップも近付いて、集中しなければならないのに。本当に、まったくもう。
「どうしてああも、人たらしなのかな……大喜くんは」
人の気も知らないで、八方美人なんだから。自分が可愛いって分かってなさすぎる、少しは自重を覚えてくれないと私が持たない。
窓のところにおいたサボテンは、まだまだ咲かなそうなのに。私は余りにも大喜くんを、
まるで、まるで本当に――好きになってしまっているかのように。
いや、いやいや。いやいやいやいや。そんなのはまだ早い、私にはバスケがあるんだから。でも、その隙に誰かが大喜くんを射止めてしまったらどうしよう。そんなの、死んでも死にきれない。
ああ、どうしようかな。
大喜くんと蝶野さんが一緒にいるのを羨ましく思ったのは、初夏の頃だったか。あんな風に大喜くんと接したい、と思ったのを覚えている。
そこから二人は更に仲良くなっていった……、と見えたけどどうにもそう上手くはいっていないらしい。告白したのは知っているけど、そこからどうなったかが分からないし。
本当に不謹慎だし悪い事なのは承知しているけど、失敗したんだとしたら有りがたい話だと思ってしまう。ああ嫌な女だな私、後輩の不幸を喜ぶなんて。でもだって、大喜くんを取られるのは辛いんだ。そりゃ大喜くんには大喜くんの考えがあって、私の一存でそれをどうにかする事なんか出来ない。でも叶うならば、私のそばにいてほしい。好きになってほしい、とまでは言わないから。
それなのに、どういうわけか菖蒲ちゃんまで割り込んできたから困ってしまう。
いのた、ってなにさ。そんな風に呼んでみたいですよ、私だって。気になる人が出来たからバド部のマネージャーになったって言ってたけど、あれ絶対大喜くんの事だ。なんだあの速攻、悩んでる私がバカみたいじゃないか。まあ菖蒲ちゃんは飽きっぽいらしいし、すぐ別の男子の方へ行くだろうけど。
だけど菖蒲ちゃん、大喜くんに触りすぎ。いやまあね、大喜くんが別に気にしてないなら良いんですよええハイ。……あのむっつりすけべめっ。
そしてそして、そして。
……なんで寄りによって、夢佳と仲良くなってるのかな大喜くんは。
そもそも彼氏いるじゃん夢佳さあ、ちょっかい出さないでよね。大喜くんも大喜くんだ、どうして私を経由しないで直であっちと交流するかな。一応夢佳は私の友達なんだから、さ。しかし意外と近くにいたんだな、まさかご近所だなんて。
何よりの元凶は、大喜くん自身だろう。あの可愛い顔で誰より直向き、そして人に優しくできる良い子だから悪いんだ。そう、大喜くんが可愛いのが諸悪の根源。あんな小動物が頑張ってるのを見たら気になって当然だし、そこに性格の優しさが見え隠れしたら絶対に好きになってしまう。私はまだ、その半歩手前くらいだけど。
……それに男子にもモテるからなぁ、大喜くん。針生くんとか大喜くん大好きだもん、まあ世の中多様性だから別に良いけど。
しかしこうなると、多少強引にでも手元へ置くべきだろうか。
「んー……
絶対ないと思うけど、ね。私みたいなワンパクでたくましい子を好きになるとか、まああり得ないと思う。
大喜くんはどんな子を好きになるんだろう、せめてタイプくらい分かればどうにか対策も組めるのに。
考えても考えても、頭が痛くなるばかり。私は思考を手放して、隣室との間を隔てる壁をぼんにゃりと見つめてみる。
一番簡単な手は、今から隣へ行って「好きです」と言っちゃう事なんだろうなあ。結果はどうあれ、そこで話は片付く。
「しないけどさ、そんなの」
コロンと寝返りを打って、私は目を閉じる。考えの続きは、明日にしよう。
明日も明後日も、まだまだ同居は続くから。再来年の春までには、きっとどうにかなっているさ。いや、そんな他人事みたいじゃダメだ。私がどうにかするんだ、サボテンが咲く頃までに。
どうか上手くいきますように、という淡い期待と共に意識は眠りの中へ融けていく。
おやすみなさい大喜くん、また明日。
実際夢佳さんがどう出るかはまだ未知数ですけどね。