〽️愚痴も言うまい悋気もすまい、人の好く人持つ苦労
なんて歌にもありますが、それだって限度はあるというもの。
良いものはすぐ売れる、道理と言えば道理ではあるけれど納得は行きかねる。
何処まで行こうと男と女、難しくて尚楽しや。

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アオく更け行く、その夜に

 まったく、困ったもんだ。冬も迫ったある日の夜更け、私は部屋で溜め息を一つ。

 ウインターカップも近付いて、集中しなければならないのに。本当に、まったくもう。

「どうしてああも、人たらしなのかな……大喜くんは」

 人の気も知らないで、八方美人なんだから。自分が可愛いって分かってなさすぎる、少しは自重を覚えてくれないと私が持たない。

 窓のところにおいたサボテンは、まだまだ咲かなそうなのに。私は余りにも大喜くんを、()()()()()()()()

 まるで、まるで本当に――好きになってしまっているかのように。

 いや、いやいや。いやいやいやいや。そんなのはまだ早い、私にはバスケがあるんだから。でも、その隙に誰かが大喜くんを射止めてしまったらどうしよう。そんなの、死んでも死にきれない。

 ああ、どうしようかな。

 

 大喜くんと蝶野さんが一緒にいるのを羨ましく思ったのは、初夏の頃だったか。あんな風に大喜くんと接したい、と思ったのを覚えている。

 そこから二人は更に仲良くなっていった……、と見えたけどどうにもそう上手くはいっていないらしい。告白したのは知っているけど、そこからどうなったかが分からないし。

 本当に不謹慎だし悪い事なのは承知しているけど、失敗したんだとしたら有りがたい話だと思ってしまう。ああ嫌な女だな私、後輩の不幸を喜ぶなんて。でもだって、大喜くんを取られるのは辛いんだ。そりゃ大喜くんには大喜くんの考えがあって、私の一存でそれをどうにかする事なんか出来ない。でも叶うならば、私のそばにいてほしい。好きになってほしい、とまでは言わないから。

 それなのに、どういうわけか菖蒲ちゃんまで割り込んできたから困ってしまう。

 いのた、ってなにさ。そんな風に呼んでみたいですよ、私だって。気になる人が出来たからバド部のマネージャーになったって言ってたけど、あれ絶対大喜くんの事だ。なんだあの速攻、悩んでる私がバカみたいじゃないか。まあ菖蒲ちゃんは飽きっぽいらしいし、すぐ別の男子の方へ行くだろうけど。

 だけど菖蒲ちゃん、大喜くんに触りすぎ。いやまあね、大喜くんが別に気にしてないなら良いんですよええハイ。……あのむっつりすけべめっ。

 そしてそして、そして。

 ……なんで寄りによって、夢佳と仲良くなってるのかな大喜くんは。

 そもそも彼氏いるじゃん夢佳さあ、ちょっかい出さないでよね。大喜くんも大喜くんだ、どうして私を経由しないで直であっちと交流するかな。一応夢佳は私の友達なんだから、さ。しかし意外と近くにいたんだな、まさかご近所だなんて。

 

 何よりの元凶は、大喜くん自身だろう。あの可愛い顔で誰より直向き、そして人に優しくできる良い子だから悪いんだ。そう、大喜くんが可愛いのが諸悪の根源。あんな小動物が頑張ってるのを見たら気になって当然だし、そこに性格の優しさが見え隠れしたら絶対に好きになってしまう。私はまだ、その半歩手前くらいだけど。

 ……それに男子にもモテるからなぁ、大喜くん。針生くんとか大喜くん大好きだもん、まあ世の中多様性だから別に良いけど。

 しかしこうなると、多少強引にでも手元へ置くべきだろうか。

「んー……()()()()()()()()()()()()()、話は簡単なんだけどな」

 絶対ないと思うけど、ね。私みたいなワンパクでたくましい子を好きになるとか、まああり得ないと思う。

 大喜くんはどんな子を好きになるんだろう、せめてタイプくらい分かればどうにか対策も組めるのに。

 考えても考えても、頭が痛くなるばかり。私は思考を手放して、隣室との間を隔てる壁をぼんにゃりと見つめてみる。

 一番簡単な手は、今から隣へ行って「好きです」と言っちゃう事なんだろうなあ。結果はどうあれ、そこで話は片付く。

「しないけどさ、そんなの」

 コロンと寝返りを打って、私は目を閉じる。考えの続きは、明日にしよう。

 明日も明後日も、まだまだ同居は続くから。再来年の春までには、きっとどうにかなっているさ。いや、そんな他人事みたいじゃダメだ。私がどうにかするんだ、サボテンが咲く頃までに。

 どうか上手くいきますように、という淡い期待と共に意識は眠りの中へ融けていく。

 おやすみなさい大喜くん、また明日。

 




実際夢佳さんがどう出るかはまだ未知数ですけどね。

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