なぜお前はいつもそうなのだ!!バーヴァンシー!!(パチモン)   作:ジンジャエール

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終章のバーヴァン・シー最高でしたね


何故お前はいつも…27

 

この帝国に生きるもの全て、戦えない弱者は淘汰される食物連鎖に生きている。ある例外を除いては。

 

(なんなのよ…なんなのよあの女!)

 

バンビエッタは通路を不機嫌に進んでいく。トリスタンが来てからというものバンビエッタの機嫌は常に過去最低値を記録している。

いくらイケメンの聖兵を殺してスカッとしても次に瞬間にはすぐにムカムカと不愉快な感情が発芽するのだ。

 

「それもこれも全部あの女のせい!」

 

ヒステリックにそう叫べば先ほどまで隅で雑談をしていた聖兵は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

それが無性にイラついたから霊子の爆弾でも打ち込んでやろうと思ったが人の目のある場所でそれをやればまた口うるさいグランドマスターからお説教が飛んでくるだろう。

 

それを思い出してまた腹が立った。今の行動も、もしあの女がやればどうだろう?

陛下は目を細めて部下には絶対に見せない顔で「仕方がない子だ」と血で汚れた顔を拭って抱きしめる。だってこの間してたから。

 

ハッシュヴァルトはきっと苦言を言うだろうけど何もしない。

聖章騎士たちもそうだ。妖精騎士も。

 

自分がやれば怒られることもあの女がやればお咎めなし!それどころかあれは陛下がお許しになっているのだからお前が口を挟むことではないと言われる始末。

 

あの身勝手を服にして着ている女も、部屋に閉じこもって縮こまっていればまだ可愛げがある。バンビエッタだって立場を弁えてさえいれば少しいじめはするだろうがここまで憎悪を向けることもなかっただろう。

しかし、トリスタンが自分が誘ったバンビーズへの誘いを蹴ったあの日から、気に入らない存在は憎しみの対象へと変わっていた。

 

(このままじゃ埒があかないわね)

 

次にここを通りかかった奴に奴当たりをしようと心に決めて、バンビエッタは獲物が通りかかるのをジッと待った。

 

しかしバンビエッタは次の瞬間八つ当たりの機会を失った。

 

長く白い髪、傷を知らない白肌。軍服を模っているには上品な衣。その存在が現れた瞬間。八つ当たりは八つ当たりではなくなったのだから。

 

「いっつも男に引っ付いてるくせに珍しいわね!ついにあいつらに飽きられたんじゃない?」

 

こちらを振り向く蒼眼。この国で唯一の空の色。

けれどもその青より鮮烈な、赤。

女の頬や服は鮮血に染まっている。どうせ、また聖兵でも痛めつけて殺したのだろう。

 

「…あぁ。どこの雌犬かと思ったらテメェかよ、なに?マーキングなら外でしてくれる?」

 

「は…」

 

「だってそうだろが、ダッサイ名前のグループ名で別の雌犬侍らせて自分が女の滅却師のトップって顔して我が物顔で歩いてるんだから!」

 

この妖精は何も気にしない。大事なのは父であるユーハバッハだけ。

それをみんなは知らないのにチヤホヤして、甘やかす。私たちなんて眼中にないのに。

 

それが、それが、無性に許せなかった。

 

「あたしが何もできないと思って調子に乗って!」

「はー、はいはいうざ。つーかテメェ栗の花臭い。悪いけど私綺麗好きだから、近寄るなら清潔にしてからにしてくれる?」

 

それでもバンビエッタが何もできないのは、この売女が最高権力者である皇帝ユーハバッハの後継者であり娘という立場に居座っているせいだ。

弱いくせに権力者の男たちに気に入れているというだけで自分よりも高い地位で、ただ護られる安全地帯に座って甘やかされた娼婦のような態度でいつもこちらを馬鹿にした態度を取る。

 

(こんな女、聖文字なんて使わなくてもすぐに殺せるのに!あぁ───!)

 

 

──ムカつく!

 

──イライラする!

 

──反吐が出る!

 

会話をするたびにその口を爆散させたくなる。今すぐに綺麗な顔の皮を剥いで取り柄が無くなったと嘲笑ってやりたくなる。

自分じゃ絶対に会話をするのもごめんな醜男にぐちゃぐちゃに陵辱される様を横目に汚物を見る目で冷笑してやりたくなる。

 

そんなことが叶うなら、ぜったいいつもしてることより気持ちいのに。

 

何故かこの女を見ていると自分の中の加虐心がまるで止まることを知らない。こんなに自分がおかしくなったのはきっとこの女のせいだとバンビエッタは疑わない。

 

そこらに滅却師崩れの虚以下の存在価値。お前なんて死神に豚みたいに殺されろ。その様子を特等席で見ていてやる。もしそうなったらジジにゾンビにしてもらうのもいいかもしれない。

 

 

ほら、今だって、許されるなら湯水の如くこの女を罵倒してやれるのに。

それでも、許される限りの罵倒を搾り出す。

 

 

「アンタなんて顔と体しか価値のない雑魚のくせに!!」

 

「へぇ、じゃあテメェはソレ以外に取り柄があるんだ?」

 

「あ、あるわよ!あたしはバンビーズのリーダーなの!嫌われ者のアンタと違って人望だってあるんだから!」

 

その言葉が、トリスタンの琴線に引っかかった。

 

「面白いこと言うじゃん。…じゃあもしアンタが負けたらそれがほんとかどうか、確かめてやるよ」

 

「流石に今は貴重な戦力だからお父様に怒られるしやんないけど…んー、力の権威も無くした後でなら、まぁ?

顔は焼いて、胸も削いで…あ、手足も捥いどく?四つん這いでしか歩けないようにしてぇ、ついでに舌も切っといた方が無様ででいいかも!」

 

そんな残酷な提案を、天使の笑みで言い放つ。

それは冷笑でもバカにした嘲笑でもない。初めてバンビエッタへ向けられた笑顔だった。

 

「その状態でもテメェの仲間に見捨てられねぇなら土下座でもなんでもしてやってもいいぜ?」

 

「何、言ってんの…?」

 

「もしかして…その状態で、自分が愛される想像がつかないわけ?」

 

想像?できるわけがない。そんな無償の愛なんてこの帝国には存在しない。

第一、戦えない上に容姿も失った自分にそんなことをしてくれる存在がいるわけがない。

 

「なーんだ。無意識にしても自分の立場よく分かってんじゃん」

 

「あんたは、できるの……?」

 

もし生きるだけの芋虫のような姿になったとして、その状態の自分を愛してくれると確信できる人間が一体どれほどいるだろう。

 

あの自信過剰なバンビエッタすら沈黙する。

 

けれど目の前の少女はバンエッタの問いかけを鼻で笑い飛ばした。

 






どんな状態でも愛せる男

偽バー「一週間ぐらいで死んじゃったし、耳と目使い物にならなかったから真偽はわからないけどあの時よく頭を撫でてくれたわよねお父様」

陛下「全身激痛で辛かっただろうに私に必死に寄ってくる姿が可愛かった」



バンビ「ひっ…ひぃ…」
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