三つの選択肢   作:新人作家

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反省を活かして

 

 俺が思う【学区】の生徒は【探究派】と【救済派】の二つに分けられる。

 【探究派】は学区の設備や授業を利用し、自分の知りたいことを学習して可能性を広げていく者達。

 【救済派】は故郷をモンスターに襲われた、もしくは授業を通してモンスター被害の悲惨さを知って救済を誓った者達。

 前者は【学術学科】に多く、後者は【戦術学科】に多い。

 

 あくまでも俺の主観でしかないが、十八階層に行きたいと言ったコイツらは、

 

 「私は故郷を、家族をモンスターに傷つけられた。同じ思いを誰かにして欲しくない」

 

 「自分が英雄になれる!なんて自惚れはない。けど、ランクアップすれば今よりもっと救える命があるはずなんだ」

 

 「俺は単純に、自分の力が通じるか知りたい」

 

 「み、みんな頑張ってる!だから応援したいの!」

 

 後者の【救済派】。()()()()()()()強くなって、モンスター被害で苦しむ人を救うことを目的にしている。

 俺は人のために強くなりたいと願うコイツらを尊重したい。本来のステータスに戻せば簡単に向かわせられるし、ランクアップの手伝いだってできる。

 

 「()()()()()

 

 「「「!!」」」

 

 「な、なんでっ!」

 

 今のままだと、今の心構えのまま強くなるのは危険すぎる。強くなるために時には冒険という危険を侵す必要があるのは確かだ。しかし、多くの冒険者はそんな危険を伴う愚行をしない。

 なぜか。

 

 「死ぬからだ」

 

 冒険者は仲間の命、そして自分の命を優先する。だからか大半は殻を破れずLv.1~2のままで人生を終えるのだが、それでも堅実に一歩一歩ダンジョン探索を進めることでレベル相応のモンスターに強く詳しくなっていく。

 十八階層中心で活動するリヴィラの冒険者なんか下手したら俺より──いや探索している分ギルド職員より中層に詳しいまである。

 

 「自棄(やけ)になるな。知った気になるな。そして焦るな。強くなるのに近道はない。レオン先生も全部分かった上で課題を出しているんだと思うぞ」

 

 この世界に転生し、冒険者中心に回る物語だから冒険者になって、流されるまま偉業を達成した俺が言えたことではないが、やっぱり無茶はして欲しくない。

 まあ、俺自身後輩を指導できるほど詳しくないのでその辺はレオン先生に投げる。

 みんなが俯く中、狼人のラァサが口を開く。

 

 「・・・Lv.3になってるルーク達は、下層へ向かうと意気込んでいた」

 

 「死ぬな。適正レベルをクリアしていても、攻略は不可能だ」

 

 「何故だい?僕たちより強いのに」

 

 「いくら強くても中層探索ですら経験が足りてないのに、異常事態(イレギュラー)が連発する()()()は無理だ。それに・・・」

 

 「?それに?」

 

 「都市外で獲得できる経験値は少ないことを考えると多分、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 昇華に必要なのは神々が認める偉業。少なくとも二回以上、危険に飛び込んだのだ。仲間の心身を無視して。仲間の少女がランクアップしているのは彼に振り回された結果。取り返しのつかないことになっていないのが奇跡だ。

 

 「レフィーヤ先生が止めてると思うぞ?集団戦闘を重んじる派閥の一員だし」

 

 【ロキ・ファミリア】の強みは【勇者】フィン・ディムナの指揮のもと動く集団連携。そして探索力は今はなき実力主義の【美神の眷属(フレイヤ・ファミリア)】より上。

 彼女(レフィーヤ)にとって、仲間を振り回すパーティプレイなんて言語道断だろう。

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 「ん?」

 

 「私、この小隊のリーダーなのに強くなることしか目になかった。貴方の言う通り、仲間を危険に晒すところだった」

 

 「全くもって君の言う通りだった。僕らはダンジョンを甘く見てた」

 

 「・・・俺もだ。熱くなりすぎた」

 

 「ごめん、なさい・・・」

 

 ・・・取り敢えず一件落着かな。

 最近は都市外のモンスターが活発化しているらしく、それに比例して被害が増えている。惨状を目の当たりにしている【学区】生徒が焦っていることを、バルドル様とレオン先生は危惧していた。

 潜入の趣旨は彼らのフォローであるのなら、達成できたのかな。

 

 「っし、反省したならもう大丈夫だろ。時間一杯まで探索しようぜ。もちろん決められている階層で、だけど」

 

 「!ええ、ええ!みんな、頑張りましょう!」

 

 「「「おうっ!」」」

 

 青春(アオハル)だ。灰色の濁った青春を送った前世と違って、綺麗な青春だ。

 

 「アラコ、これからもよろしくね」

 

 「もちろんだ。治癒士(ヒーラー)として張り切らせてもらうよ」

 

 俺は から差し出された手を握る。

 

 この小隊で活動する時間は短いが、先輩として教えられることはたくさんある。まあ、冒険者人生一年も経っていない先輩だけど。

 なんだったら、インターンでファミリアの探索に同行させるのも有りかもしれない。モンスター討伐は駄目だけど、心を入れ替えた今なら見学であれば──

 

 ベシャ。

 

 「え?」

 

 俺のちょうど足元で聞こえる地面に叩きつけられ潰れる音。ここは霧が立ち込める十階層。警戒してなかった訳じゃないけど気付かなかった。

 ()()()()()が飛んできた方を見る。

 

 「「「・・・ヒッ!?」」」

 

 「え?え?ちょっ──・・・アラコ?」

 

 失念していた。

 

 「伝えんの忘れてたわ・・・」

 

 ──血濡れの恋人(笑顔のエリス)

 

 「───ア~ラ~ン~、見ぃ~つけたぁ~。・・・ところでその女誰?」

 

 俺の彼女は重たい方だったということを。

 




女装アランは口調が男っぽい。生徒達は男勝りな性格だと思ってます。
後一話くらいやって、遠征入ります。
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