遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする 作:なーお
「あ、おはようございます! キンちゃん様!」
次の日の朝。
女子寮の前で俺と白雪は落ち合っていた。シャンヌの指定した時刻の30分前だ。
白雪は巫女装束に身を包んでいる。対する俺は防弾制服だ。
白雪の手には日本刀――
巫女装束の上からでも分かるがあちこちに武器を仕込んでいるな……、最小限って言ったのに。
白雪の表情は……、やはり万全とはいかなさそうだ。
白雪は隠しているつもりなのだろうが、疲労の色が見て取れる。長年付き合ってきた俺の目はごまかせない。
それに全身が強張っている。緊張しているのか?
やはりレキに依頼して正解だったな。
俺の右手は白雪に紹介してもらった医療に長けた術者の治療により昨日よりはマシになったが実戦では使い物にならない。
「おはよう、白雪。やる気十分なのは結構だが、一応今日は話し合いだってことを忘れるなよ。突撃かましてカフェを木端微塵にするような真似はしないでくれよ」
「え、そんなことはしないよ。……あはは、もう、キンちゃん様は私をなんだと思ってるの?」
小首をかしげて可愛らしく笑いながらそう言ってくる白雪。
まさかいつもの行動は無自覚なのか……?
「……はは、そうだな。……冗談だよ」
雑談はほどほどに俺達は目的のカフェに向かって出発する。
俺達は念のため周囲を警戒しつつ集合場所に向かっているわけなのだが、白雪の警戒度が過剰すぎる。額に汗を浮かべながら必要以上に集中している。まるで何かに追い詰められているような様子である。
「……なあ、白雪。もう少し力を抜いたらどうだ」
「ううん、何があるか分からないから。キンちゃん様には指一本触れさせないから安心してね」
何とか緊張をほぐそうとするも白雪はそう笑顔を浮かべて答えるのみ。
そんな無理をする白雪を見て昨日の別れ際の白雪の姿がフラッシュバックする。
……やっぱり俺が原因だよな。
間もなく約束の場所であるカフェに着くというところで意を決して白雪に聞いてみることにした。ジャンヌに会う前にはっきりさせるべきだと判断した。
「白雪……、俺がアリアとパートナーを組んだからか?」
白雪が立ち止まる。
……やはりか。
白雪だけでない。理子も俺がアリアとパートナーを組んだと知ってキスというそれまでの距離感から一歩踏み込んできた。白雪も同様かもと思ったのだ。
俺としてはあくまで武偵としてのパートナーだから問題ないと思っていたのだが。俺の考えは甘かったようだ。
「昨日も言ったと思うけど俺はアリアを武偵として魅力を感じたからでだな」
「……それって、私には武偵としての魅力は感じなかったんだよね」
「え……」
白雪の予想しない言葉に俺は言葉が詰まる。
白雪の考えていることが分からない。
「……分かってる。私なんかが小さい頃から立派な武偵になる為に努力してきたキンちゃん様の横に立つ資格が無いことくらい」
「いや――」
――逆だ。俺が白雪の横に堂々と立てるように努力をしてきたんだ。
俺は白雪が努力家であることは勿論、武偵としての実力も認めている。俺は強くなったが、本気を出した白雪とは戦いたくない。そう思えるだけの実力を持っている。
だがパートナーを組んでみたいかと言われると、どうもしっくりこない。
決してこれは白雪がアリアに劣っていると言うわけではない。
これは感覚に近いものだと考えている。
その人の武偵としての心構えや考え方、戦闘スタイル――それらすべてが複雑に絡み合って合う合わないという感覚に繋がるのだと俺は考えている。
しかし、感覚的な話故にこれを口で説明するのは難しい。話し方を間違えればさらに白雪を落ち込ませることに繋がる。どうすれば……。
「だってそうでしょう? じゃあどうして神崎アリアをパートナーに選んだの? これまで会った事なんてなかったよね? どうして……、どうして一番付き合いの長い私じゃないの!」
今にも泣きだしそうな表情を浮かべた白雪の悲痛な言葉が俺に突き刺さる。
これまで抑えつけていた感情が一気に爆発したかの如く白雪は「どうして」と小さく繰り返している。
周囲を歩く人たちも何事かと視線を向けてくる。
俺は今さらになって自分の選択した行動の迂闊さに気付いた。
軽い気持ちでアリアとパートナーになった。原作でもそうだったから問題ないだろうと。
しかしこんなにも白雪を……いや、白雪だけでない。恐らく理子も同じような心情だったのではないだろうか。
「だからね、証明して見せるよ。今回の一件で私がキンちゃん様のパートナーに相応しいってことを。私が
白雪は完全に興奮した様子で息遣いも荒くそうまくし立てる。そのまま白雪は俺を置いて走っていく。
「お、おい白雪!」
だめだ、何を言っても止まらない。聞く耳を持ってもらえない。
止めなければ。
でもどうやって……。
ヒステリアモードになる?
……いや、それは違う気がする。
これは今の俺がどうにかすべきことだ。
俺の白雪を想う気持ちは本物なんだ。
この瞬間、この状況を解決に導くかもしれないあるシーンが俺の脳内に浮かんでいた。
この状況に酷似したシーンが原作にもあった。場所は飛行機で相手も異なるが。
その時俺は――。
考えている暇は無かった。
俺は駆けだし白雪を追いかけていく。もう目的のカフェが見えてきている。――まずい。
足に力を込めて全力を出す。周囲の人達からの視線は強まっていく一方。
理子を一晩中追いかけた白雪の足は速く中々距離が縮まらない。
カフェの手前でなんとか白雪に追いつき、その細い手首を掴む。
「白雪!!」
白雪を想うこの気持ちをそのままに声に載せ力強く叫ぶ。
「離して、キンちゃん様! はやくいかないと!」
白雪は俺の手を必死に振りほどこうとする。
俺は力の流れを制御し逆に白雪をこちらに振り向かせ、その小さな両肩をがしっと力強く両手でつかむ。火傷と骨折をした右手が痛みを訴えてくるが知った事ではない。
至近距離で見る怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになった白雪の顔は――それでも美しかった。
こんな時なのに俺の心臓は鼓動を加速度的に速めていく。
「キ、キンちゃん様……?」
流石の白雪も俺の行動に戸惑い、そして緊張したように全身が強張るのを両手を通して感じる。
こうやって通常バージョンの俺の方から積極的にアプローチしたことなかった。それも問題だったのかもしれない。今後は勇気を振り絞って一歩を踏み出すべきだろう。
「……白雪、俺は、その、ちゃんと説明することはできないけど、……白雪のことを尊敬しているし、その……愛している!」
「…………え? …………っ!?」
白雪は一瞬何を言われているのか理解できない様子だったがすぐにおれ俺のことがを理解し、アリアにも勝る勢いでその白い顔が真っ赤に変化する。
「え、え……今、なんて? あ、あい? あいあい、いあ?」
白雪がわたわたと慌てふためく中、俺はこれまで経験したことのない鼓動の速まりを感じながら自身の顔を白雪のそれに近づけていく。
もう誰もにも俺を止められない。ほとんど勢いに任せだ。だがこれは完全に俺の意志だ。
「昨日の続き……だ。白雪が言ったんだろう?」
「……え、え、え?」
攻めるのは得意でも攻められることに耐性の無い白雪は目を白黒させる。そんなところも可愛い。
――――――――。
「ふふ、二人は本当に仲がいいのね」
間もなく俺と白雪の距離がゼロになる……というところで突如横合いからふんわりとした優しさに満ちた――しかしどこか言いようのない圧力を感じる女性の声が投げかけられた。
その聞き覚えのある声に俺の意識が一瞬で持っていかれる。そして声の発生源に急いで体を向ける。
腰まで伸びたブラウン色のふんわりとした髪を靡かせる絶世の美女――
「…………カナ?」
俺の兄、金一が化けた姿であるカナ。
……ではないな。
俺は一瞬で目の前の女性がカナで無い事を見破る。カナは女性じゃないけど。
というかその背丈が低いことから本人でないことがすぐに分かる。
後は胸のサイズが大きい。
……絶対、理子じゃん。