ぼっちの兄もまたぼっち   作:差六

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感想評価、誤字脱字報告、ここすき、推薦等々ありがとうございます。
感想いただいたことに遅れて気づくと、今更返信していいのか分からなくて放置しちゃってます。ごめんなさい。

映画記念のようなものですが結束バンドは出ません。ついでにヤマもオチありません。


ボツネタIF「もしも高校進学と同時に家を出ていたら」

 放課後学校の廊下を歩いていると、馬鹿が馬鹿をしているのを見つけた。

 

「さぁかかりなさい、ロックが貴方を呼んでるわ……ふふふふふふ」

 

 曲がり角から顔を出して覗き込み、不気味な笑い声を上げる姿は紛れもなく不審者だ。

見なかったことにしたい。だが手遅れとはいえ、これ以上彼女の評判が下がるのは見過ごせない。

ならしょうがないな。僕は若干の諦観と疲れを覚えながら、覗き魔中の彼女の肩を叩いた。

 

「……なにやってるの、大槻」

「ひょわぁ!?」

「声が大きい」

 

 流石ボーカルと言えばいいのか、悲鳴一つ取ってもお腹から声が出ていてとてもうるさい。

鳴き声と同時に直立したまま飛び上がった大槻が、今度は着地と一緒にこちらに振り向いた。

怒りか羞恥か見分けがつかないが、今日も顔が真っ赤だ。彼女の毛細血管は大丈夫なんだろうか。

 

「い、いきなり声かけないで、びっくりするでしょ!!」

「そっちこそ急に大声出さないで。耳が痛くなる」

「えっあっ、ご、ごめん、じゃなくてなんで私が謝ってんの!?」

「で、あれなに?」

「無視!?」

「で、あれなに?」

「重ねて無視!?」

 

 だって反応すると話が横に逸れていくから。その返答は内心に留めておいた。

大槻のツッコミをスルーして僕が指差したのは、廊下に立てかけてあるギターとベースだ。

以前大槻の部屋に行った時自慢された覚えがあるから、あれはおそらく彼女の物だろう。

それはそれとして何故持って来ているのか、何故廊下に放置してそれを監視しているのか。

理由は全く分からない。また何か変な思い付きでもしたのだろうか。自然と顔が白けていく。

何とも言えない視線を受けた彼女は、まったくと零してから、何故か得意げに僕を見上げた。

 

「後藤にも分かるよう説明してあげると、これは撒き餌」

「なんの?」

「前話したでしょ。私のバンドメンバーの」

 

 大槻のバンド、SIDEROSのことか。確か先週の昼休み、メンバー募集中だと言っていた。

今はリズムギターとドラムがいないから、貴方も当てがあったら紹介して、とかなんとか。

ギターの当て。過ぎる思考を断ち切る。今の僕に考える資格は無い。誤魔化すために口を開いた。

 

「ドラムは、流石に無理か」

「あんなに重いの運べないし、そもそも家に無い。それにそっちは別口で、もっと力入れて探すつもり。元々ドラム人口は少ないからね」

 

 大槻の体格と運動神経を抜きにしても、ドラムセットを一人で持ち込むのは難しい。

こんなこと考えなくても分かる。いつもの大槻なら聞いた途端にちょっとマウントを取ってくる。

また気を遣わせてしまった。彼女の思いやりを守るため、その優しさには気づかないふりをした。

 

「というかギターはともかく、ベースはまだいるんじゃないの?」

「……覚えてたの?」

「先週の話くらい、普通忘れない」

「ふーん、へー、ふふっ」

 

 最初は我慢していたのか素っ気なかった笑みが、次第にぽろぽろっと零れ落ちていく。

これくらいなら覚えていて当然のはずなのに、何故だか妙に喜んでいる。分からないが、いいか。

なんであれ少しでも彼女から貰った気持ちを返せているのなら、それだけで十分だ。

 

「ならツインベースにするってこと?」

「………………………………しない」

「ということは、また?」

 

 大槻の晴れ晴れとして笑顔が凍って、目が濁り死んでいく。会話間違えたかもしれない。

 

「えぇそうよ! また逃げられたの!!」

「これで三週連続だ。もしかして週間ペース意識してる?」

「してるわけないでしょ!!」

「週刊バンドジャンプ?」

「ぶっ飛ばされたいの!?」

 

 場を和ますために言った思い付きの冗談は、気持ちのいいツッコミで叩き潰された。

大槻らしい元気さを感じる。落ち込んだりふさぎ込んだりするよりもずっといい。

息を荒くする彼女の様子を見てこっそり満足し、それがバレる前に話を元に戻した。

 

「それで、あれ?」

「そうよ」

「ふーん」

「……なに、その馬鹿を見る目つきは」

「気のせい」

 

 実際見てるから、なんてことはいくらなんでも口に出来ない。多分顔には出てるけど。

そんな喧嘩を売ってるような態度だったのにも関わらず、大槻は不思議と余裕そうだ。

むしろ何故か僕へ憐れみの視線を向けて口を歪め、肩を竦めたあげくに鼻まで鳴らした。

 

「ふふん。まぁロックのロも知らない貴方じゃ、この作戦の奥深さは理解できないかもね」

「へー」

「欠片も信じてない。いい? ロッカーたるもの、いい楽器を目にした途端絶対弾きたくてうずうずするものなの」

「はぁ」

「つまりロックの魂を持ってるかどうか、あれへの反応で分かるってことよ!!」

 

 じゃあ僕は持ってないな。冷めきった結論を下すと、例の罠に動きが見えた。

気分よく僕へ講義をする大槻はまったくそれに気がついていない。覗き魔失格だ。

 

「大槻」

「今からいいところ、心して聞きなさい」

「後にして。ギターとベース、先生が回収し始めたよ」

「……えっ? ちょ、ま、まま、先生、待ってください! そ、それ私のです!!」

「ちょっと弾いてる。ならあの先生、ロックの魂持ってるんだ」

「うっさい! あとで覚えておきなさい!!!」

 

 どうせ今日も一緒に帰るのだから、あとでも覚えておけも無いのだけれど。

廊下を爆走して(とても遅い)、先生を追いかける大槻を見送ってから教室に戻る。

どうせ楽器を返してもらうのにも時間がかかる。その隙に彼女の荷物を拾っておこう。

 

 

 

 ふんすふんすと憤る大槻とともに、僕達は新宿FOLTまで移動した。

大槻のメンバー問題、つまり人間関係の問題。僕ら二人には手が余る難問だ。

二人で考えてもいつものように雑談で終わる可能性が高いから、この日の僕は助っ人を求めた。

 

「それで私たちに相談?」

「はい。すみません、皆さんお忙しいのに」

「いいよいいよ、今日は暇だし。それに、君にはいつも助けてもらってるから」

 

 むしろお返しするいい機会さ。助っ人の女性、岩下さんは朗らかに笑ってみせた。

彼女は新宿FOLTをホームにしているSICKHACKのドラマーで、数少ない真っ当な知人だ。

一人暮らし中の僕がこの手の相談を出来るのは、彼女くらいしか思い浮かばなかった。

 

 かくかくしかじかと、大槻から聞いたことと今日起きたことを岩下さんに説明する。

彼女は時折質問を混ぜながら話を聞き終えると、納得いったように頷いた。

 

「事情は分かったよ。ところで当の本人はどこに?」

「あっちにいます」

 

 僕が指差した先で、子供のように頬を膨らませる大槻が女性二人に慰められていた。

廣井さんと清水さん。酒に溺れているベースの人と二次元に溺れているギターの人。

二人とも悪い人では無い、むしろいい人ではあるけれど、正直相談するには気が引ける。

 

「おーおー、大槻ちゃん可哀想に」

「そうなんですよ! 先生もあの子たちも全然分かってなくて!!」

「うんうん。実はお姉さんもね、今日隠し持ってたお酒持ってかれちゃったんだよ~」

「なんかそれはジャンルが違う気がするナー?」

 

 三人揃ってどこか調子がずれていて、会話が噛み合っているようで合っていない気がする。

彼女達を眺めて温かい気持ちになった後。それはそれとして僕は冷たい現実を口にした。

 

「どうせ大槻からロクなアイデアは出ないので、ああして愚痴でも出してもらった方がマシだと思って」

「だいぶキツイね」

「前科がありますから。もう執行猶予はありません」

 

 今日のも含めて、大槻の考えるメンバー募集はどうしようもないものばかりだった。

どうも明後日の方向へ行くというか、空を目指しているのに地面を掘り進んで行くというか。

あれは時間と気力と体力の不法投棄だ。公園で蟻の数でも数えていた方がまだ生産性がある。

 

 僕の考えが視線か何かで伝わったのか、廣井さん達と話していた大槻が唐突に立ち上がる。

そしてずんずんとこっちに歩いてきて、文句があります、という風に僕の両肩を思いきり掴んだ。

 

「……悪口が聞こえた気がする」

「言ったよ」

「せめて隠しなさいよね!?」

「そうしたらもっと怒るくせに」

「それはそうだけど。というか、そもそもそういうこと言わない!」

「ごめん、難しい」

「なんで!?」

「大槻をからかうの楽しいから」

「むー!?」

「暴力反対暴力反対」

 

 がっくんがっくんと、壊れた玩具のような勢いで前後に振られて視界が揺れる。

テーブル向こうに座る岩下さんはそんな僕達を見て、この状態でも分かるくらい苦笑いしていた。

 

「……二人は今日も仲良しだね」

「ありがとうございます」

「お礼言ってんじゃない!!」

 

 ようやく揺らすのを止めたかと思えば、トドメとばかりに頭を叩かれる。暴力反対。

それで大槻の怒りがある程度納まったと思ったのか、廣井さんと清水さんもこちらに来た。

なら一応二人にも聞くか。岩下さんにした相談をそのまますると、廣井さんが手を挙げた。

 

「やっぱりさぁ、魔王くんが一緒にやればいいんじゃない?」

「僕は楽器なんて弾けませんよ」

「えー、うっそだー。こんな手しててそんな訳ないじゃん」

 

 そう言って、廣井さんが僕の手を無造作に掴み、楽しそうに表面を撫でる。くすぐったい。

憧れの彼女が僕で楽しんでいるのが気に食わないのか、再び大槻が鼻息を荒くし始めた。

その勢いで廣井さんから僕の手を奪うと、ぺしぺし叩きながら僕に文句を付ける。

 

「駄目ですよ姐さん、これは弾いてたけどもう弾いてない奴の手です。これじゃ私には絶対ついて来れません」

「そうかなぁ。二週間もあれば戻せそうだけど」

「それにこいつと一緒だと、私が添え物にされちゃいます!」

「ヨヨコが添え物って、ちょっと考えにくいヨ?」

「いえ、私が学校でなんて呼ばれてるのか知ってます? 魔王の側近ですよ、側近!!」

 

 そうなの、と問いかけるようにSICKHACK三人から一斉に視線を受けたから、僕は頷いた。

 

「部下を持った覚えはありませんが、らしいです」

「私もなった覚えはない!! くっなんでこいつが王様で、私が側近なの……!?」

「そこはどうでもいいから」

「せめて双璧とか、龍虎とかにしなさいよね!」

「大槻には龍も虎も合わないと思う」

「じゃあ私って、動物に例えると何なの?」

「チワワ」

「……しゃー!」

「猫だった」

 

 もしくは兎かハムスターか。どれであっても、とても魔王に並び立つような恐怖感は持てない。

爪を立てて威嚇する小動物大槻を適当に宥める。手のひらを向けたらパンチし始めた。猫パンチ。

 

 そうして目の前で急にじゃれつく失礼極まりない僕らに向けて、岩下さんが平たい声を出した。

 

「……二人って学校でもそんな、なんというかベタベタしてるの?」

「ベタベタかどうかは知りませんが、お互いしか友達がいないので」

「オー、じゃあお昼も一緒に食べてるノ?」

「えぇ、まあ。あとは登下校とか、休み時間も一緒よね」

 

 今朝もいつも通り待ち合わせして登校。休み時間は雑談や何やら。放課後はこの通り。

こうして振り返ってみると、最近外で大槻と離れていた記憶が薄い。というよりほぼ無い。

なるほどと思い大槻の方を向くと、彼女も同じことに気づいたのか僕を見ていた。

 

「僕達、結構ベタベタだね」

「………………なに、嫌なの?」

「別に」

「じゃあ文句言わない」

「文句じゃないよ、感想。これからもよろしく」

「はいはい。よろしくよろしく」

 

 向けっぱなしだった手のひらが、今度はハイタッチのつもりなのか平手で叩かれる。

僕達のそんなじゃれ合いを見た廣井さんの瞳から光が消え、やがて胸を抑えて倒れ伏す。

 

「せ、青春の光が、ぐふっ」

「死ぬな廣井! でもその傷はもう取り返しがつかないぞ!!」

「うぅ、追撃じゃなくて慰めの言葉をちょうだい……」

「たまにはリアルのもいいよネー」

 

 死んだ廣井さんが酒の力で再び死んだ後、本題に戻った。

 

「それで、岩下さんがどうやってメンバーを集めたのか、参考にさせていただければ助かります」

「あー、うん」

「……変なこと聞いてしまいましたか?」

「そうじゃないんだけどね」

 

 どこか気まずそうに、岩下さんが毛先を弄りながら続ける。

 

「私は声かけられた側だからさ」

「……清水さんに?」

「いや廣井に」

 

 あの頃の廣井はまだ人間だったなぁ、なんて悲し気な呟きは虚しく消えて行った。

視線の先にいる廣井さんは死に体だ。放って置けば寝ゲロで正真正銘の死体になるだろう。

ここを事故現場にしないため適当に体勢を整え、岩下さんに話の続きをお願いした。

 

 そうして話してもらった二人の出会い、清水さんの加入の経緯。それに伴うあれこれ。

どれも興味深いものだった。いくつかは大槻の勧誘活動にも応用出来るかもしれない。

 

「とまあ、私が知ってるのはこれくらい。参考になったかな」

「ありがとうございます。やっぱり正攻法が一番ってことですね」

「うんうん。アニメもコミックも王道が一番!」

 

 正攻法、王道。言い換えれば真っ当で地道な手段。結局最後はそういう手段が最も強い。

その中でどれが一番効果的か、費用対効果、実現可能性。その他諸々を頭の中で比較する。

いやその前に、まずは本人の意向を確認すべきだ。確認した大槻の顔はとても渋かった。

 

「じゃあ大槻、明日から地道に声かけとかチラシとか」

「いや」

「二文字」

 

 答えも渋かった。続きを催促すると、いつものように大槻は胸を張って語り始める。

 

「いい? 私ほどのギタリストになると、声はかけるものじゃなくてかけられるものだし、フライヤーは書くんじゃなくて書かせてあげるものなの」

「声かけるのは恥ずかしいし、フライヤーは渡す相手がいないそうです」

「解説しないで!?」

 

 にゃーにゃー言う大槻を見ているうちに、僕はそもそもの間違いを思い出した。

 

「……でも大槻が声かけるって考えると、むしろしない方がいいかも」

「はあ!?」

 

 それに確か絵心も無い。僕もその手の心得は無いから、その方面は手伝えない。

地道な方法って意外と、いや地道だからこそ本当の実力が問われて難しいのかもしれない。

一人目を閉じて納得していると、不意に吐息を感じる。目を開けると大槻の顔面が広がっていた。

 

「近いよ」

「いいでしょ別に! そんなことより、私が声かけない方がマシってどういうこと!?」

「最初僕に、なんて話しかけたか覚えてる?」

「……私と勝負しなさい!」

「辻斬りだけだよ、そんなこと言うの」

 

 あれは一学期の中間試験の時のこと。唐突に手袋を叩きつけられたことを覚えている。

魔王が言うことじゃないかもしれないが、不審者に絡まれたような心境だった。

時々現れる僕をなんとかしようとする、いわゆる勇者系の人だとその時は思っていた。

僕の慣れて腐ったその考えはある意味間違っていて、だけど別の意味では正しかった。

 

「しかも言った瞬間気絶するし、起きた途端にこれで勝ったと思わないことね、とか言い出すし」

「あれで勝ったと思われたら癪だったの! というか貴方、細かいこと覚えすぎよ!!」

「まあまあ二人とも、ちょっと落ち着いて」

「なかよし、なかよしだヨー」

 

 岩下さんが僕達の間に入り、清水さんが大槻を抑える。廣井さんは死んでいる。

ちょうど真ん中に立った岩下さんは、僕達の顔を見ながら柔らかい声を出した。

 

「言葉はともかく、それがきっかけで二人が仲良くしているのは事実でしょ?」

「それは、そうですね」

「誰にどう話しかけるべきかなんて、結局ケースバイケースだからね。ヨヨコと後藤くんの間では、きっとそれが一番だったんだよ」

「……言われてみるとそうかもしれません。あれ以外だと、僕は大槻のことを意識していないと思います」

 

 いくらあの頃の僕でも、流石にいきなりあんな振る舞いをされては戸惑いもする。

しかも名前も顔もまったく覚えていない人からだ。何だこの人って思った。

それだけの衝撃があったからこそ、僕は大槻のことを認識出来るようになったのかもしれない。

 

「説教臭くてごめんね。でも二人とも、やる前に無理とか無駄とか決めつけない方がいいよ。出来ても出来なくても、ただやることで生まれることもあるはずだからさ」

「いえ、その通りです。ごめん大槻、酷い言い方して。君が声かけてくれたから、今こうしていられるのに」

「…………分かればいいの。今度何か奢りなさい。それで許してあげる」

「ありがとう」

「ふんっ。……私もちょっと、ムキになり過ぎたから」

 

 喧嘩まではいかなくても、少し刺々しかった雰囲気が丸くなる。

僕も、多分大槻も、まだまだ人間関係が不慣れで、こんな空気になってしまうこともある。

今日は岩下さん達のおかげで軟着陸出来た。また今度、何かお礼を用意しておこう。

 

「志麻、二人のお姉ちゃんみたいだネー」

「イライザ、照れるからやめて」

「志麻お姉ちゃん、私お酒飲みたーい」

「それやめるか人生辞めるか選べ」

 

 僕と大槻が仲直りしている間、こっちはこっちでグループの絆を深めていた。

これもSICKHACKにとって大事な時間とは理解しているけれど、その間を縫うよう声をかける。

 

「すみません皆さん。ちょっといいですか?」

「もちろん」

「大槻が早速声をかける練習したいみたいで、もう少しだけお時間いただけますか?」

「いいよいいよー! バッチコーイ!!」

 

 大槻は僕相手だと緊張も遠慮もしない。それでは練習にはならないだろう。

でも憧れのSICKHACK、廣井さん達相手なら本番同様の緊張感が得られるはず。

そう考えてた僕の予想は正しかったようで、大槻は三人を前に唾を飲み込んでいた。

 

 それから数秒ほど深呼吸した後、大槻は意を決して口を開く。

 

「へ、へい、彼女―。うちいいギターあるんだけどー、ちょっと寄ってかないー?」

「ごめん二人とも。これは無理だ。諦めよう」

「なんでですか!?」

 

 なお次の日、イメトレで徹夜した大槻は気弱そうな子に狙いをつけ、実際に声をかけた。

結果は酷い目つき、酷い話し方、酷い言葉により、ものの見事に泣かれた。ぎゃん泣きだった。

こうして彼女は新宿の魔王最高幹部としての悪名を、ますます高めていったのであった。




若干擦れて口が悪くなるけど、家を出てもなんとかなるって話でした。
なお。このルートのラスボスはぼっちちゃんです。
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