主に射撃やライフル対する感情の描写をしています。
レームのおっさん はレームのおっさんだぜ
感想求む
無骨な壁にくぎられ、無味の椅子が規則的に置かれたそこは、
オーバーレンジ用の射撃場だ。
射撃場には4名の人がいる。
ハーロックとレームの姿もそこにはあった。
「それでは、前回君たちに話した通り、ここで新型ライフルの射撃テストをしてもらう。くれぐれも外部には漏らさない事。」
老齢の将校の言葉に、
「へいへい。」
「噂話を仕入れに来たわけじゃないんだ、」
それぞれ返事をする。
レームとハーロックは、一瞬顔を合わせる。
レームが肩を竦めるとやれやれとハーロックがライフルのあるベンチに向かう。
レームはそばのベンチに腰掛け、
「悪いけど、飲み物ある?」
相変わらずの能天気さで、となりの軍人に話かける。
「これが、今回のテストライフル
XL01だ。」
将校の言葉にハーロックは唸る。
よく出来たライフルだ。
それがハーロックの第一印象だった。
無骨な長い銃身、グリップはピストルグリップになっており、黒光り防止の塗装を施した可変式のストックが、印象的な形をしている。
「手にとっても?」
「構わない」
ハーロックはライフルを手に取る。
(ピストルグリップの握りごこちは違和感ないな、それに可変式ストックもいい、)
ハーロックは、ライフルのボルトを引く。
!?
(凄い…スムーズなボルト操作、ガタツキも妙な噛み方もない、精密な造りだな、)
かつて、ハーロックはこれ程素晴らしいライフルを手にしたことが無かった。
ボルトを戻し、ライフルを置く。
「どうだね?ハーロック少尉?」
「いい、ライフルです。私もこれまで素晴らしいライフルを手にしてきたがこれ程によく造られたライフルは初めてです。」
ハーロックの言葉に気を良くしたのか、老齢の将校は笑みを浮かべ、
「そうか、だが、ライフルはこれ程精密でも…。」
「弾薬が良くなければ意味が無い。」
ハーロックの言葉にますます気を良くした将校は、
「そうじゃ、いかに素晴らしいライフルでも、それは弾丸を撃ち出す為の道具に過ぎない。ハーロック少尉、君は弾薬は何を使っているかね?」
「基本的には銃器の専用弾ですが、あえてあげるならば、アキュティック社スナイパーグレネードです。
600ヤードの射程でも充分な精度で答えてくれますよ。」
「ふむ、たしかにアキュティック社の弾薬は優秀だ、だが、ハーロック少尉、その弾薬には手直しが必要ではないかね?」
少しからかうように将校の男が呟いた。
ハーロックは唸る様に頷いた。
(確かに、アキュティック社の弾薬は有無を言わせない精度がある。
他にも数える程だが、これと同精度の弾薬をつくる会社もある…だが、
既存のスペックでは越えられない壁…そう、)
「確かに、1.5kmを超える射程だと弾薬に限界があります。私も弾薬は買った後に手製で治してますし、レームも、お気に入りの308口径弾は自分で手を加えています。」
「そうだ、アウトレンジとなると、弾薬の性能には限界がくる、手直しが必要になってくる。」
予想通りの反応に、将校は鋭い目つきをハーロックに向け続ける。
「手直しには職人の手が必要だ。
しかし、そうなれば弾薬の生産性が落ち、一発の単価も上がる。」
そこまで言うと将校は副官の一人に合図する。
副官が小さな箱を持ってくる。
その箱には米軍試験用品関係者以外の接触を禁止するとの文字と法務省のトップシークレットのマークが刻まれていた。
「しかし、この弾薬はその問題を全て解決した、これはまだ我々しか知らない物だ」
将校が、箱を受け取りハーロックに渡した。
ハーロックは間を開け、箱の蓋をあける。
「凄い…。」
思わず声に出して、手に取った弾薬は淡い色を反射させ、その凶悪で、しかし優美な姿を見せていた。
「なんて弾薬だ…。」
ハーロックは完全に感服していた。これ程の弾薬は自分でも作れない。
「気に入ってくれたかね?、アキュティック社製新型弾薬、12.7mm弾、名前は試験用にXLハイパーグレネードと着けている。」
「素晴らしい弾薬だ…これ程の弾薬を一体誰が…。」
「機械さ、」
「!?」
将校の言葉に呆気にとられるハーロック。
「機械?これ程にまで精密で繊細な弾薬を?」
このような弾薬を最終的に仕上げるのは今や、絶滅するであろう、老技術者だと、ハーロックは分かっていた。
コンピュータではたどり着けない世界。経験と技術だけが、結果を作る世界、
そして、今や失われようとしてるその技術。
ハーロックはこの弾薬と同レベルの弾薬を作る老技術者を頭に浮かべる。銃器に生涯を捧げた仙人とも呼べる数少ない技術者たち。
その人たちがこの弾薬を手にしたら何と言うだろうか、
「どうやら、君もこの弾薬の虜になったようだね。」
笑みを浮かべ、将校はライフルを手にする。
「では、撃ってみるかね?」
「もちろんです。」
ハーロックの目は爛々と輝いていた。
「おっ、やっと撃つみたいだね〜。」
レンジの二回からレミントン社製のスコープを片手にレームはハーロックと将校達を見下ろしていた。
着々と準備を始めるハーロックを見据えながら、
「ハーロックの野郎、久々にあんな目してやがる…。」
そう呟く。
「ふ〜ん、ハーロックがあんなに楽しそうなのか。これは期待出来そうだね〜」
レームはライフルバックを開きウィンチェスターm70を組み立てる。
「最初は600mの的から狙ってくれ、」
そう言い残し将校が立ち去る。
ハーロックは身を伏せ、自分にベストな射撃体制を作る。
その目は遥か先の獲物を見据える鷹の目つきだ。
ライフルのストックを肩に密着させる。
(違和感がないな、しっくりくる、いいストックだ、)
ボルトを起こし、薬室にあの素晴らしくも冷血な弾薬を送る。
(こんな素晴らしい弾薬を俺は撃てるのか、)
スコープに目の焦点を合わせる。
レンズ越しにぼやけた的が姿を見せる
(600m?そんな距離ではこの弾薬の力を感じれる訳が無い。)
呼吸を整える。
(この弾薬は求めてる筈だ、もっと俺の限界を求めろと)
一次溶接の形をとり、ハーロックはライフルと身体が一体化するのを感じた。
(お前の、望みを叶える射手は俺だ
ハイパーグレネード。)
集中力が極限まで達し、心臓の鼓動のブレを感じる。
(俺は狙撃兵だ、あらゆる目標を確実に破壊する。)
トリガーに指を掛ける。
(だから、俺も限界に挑む。)
ドォォォンンン!!!
銃口が跳ね上がり、ストックが肩を蹴る。
スコープがぼやけ、しかし直ぐに目標に合わせる。
高台にいた、観測手は唖然と黙り込む。
静寂がしばらく包み…
「せっ…1800m!! Xリング!!凄い…完璧な射撃だ…。」
その場の全員が唖然とする中、
「あいつ…珍しく本気を出しやがったな〜。」
ニヤリと楽しそうな笑みを浮かべ、レームは貫かれた目標を見据えながら煙草の煙を吐いた。