長編案と短編集   作:蒼羅

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原作はスピッツの「夜を駆ける」という曲。
選んだ理由は1番好きな曲だから。

スピッツは歌詞が意味不明ということで有名です(たぶん)。
なので歌詞解釈も千差万別なのですが、もしかしたら既存の歌詞解釈と似てるかもしれません。1度だけ読んだ事があるような気がするので。
殆ど覚えてませんが、結構納得したような覚えはあるため、自然と刷り込まれてる可能性が大なのです。


短編
ただ2人で駆けていく


 

僕は嘘が上手かった。

だから僕は、周りが気付かないのをいいことに、強がってばかりいた。

そのうち自分を偽るのに疲れた僕が、窮屈になった家を抜け出して見上げた先には、いつも夜空があった。

 

君に初めて会ったのも、夜空の下だったように思う。

今夜も僕は、君に会いに行く。

 

よじれて薄汚れた金網をいつものようにふわりと()び越えてアスファルトの上を駆けていくだけで、こんなにも気分が晴れていくのはどうしてだろう。

地面を踏みしめることも、風を真正面から受けることも、何もかもが気持ちいい。

疲れを知らない僕は、(ざわ)めく木々の音に押されて駆けていく。

 

 

僕達が落ち合った頃には、木々はいつの間にか静まっていた。2人の呼吸音だけが浸みていく。

もう誰もいない街に、壁にかかれた落書が陽気に踊っていた。

 

「今日は何する?」

「そうだなあ……」

 

いつからか止まった時計が、僕達に永遠の自由を与えてくれていた。

それが僕だけだったら寂しかっただろう。君だけだったとしても、きっと辛かったに違いない。

 

僕達2人は似ているところなど無いように見えるけど、「()()()()()()ということ」ただそれだけで繋がっている。

よくある「赤い糸」なんかじゃなく、もっと脆くて儚いけれど、僕にとってはそれが全てで、それがあればもう他に何もいらなかった。

 

だから僕は答える。

 

「現実的なことでも出来そうにないことでもなんでもいいから、これから2人でやっていきたいこと話そうか」

 

出来ても出来なくてもいい。君とずっと一緒にいられれば、それでいい。

ただひとり僕の強がりを見抜いた君の傍は、心地いいんだ。

 

地面に転がれば、遠くに雲が見えた。

背中に感じる冷たいコンクリートの感触に、なぜだかいつか君とした甘くて苦いキスを、もう一度したくなった。

 

 

夢中で話しているうちに、瞬く間に僕達の間にはまるででたらめなバラ色の想像図が描かれていた。

そんなご都合主義的な未来などあるわけが無い、とでも言うように遠雷が静けさを破ろうとするけど、僕は構いやしなかった。

一瞬雷光に照らされた僕達の足元に、影はない。

 

でたらめなバラ色の未来なんて、あってもなくてもいい。君と一緒に居られれば、何色の世界でも構わない。

君も、そう思ってくれているだろうか。

 

 

今はただ、君と2人で夜を駆けていきたい。

 

僕ら以外の人間を見かけなくなったのはいつからだったかな。

もう誰もいないと分かっていても、いつか誰かが僕達のことを見つけて、2人の自由を奪われてしまうのではないかと不安になる。

 

僕達2人が、まるでそう、幽霊のようにこの世界に未だ存在していることがおかしいことくらい、なんとなく分かってる。

きっと僕らは、何かに取り残されたに違いない。

他のみんなはもう既にこの世界のどこにもいないのだから。

 

けれど、やっと手に入れた自由をやすやすと手放すものか。

 

例え全ての人間がこの世界から消え去ることが定めであったとしても、取りこぼしに気付いた何かが僕らを取りに来ようとも、僕はそれを破ってみせる。

 

 

2人でただこの夜を駆けていくことが僕の望みなのだから。





ただの歌詞解釈になってないか不安。多少脚色はさせてもらったけれども。
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