長編案と短編集   作:蒼羅

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お久し振りです。
話のジャンルはタイトルまんま。メモ書きだし題名考えなくていいかなと思って←

未だに私はウルキオラが大好きなようです。


オリ主転生モノ

 死んだ。比喩にあらず。

 薬の効かない新型のウイルスに感染して、新型故に当然のごとくこじらせ、最後は肺炎まで併発したんだったか。正直意識なんて朦朧としていたから、感染してからぽっくり死ぬまでがどれくらいの期間だったのかは分からない。

 

 親よりも先に死んでしまった。それが本当に心残りだ。

 さらりとした性格の母は、けれど無関心な訳ではない。普段表に出さないだけで、私のことをとても大切に思ってくれていたことを知っている。

 父とはそりが合わなかったが、年頃の娘と男親なんてものはそんなもんだ。そう割り切れるだけの大人げがお互いにあったし、いざということが起こった時は心配する程度に、家族としての情がある。

 ……いざということが、よりにもよって私の身に起こってしまったのだ。こんな親不孝者があるだろうか。

 

 もっときちんと寝ておけば。うっかり食事など抜かなければ。そういうことを積み重ねたから、既に何千人と感染して旧型になりつつあるウイルスなんかにやられるんだ。

 後悔は尽きないが、それよりもなによりも、私を取り巻く全てのものから遠ざかってしまったせいで、心もとなくて仕方が無い。

 寂しいと思えるほど自分の死を受け止めきれてはいないけど、この漠然とした心もとなさの方がむしろ耐えがたかった。身体があったらうずくまりたい。

 

 母は泣いているだろうか。父はきっと呆然としていることだろう。子を失う親の気持ちは、私には分からないけれど、辛くて悲しいということくらいは分かる。

 思い浮かぶ両親の様子に、心が痛くなる。泣いて縋りたかった。

 

 ……実際には涙など出てこない。いつもは堪えようとしても勝手に溢れてくるくせに、素直に泣きたい時に限って、私は既に死んでいるのだ。こんなことなら普段から素直に泣いておけばよかった。笑えばよかった。人と一緒に居ればよかった。どれも生きている時しか出来ないのに。

 

(……あれ)

 

 ふと、今の状況の異常さに気付いた時だった。

 

“――ようやく気付いたかい。随分かかったね”

 

 これは声だろうか。ふわふわと響くよういて、その実脳の一点に直接注ぎ込まれるような、気持ちの悪いくらいに明確な声だ。死んでまで誰かの声を聞くことになるなんて思っていなかった。いや、この場合「聞く」とは言えないのかもしれない。死んだ以上私の身体は、もちろん耳や脳だって、とっくに無くなっているはずなのだ。

 

(相手の意識がこちらに流れ込んでいる、ということなんだろうか。「死んだはずなのに意識がある」なんて異常な前提が成り立っているんだから、さらなる異常事態だってありえるもんなあ)

 

 気付けば、泣きたいほどのもどかしさは、無くなった訳ではないにしろ、すっかりなりを潜めてしまっている。今までの常識を覆されれば、却って冷静にもなるというものだ。……冷静すぎる気がしなくもない。本や漫画の読みすぎだろうか。

 

“「死んだはずなのに意識がある」……、まさにその通り。脳みそと意識との間に従属関係が無いことを、君は知った訳だ。一つ賢くなったね。おめでとう”

 

(……そりゃどうも。こちらの意識もそっちに行くみたいだね。話が出来るようでありがたい)

 

“ほう、そりゃどうして?”

 

(一方的に話を聞くのは趣味じゃない。質問したいこともあることだし)

 

“……用があることはお見通しか。さっきも思ったが、随分と頭が回るようだね、君”

 

(元はと言えば、話しかけてきたのはそっちでしょうに)

 

“全くもってその通り。「大なり小なり目的がなければ話しかけない」ということを、この状況下でも忘れないでいる人間は思ったより少ないものでね。おかげでうっかりしていた”

 

 なかなかにもってまわった話し方をするやつだ。藍染みたいな、BLEACHに出てくる大ボス級の敵キャラを思い出す。オサレなのかと思いきや、言っていることは割ととぼけているが。

 一人でそこはかとなくうきうきしていると、なんとなく呆れたような気配が漂ってきた。……だったらその話し方を何とかしろ。

 

“……えー、とりあえずきちんと意思の疎通も図れたことだし、本題に入るとするよ”

 

(ちょっと待て。意思の疎通すら図れない奴がいるのか?)

 

“話の腰を折るなよ”

 

(まだ本題には入ってなかっただろ)

 

“…………「意識で会話する」ってのがよく分からない奴が多いんだよ。いくつか平行して考えてることが全部流れ込んできてまともな文章になってなかったり、逆にそもそも文章化されてなかったり。「相手に意識を向ける」という点では、口に出して話すのとそう変わんないはずなんだがね。君みたいに初っ端からきちんと会話になる人間は思ったより少ない”

 

 どことなく声音が疲れている。口調も多少崩れてきた。……すみませんね、関係無いこと聞いて。

 それにしても、面白い事を聞いた。相手に意識を向けずしてどうやって喋るというのだろうか。……いや、この状況じゃあパニクって普段当たり前のようにしてることほど出来なくなるものなのかも知れない。

 

(なるほどね。私は割と冷めてると言いますか、感情が伝わるのが一拍遅いと言うべきか、まあとにかくそんな感じなんでまともに話せるのかもしれないねえ)

 

“……さっきから終始うきうきしているように思うんだが、それは?”

 

(こんな変なことが起これば誰だってテンションくらい上がるでしょうよ)

 

“まあ、それはいいとしてだ”

 

 少々強引に本題へと戻した彼は、死んだ後意識だけになって漂ってしまっている、私みたいな奴を回収して、どこかしらに転生させる仕事をしているそうだ。いや、仕事というよりはボランティアのような位置づけのようだが――この立場の曖昧さは死神代行に似ている――つまりはそれが彼のお役目ということらしい。

 二次創作も好きだった私には、少しばかり心当たりがあった。

 

(もしかして、これは神様転生のお誘いってやつ?)

 

“僕は神様じゃないよ。普通の人間って訳でもないがね。だから「寿命を迎える前にうっかり死なせてしまった」ということでもない。君は間違いなく、死ぬべくして死んでいるよ”

 

 なるほど確かに、「病にかかって死ぬ」というのは「事故って死ぬ」よりも現実味がある……ような、気がする。

 

“とはいっても、やることとしては神様転生とそう変わらない。どんな能力を持ち、どこへ転生するのか、それなりにアバウトにはなるが決めることも出来る”

 

(……マジか)

 

“大マジだよ”

 

 どうしたものか。

 転生モノであろうと、割と分け隔てなく読んできたし、その都度良作にめぐり会ってきたけれど、実際当事者になってしまうと色々な意味で怖かった。

 彼は「どこへ転生するのか決められる」と言った。つまりは、私の知っている世界――小説や漫画、アニメ、ゲーム、あるいはドラマや演劇のような、いわゆる物語とされるものの舞台となる世界――なども候補に挙がるということだ。

 そういうところへ転生すれば、いわゆるオリ主モノの主人公のように、大なり小なり物語に巻き込まれていくことになる。原作の道筋から外れていないか案じながら、壮大な喧嘩をしたり、とんでもない陰謀に巻き込まれちゃったりする訳だ。そういう展開に憧れないではないが、今まで少し頭の回転が速いかもしれないくらいの一般人として生きてきた私には、少しばかり荷が重い。

 

 質が悪いのはむしろ、「そういう展開に憧れないではない」私の精神構造だ。夢を見るのも大概にしやがれこの野郎。

 

“――随分と迷っているようだが、煩わしいことが嫌なら転生先を指定しないということも出来る。能力についても同様だ”

 

 長いこと沈黙していると、相手から助け舟が送られてきた。考えていたことがだだ漏れだったのだろう。的確なアドバイスだ。

 

 むしろ一番重要なのは今まで目を背けていた部分にあるのだけど、どちらかというとそれは自分の中で折り合いをつける類のものだ。転生するのはどうやら決定事項のようだし、だとしたら相手を困らせてまでこの事態の根本を問い質すべきではないだろう。納得のいくような答えは返ってきそうにない。

 さしあたって、重要なことだけ聞くことにした。軋む心には目を瞑るとしよう。

 

(今まで生きてきた記憶を持ったまま転生することは可能か?)

 

“可能だ。むしろ標準装備と言うべきだろうな”

 

(そっか……、うん、それなら良かった)

 

 僅かに心が軽くなる。これで後悔はしないはずだ。

 転生先は一先ず置いておくとして、あと決めるべきは能力か。これは一つだけ心当たりがある。人間が得ることの出来る能力を超えているが、欲しい能力なんてものは得てしてそんなものだろう。

 

(じゃあ、能力なんだけどさ、BLEACHに出てくるウルキオラってキャラ知ってる? 第4十刃、ウルキオラ・シファー)

 

“知ってるけど、そいつ死神どころか人間ですらないぞ。いや、死神の要素はあるけどさ、破面だろう?”

 

(うん、それで合ってる。ウルキオラの能力をトレースしたい。と言っても初っ端からそれはキツいから、枷を付けておいて欲しいんだけど)

 

“あー……、元がただの人間だと要素が偏って崩壊しかねないから、滅却師の能力も付加しておくけど、それでもいいか?”

 

(……おおう、すっかり忘れていた。このままじゃ犬死にするところだったよ。ありがとう。よろしく頼む)

 

 盲点だった。考えてみれば、虚を宿した魂魄は非常に脆くなる。原作で純血の滅却師である真咲に虚が入り込んだ時は、滅却師と虚にそれぞれ反する死神と人間の要素でもって虚を封じ、魂魄を安定させていたのだったか。

 その魂魄の形は、経緯は違えど主人公である一護も変わらない。きっとそれが一番安定する形なのだ。

 

“それで、結局転生先はどうするつもりなんだい? さっきは相当悩んでいたようだけど”

 

(それなんだよなあ……、うん)

 

 原作介入に悩むのは煩わしくもあるが、一方でそれもいいかも知れないと思っている節がある。能力にしたって、「あくまでも一般人だからハードな経験には耐えられそうにない」なんて思っているくせにウルキオラの能力を選んでみたりと、冷静になって考えてみれば、私は面白いくらいに矛盾だらけだ。参考にならない。

 試しに埋もれそうなくらい沢山ある御託を取り除けば、「知らない世界へ行ったとしても、その世界が肌に合わないことだってあり得るし……」なんて言い訳が残っている。どうやら私の希望はずっとそこにあったようだ。

 

 最終的に固まった答えは、いっそ潔いくらいに優柔不断だった。

 相手が嬉しそうだったのは、きっと気のせいではないだろう。

 

(私が好きな世界のどれかに転生させて)

 

“――いい答えだ。気に入った”

 

 押し流されるようにして、私の意識は閉じた。




ごちゃごちゃ書いた割に、なんだかなあ。
長いようで意外と短い。
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