将来妹が鬼に殺されるかもしれないので絶対阻止したいお兄ちゃんの話 作:シグル
そんな、ぐだぐだで終了した柱合会議から三日後。天元としのぶ嬢は揃って空屋敷に来ていた。ちなみに俺は非番、紅葉と美鶴殿は偵察で今日から数日留守の予定だ。
「で、いきなりどうした」
客間に通し、人数分のお茶と練りきりを差し出しながら二人に問う。
「色々と考えた結果、ここで話すのが一番手っ取り早いって結論になった」
「うん?」
聞けばあの会議の後、会話の流れで戦術についての話になったそうで。首を斬る筋力がないと溢した彼女に、天元は"毒"という道を示したという。
元忍という身であるから宇髄夫妻は毒によく精通しており、本来ならば奥方たちに蝶屋敷までその毒(人間用)を届けてもらう予定だったらしい。しかし、直前に須磨殿が誤って庭に全てぶちまけたことによりその予定は頓挫。新しく調合するために数日置き、俺に話があった天元の提案でこの空屋敷で会って渡すことにしたらしい。
昨日の夜烏によって届けられた手紙には、今日二人で訪ねる旨しか書かれていなかったから何事かと思えば。
「話は分かったが、何故この屋敷で会う…」
「すみません…」
「俺はあおいさんに話があったし、ついでにこいつに裏山を走らせればいい鍛練になると思ったんだよ」
しゅんと肩を落とすしのぶ嬢を親指で指し示す天元に軽く息を吐く。
「まあ今日は非番だから別に構わないがな。…しのぶ嬢、裏山には至るところに罠が仕掛けられている。油断すれば大怪我にも繋がるが、それでもやるか?」
「──やらせてください。柱になるために、上弦の鬼を斬るために。私に力を貸してください」
真っ直ぐ、逸らすことなく目を合わせられる。…なるほど。これは一種の覚悟を決めた者の目だ。
「…ひとつ、条件を付けようか。決して自身を鑑みずに鬼を狩ることなどしないと。家族と共にこれからも生きるという覚悟を、決めてほしい」
「共に、生きる…」
「そう。その覚悟を決められるなら、俺も手隙の時に力を貸そう」
何かを考えるように宙を見つめるしのぶ嬢を二人で見守る。そして大して時間もかけずに再び俺に視線を向けた彼女は、大きく頷くことでその条件を受け入れた。
「よし。じゃあ取り敢えず裏山に案内してくるから、天元はここで待っててくれ」
「おー」
以前天元に走らせたものと同様の道に案内する。しのぶ嬢は現役隊士だからきっと大丈夫だ。地面も木も自由に使って下山してくるよう伝えて、俺は一足先に山を下りた。
その道中、ここ数日の出来事を思い返す。
上弦の弐に負わされた傷を手当てし屋敷に戻った俺は、伝えた通り待っていてくれた猫―─茶々丸に、暁に訳してもらいながらではあるが話を聞くことに成功した。
何でも茶々丸は、子猫の時に弱っているところを珠世殿に保護してもらったらしい。それからずっと、彼女の使い猫として共に暮らしているのだとか。
俺が"珠世"を探していると知っていながら薬を提供してくれたのは、お礼の意味もあるが、何よりそうした方が彼女のためになると直感的に思ったからだと教えてくれた。直後に"信じられると判断した"とも伝えられたが、余程彼女のことが大事なのだろうな。
茶々丸が薬を持ってきたのは完全に独断だったらしく、それならばと手紙を託すことにした。直接会いに行くのもいいが、いきなり押し掛けるのは礼儀に反するし、余計な警戒もされたくない。あくまでも俺たちは協力してほしいと頼む側だ。おまけに今回、間接的にではあるが命を救われた者もいる。礼を尽くすのは当然と言えよう。
そう考えて手紙を認め茶々丸に預け、今日で五日になる。流石に考えが甘かったかと思わなくもないが、どうだろうなぁ…。
そう悩みながら天元の待つ客間に向かえば、聞こえてくる笑い声と猫の鳴き声。…猫の鳴き声?
「…茶々丸?」
にゃーん
「お。おかえり。あおいさん猫飼ってたのか?」
胡座をかいている天元の膝で警戒することなく丸くなっているのは金目の三毛猫。茶々丸だ。
「あー、いや…。前に怪我してるところを保護して、それ以来遊びに来るようになったんだよ」
「へぇ」
頭を撫でられて尻尾で返事をしている様子を見るに、完全に寛いでるな、これは。
なんというか、先程まで悩んでいたこともあって妙な脱力感を覚える。一つ息を吐き出し、まあいいかと天元の向かいに腰掛けた。
「それで、頼み事って?」
淹れ直したお茶を啜りながら話を向けると、真面目な顔をした天元が居住まいを正し口を開いた。
「実は──」
しのぶ嬢が裏山に行き、既に四半刻が過ぎていた。天元との話も終え、今は二人で昼餉を作っている最中だ。
「それにしても、あおいさん料理出来たんだなー」
「それはこっちの台詞だな。15で奥方たちが嫁いできたって聞いてたから、てっきり料理は任せっきりなのかと思ってたよ」
「基本は任せてるけどな。里抜けした直後は全員で手分けして作ったこともあるから派手に出来るんだなこれが。それに今回俺は言われた通り具材切ってるだけだし。あおいさんは?」
「ああ、なるほど。俺は子どもの頃、あまねと一緒に母に仕込まれてな。今日みたいに紅葉たちがいない日もあるし、結構作る頻度は高いよ」
天元が切った具材を順に鍋に入れて、調味料とともに煮込んでいく。よし、蓋をしてこのまま暫く放置だな。
「あまね様とってことは、生家の方か。神社なんだっけ?」
「ああ」
天元には継子時代に機会があって、俺が入隊するきっかけの話をしたことがあった。その流れで神籬の家や一宮の家のこと、耀哉とのことも話していたからあまねが妹であることも話した気になってたんだよなぁ。
「そういえば、あおいさんの千里眼ってのは未来が見えるんだよな?」
「うん?そうだよ」
いきなりどうした?と隣を見上げる。天元もこちらを見ていたようで互いの視線が交わった。
「未来が見えるなら過去も見えるのか?」
思いがけない質問につい固まってしまう。過去…過去かぁ。
「…その発想はなかったなぁ」
「そうなのか?」
「ああ。そもそもこの千里眼も今は滅多に使わないから」
使用条件が"額同士を合わせる"だから、使用頻度はどうしても下がる。
「未来視の制御に比べれば、過去は"もうすでに起こったこと"だ。変えようがないからおそらく見ること自体は簡単だろう」
「ほお」
「が、そう単純な話でもないだろうな」
誰にだって、人に知られたくないことの一つや二つあるだろう。俺にだってある。もちろん、隣にいる天元だってそうだろう。制御が出来ていない内は見るものを指定出来ないから、見られたくないものを見てしまう危険性が高い。
「だからまあ、練習するなら人を選ばないとな」
「…地味に面倒な能力だな」
「あっはは、そうだな」
そのまま話を進めつつ出来上がった料理を皿に盛っていく。すると、廊下の向こうから気配がした。
「お、戻ってきたな」
「だな」
「~~~っ!!」
「あ?なんだ?」
「…あ」
そういえば、客間には茶々丸がいたな。
天元と二人、皿を手を持ち客間に戻る。そこには障子にへばりつくしのぶ嬢と、座布団の上で目を丸くしてその様子を眺めている茶々丸がいた。
「…」
「…」
「…」
持っていた皿を盆に乗せ、着ていた羽織を脱ぐ。
「茶々丸。すまないが暫くここに潜っていてくれないか。寝てていいから」
んにゃ
もぞもぞと潜っていった茶々丸を見送り、改めて背後を振り返る。
「お前、猫駄目なのか?」
盆に皿を配置した天元がにやにやと笑いながらしのぶ嬢を見ており、それに対ししのぶ嬢は顔を顰めて無言を貫いていた。
「すまない、しのぶ嬢。張り紙でも貼っておくんだった」
「はりがみ…っ」
「…いえ、大丈夫です」
何故そこでツボにはまる?
視界に入らなければまだ平気なのか、そろそろと室内に入ってくるしのぶ嬢に苦笑を洩らす。
「昼餉を作ったんだ。よかったら食べていかないか」
「凄い…これ、一宮さんが作ったんですか?」
「あとはそこの筋肉達磨がな」
嘘でしょという顔を隠しもしないしのぶ嬢はかなり素直な性格だと思う。
今日の昼は筑前煮、豆腐とネギの味噌汁、そして白米だ。筑前煮はまだ量が残っているからそのまま夕餉に回す予定でもある。
「一応量は少なめに盛っておいたが、細かい調整は自分でやってくれ」
「あ、はい。ありがとうございます」
あまり見られていると落ち着かないだろうと自分の食事に集中することにする。天元の笑いも収まったようだし。
普段よりのんびり食べ進めて、時折「美味しい…」「祭りの神とその師匠が作ったんだから当たり前だろ」「意味が分かりません」等という突っ込みどころ満載の会話をしながら完食し、後片付けを終えて再び腰を落ち着けた。
「さて。それで、山はどうだった?見たところあまり怪我は負っていないようだが」
「死角から攻撃が飛んできたので驚いたし、いくつか掠りもしましたが概ね問題なかったです」
「なるほどな。然程時間もかかっていなかったし、現役隊士には簡単過ぎたか」
「けど、木を使っての移動はあまりしたことがなかったのでいい経験になりました。戦術の幅が広がります」
「そうか。何か為になったのならよかったよ」
「あとは毒についてなんですが…」
そこでちら、と二人して視線を横に移すと、天元が懐から厚みのある包装を取り出ししのぶ嬢に手渡した。
「中にいくつか入れておいた。量はそう多くないから、誤って口に入っても腹下すくらいで死にはしない、が。くれぐれも気を付けろよ」
「ありがとうございます」
中身をばら蒔かないよう注意深く開けると、中には少量の粉末を包んだ薄い紙が五つと説明書きが一枚詰められていた。
「これ、鬼に効くのか?」
ふと疑問に思いそう聞くと、二人は揃って首を傾げた。
「使ったことがないから知らねーな」
「実験してみないと分かりませんね」
「ふぅん…」
鬼の弱点は日光と藤の花のみ。これは産屋敷邸の書物にも書いてあったから間違いない。上弦を狩れるようにとのことだったが、まずはそこら辺の低級に効かなければ意味はないだろう。
何とはなしに庭に植わっている藤の花を見やる。…そういえば。
「昔、何かの書物で読んだんだが。藤にも毒があるらしい」
「え」
「そうなのか?」
俺につられて二人とも庭に顔を向ける。
「ああ。花と豆、そして
「…じゃあ、鬼の弱点の藤の花から毒を作れば」
「鬼を殺せるかもな」
じっと庭を見つめるしのぶ嬢の頭を軽く撫でる。
「良ければ一房持って帰るか?」
「いいんですか?」
「ああ。帰るときに好きなものを切っていくといい」
「ありがとうございます」
嬉しそうにしているその顔に、先日の陰りは見られない。気分転換になってるならそれはそれでいいんだが…一貫して鬼の滅殺方法の模索なんだよな、今日集まってる理由。
まあでも、鬼気迫る感じでやるより余程いいか。
その後はどの植物の毒がいいとか、毒を使うなら注入方法も考えようとか色々と話を進めて、半刻後に藤の花を一房持たせて帰すことになった。いやほんと物騒だな今日。
二人を玄関まで見送り、しんとした客間に戻る。くしゃっと畳に置かれている羽織を捲れば、そこには気持ち良さげに寝ている茶々丸がいた。
「随分待たせてしまったな」
声を潜めて人差し指の腹で額を撫でる。無理に起こすのも忍びないので、起きるまで刀の手入れでもするかと客間を後にした。
*****
にゃーん
手入れが一通り終わったところで廊下から鳴き声が聞こえた。
「起きたか、茶々丸」
にゃーお
「ふふ。おいで」
障子を閉めて行儀よくお座りをしている茶々丸の前に座る。
「さて。待たせて悪かったな、茶々丸」
うにゃん
気にしなくていいと言うように小さな身体を擦り付けてくる。可愛いなぁ。
「ありがとう。…またここに来てくれたということは、珠世殿からの返事を期待してもいいのかな?」
そう問い掛けると、俺に背負っている鞄を見せてきた。開けろということか?確認すると同意が返ってきた。では遠慮なく。
鞄の中には珠世殿からのものと思われる手紙と、刃の付いた何かの器具が複数入っていた。
先に手紙にさっと目を通す。柔らかく癖のない、丁寧な字だ。
『拝啓 一宮あおい様
ご丁寧な対応感謝申し上げます。
そして半年前、茶々丸を保護してくださりありがとうございました。この子は私の大切な家族なのです。その家族を助けてくださったこと、心よりお礼申し上げます。
今回のそちらからの申し出には、大変驚いているというのが正直なところです。
けれど、私の作成した薬が少しでも人の役に立てたのなら、それ以上の喜びはありません。それは今後、貴殿方と協力関係を結ぶことが出来たとしても変わらぬ本心と言えましょう。
しかしながら、こちらを信用できないのは貴方も同じなはず。ならば貴方の言う通り、まずはこうして文通で互いについて知っていくことが良いかと存じます。
そしていきなりで申し訳ないのですが、私から一つ頼みたいことがあるのです。
鬼の血を採取してはもらえませんか。研究を進めるためにはより多くの検体を必要とします。もし可能なのであれば、十二鬼月、それも上弦の鬼が望ましいです。数字が小さければ小さいほど、鬼舞辻から与えられた血の量も多くなります。少しでも鬼舞辻に近い細胞が欲しいのです。
この手紙と共に注射器を茶々丸に持たせます。剣先を刺し込むだけで血の採取が可能となりますので、そう難しいことではありません。
ただ一つ。鬼舞辻は自分の配下の鬼を常に監視しています。視界も、思考も、全て読まれてしまう。ですから鬼の血を採取する際はなるべく気取られないよう注意してください。
どうか、よろしくお願い致します。
かしこ 珠世』
書かれていた内容に口角を上げる。
「ありがとう、茶々丸。お前のおかげで協力を取り付けられそうだ」
んにゃお
満足げに一鳴きする茶々丸の耳の付け根を掻くように撫でてやる。
「これで鬼の血を採るのか…面白いな」
上弦の鬼の血か…。ちょうど御誂え向きなものがあるな。果たしてあれから採取が出来るかどうかはやってみないと分からないが。
押し入れの奥に収納している木箱を取り出す。蓋を開け中身を包んでいた布を退けると、現れるのはあの日斬り飛ばした上弦の弐の腕。
その腕に、送られてきた注射器を一本刺し込む。
「お、採れてる」
胴体から斬り離されてるのに採血出来るとかどうなってるんだろうな。鬼の身体は不思議なことだらけだ。
「直接会えるようになったら渡しに行こうな」
採取した血と簡単に返事を認めた手紙を背中の鞄に入れ、茶々丸の顔を揉む。
互いの信用度合いもそうだが、俺が上弦の弐に目をつけられた以上下手に接触してはあちらにも迷惑をかけてしまう。だから最低でも数ヶ月は空けたいところだ。…まあ、この情報を伝えると余計警戒させてしまいそうだから言わないでおくが。
茶々丸を外に出して走っていくのを、縁側の柱に身を預けながら見送る。
「さて…いつ会えるようになるかな」
まだ見ぬ協力者に想いを馳せる。
新たに結ばれたこの
「たとえ凶だろうが、吉にしてみせるさ」
そのためにも、互いに信用を得なければな。
*****
『拝啓 珠世様
私は鬼殺隊で空柱の名を賜っている、一宮あおいという者です。いきなりこのような形で手紙を差し上げてしまい、本当に申し訳ない限りだと思っています。実は、茶々丸とは以前浅草で怪我をしているところを保護したことがきっかけで知り合いました。およそ半年前の出来事です。
さて、今回このように手紙を認めたのには訳があります。
本日未明、上弦の弐と会敵した同胞が茶々丸の与えてくれた薬によって一命を取り留めました。血鬼術の効果を消す薬だと伺っています。その薬のおかげで、私は仲間を失わずに済んだ。貴女の作った薬が、一人の命を救ったんです。茶々丸は貴女に無断で持ち出してしまったと言っていましたが、それでも貴女に救われた事実に違いありません。本当に感謝しています。
珠世殿。我が鬼殺隊当主、産屋敷耀哉様は貴女と協力関係を結ぶことを望んでいます。
鬼を人に戻す薬。その薬が完成すれば、千年続くこの負の連鎖を断ち切ることができる。或いは、少しでも鬼を弱体化することが出来れば、全ての始まりである鬼舞辻無惨を屠る可能性が上がる。そのためにも、我々と手を結びませんか。彼の者の首を望む貴女にとっても、悪い話ではないと思います。
けれど、この言葉のみで信用しろと言うのも土台無理な話だと理解しています。なので、まずはこうして手紙でやり取りしてみませんか。
もし検体が必要なのであれば、出来る限りの対応を致しましょう。"会ってもいい"とそう貴女が判断するまで、こちらから接触することは一切しないと誓います。
どうか、ご一考頂きたく。
色好いお返事をお待ちしております。
敬具 一宮あおい』
茶々丸が大慌てで出て行った日の夕方。帰って来たこの子の首に括り付けられた手紙を開いた時は、背筋が凍る思いだった。
半年前に茶々丸が怪我をしたのは知っている。その時に羽織を羽織った青年に保護されたのも、愈史郎と二人見ていたから知ってはいた。その時は心配はしたけれど、数日後に怪我を治して帰って来たからあまり気にしてなったのに。それがまさか鬼殺隊の、それも柱とされる人物だったなんて。
…どうしよう。鬼殺隊に見つかってしまった。彼らは鬼を斬る側だ。鬼を憎み、恨み、多大な怒りを抱いている者が多くを占める。私はここ数百年人を食べてもいないし殺してもいないが、それでも鬼舞辻によって鬼にされた直後はそうじゃない。多くの人を殺してしまった。その罪は、決して消えることはないのだ。
だから私は、鬼舞辻だけでなく鬼殺隊も避けてきた。見つからないよう頻繁に住まいを変え、愈史郎と出会ってからは彼の血鬼術で文字通り隠れて暮らしてきた。
そんな相手に、今回初めて見つかってしまった。そのきっかけが使い猫の茶々丸だとは思わなかったけれど。
どうしよう。その言葉がぐるぐると頭を巡る。愈史郎に話したら一度キッと茶々丸を睨んですぐに引っ越しの準備に向かってしまった。そんな彼を見て私も準備を進めようと手を動かす。
けれど同時に、これを好機と捉える自分もいた。
もし、この手紙に書かれていることが真実なのだとしたら。こちらにも恩を感じているのなら、少なくともこの人は、私たちに刀を向けることはないのではないだろうか。どういう経緯で鬼殺隊当主に話が行ったのかは分からないけれど、もし、本当に当主自ら手を結ぶことを望んでいるのなら。
もう一度送られた手紙に目を通す。
繊細でいながらどこか芯のある、優しい字。
「…この縁を、無駄にする理由はない、か…」
手紙を受け取って四日目の夜、私は筆と紙を手に取った。
・人生初のナンパ?をした人(23)
手紙なら人柄も伝わりやすいかなと考えて文通を提案した。無事成功。
実はずっと怒っていた。鬼に対してはもちろん、自分自身に対して。だって間に合ったとはいえ首を捕ることは出来なかったから。次に会ったら絶対に狩る。
美人同士の物騒な会話に遠い目をしたくなった。
・友人が上弦に興味持たれて複雑な人(19)
え、上弦の弐に興味持たれたの…?そう…。
本当は一人で任務に行かせるのやめようかなと思ってた。でも柱には限りがあるし、下の階級の隊士をつけても逆に危ないから「警戒してね」だけに留めた。
・久しぶりの師匠の家で猫と戯れてた人(19)
あおいさん料理作れるのか…って割と本気で驚いた人。継子時代は美鶴さんか自分の奥方たちのどちらかが必ず家にいたから、オリ主の料理が披露される機会がなかった。筑前煮美味い。
以下、師匠について知っていることリスト
・11で鬼殺隊に入り、14で柱になった
・お館様とはお友達
・あまね様の双子の兄でお館様の義理の兄
・生家が神社で兄が二人いる
・千里眼使える
・料理できる←NEW!
・輝かしい笑顔で毒について話す美少女(14)
オリ主には本当に感謝しかない。この恩はいつか必ず返します。
この後蝶屋敷に帰ったら目を覚ましたカナエさんがいて皆で号泣する。落ち着くまでみんなで団子になった。
今後は姉のリハビリと毒の研究と実験に明け暮れることになる。藤の花から毒を抽出し、鬼を殺せるようになるのもそう遠い未来ではない。
・使い猫が爆弾持って帰ってきた人(鬼)
本当にびっくりしたし今日が命日かと思った。
鬼殺隊は自分を討伐対象として見ていると思っていたので、鬼殺隊側からの提案に頬を抓る毎日です。今でも信じられないけど手元にある手紙が現実だと訴えてくる。茶々丸も懐いていることと手紙の様子から判断して、数ヶ月したら会うことになるかもしれない。
取り敢えず愈史郎の説得頑張ります。
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以下補足&あとがき
きっと伊黒さんがいたらネチネチ言ってるなと思いながら書いてました。不死川さんはどうだろうか。あんな見た目と初登場の仕方(原作)だけど仲間想いな人だから、ちゃんと生きて戻って情報持って帰ったら優しい対応してくれるんじゃないかな。という幻覚を見ました。
ちなみにカナエさんが氷を吸っちゃったのは"ついうっかり"です。至近距離で斬られて咄嗟に回復の呼吸を使おうとした際に肺に氷が入ってしまいました。"吸ってはいけない"という事前情報はちゃんと頭に入っていたし、実際斬られる前は気を付けてはいたけど、"怪我をしたら回復の呼吸"という習慣には勝てなかった。という設定です。
それはそれとして何で天元としのぶ嬢はお互いに親近感を抱いてるんでしょうね。毒の相談とかしだしてどうしようかと思いましたよ…。
あと筑前煮って当時東京で食べられてたのかなと思いつつ、もう書いちゃったし細かいところは別にいいかと諦めました。気にしないでください。
空屋敷に植わっている藤の花は、藤襲山のものと同じ品種です。なので一年中咲いてます。柱になるときにお館様に貰いました。外から見えない位置に植えられているので、近所の人たちには常に藤のお香を焚いていると評判になってます。
後日同じ品種のものを蝶屋敷に届けるようお館様にお願いします。鬼を滅するためならと、お館様もにっこり笑顔で即了承。ちなみに激レア。一年間狂い咲くとかとても稀少種なので他の隊士の元にはいかない。そっちに回すなら藤襲山に植えると思う。あおいが貰えたのはお友達だから。お屋敷はお館様から、藤の花は産屋敷耀哉個人からの贈り物です。
それから本当に今更なんですけど、カナエさんが亡くなったのって冬だったんですね…そしてその年の夏に時透くんが保護された…。うん、見事に順番逆になりました。まああれです。魔法の言葉「ご都合主義」の発動ですね。よってこの話では、
花柱 胡蝶カナエ 上弦の弐と会敵(夏)
↓
時透兄弟保護
ということにします。皆さん優しいからきっと許してくれるって信じてます。
本当は天元の"お願い事"についてだとか、時透兄弟についてだとかまで話を進めるつもりだったんですよ。何でほんの数日の話なのに一万字越えてるの。
しかも初の他者視点がまさかの珠世さん。紅葉かあまね様かお館様か。天元あたりも面白そうだなと思っていたのにどうしてこうなった。いや理由は分かってるんです。あおいからの手紙をどこに捩じ込もうか迷った結果なんです。折角書いたしそれだけ載せるのもいいけどなんだかなーと思い、気づけば珠世さん視点を書いていたという。驚きだぜ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!また次回お会いしましょう!