将来妹が鬼に殺されるかもしれないので絶対阻止したいお兄ちゃんの話 作:シグル
頭上で煌々と輝く満月を背に夜道をひた走る。音柱と霞柱の協力の元、本日の俺の任務は既に二人に引き継がれていた。
今度礼に何か奢ろう。その時は有一郎も誘うか。
そんな事を考えつつも列車を追いかける足を止める事はしない。
流石に正確な停車位置は把握できていなかったため適当な場所で待機していたが、少々手前過ぎたらしい。
炎柱たちを乗せているであろう奇妙な肉塊に覆われた列車は、つい先程目の前を通過していった。とはいえ姿は捉えているから、適度に距離を保ちつつ討伐を待つ事とする。
今回俺は、列車の任務自体には手を出さない事にした。介入すればするだけ未来は変わる。折角可愛い弟子たちが協力してくれたのに、未来が変わったから目的を達成できなかった、なんて事にはしたくない。だから手を出すならその後。上弦の鬼が現れてからだ。
医者や輸血用の血液など諸々の手配は可能な限りしておいた。胡蝶も今夜は蝶屋敷に待機予定だと言っていたから、急患が運び込まれても人手不足になる事はないだろう。
事前の準備は可能な限り終えている。
だからあとはもう、俺たち次第だ。
視線の先で列車が大きく跳ねる。このままでは脱線すると判断し、型を放つために刀に手を添えた。が、不自然な風が巻き起こったのを確認して構えを解く。
(炎柱か)
中にいて状況把握も碌にできないだろうに、咄嗟の判断と行動力は流石としか言いようがない。
横転した列車から鬼の気配が徐々に消えていくのを感じ取りながら側に駆け寄る。ざっと見たところ死者はいないようだった。
その事に安堵しつつもすぐに思考を切り替え周囲の気配を探る。
列車の鬼は討伐した。変化がなければそろそろ姿を表す頃だ。
(──来た)
前方車両。炎柱と竈門がいる辺り。
八両分の距離などもはや誤差の範囲だ。なんの問題もない。
脚に力を込め、間髪入れずに一気に駆け出す。そして視界に映った光景に迷わず刀を振り抜いた。
(空の呼吸 陸の型 光風霽月)
月明かりを受けて淡く光る刀身で上弦の腕を斬り飛ばす。大きく距離を取り忌々しそうにこちらを睨むその瞳には"参"の文字が刻まれていた。
この圧であの気狂い野郎よりも下なのか…。やはりあの時は遊ばれていたな、と改めて苦い気持ちになる。
「…何だ、お前は。邪魔をするな」
「──生憎と、お前らの言う事を聞く義理はないんでね」
即座に再生された腕をみるに、上弦の鬼にこの型は効かないらしい。面倒な、と思いつつそれを表に出す事はしない。代わりに率直な意見を述べさせてもらった。
その瞬間ビキリと相手の額に青筋が立ったように見えたがきっと気のせいだろう。この程度の言葉で挑発できるなら、上弦の参は随分と
刀に付いた血を払い刃先を前に向ける。視線を鬼から逸らさないまま炎柱に声を掛ければ、力強い返事が返ってきた。
うん、頼もしい限りだ。
数年前に俺が初めて上弦と対峙した時、俺の後ろには瀕死の胡蝶がいた。
あの時と同じように、今俺の後ろには守らねばならない者たちがいる。
けれど、今回俺は一人じゃない。柱がもう一人いるのなら全員での生還も不可能ではない筈だ。それに何より、俺は今
脳裏を過る本来の流れを追い出して前を見据える。
「俺はそこの男と話があるんだ。弱い者に用はない」
「──弱い?」
おっと炎柱。どうしたそんなに低い声を出して。いつもの明るく溌剌とした態度はどこに行った?
思わず炎柱に顔ごと視線を向けそうになったが寸でのところで堪える。
今の声はあれだ。俺が以前槇寿郎殿を罵倒した際にあの人から発せられたものと同じだった。
やはり親子。こんなところまで似るとは。
一人で静かに血の繋がりを感じている中、鬼と炎柱の会話は進んでいく。
「見ればわかる、その強さ。お前、柱だな?闘気が練り上げられている」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ。初対面だが、俺は既に君の事が嫌いだ。話す事はない」
「そうか、俺は猗窩座。俺も弱い者は大嫌いだ。弱者を見ると虫酸が走る。…特にお前。お前からは一切の闘気を感じない。何故そこに立っている?弱い者はさっさと去ね。それとも──今ここで殺してしまおうか」
目を細めてこちらを、俺を見る鬼からははっきりとした嫌悪を感じる。
余程俺の存在が気に食わないのだろう。初手で竈門への攻撃を防いだから余計だろうな。
まあ鬼にどう思われようと別に構わないんだが…それはそれとして先程から会話が進むにつれ隣から伝わる冷気が増している気がする。音柱もそうだが、いつも元気で賑やかな奴が静かだと後が怖いんだからやめてほしい。
「…お前が俺の闘気とやらを感じ取れないのであれば、それは俺にとって褒め言葉以外のなにものでもないよ」
「何…?」
「数百年生きていて俺みたいなやつに会うのは初めてか?目に見えるものだけが全てではないと最期に知ることができて良かったな」
ビキリと鬼の額に青筋が増える。同時にこちらに掛かる圧迫感も増した。
後ろにいる竈門から小さく「うわぁ…」という声が聞こえたが、それはどういう感情から出た声なんだ。
「…闘気とは謂わば強さの象徴だ。強ければ強いほど練り上げられ全身に巡る。杏寿郎、お前の闘気は至高の領域に近い。が、あと一歩が及ばない。何故かわかるか?」
どうやら俺との会話は一旦脇に置いておくらしい。そのまま感情任せに来てくれれば狩りやすかったのに。存外冷静なんだな。
炎柱に視線を戻した鬼は愉悦と嘲りの混ざった笑みを浮かべて更に語る。
「人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。お前も鬼になろう、杏寿郎。そうすれば100年でも200年でも鍛練し続けられる。強くなれる」
さあ、と言うように差し伸ばされた手を、炎柱は黙って見つめていた。
「──老いることも、死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ、死ぬからこそ、堪らなく愛おしく尊いのだ。強さというものは、肉体に対してのみ使う言葉ではない」
淀みなく答えるその声に迷いはない。
「この場にいる者は誰一人として弱くない。侮辱するな。何度でも言おう。俺と君とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも、鬼にはならない」
静かでいて力強い言葉はこの場によく響いた。そしてその内容に、俺の口角はゆるりと上がる。
しかし、鬼にとっては期待していた返答ではなかったのだろう。
「そうか」
すぅ、と目を細めて徐に構える。
「術式展開。破壊殺・羅針」
一歩踏み出された足元で、地面が割れる。刹那、妖しく光が放たれ陣が浮かび上がった。
「鬼にならぬのなら殺す。それからお前も。無駄に達者なその口、いつまで利けるか見ものだな」
言い終わるや否や、鬼は駆け出し瞬く間に眼前に迫った。振りかぶられる拳を上体を傾ける事で避け、代わりに伸ばされた腕を斬り飛ばす。
背後から炎柱が首を狙って刀を振るうが、そちらに顔を向けることなく鬼は刃を受け止めた。そのまま軽い動作で刀を弾くと一度大きく跳躍し俺たちから距離を取る。
「中々いい刀だ。やはり鬼になれ、杏寿郎」
今度は炎柱に向かって突進していった鬼がそう話し掛けるのが聞こえる。
援護に回ろうとして、近くにいた竈門とこちらに合流した嘴平が加勢しようと身動いだのが見えた。
「二人とも、満足に動けないのなら足手まといになる。分かるな」
俺の言葉に肩を震わせて固まった二人から視線を外し、鬼との攻防を繰り広げる炎柱の元へと距離を詰める。
厳しく聞こえたかもしれないが、無駄に命を散らすより遥かにましだ。
炎柱が腕を斬ったのに合わせて鬼の首に一閃。しかしすぐに避けられてしまう。振り向き様に伸ばされた手をこちらも刀でいなしていく。
宙に舞う血が誰のものかは既にわからない。
そう大した時間も経っていないのに俺たちは少なくない怪我を負っていた。
鬼に対して容赦なく斬りつけてはいるが、傷をつけた端から塞がっていくため効果があるとは言いづらい。わかっている事とはいえもどかしい事この上ないな。
加えて炎柱は先程刀を折られてしまった。今は動けない竈門の刀を借り受けて戦っているが、自分のものではないから違和感は拭えないだろう。
俺の刀も刃こぼれが酷い。戦闘が長引けば長引くほどこちらが不利になるのは明白だった。
加えて先程潰された左目から流れる血が鬱陶しくて仕方ない。
…ああ、でも。
視界は狭まったのに、よく見える。身体が熱い。心音も、周りの音も、どこか遠くに感じる。
あと少し。
もう少し先に行けば、何かが変わる。そんな予感に刀を握る手に力を込めようとして。
──これ以上は、駄目だ。
無意識のうちに出された結論にほんの一瞬、動きが鈍った。
その一瞬の隙を逃がすほど、相手の鬼は甘くはない。
「っ!」
咄嗟に左の脇腹辺りに刀を滑り込ませて飛んで来た拳をいなす。けれど力が足りなかったのか僅かに肉を持っていかれた。
「っ…」
踏ん張りが効かずに後ろの車体に身体を打ち付ける。肺の中の空気が吐き出されて呼吸が止まった。頭部に液体が伝う感触がする。今の衝撃でどこか切ったか。
即座に回復の呼吸に切り替えるが、止血しきる前に拳が飛んで来た。
それを避け、握ったままだった刀で付け根から両腕を斬り飛ばす。
「炎柱!!」
「承知した!!」
鬼の背後に迫った炎柱が刀を振り抜くのを見ながら、自身の左手を腰に伸ばした。触れるのはかつて磨り上げてもらった俺の最初の一振り。
一瞬で再生した腕が再び動き出す前に、掴んだ短刀を相手の米神に向かって真横から突き刺す。…ちょっと弱かったか?いや、動きが止まった…!
こちらとてその隙を逃すほど未熟ではない。
炎柱が叩き込んだ刀に俺の日輪刀をあてがい力を込めた所で、前方から勢いよく首を掴まれた。
「ぐ、ぅっ…」
直前まで硬直していたくせにもう動く事を思い出したらしい。
憤怒の顔をしているのだろうが、生憎こちらは視界が白んできてよく見えない。
何か叫んでいるのか音が聞こえるが、そんなに聞かせたいならさっさとこの手を離せ馬鹿力が…っ!
刀を握り続けているのはもはや意地だった。絶対に離してなるものかと力を振り絞って刀に込める。だがそれももう限界に近い。
鬼の向こう側に見える炎柱が何かを必死に叫んでいるが、それが現実なのかもわからない。
脳に酸素が行き渡らないせいで思考まで鈍ってくる。
──だから、考えるよりも先に身体が動いてしまった。
「ぁ…っ!?」
「ぅ、げほっ、ひゅっ…かはっ」
いきなり入ってきた酸素に盛大に噎せる。脚に力が入らず体勢を崩しかけるが、それでも刀から手は離さない。それに、なにやら様子がおかしい。攻撃が飛んでこない。すぐに呼吸を整え生理的に出た涙を瞬きで流し、唯一残った視界を晴らす。
そうすれば、目に入るのは上弦の参──の内股姿。ついでに両手で隠すように男の急所を覆っている。
「っ…!…っ、」
何がどうしてそんな体勢になっているのか気になるが、そんな事に思考を割く暇があるのならさっさと首を斬ってしまいたい俺は深く考える事を放棄して再び刀を首に押し込んだ。
ふわりと風が吹く。視界の端で東の空が淡く染まっていくのが見えた。
口元を盛大に引き攣らせながら、それでも尚力を緩めずに押し込み続けた炎柱のお陰か、鬼の首は落ちるまであと八分(※3cm)のところまで来ていた。
「いけー!伊之助!動けー!!」
遠くで竈門の叫びが聞こえ、それに反応した嘴平が駆け出すのが見える。その両手には刃こぼれした特徴的な刀が握られていた。
山々の輪郭に沿って空が橙色に染まっていく。
鬼は未だに急所を押さえていたが、流石にこれ以上は不味いと判断したらしい。振り払うためにか、僅かに腕に力が込められる。
ここまで追い込んだのに逃げられては敵わない。咄嗟に反応した片手が掴んだのは上弦の参の米神に刺さり続けていた短刀の柄部分。誤って抜いてしまわないよう、刀身は奥まで押し込んだまま傷口を抉るよう手首を捻った。
ビクンッと身体を跳ねさせ再度硬直した鬼の隙をつくように日輪刀を押し込み続ける。
炎柱と、駆けつけた嘴平からドン引きするような気配を感じつつ、そんなものに構っている余裕は残念ながら無いので放置させてもらう。
そして、遂に。
──ばつん
それまで感じていた強い抵抗感が消える。どさりという音につられて足元に視線をやった。
倒れ込んでいる胴と頭部に分けられた上弦の参。朝日に照らされ、少しずつその先端部分から灰に変わっていっている。
斬った、のか…。
いやしかし、油断はできない。
万が一にでも動き出さないよう念を入れておこうと刀に手を掛けて──。
「──…」
不意に、目が合った。
ふるふると小さく首を横に振る
ともすれば幻覚だと言われても納得してしまう程だが、懇願するかの如くこちらを見上げてくる瞳は
その腕に抱かれる見知らぬ男と、先程斬った鬼の姿が重なる。
ふぅ、とため息とも取れる呼吸をひとつ。
刀から手を離し、代わりに注射器を手に取った。
サクリと刺した腕からは既に戦闘の意思は感じない。
──ありがとうごさいます
回収した注射器をしまう俺の耳に届いた濡れた声は、果たして幻聴だったのか。
視線を横にずらしても何も映さない己の瞳に、それでいいと瞼を閉じる。
「一宮さん!」
はっきりと聞こえた呼び声に、立ち上がりながら振り向いた。
「炎柱。怪我は」
「ない!」
間髪入れずに返された言葉に思わず笑う。どこもかしこも怪我だらけなのはお互い様だった。
離れたところで何か騒いでいる新人たちを見やる。
「上弦の鬼を相手に死者なしだ。上等だよ」
「ああ。…一宮さん、ありがとうございました」
穏やかな顔をした炎柱が唐突に俺に礼を言ってきた。
「…お前に礼を言われるような事あったか?」
少し考えたが特に思い当たらない。問い掛ければふふ、と小さく笑った煉獄が、色々とあったのだと教えてくれる。
答えになっていないが、本人が納得しているのでよしとする事にした。
「空柱様!炎柱様!」
緊張感を孕みつつも、どちらかと言えば喜色を多分に含んだ声が鼓膜を刺激する。
負傷者の救助にあたっていた隠から数名がこちらに来たのだろう。
その中に見知った気配があるのを感じ取って、俺は今度こそ身体から力を抜いた。止血はしているが、色々なところが痛みを訴えている。なんだかとても疲れた。
被害状況の報告もそこそこに、俺たちは早々に蝶屋敷へと向かうこととなった。
紅葉の背におぶわれるのも久しぶりだな、とぼんやり思い、次いで採取した血の存在を思い出す。
「紅葉、」
意図したよりも小さな声になってしまったが、きちんと紅葉には届いたらしい。無言で続きを促された。
「採取した上弦の血が、隊服に入ってる。胡蝶姉妹に、渡してくれ」
「わかった」
「それから…すまない。すこし、休む」
「ああ」
いつもより固いその返事に、吐息交じりの笑いを落とす。
「心配するな…すぐに、起きるから」
俺の身体を支える腕に力が込められたのを、遠退く意識の中で確かに感じた。
たくさんの約束をしている最年長(27)
理性は強い方だし感情の波を意図的に一定にする事には慣れてるけど、それでも耐えられないものもあると今回再認識した。耐えられなかったけど触れるだけの軽いもので終われたのは偏に以前交わした約束のおかげ。あと単純にがっついてると思われたくない。
この度無事"炎柱死亡"という名の運命をねじ曲げる事に成功。脇腹の肉と左目はその代償だと思ってる。正解です。
ずっと心臓が暴れてた人(19)
不意打ちで"男"を見せられて色々ときた。とりあえず心臓が心配。壊れそう。
でもオリ主の余裕も崩せたし、そういう欲を自分に見せてくれたので恥ずかしいけど嬉しい気持ちでいっぱい。
別れる前にいつかと同じように指切りをした。
死亡フラグをへし折られた後輩柱(21)
まさか自分が死ぬの未来を見たオリ主が応援に駆けつけたとは微塵も思ってない。
オリ主は真実煉獄家の恩人なので、蔑ろにされると「は?(低音)」ってなる。特に今回は初対面の相手に「弱い」と言い掛かりをつけられたのでおこ。
原作よりも攻撃力上がったかもしれない。
自分たちの弱さを痛感した新人たち
下弦と上弦の差をこの度知った。そしてそれに相対(あいたい)する柱の強さも。
今回は怪我もしていたし圧にも負けてしまったけど、次は絶対に足手まといになんてならない。
それはそれとして、上弦の鬼に対して真顔でかつ淡々と煽り散らかすオリ主に長男は慄いた。
背中を任された隠(30)
実は複数の隠と共に戦闘中ずっと乗客の救助と避難にあたってた。
何も教えられてなかったけど、予め手を回してる様子からこれは何かあるなと察してた。離れていても感じる威圧感に冷や汗は流れたし身体も固まったけど、絶対に鬼は来ないと信じていたから救助活動に専念し続けた。
それでもやっぱり心配はする。頼むから大怪我負ってるのにやりきった顔して笑わないでほしい。
師匠の任務を引き受けた元継子たち
烏から上弦の参討伐の報せを聞いて「これか」ってなった。全員生還と聞いて心底安心するとともに「「うちの師匠凄いだろ/でしょ」」と鼻高々。でも無傷じゃないのも知ってるからすぐに見舞いの予定を立てる。
後日詳細を聞いた兄弟子は急所を蹴り上げた部分で笑いすぎて腹を攣った。弟弟子はそんな兄弟子の横で冷静に自分だったらどうしてたかなって考えてた。今後鬼に対して煽り散らかす姿が見れるかもしれない。
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以下捕捉&あとがき
あおいは「愛してる」という言葉を直接言うタイプじゃなさそうだなって思ってます。その分目や態度に感情を込めてるので、相手(この場合は鯉夏)にはちゃんと伝わってます。ここぞというときに言うタイプですね。
まあ、本文で言ってるように言霊の教えがあるからという理由もありますが。
ちなみに"朔の日に会いに行く"っていう約束を二度したのは、言霊を意識してるのと、あとは単純に生への重しにするためです。ちゃんと生きて帰るんだっていう意思表示みたいな。
別パターンで、鯉夏の口を手で覆ってそこに唇を寄せるっていうのも考えてました。
「…ここにはいずれまた、な」
って小さく笑いながら鯉夏の唇をふに、とするあおいと、そんなあおいに顔を真っ赤にする鯉夏。
うん、これはこれで楽しいと思う。
無限列車編を書くにあたって、どうやってあおいを捩じ込もうか考えた結果こうなりました。
あおいの記憶ってかなり情報詰まってるんですよね。もちろん他の柱にも当てはまりますが、産屋敷邸の場所を知っているので。
ただあおいだけが知っている情報もあります。産屋敷家と一宮家が管理している資料は一応全部頭に入ってるし、そもそも産屋敷邸が見つからないように張ってる結界も元はあおいの提案なので。他にも色々とプライベートな事も把握してるし、もし仮にそんな情報が鬼に渡ったら目も当てられないなーって思ったらもう不参加でいいかなって。
煉獄さんの記憶に関してはあれです。お守り効果でお館様関連の記憶は魘夢には見れなかったって事でひとつ。ほら、不思議パワー込められてるので。ね?
それと煉獄さんと縄で繋がってた女の子ですが、夢の端を見つけたところであおいとのやり取りに場面が変わったため、スタートからやり直しになってます。つまり首を締められることなく終わってる。よかったね!
さて対猗窩座戦ですが、猗窩座ファンの方本当にごめんなさい。お願いだから石投げないでください。
夜中にうとうとしながら思い付くまま綴ったらこういう結果になったんです。
流石に駄目かなって思ったんですけど、眠いの我慢して頑張って書いた過去の私が脳裏にちらつくんですよ。それと同時に爆笑してる派手柱が脳内に生まれたのでこれはこれでありかなって考えることを放棄しました。
これ以外に新しく思い浮かばなかったっていうのもありますが。
でも首絞められて、両手塞がってたら使えるのは足だけじゃないですか?あおいは鬼もろとも自身の脇腹を斬ったりと変に雑なところがあるから、足が動くなら蹴りあげそうだなって。そしたら正面に立ってるんだから急所に当たるくらいするし、いくら上弦だからって流石にそんなところは鍛えてないでしょう、という結論に至りまして。
あ、男が男の急所を蹴りあげるなんて惨いことはしない!というツッコミはなしの方向でお願いします。私女なのでその辺の感覚わかんない。
原作で煉獄さんは「致命傷になるから」という理由で炭治郎に待機を命じていましたが、あおいは炭治郎の怪我の程度を知りません。流石に上弦相手に目を逸らすなんて自殺行為はできないので。起き上がれてない事から怪我か、あるいは疲労で動けないんだろうと判断してます。
ただ、たとえ怪我もなく体力も万全だったとしても、放たれる圧に気圧されてる時点で戦力外だし下手に動かれて上弦の標的が柱から一般隊士に変わるのは困る。守りやすいように、全員が生きて帰れるように、一ヶ所に留まっていてくれ。
そんな想いからの発言です。本当は本文に入れようと思ったんですけど、説明くさくなったのでここで解説。
本来の流れを変える責任ってどう取るのかなって考えた時、単純に対価を支払うんだろうなぁと思いまして。ただ等価交換だとあおいが死んじゃうので、身体の一部を差し出す事で責任を取った事にしました。
カナエさんや有一郎のときは本来の流れを知らずに助けてるからセーフ。でも今回は意図的に命を救ったから代償が必要という裏設定。
過去に同じように未来視によって救ったモブたちはいたし、その度に諸々の要因で体調崩してたけど、救った後に別の任務で死亡してたりするから最終的には体調崩す程度の代償で済んでたっていう後付け設定もあります。細かく考えずに思い付きで書いてるから、今後もきっと後付け設定は増えます(おい)。
最後に目が合った相手ですが、あおいは普段からこういったものが見えている訳ではありません。たまたま波長が合ったのか、はたまた朝日の悪戯か。とにかく本当にただの偶然で、一度きりの短い遭逢です。
血筋的に見えててもいいかなとは思ったんですが、流石に設定盛りすぎかなと。ただ霊力はあるし神域にも入れるので素質はある。兄たちはもしかしたら見えるかも。
さて!長々と書いてしまいましたが、ここまでお付き合いありがとうございました。
以下おまけです。
気がついた時には、全てが変わっていた。
辺り一面血の海で、愛する人には声が届かない。
そんな現実に呆然としているうちにあの人は鬼になってしまった。
何度も何度も声を掛けた。
もうやめて。
かえりましょう。
元の優しい貴方に戻って。
お願いだから──それ以上自分を傷つけないで。
愛しい人に声が届かないという事実が、ただひたすら悲しかった。
そうやって、どれだけの時間が経っただろう。何回季節を繰り返して、街並みが変わっていくのを見届けただろう。
そんな、新しいものが増えて、街行く人たちの服装も様変わりした頃。
その人は現れた。
この人ならと思った。
真っ白で眩しい、綺麗な人。
あの人はもう一人の髪色が華やかな人に惹かれたみたいだったけど、私は寧ろこの真っ白な人から目が離せなかった。
きっとこの人なら、終わらせてくれる。
私が全部、連れていくから。
地獄だろうがなんだろうが、必ず連れていくから。
だからどうか。
──私が愛した唯一の人を、どうか止めてください。