将来妹が鬼に殺されるかもしれないので絶対阻止したいお兄ちゃんの話 作:シグル
行ってくる、と私に告げた声は力強くて、それでいてとても穏やかなものだった。
右手に握っていた刀を鞘に戻したあおい様は、次の瞬間にはさっきまで女の人が立っていた筈のところにいて、その女の人は姿を消していた。
どこに行ったのだろうという疑問は、あおい様が窓から外に身を投げ出したことで頭から飛んでいってしまったし、その衝撃もすぐに別のもので上書きされることになる。
ドォンッ!!
いきなり響いた爆発音に、反射でびくりと身体が跳ねた。
慌てて窓の外を覗けば、そこにはゆったりとした姿勢で立っているあおい様とキリッとした表情の炭ちゃん。そしてそんなあおい様たちに向かって声を荒げている女の人がいて、思わずホッと安堵の息が漏れる。
よかった、ご無事だわ…。
「…」
あおい様は彼女に向かって"上弦の陸"と言っていた。上弦といえば月だけど、人に対して言う言葉ではないからたぶん違う。
それにあの帯。気づいたときにはばらばらになって足元に落ちていたけれど、間違いなく自由に動いていた。
何だったんだろう。彼女は何者で、何を目的にここに現れたのか。
あおい様はただ一言「人攫いのようなもの」だと表現していた。つまり彼女が、ここ最近吉原で頻発していた失踪事件の犯人で、あおい様がここに通う理由となった存在。
改めて窓の外を覗き見る。さっきの爆発騒ぎでいつもとは違うざわめきが周囲に広がっていて、二人の会話は一部しかこちらには届かない。
それでも、物騒なことを叫んでいる相手に対し、あおい様がとても静かに対応しているのはわかる。
「あ…」
片足を引いて腰を落としたかと思えば、瞬きの間にあおい様は姿を消していた。その速さについていけずうろ、と視線を巡らせれば、ふわりと羽織を靡かせながら動いているあおい様が視界に入る。
「──綺麗…」
目で追える範囲ではあるけれど、まるで舞っているような動きで目を奪われた。
無心で見つめていれば、またドォン…!と今度は幾分離れた場所から音が響き夜空が照らされる。
そちらに気を取られた僅かな隙に三人は土埃だけ残して姿を消してしまい、辺りは先程までとは違う喧騒に包まれつつあった。
「どうか、ご無事で…」
声が届かないのはわかっている。それでも声に出して願わずにはいられなかった。
昨夜いただいたお守りを握って目を瞑り、再度願う。
どれだけの時間をそう過ごしていたのかは分からないが、定期的に響く爆発音──おそらく花火だ──の間に小さな物音が紛れたのに気がついて目を開けた。
部屋には私以外誰もいない。けれども確かに、何かを叩くような軽い物音が聞こえた。
ぐるりと周囲を見渡して、それが窓の外からだと気づく。一瞬開けるのを躊躇ったものの、すぐにあおい様の言葉を思い出し窓を開ければ、そこには目元以外を黒で包んだ女性がいた。
「こんばんは。夜分遅くに、それもこんなところからごめんなさい。美鶴と申します」
にっこりと微笑んだ彼女に、こちらも挨拶を返して室内に招き入れる。
「あかね様から伺っています。仲間だから何かあれば迷わず頼るように、と」
「ええ、是非そうしてください。私はそのためにここにいますから」
そう力強く断言してくれる美鶴さんに、初対面なのに既に色々と頼ってしまいそうな気持ちになる。
仕事中は頭巾を被る決まりなんです、と頬の辺りに手を当てて顔を見せられない事を詫びる彼女に、私は慌てて首を横に振った。
「もしお嫌でなければ、後日改めてご挨拶させてください」
そう伝えれば嬉しそうに頷いてくれたので、私もほっと息をつく。
「ふふ」
「美鶴さん?」
「あ、ごめんなさい。あの方のお嫁さんが貴女みたいな方でよかったって思ったら、つい」
そう言ってまた小さくふふ、と笑う美鶴さんからは、あおい様に対する尊敬と親しみを多分に感じられて。なんだか姉のような雰囲気をお持ちの方だなと、そう思った。
✽✽✽✽✽
「あっはははは!防戦一方じゃないの!柱が聞いて呆れるわ!」
絶え間なく上がる花火を背景に、鬼の高笑いが夜闇に響く。
──空の呼吸 弐の型 行雲流水
四方八方から迫ってくる帯を周囲に被害が出ないよう軌道を逸らし。
──空の呼吸 肆の型 迅雷風烈
逸らした先で二次被害が出ないよう斬り捨てていく。弾いた帯のいくつかを竈門に任せているから、俺は鬼が他に意識を回さないよう俺自身に集中させていればいい。
休むことなく刀を振るう。
時折攻撃を刀で受けて身体ごと飛ばされるが、それで構わなかった。
柱を追い詰めていると、そう思わせておけばいい。相手にこちらの意図を悟られるな。己の優位を信じ込ませろ。
「さっきまでの威勢の良さはどこにいったのかしらね?」
口を歪めて笑う女鬼は、確かにそれなりの強さを誇っているのだろう。ただしそれは、"階級の低い一般隊士にとっては"という注釈がつく。
速度のある多方面からの攻撃に加え帯特有の弾力が刀を弾いてしまうが、斬り込む角度と力の乗せ方に気をつければなんら問題はない。その首だって、狙っていいのなら即座に斬り落とせる程度には隙だらけだった。壱の型を使えばこの程度の距離などあってないようなものだし、ときと屋からここまで大した反撃をしてこなかったために女鬼は俺を舐めきっている。
己の優位を信じ切っているが故の慢心は時に自らの破滅を招くが、果たして今回はどうなるか。
とはいえ、それはこちらにも言えることだ。
正直に言えば、かつて上弦の弐や参と対峙したことのある身からすればこの女鬼はあまりにも弱すぎる。いくら"陸"と言えどここまで実力差があるのは如何なものか。なにより、かつてこの鬼を前に散っていったであろう柱の命は、この程度の鬼にやられるほど安いものでは決してない。
この鬼には何かある。
そう確信があるからこそ、俺は未だに当初の作戦通り女鬼を連れて目的地を目指していた。
いくつもの妓楼の屋根を駆け抜け、あたかも鬼の攻撃から逃げているように見せながら誘導していく。こういったことは普段しないからなかなかに骨が折れたが、今のところ上手くいっていた。
途中で竈門が倒れ込んだのと、禰豆子の鬼化が一時的に進んだこともあり二人して戦線離脱するといった誤算はあったが、まあ構わない。作戦はあくまで行動の目安だし、予定というのは崩れるものだからな。
とはいえ、竈門には是非とも禰豆子の鬼化を食い止めてもらいたいところだ。理性を飛ばしたまま人間を傷つければ、その時点で禰豆子は討伐対象になる。斬ることを躊躇うつもりはないが、俺個人としても空柱としても可能なら避けたい事態だった。
──ザンッ
迫ってきた帯を斬りながら思い浮かべるのは、鞘に収められた日輪刀を咥えさせられていた禰豆子のことだ。
おそらく、彼女だけでは鬼化を抑えることはできない。初めて禰豆子と対面した時も、柱合裁判で風柱の血を使った時も、禰豆子は誰かからの呼びかけで衝動を抑え込んでいた。理性が飛んでしまっている今、あの子に声が届くのは唯一の肉親である竈門だけだろう。ならばあとは託すしかない。
後ろに女鬼を引き連れながら更地となった土地を走る。前方に複数人の気配を捉えたとほぼ同時に、正面から迫ってくる気配とすれ違った。
「──え?」
直後間の抜けた声が辺りに響く。立ち止まり振り返れば、そこには刀を手にした音柱と斬られた首を抱えたままへたり込む女鬼がいた。
「こいつ、本当に上弦か?」
「瞳の数字を信じるならな」
「えぇ…弱すぎんだろ…」
振り向いた音柱が形容しがたい顔でこちらを見やる。あれだな。以前蝶屋敷で気まぐれに一般隊士に稽古をつけたときに見たのと似た顔だ。
「奥方たちは?」
「おう、全員回収した」
「そうか、それは重畳」
簡易的な報告を受けていると音柱を追ってきた真菰たちが合流してきた。そこには当然、我妻もいる。
「白髪頭!紋次郎はどうした!」
「禰豆子とともに戦線離脱中だ。問題なければすぐに合流する」
「禰豆子ちゃんの泣き声が聞こえたんですけど本当に大丈夫ですか」
俺の返答に納得したのは真菰と嘴平で、我妻は再度確認するように尋ねてきた。
相変わらず耳がいいなと思うと同時に、寝ていながらよく聞こえるなと感心する。まあ眠っているとはいえ半覚醒状態なのだろう。言葉もしっかりしているし、なんなら覚醒時よりも冷静だ。
「禰豆子の鬼化が一時的に進んだだけだ。泣き声が聞こえたんなら竈門が上手く宥めたんだろう」
そう答えれば今度は真菰が口を開いたが、別の声によってそれを遮られた。
「無視してんじゃないわよ…!よくも私の首を斬ったわね!ただじゃおかないから!」
音柱に呆気なく首を斬られた女鬼が、怒りの籠もった声を上げる。
それを受けた音柱がひとつ溜め息を溢しつつ口を開いた。
「まだぎゃあぎゃあ言ってんのか。もうお前に用はねぇよ。地味に死にな」
「ふざけんじゃないよ!大体あんたさっき、私が上弦かどうか疑ったわね?!」
「だってお前が上弦とか信じらんねぇもん」
「私は上弦の陸よ!」
「だったらなんで首斬られてんだよ。弱すぎだろ。脳みそ爆発してんのか」
そのままやいのやいのと言い合いを続ける様は些か緊張感に欠ける。流石に完全に警戒を解くなんてことはしていないが、音柱が飽きてきているのはすぐに分かった。
それはそれとしてなんだか半泣きだな。そう思った次の瞬間、辺りに女鬼の泣き声が響く。
子どものような泣き声をあげながらごろりと転がる頭部と、地面を叩くために大きく振りかぶられた腕。いつまで経ってもその身を保ち続ける女鬼の異様さに、得も言われぬ不気味さを感じた。
花火で照らされる夜空と都度湧き上がる歓声の声が遠い。
「──あれは帯での攻撃が主体だ。一度に何本も操ることができるうえに速度もある。何より弾力がある分、上手く刀を使わないと斬れないから注意しろ」
徐ろに話しだした俺に音柱以外の面々の視線が集まる。だが、俺が彼らに視線を向けることはない。今この瞬間、女鬼から目を離すのは愚策すぎる。音柱も正しくそう認識しているようで、少しの変化も見逃すまいと女鬼を凝視していた。
「首斬られたぁ!首斬られちゃったぁ!!おにいちゃぁんっ!!」
駄々をこねるような、そんな叫びが響いた直後。
「!」
「わ、…!」
「うお?!」
膨れ上がる女鬼の影と溢れ出る威圧感。
音柱が飛び出すのと同時に、俺は咄嗟に近くにいた真菰の腹に腕を回し、反対の腕で嘴平を突き飛ばしていた。大きく飛び抜いた先で、我妻を巻き込みながら倒れ込む嘴平と俺達の間を大きな物体が通り過ぎていくのを捉える。
ぴんと張り詰める空気が漂う中、しゃくり上げる女鬼の声とそれを宥める知らない声が耳に届いた。
土埃が晴れた先、見えたのは首が完全にくっついた泣きじゃくる女鬼と、ぼやいているのか宥めているのか分からない言葉をかけながらその頭を撫でている酷く痩せこけた男鬼。
「大事にしろぉ顔はなぁ。折角可愛い顔に生まれたんだからなぁ」
男鬼の指が触れるやいなや再生される焼け爛れた頬。禰豆子の炎によって焼かれたそこは、もはや綺麗な皮膚があるだけになった。
鬼に群れる習性はないし、相手の傷を癒す鬼など稀も稀だ。背中からもう一体出てくるのも異例と言える。分身体なのか、"おにいちゃん"が本体なのか。
まあ、なにはともあれ。
「…どうりで数字と強さが釣り合っていないわけだ」
脇に抱えていた真菰を下ろし刀に手を添える。
──空の呼吸 壱の型 紫電一閃
先手必勝、というわけではないがわざわざ待ってやる義理もないと、男鬼の首を狙って一足飛びに地面を蹴った。
即座に反応した鬼が態勢を変え俺に向き合う。その両手にいつの間にか握られていた赤黒い鎌が俺を斬り裂こうと動くのを視界に捉え、刀の位置を鎌の軌道に移動させた。
がきんっ!という音が複数回するとともに砂埃が辺りを覆う。
軌道を逸らし弾き飛ばした鎌が宙を舞い──回転しながらこちらに向かってくるのに構わず、一閃。
──ザンッ
大きく見開かれた男鬼の瞳と視線が交わる。
確かに斬ったと断言できるのに妙に余裕がある鬼の様子に自然と眉が寄り…迫ってくる鎌と背後から聞こえた"ひゅんっ"という音にその場からすぐさま飛び退いた。
「お前!!お兄ちゃんの首を…!!」
目を吊り上げ血管を浮かび上がらせた女鬼がさらに追撃するが、飛んできた帯は尽く音柱と真菰によって細切れにされていた。
「どうだった」
隣に来た音柱の主語もなにもない短い問いかけに「本体じゃないな」と簡潔に答える。そうか、と呟き再び鬼を見据える音柱からは焦りの感情は見られない。
「てっきり傷を癒す血鬼術かと思ったんですけど…」
「そっちはおそらく"おまけ"だな」
「ですね」
「あの鎌、嫌な気配を感じるがまさか毒か」
「そうだとしたら掠り傷も致命傷になる。こちらはお前以外毒に耐性がない」
「地味に面倒だな…」
帯を斬り終えた真菰も合流し意見を擦り合わせていく。とはいえ出した結論は三人とも見事に一致したから、擦り合わせるもなにもないんだが。
「──気に食わねぇなぁあ。殺す気で斬ったのに逆に俺が斬られるとはなあ」
しわがれた声が鼓膜を揺らす。先程首を斬った筈の男鬼が両手に赤黒い鎌を握りこちらを睨めつけていた。
「お前いいなぁあ。その顔いいなぁあ。肌もいいなぁ。シミも痣も傷もねぇんだなぁ」
ボリボリと、鬼が自身の肌を掻き毟る音が辺りに響く。その間にも「いいなあ」と諸々並べ立てている男鬼も随分とお喋りが好きらしい。似たもの兄妹だ。
「お兄ちゃん。そいつらだけじゃないのよ、まだいるの!私を焼いた奴らも殺してよ、絶対!私一生懸命やってるのに…すごく頑張ってたのよ、一人で!それなのにね、皆で邪魔して私をいじめたの!よってたかっていじめたのよぉ!」
鼻息荒く声を上げていた女鬼は、先程までの事を思い出したのか涙混じりに訴えはじめた。
「そりゃあ許せねぇなぁ。俺の可愛い妹が足りねぇ頭で一生懸命やってるのを、いじめるような奴らは皆殺しだぁ。取り立てるぜぇ俺はなぁ。やられた分は必ず取り立てる。──死ぬときぐるぐる巡らせろ。俺の名はぁ、妓夫太郎だからなぁあ!」
最後の一言とともに男鬼が手元の鎌を飛ばしてくる。俺と音柱がそれぞれ弾いても鎌自体に回転がかかっているからか、速度を衰えさせないまま軌道を変えて戻ってきた。
「妬ましいなぁあ。お前ら本当にいい男じゃねぇかよ、なあ。そこの女守って積極的に攻撃を受けて、さぞ好感度も上がるだろうなぁあ」
「別に好感度が上がろうが上がるまいが気にしないけどな。俺には女房が三人いるし、あおいさんは吉原一の花魁を嫁にもらうし」
「そもそも彼女はこの程度で守られる必要があるほど弱くはないが」
「お二人ともすごく煽るじゃないですか」
真顔で宣う音柱に、追随する俺。けらけらと笑いながらツッコミを入れる真菰。そのどれが癪に障ったのかは分からないが、一瞬の沈黙のあと文字通り鬼の形相で男鬼が自身の顔に引っかき傷を作った。
「お前女房が三人もいるのかよ…!ふざけるなよなぁ、なぁあ!許せねぇなあ!」
なるほど音柱か。さもありなん。
ガリガリと顔に爪を立てながら血を吐くような声でがなり立てる姿は憎悪に塗れていて、そこだけは我妻と意見が合いそうだなとふと思った。
「血鬼術 飛び血鎌ぁ!」
先程の攻撃にはなかった憎悪の籠もった声だった。
鎌を握ったままの男鬼が腕を振るえば、半月の形をした血の斬撃がいくつも飛んでくる。密集していては動きにくいからと三人揃って四方に飛べば、それらはぐにゃりと形を変えて後を追ってきた。
追跡型の攻撃。
そしてこの感じからしておそらく、あの斬撃にも毒が含まれているのだろう。
兄妹揃って厄介な血鬼術を扱うものだ。
──空の呼吸 弐の型 行雲流水
音柱も真菰も、それぞれの呼吸で飛んでくる攻撃をいなしていく。
追跡型の攻撃は文字通り、対象に当たるまで動きを止めることがない。それはつまり、当たりさえすれば攻撃が止むことを意味する。
くるりくるりと刀を振るい斬撃に当てていけば、あっという間に辺りを飛び交っていた赤黒い物体は姿を消していた。
「なんだ今のは!なんかやべぇ気配がしたぜ!」
「一宮さん、宇髄さん!真菰!遅くなりました!」
さあ次はどう出てくる?
少しでも情報を引き出すために気を引き締めた直後に響いた大きな声は、良くも悪くも緊迫した空気を一瞬にして霧散させた。
刃毀れした刀を両手に掲げた嘴平と相変わらず鼻提灯をつけた我妻は、俺が突き飛ばした直後に禰豆子が入った木箱を背負った竈門と合流していたらしい。軽い情報共有は済んでいたようで、竈門は一体増えた鬼に特に動揺することはしなかった。
「あの鎌にはたぶん毒が含まれてるから気をつけて。攻撃は全部避けた方が確実に安全かな。それから"お兄さん"の首を一宮さんが斬ったけど、見ての通り消滅はしてない」
「え、じゃあどうすれば…」
真菰の簡潔な説明を受けた竈門が少なくない動揺を露わにする。それに対し、真菰がにっこりと笑ったのが視界の端に映った。
「こういうときはね、やる事は一つなんだよ」
「ああ。単純な話だ」
「地味すぎて逆に怪しく思えてくるけどな」
にこにこと笑う真菰に続き俺と音柱も口を開く。残りの三人が怪訝そうにしているのを肌で感じつつ刀を構えた。
「「「それぞれの首を同時に落とす」」」
こういうときは、そうすれば終わると相場が決まっているんだ。
✽✽✽✽✽
壱の型の足運びを利用して男鬼の懐に入り込む。首を斬るつもりで刀を薙ぐが既のところで鎌に阻まれた。
視界の外から迫ってくる帯を上体を反らすことで回避し、距離を取るため一度大きく跳躍する。帯は俺を追ったままだ。
俺が女鬼の攻撃を引きつけている間に音柱が音もなく男鬼の背後に迫り刀を振るうが、これも勘付かれて阻まれる。
竈門たちが合流してすぐに、男鬼は俺達柱が、女鬼は残りの四人が対応することにした。実力や危険度で言えば男鬼の方が断然上だったからそうしたが、今や女鬼の攻撃力も速度も段違いに上がっていた。二手に分かれた直後に男鬼が片目を瞑ってからだ。風に乗って聞こえた女鬼の言葉から察するに、物理的に目を借りているんだろう。それでいて片目を貸している男鬼の攻撃力は一切落ちていないどころか増しているのだから、本当に規格外な鬼たちで困る。
俺を追っていた帯を斬り捨て地面に降り立ち、その反動を利用し音柱と猛攻を繰り広げている男鬼との距離を詰めようとして、近くの空き家の屋根にいる人物に動きが止まった。
「!」
音柱に回収された筈の雛鶴殿だった。肩で息をしている様子からして、体調は万全ではないのだろう。本来なら避難しているべき筈の人が、何故。
そんな疑問は、次の瞬間に彼女が取り出した武器によって解消された。
男鬼に向かって放たれたのは無数の苦無。それもきっと、藤の花の毒が満遍なく塗られたものだ。
無骨な暗器が鬼と、その近くにいた音柱に降り注ぐ。どちらも避けることはしない──いや、男鬼は血鬼術を使って防いだな。無駄に勘がいい。
足先に力を込めて鬼との距離を一気に詰める。血鬼術によって弾かれ、ばらりと散らばっていく苦無を自身に刺さらないよう注意しつつ素早く回収した。足を止めることなく狙いを定め、鬼の意識がこちらに向く前にひとつ投げ飛ばす。
鬼が上裸でいてくれてよかった。継子時代の音柱に教えてもらったとはいえ、剣技に比べたら自信はないから的はできる限り大きい方が都合がいい。
「──ぐ、っ」
うん。刀を手放すわけにはいかないから左手で投げたが、存外上手く行ったな。何年か前に両利きに矯正した成果が日の目を見た。今は夜だが。
鬼の首筋と脇腹に、血鬼術で防ぎきれなかった苦無と俺が今放った苦無がそれぞれ突き刺さる。
すぐに毒が回りだしたのか、男鬼の動きが鈍りだした。
その隙を見逃す俺たちではない。
音柱が鬼の手足を斬り捨てる。すぐに再生はしない。まだ毒は回っている。
──空の呼吸 漆の型 雷霆万鈞
間合いに入られたことで動揺したのか大きく見開かれた"上弦"と刻まれた瞳と近距離で目が合う。刀を首目掛けて振り上げた、その時だった。
「血鬼術 円斬旋回・飛び血鎌」
手足を再生させ、にやりと笑った鬼が放ったその一言とともに、ざわりと本能が警鐘を鳴らす。
それまで腕の振りとともに出されていた斬撃が予備動作もなく、それも広範囲に繰り出された。
「ちっ!」
──空の呼吸 弐の型 行雲流水
態勢を立て直し防御の型を構える。
「音の呼吸 肆の型 響斬無間!」
音柱も同様に防御の構えを取った。
小さな破裂音に、火薬と焼けた血液の臭いが辺りに充満する。
血の斬撃を斬っているから、斬った先から形を保てなくなった血液が飛び散るのは当たり前のことで。音柱の方は火薬で燃えるが俺はそうもいかない。隊服はもちろん、顔にまで鬼の血が飛んでくる。目に入らないよう調整はしているが、当然ながら気分がいいものではないし、直接浴びるのも正直悪手だろうと自然と眉間に皺が寄った。
そうして二人がかりで斬撃を止め辺りに舞っていた砂埃が晴れたとき、鬼は俺たちの前から姿を消していた。
「消えた…!」
音柱の声が、どこか遠くに聞こえる。まずいな…視界が霞んできた。顔に掛かった血液に含まれた毒が皮膚を通してじわじわ自身を侵食してきているのがわかる。
傷を負っていない状態でこれか。恐ろしい威力だ。
は、と息が乱れる。ついでに口角も上がって乾いた笑みが溢れた。
今夜は感情の制御が上手くいかないなと回らない思考でぼんやりと考え、震えてきた手で懐に入れていた試験管を取り出す。
ここに至るまで散々振り回されていたにも関わらず、中の液体は漏れ出していなかった。
きゅぽん、という音とともに栓を開け、試験管に口をつけて一気に煽り──。
「お二人とも後ろ!」
雛鶴殿の鋭い声が耳に届くと同時に、背後から迫ってくる気配に身を翻した。
素早く動く帯を躱し、屋根の上の雛鶴殿に視線を向ける。
「雛鶴!っ、」
焦りを含んだ音柱の声が鼓膜を揺らすが、語尾が不自然に途切れた。見れば帯に集中的に狙われているらしい。
…なるほど。今の狙いは音柱か。俺の動きが鈍くなったのは見ていただろうから、毒が効いたため後回しでいいと判断したのだろう。そうだとしたらとても都合がいい。
「帯は私が引き受けます!お二人は私に構わず鬼を──!」
雛鶴殿の言葉を聞きながら彼女のいる屋根に登る。音柱は帯に群がられていたが、まああいつなら問題なく対処するだろう。
今比較的自由に動けているのは俺だけだ。なら、すぐに駆けつけられない弟子の代わりに、その奥方を守る役目を引き受けるのは自然なことだろう。
苦無を構えた雛鶴殿のすぐ近く。骨が浮き出るほど細い腕が彼女に向かって伸ばされるのを確認し、足に力を込めて一足飛びに近づいた。
──ザシュッ
首を狙ってもよかったが、ひとまずは雛鶴殿の安全が最優先だと伸ばされていた男鬼の腕を斬り飛ばす。それと同時に呆然としている雛鶴殿を小脇に抱えて数歩分の距離を取った。
「まったく、無茶をする」
「い、ちみやさん…ありがとうございます…」
屋根の上に下ろしながらそう言えば、大きな瞳をまん丸にしながら礼を言われる。居候時代を含めてもそうそう見なかった表情に小さく笑いが溢れた。
そんな俺たちを──正確には俺を怪訝な表情で見つめるのは目の前に佇む男鬼だ。
「お前…さっきまで俺の毒が効いてた筈だろ?何をした」
「さあ?何をしたんだろうな」
鬼に向かって真っ直ぐ向けられた刀がぶれることはない。霞んでいた視界も元に戻ったし、妙な倦怠感もなくなった。流石だなと、この場にはいない協力者に心の中で賛辞を贈る。
先程飲んだ試験管の中身は、珠世殿が作った血鬼術を無効化する薬だ。何年か前に上弦の弐と対峙した際に茶々丸が持ってきてくれたものと同じものになる。いや、当時のものより改良されたと言っていたか。詳しいところまではわからないが、珠世殿が言うならそうなのだろう。
一晩につき試験管一本分。
それがこの薬を服用する際の唯一絶対の決まり事だ。だからここからは本当に、傷はもちろん返り血に至るまで気を配らなければならない。でなければ今度こそ確実に、俺はこの夜を越せなくなってしまう。──なんてこと、わざわざ教えてやるつもりはないが。
「雛鶴殿。一人で避難できそうか?」
「はい。隙を見て離脱するので、私のことは気になさらないでください」
「わかった。…なるべく早く離脱したほうがいい。そろそろ終わらせる」
そう呟いて、雛鶴殿の返事を聞く前に再び男鬼に向かって飛び出す。鬼を挟んだ向こう側から音柱が迫っているのが見えた。
その身の内に宿した激情を上手に隠し、あくまで冷静に刀を振るう音柱に合わせて、俺も自身の日輪刀を相手の首目掛けて振り抜いた。
──がきんっ
そんな金属音が辺りに響く。男鬼の首まであと僅かというところで、鬼が握る鎌によって俺たちの刀は動きを止めていた。
嘲りが含まれた耳障りな笑いが耳に届く。
「お前らが俺の首斬るなんて無理な話なんだよなぁあ」
鬼の鎌から触覚のようなものが伸びて刀が固定された。少し力を込めた程度ではピクリともしないそれに、なるほど、と内心呟く。
確かにこれでは首は斬れないだろう。──この場にいるのが俺だけで、持っている獲物がこの一振りだけならな。
固定された刀はそのままに、片手を腰元に回す。常ならばそこには、かつて擦り上げてもらった俺の一振り目の日輪刀が差してあるのみだ。
だが今は違う。日輪刀とはまた別の、あまり馴染みのないそれを手に取って、正面にいる男鬼の胸元目掛けて振りかぶった。
「──、あ゛?」
ずぶりと肉を貫く感触がいつもより近い。
生暖かい血が刃を伝ってくる前にそれ──苦無から手を離す。
深く深く突き刺さった苦無は、そう簡単に抜けやしないだろう。鎌から手は離せないし、何より既に毒が回ってきているのだから。
「オラァ!!」
どすの利いた声とともに音柱のもう一振りの刀が鬼の首を貫いた。
焦ったように片目を見開く鬼はきっと、己の片割れである女鬼の様子もわかっているのだろう。
あちらは真菰と我妻が帯の対処をしている間に竈門と嘴平の二人で女鬼の首を狙う作戦だったのだろう。男鬼との戦闘中に見えた様子からも上手く連携が取れていたから、そう心配はしていなかった。
だから、今は目の前の鬼に集中する。この千載一遇の好機を逃してはならない。
音柱の刀に力が籠もるのがわかる。腰元の短刀を引き抜き、鬼の首に刺さっている刀の刀身に添わせて力を込めた。
そうして。
一際大きな花火が夜空を彩ったその瞬間、二つの鬼の首が宙を舞うのを確認した。
✽✽✽✽✽
「あかね様…!」
男鬼の最期の悪あがきが禰豆子の血鬼術によって打ち消されたり、全員の生存確認後に鬼の消滅を確認するまで安心できないと探しに行こうとする竈門に付き合ったり、移動途中に合流した隠たちに細々とした指示を出したり。いわゆる事後処理を淡々と進めていたとき、俺の
その場にいた今回の任務に関わった全員と天元の奥方たち──合流した途端号泣しながら天元にしがみついていた──が一斉にその発信源に視線を向ける。
元々少なかった建物が全て崩れ去った中、一人の隠に付き添われる形で立っていたのは他でもない、俺の最愛である鯉夏だった。
その姿を認めてすぐに彼女の元へ近づいた俺を様々な視線が追ってくるが今は無視だ。
「鯉夏…何で…」
「美鶴さんに連れてきてもらいました。どうしても、貴方のご無事を確かめたくて…」
声を震わせ、瞳に涙が溜まっていく様子につい手が伸びる。
しかし先程まで刀を握り、血に塗れながら鬼を狩っていた身だ。鬼の首は既に斬っていて灰になっているし、なんなら先程禰豆子が燃やしてくれたから毒の心配はしていない。それでもやはり、鬼の血が染み付いていたこの隊服のまま彼女に触れてはいけない気がして躊躇ってしまう。
それでも。
中途半端に伸ばした俺の手を、なんの躊躇いもなく掴み取ってくれるから。あまつさえそのまま、まるで祈るようにつるりとした丸い額に押し当てるから。
何故だか俺まで泣いてしまいそうになると同時に、どうしようもない程のいとおしさが胸の内から湧き上がってくるんだ。
「鯉夏」
愛しい
そろりと見上げてくる瞳には相変わらず涙が溜まっていたが、決して泣くまいとしているのが見ていて伝わってきた。
その姿が本当に健気で、可愛らしくて、いとおしくて。無性に彼女に触れたくなった。
「鯉夏、おいで」
その衝動のまま、鯉夏に向かって片腕を広げる。右手は掴まれたままだからあまり格好はつかないかもしれないが、まあそんなものは些事だ、些事。
「っ」
軽い衝撃とともに背中に回された腕に力が込められる。おそらく全力なのだろうそれは、俺からすればあまりにも弱くて。しかし、決して振り払うことなど出来ないものだった。
声も上げずに静かに肩を震わせてこちらに縋る愛しい
いつかと同じように彼女を抱きすくめる。甘い甘い、花の香りがした。
「名前を、呼んでくれないか」
「…あおい様」
「…もう一度」
自然と彼女を抱きしめる腕に力が籠る。
「あおい様」
「うん」
「──お疲れ様です、あおい様。ご無事で、本当によかった…!」
「ああ…ありがとう、鯉夏。心配をかけたな」
空柱としての姿が揺らいで、ただの"一宮あおい"に戻っていくのが自分でもわかる。纏う空気も、声音も、先程までとは比べ物にならないほど柔らかくなっているんだろうな。
腕の中の温もりが心地よすぎて離しがたい。もう少しこのままでいたいが、しかしそういうわけにはいかないのだから現実は非情だ。
身請け前夜で夜も遅いから誰かが訪ねてくることもないだろうが、鯉夏を長時間私室から離すのはよろしくない。それに何より。
「…」
視界の端ににやにや笑いながらこちらを見ている天元と紅葉がいるんだよな…。隠装束で口元が隠れていても目を見れば分かる。あれは確実に面白がっている目だ。おまけに奥方たちと真菰も目を煌めかせている。居心地が悪いったらない。
…とりあえず解散して、鯉夏はときと屋まで送っていくか。
よし、と一つ息をついて指示を出そうと口を開いたその時。
「こんなところで何イチャイチャしてんのあの人ぉぉぉぉ!!」
ついに背後から汚い高音が耳をつんざいた。
あまりの声に驚いたのだろう。びくりと身体を震わせ咄嗟に顔を上げた鯉夏の肩に手をやり宥めつつ、ため息を吐きながら振り返る。心なしか頭が痛い。
「…うるさいぞ我妻。もう少し声量を落とせ」
「すみませんねぇ声が大きくて!元々こんなんですよ!ねぇそんなことより何でこんなところでそんな甘い空気醸し出してるんですか?!というかその美人見たことあるんだけどあの人だよね?ときと屋の鯉夏花魁だよね?!一昨日くらいに花魁道中してるの見てたもん知ってますよ!もしかして知り合いなんですかまさか馴染みなわけないですよね違いますよね一宮さん!あんた只でさえ顔も良くて強くて性格いいのにこんな美人と知り合いなんて喧嘩売ってるんですか言い値で買いますよごらぁ!!」
息継ぎもなしに大声で騒ぐ我妻は呼吸のために鍛えられた肺を最大限活用してると思う。つまりとてつもなくうるさい。頭痛がさらに増した気がした。
お前、隣の同期たちの顔を見てみろ。滅茶苦茶引いてるから。猪の被り物をしていても伝わってくるんだから相当だぞ。あと禰豆子が驚きすぎて竈門の隊服を握りしめてるのも気づいてやれ。しばらく避けられても知らないぞ。
思うだけ思って口に出さないのは、決して興奮状態にある我妻の相手をするのが面倒だからではない。ないったらない。
ついこぼれ落ちた溜息はそのままに、大きな瞳をさらに丸くする鯉夏を見下ろす。その目元は赤く染まっており、このまま放置すれば間違いなく腫れてしまうだろう。あとで冷やさなくては。
なんてことをつらつらと考えて、思わずふ、と笑いが漏れた。
「あおい様?」
きょとんとした顔で鯉夏が俺を見上げてくる。その様子にまた静かに笑って、抱きしめたままの彼女の頭に頬を寄せた。途端、そわそわしだすのだから本当に可愛らしいと思う。
こんな姿を見れば我妻が騒ぎそうなものだが、くぐもった声から察するに天元か紅葉が口を手で塞いでいるのだろう。
どちらかはわからないが流石、いい仕事をする。
「なんというか…気が抜けた」
肺の空気が全て出てきたんじゃないかというくらい深く息を吐きながらそう告げれば、背中に回っていた鯉夏の暖かな掌がゆっくりと上下に動かされた。
「本当に、お疲れ様でした」
短く紡がれた労りの言葉に、最後まで残っていた緊張が全て溶けたような、そんな気がした。
・大きな被害なく終えられて一安心な柱(27)
言い出しっぺとはいえ鯉夏を囮に使うことに対する申し訳なさと、自分に向けられる信頼や愛情にどうしようもない程の嬉しさと愛しさを感じてこの数日間感情が乱れに乱れていた。頼むから俺の理性を試すようなことを言わないでほしい。切実に。
堕姫と妓夫太郎に対して煽るような発言をしていたが、一応相手を見て発言してる。これが対上弦の弐だと無言で斬り掛かってた。
・数年がかりの任務がやっと終わって一安心な柱(23)
嫁たちだけでなく自分が連れてきた黄色い子まで行方不明になったから責任感じて視野が狭くなってた。お師匠に叩かれるわそれを下に見られるわで抗議しようとしたけど、その後言われた言葉で冷静さを取り戻す。感謝してるけど年下の前で頭を撫でるのはやめてほしいと思ってる。恥ずかしいから。
オリ主と鯉夏花魁のやり取りを見てにやにやしてた人その1。お師匠もただの男だったんだなと思うと同時になんだか微笑ましいなとも感じてる。今後二人が推しカプになる。
・見事堕姫の首を斬った隊士たち
真菰と善逸で帯の牽制を行い、炭治郎と伊之助で首を斬った。作者の都合により一切戦闘シーンが書かれることなく終わったのは申し訳ないと思ってる。ごめんね。
全員多少の切り傷はあるけど、意識を失う程ではないどころか善逸に至っては叫べる程度にはとても元気。真菰との共同作業()だったのに半分寝てたから記憶が曖昧。発狂した。
・戦闘が終わるまで鬼について勉強していた花魁(19)
こちらはこちらでオリ主に感情を乱されまくっていた。口づけってこんなに気持ちいいの…?と大混乱。もっとと強請ってしまいそうで今後が怖い。でも口づけはしたい。複雑な乙女心です。
オリ主の仕事の一端を始めて目撃した。刀を握っていたことに驚きはあったけど恐怖心は一切抱かなかった。だってあんなにも凛として、美しくて、安心感があって、とても格好いいから。怖いなんて感情が出てくる隙などなかった。
一緒にいてくれた美鶴が話に聞いていた同居人の一人だとは気づいていない。知ったら驚くけどそれ以上に嬉しさが勝つ。
・事前準備諸々頑張った後方支援組
オリ主と鯉夏花魁のやり取りを見てにやにやしてた人その2と、目の保養だわとにこにこしてた人。
オリ主と音柱から計画を聞いたときは二人して「流石柱。ぶっ飛んでるな」とか思ってた。それでも被害を最小限に抑えるためだと分かっているから文句は言わないし言うつもりもない。
オリ主とそのお嫁さんの仲がよくてこれからの生活が楽しみ。
・協力者たちによる便利グッズ
便利グッズその1。愈史郎印の姿隠しの札。とある条件の元譲り受けたレア物。本当は無条件で渡してもいいと思うくらいにはオリ主に対する好感度は高いけど、愈史郎はツンデレなので条件をつけた。素直になれないお年頃。
便利グッズその2。珠世殿印の対血鬼術薬。液体タイプと丸薬タイプがある。液体は一晩につき一本まで。即効性ありだがクソマズ。一回で飲み切ってね。丸薬は一回二粒、一晩につき一回まで。飲みやすいが効果が出るまで時間がかかる。余裕があるときに飲むと良し。
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以下あとがき&補足
毎回ですが言わせてください。本当にお待たせ致しました!!
途中で切りたくなくて一つに纏めたけどその分長くなったし時間かかったしでめっちゃ難産でしたね…。
前編の前書きでも記載しましたがアニメとは展開が大分違うので大丈夫かなと思いつつ、まあいつものことだしなとも思ってます。
さて本編ですが。
真面目な話をしてたのに気づいたらキスしてて私が一番びっくりしてます。最初は途中からがっつり舌入れたパターンで書いてたんだけど、いやこれは言い逃れできないほど手を出してるのでは?と冷静になり修正しました。二人の恋路を邪魔してる気分になってます。
ちなみに良縁のお守り、つまりは縁結びのお守りですが、恋愛に関するものだけではなくて色々な縁を含めた"縁結び"なのだそうです。人間関係、仕事、趣味。鯉夏は今後吉原の外で暮らしていくから、新しい環境の中でいい友人ができればいいし、やりたいことができたら遠慮なく言ってほしい。子どもたちは今後遊女になって客を取るようになったら良客に恵まれればいい。その良客との間に身請け話が出たり、遊郭を出た後も良縁が続いていけば尚良し。あおいが鯉夏と禿の女の子たちに渡したのは、そんな願いを込めたお守りです。
そういえばあおいが鯉夏に対してしていたお願いは『お守りを交換すること』と『屋根裏で待機する許可がほしい』という二つですね。
180超えの成人済の男が屋根裏に隠れられるわけなくない?というツッコミはしてはいけない。だって私も思ってる。
アニメだと炭治郎は堕姫の帯を斬れていなかったけど(戦闘開始時)、このシリーズではヒノカミ神楽もとい日の呼吸の鍛錬を既に始めているので、帯も斬れるし反動がすぐに来ることはありません。でもまだ試行錯誤の段階で身体も十分出来上がっていないので、途中で禰豆子と一緒に一時的に離脱してもらいました。
できているかはわからないけど、任務中のあおいは基本的に感情の動きが少なくなるよう意識して書いてます。無感情になってるわけじゃないから天元に奥方たちを探していいよって言うし、可愛がっている禰豆子が討伐対象になるのは嫌だし、雛鶴が危なくなったら安全優先で保護もするけど、前者は本文にもある通り天元の太刀筋が鈍るのを防ぐためで、後者二つに関してはどちらも失くしたときの影響を考えてたりします。
禰豆子の場合は、鬼舞辻に対する手掛かりだし薬の研究にも協力してくれている。何より禰豆子を失った炭治郎がどう転ぶのか判断がつかないし、なんなら善逸とか伊之助にもダメージが行く。
雛鶴の場合は、まず間違いなく天元が冷静でいられなくなるから遊郭編での死亡リスクが跳ね上がります。このシリーズではほぼ怪我なしだったけど原作同様片目と片腕失くすだろうし、心の柔らかいところに滅茶苦茶ダメージを負う。そしてそれは残りのお嫁さんたちも同じだから、宇髄夫妻はしばらく使い物にならなくなる。
と、そんな感じのことが頭を過っているので善意100%ではないのです。しょうがないね、空柱だもの。
こんなにあっさり終わってしまったのは私の力量不足もあるんですけど、いくら考えても原作の展開にはならないなという結論になったからでもあります。だって柱と甲の隊士が一人ずつとは言え追加されていますから。たかが二人、されど二人です。実力は折り紙付きなので、やっぱりこの展開が一番しっくりくるなと判断しました。
本当は
「それじゃあド派手に行くとしようか、音柱」
って言って不敵に笑うあおいとか、
「どっかの誰かさんにそう簡単には死ねない身体にされたからな」
「いいことじゃないか。感謝しなさい」
って会話する天元とあおいとか、
「生きてるさ。俺が育てたんだ、こんなところで死ぬような玉じゃあない」
そうだろう?天元。
って呼びかけるあおいとか書きたかったけど捩じ込める場所がなかったのでここで供養。
鯉夏はあおいに対して恐怖心を抱きませんでしたが、怪我をしないかという不安はありました。美鶴に今回の相手が上弦と呼ばれる、鬼の中でも上位の存在だと聞いたので。
鬼や鬼殺隊についても教えられていて、あおいが柱と呼ばれる立場であることもその実力とともに理解しています。
それでもやっぱり心配でついそわそわして、全てが終わったのを確認してから美鶴にあおいの元まで連れて行ってもらいました。
心配しちゃうのは、多分今後も変わらないです。通常の鬼なら難なく斬ることも、医者の世話になることも滅多にないこともちゃんと理解するけれど。それでもやっぱり大切な人だから、心配しないなんてことはできません。そしてあおいもそれを理解してるから、少しでも安心してもらいたくてちゃんと空屋敷に帰ります。いや今でもほぼ毎回帰ってはいるんですが。
ちなみに、鯉夏はあおいから事前に同居人の存在について話を聞いているし、今後も一緒に暮らすことにも同意しています。ずっとあおいを支えてきてくれた人たちで、あおいにとっても大切な人たちなので。これまで大人数で暮らしてたから急に二人きりは寂しいしね。
さて、これにて遊郭編は終わりです。次は刀鍛冶の里編ですが、その前に一大イベントが待っています。
あおいと鯉夏の結婚からの新婚旅行…。
書けるか?と迷ってはいますが私が読みたいので書くかもしれません。断言できないのが辛いところ。
ではでは!毎度こんなところまで読んでくださりありがとうございます!
また次も遅くなるかもしれませんが、待っていていただけると幸いです。