入学式の翌日、約束通り朝に兄さんが訪ねてきた。
昨日はあれから後も色々と確かめたが、結局確証は得られなかった。とはいえ殆どの内容に予想は着いているのだが。そこら辺は兄さんで確証を取っていこう。
「おはよう七助。それじゃあ七助の推理を聞こうじゃあないか。」
兄さんは俺を試している……のだろうか?いや、兄さんについて深く考えるだけ時間の無駄という奴だ。
「うーん…確信を得た、って訳じゃあないからあくまで推測だよ?」
「かまわない。是非聞かせて欲しいねぇ。」
ちなみに朝かなり早く来ているので、特に周りに人は居ない。部屋の場所も俺は角の隅なので滅多な事では聞かれないだろう。監視カメラも無いしな。
「まず、来月に貰えるプライベートポイントは10万じゃないね。変動する、それも下がりそうだ。」
「だろうねぇ、あれだけあからさまに無料品が置いてあったり、ティーチャーが毎月ポイントが貰えるとしか明記して無いからねぇ。」
取り敢えずこの部分は間違えないだろうな。
「このポイントは普段の授業態度とかで決まるんだろうね。しかも何かしら退学者がごっそり出るような事も起きるっぽい。」
「そうだろうねぇ……年に数回、特別試験というのが行われるらしいしおそらくそれじゃあ無いかな。」
特別試験……初耳だな。やはり兄さんのが一手上か。
「それで、何処にでも就職、進学出来る権利ってのも全員じゃあ無い。多分Aクラスだけみたいだね。そして、Aクラスから順に優劣が着いていると見ていい。」
「そうなると私達のDクラスは1番下、という事になる。国主導のこの学校も見る目が無い。私達がDクラスとはね……。さらに言えば、プライベートポイントの貰える額とAクラスを目指す額は直結しているようだ。」
正直兄さんは唯我独尊だからだと思うが絶対に口に出しては行けない。昔口に出した弟が半殺しにされたからな。
「Dクラスの選定基準ってなんなんだろうね、単純な学力や身体能力って感じはしないけど……。」
「私には凡人の考えなど分かりやしないが……ティーチャーが言っていた『この学校は実力で生徒を計る』ってのがおそらく答えなんだろうねぇ。」
まぁその説が強いだろう。兄さんは髪をかき上げながらどうでもいいと言わんばかりの顔をしている。兄さんらしいや。
「とはいえちょっと曖昧だね。」
「まぁ私にとってはどうでもいい事だねぇ。どうせAクラスでの卒業の方法はある程度分かってしまった訳だからね。退屈だよ。」
「え??もう分かったの……流石は兄さんだな。」
あまりにも早すぎる。DクラスをAクラスにあげるのは確かに兄さんなら出来そうだが……他に考えられる方法と言えばプライベートポイントで買う事か。確かこの学校はプライベートポイントでなんでも買える筈だからな。
「簡単な事さ。と言っても私達以外の人間で出来る者は限られて居るだろうがねぇ。」
「兄さん、Aクラスに行くのに必要なプライベートポイントっていくつ?」
恐らくここはズレていないだろう。問題はその額、恐らく大量の額になるだろうが、それをどうやって稼ぐのかだ。
「2000万プライベートポイントだよ。」
「Dクラス以外の三クラスにこの情報とDクラスの来月以降の貰えるクラス感での争いに直結するポイント…クラスポイントと仮名を付けよう。そのクラスポイントを0にする代わりに1クラス当たり500万プライベートポイントでも要求すればあと500万ぐらいなら何とかなるね。」
俺が自分の考察を伝えると兄さんは急に高笑いをしだした。
「成程、それは私にはない発想だねぇ。流石は七助だ。とは言えそれを実行するとなるとDクラスの来月貰えるポイントが0になるレベルで酷いと言うことになるが…まぁ流石にそこまででは無いだろうねぇ。」
「クラスから裏切り者扱いもされかねないからね。兄さんはそんなの気にしなさそうだけど。」
この唯我独尊自由人が気にするとは到底思えないし、多分俺を含めてクラス全員とバトルしても兄さんが勝つだろうしね。
「そうだねぇ。七助こそ気にしないんじゃないのかい?」
「俺は……まぁあまりにもムカついたらやるよ。よっぽどないと思うけどね。」
よっぽど無いと言ったがなぜだか知らないけどあの山内って奴がやらかす気がして仕方ない。なんなんだこの悪寒は……。
その後も俺と兄さんは駄弁りながら学校へと向かっていった。
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今現在Dクラスでは1時間目の、坂上先生の数学の授業が行われている、行われているのだが…
「えー、その為、これを降べきの順と言い……」
「ギャハハ!!お前マジかよ!」
「グーピー…スピー……。」
「うーん…今日も悠然と佇む私は美しいねぇ。」
「桔梗ちゃん桔梗ちゃん桔梗ちゃん……」
「佐枝ちゃんおっぱいデカくね?」
ご覧の通り地獄絵図である。なんの注意もせずに授業を頑張って進めてる坂上先生が気の毒で仕方なかった。真面目に授業を受けてる奴は……既に両手で数えられるレベルか、まだ初日なハズなんだけどな。
やはりというかなんというか…俺の予想通り今年のDクラスは飛び抜けてゴミな気がする。このペースだとほぼ0ポイントで確定だろう。俺が忠告しても残るクラスポイントは恐らく500を割る。コイツらが信じるとは思えないしな。
それにしても初日からケータイ、ゲーム、雑談、爆睡、セクハラ発言か。コイツらやべぇな。なんか一人ストーカーも湧いてる気がするけど無視だ無視。
まぁ何はともあれ、俺が出した結論はこのクラスでは上に行けないだ。他クラスの内情をよく知らないが、うちのクラスがこのゴミ箱ではどうしようもないだろう。全員が全員とは思わないが7割がゴミなのは確定か。
そして先生が注意しないという事は恐らく監視カメラからの映像をスパコンかなんかで点数化してるんだろう。俺は早くも1時間目にしてゲンナリしてきた。
「今日の授業はここまでとする。各自復習をしておくように。」
やっとこさ授業が終わったらしい。俺はこのゴミみたいに騒いでる奴らに復讐がしてぇよ……。一日目で何を、と思うかもしれないが、耳元でハエが一時間ブンブンしてたら誰だってイラつくだろ?それと同じだ。
ロック君も授業中に爆睡してるし全然ロック感を感じない。誰だコイツって感じ。
「おいお前、ちょっと良いか。」
そうこうしているといきなり池と山内に呼び止められた。何故だか知らないが顔は赤くて鼻息が荒い、そして女子達の見る目が凍り付いている。
「俺か?」
初対面の奴に向かってお前呼ばわりはどうなんだろうか。まぁコイツらだし仕方ない。
「あぁ、今俺達はな、3時間目の授業の水泳での女子の胸の大きさで賭けてるんだよ。お前も特別に混ぜてやるよ。」
「……えぇ。」
思わずキモッ!って言いかけたが黙っておこう。そういうのは女子の前で堂々というべきでは無いと思う。女子引いてるしさぁ。そして謎の上から目線。あと何故だか分からないが山内を見てるとストレスが溜まって仕方ない。何故だろうな。
「なんだよその反応。わざわざ陽キャの俺たちがお前みたいな陰キャを誘ってるんだ。さっさと賭けろよ。」
「……いや、遠慮しとくよ。」
思わず怒鳴りたくなったが俺はグッとこらえることにした。こいつらは陽キャじゃないし見下されるのは嫌いだ。そしてなぜ命令口調なんだろうか。高円寺コンツェルンにこんな無能は居ないし要らない…というか社会人でも居ないためストレスが加速する。
それにしても何故こんなに山内を生理的に受け付けられないんだろう。まぁ世の中そういう事もあるか。
「はぁ?ノリ悪いなお前。」
「いやお前らみたいな人としてのモラルの欠けたゴミに合わせるのがノリなら一生悪くていいや。」
ピキって思わず言ってしまったが無理も無いだろう。こいつらはきっと社会に出たら終わるに違いない。
まぁ最もその前に俺が潰す可能性のが高いのだが。欲が大好きな俺だが、逆に言えば欲と対局の感情、不快感なんてものは大嫌いだし、それを与えてくる相手は虐めるか潰すか……ロクな生活を送らせてやるつもりは無い。
「何だよ…あーうざいうざい。」
池がわざとらしく、シッシッ!と手を振るがここは俺の席なのでお前らが帰れよ。
「あの……私も七助君の言う通りだと思うな。」
女子の代表、と言わんばかりの顔で櫛田が出てくる。櫛田の性格を詳しく知ってる訳じゃないが、おそらくは好感度稼ぎだろう。
「櫛田ちゃん……嘘だろ、クソッ!」
「お前が七助かよ……死ねイケメンが!」
そのまま2人とも何処かへ走っていった。まぁどうせ次の授業はプールだからなんの問題も無いだろう。無視でいいや。
「災難だったね。」
「今も災難は続いてるけどな。」
櫛田に話し掛けられたのは災難だと言わんばかりの圧を俺は櫛田に向ける。それも櫛田にだけわかるぐらいで。
「あはは……災難って酷いなぁ。」
櫛田としては連絡先すら交換出来てない上に仲良くなれてない俺に取り入りたいのだろうが無論そんな事はさせない。このクラス内での櫛田の立場を奪ってやるのも一興かと思っていたが、あのゴミ共の世話はゴメンだしな。世間的に言うならば憂さ晴らしだ。
「こんな時間か、俺もそろそろ行かなきゃな。」
「あ、待ってよォォォォ!!」
後ろから追い掛ける櫛田を超高速で巻きながら、俺はプールへと向かうのだった。
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プールの更衣室に着くと、池と山内は既に到着して着替え終わっているようだが、行動が変だった。どうやって登ったのか分からないが4mちょいの着替え棚の上に乗って、壁の方向、正確には窓を見つめて居るようだ。
「お前ら、何してるんだ?」
アイツは確か綾小路だったか.......。どうやら他の奴らから見てもしっかり不振な行動らしい。確か二人が見ている窓の先は女子更衣室だった筈だ。となると考えられるのは.......
「覗きか。」
「.......お前ら正気か?」
俺のプツリと零した独り言に綾小路が眉を顰めるが、アイツもコンビニでセクハラしてたし大差ない気がする。五十歩百歩だな。
「うるせぇ!!こっちは七助に赤っ恥かかされたんだ!覗きでもしなきゃやってられねぇんだよ!」
「そうだそうだ!大体俺たちはなんも悪い事はしてねぇぞ!!」
覗きは犯罪である。繰り返して言うが、覗きは犯罪である。なんであんな所に覗いてくださいと言わんばかりに窓があるのかもちょっと謎だが、それはそれとしてアイツらのやっている事は立派な犯罪である。大事な事なので3回言った。
ちなみに他の奴らはと言うと、その行動に引いている奴は男子の中でも約半数しか居なかった。残りは羨ましがったり、同じように登ろうとしている始末である。改めてこのクラスの民度の低さを感じてしまう。
こんな調子では、来月クラスポイントが残るとは到底思えない。それに何より不快な奴らだ。まだ学校生活が始まって一日な筈なのだが.......コイツらには常識やデリカシーというものは無いのだろうか?やはりDクラスが不良品というのは間違って無さそうだな。
俺は心の中で、Dクラスを上に上げる作戦から、プライベートポイントを稼いでいく方針に転換する事にした。
理由?こいつらのお守りが辛いのもあるが、それ以上にこんなゴミ共をAクラスに上げられる気がしないからである。真の敵は何時だって無能な味方なのだ。
とはいえDクラスにもまともな奴は何人かいるだろう。恐らく3年もすれば半分は退学になる筈だ。残った20人の中の半分、10人ぐらいならギリギリ何とかなるだろうか?
年に数回行われる特別試験次第では行けそうな気もするが.......うーん、まだ開示された情報が少すぎるか。
俺はそんな事を考えながら、女子に覗いているのがバレた池と山内を尻目に更衣室を出るのだった。
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程なくして、全員が更衣室から出てきた。さっきの覗きの影響なのか、それとも朝のおっぱいランキングの影響なのかは知らないが、女子の見学率が7割を超えていた。ちなみに男子は外村とかいう男子一人であり、何故か手にはパソコンを持っている。
なんか遠目から見る限りだと女子に詰め寄られて口をパクパクさせているが盗撮でもしたんだろうか?まぁ覗き野郎もいた事だし今更驚く気も無い。
「見学者は.......17人か、かなり多いな。.......お前ら、静かにしろ、授業を始めるぞ。」
体育の先生が静かにするように合図をするが、池山内と、覗かれた女子.......なのかは知らないが、確か篠原という女子が大声で口論をしていた。内容は聞かなくてもわかる。十中八九覗きの一件だろう。聞きたくは無いが否が応でも聞こえてくる。
「良いだろ別に!未遂なんだからよ!!」
山内が大声で叫ぶが良くない。未遂だろうがなんだろうがアウトだろう。
「ふざけないで!覗きなんて犯罪よ!アンタらみたいな変態はさっさと死ねばいいのに!」
仰る通り犯罪です。だが罵倒の仕方からしてこいつも頭は良くなさそうだな。
「はぁ?お前みたいなブス興味無いに決まってんだろ!桔梗ちゃんみたいな可愛い子以外は駄菓子のオマケレベルの価値しか無いっての!」
「.......アイツらは置いといて授業を進める。早速で悪いがお前らには今から、実力をチェックしたいので、準備体操してから泳いでもらうぞ。」
どうやら体育の先生は池山内と篠原の事は放置する方針のようだ。ちなみに俺も関わりたくない。ストレスだからな。
「あ、あの、俺あんまり泳げないんですけど……」
すると男子の1人.......確か宮本だったか?見るからにモブそうな顔をしたヤツが手を挙げてそう口にする。
「安心しろ。俺が担当するからには、夏までには泳げるようにしてやる。」
先生は自信満々に言っているが、後ろで騒いでる3名のせいで台無しである。
「別に泳げるようにならなくても良いですよ。海なんて行け無いですし、プールに行く気も無いですから。」
今度は幸村だったか.......見るからに運動ができなさそうな奴がゴーグルをメガネのようにスチャリと上げて言い放つ。ゴーグルで一体どうやってるんだろうか。
「そうはいかん。今は苦手でも夏までには克服させる泳げるようになれば、必ず役に立つ。必ずだ。」
必ず役に立つ、か。茶柱先生の時もそうだが、この学校は確証の無い事に必ずなんて表現を使うことは無い。つまりこれから何かしらのタイミングで役に立つものがあるという事だ。兄さんが言っていた特別試験か、或いは体育祭のようなものや遠泳大会のようなものがあるのかもしれないな。
そのまま、口論していた3人を除き、先生の指示通り準備体操をして、俺達はウォームアップがてらに軽く泳いだ。軽く様子を見ている感じでは、口論をしていたメンバー以外は軒並み泳げそうだ。
「全員泳げるようだな。それでは今から競争をするぞ。種目は男女別50m自由形だ。口論している奴らは除いて.......女子は5人1組、男子はまず5人3組で全員泳いだ後、タイムの速かったもの上位5人で決勝を行う。」
「きょ、競争だって!俺の本気を見せてやるぜ!こんなブスと口論している暇なんかねぇ!1位を取ってモテてやるぜ!」
「そうだそうだ!」
池山内は競争という言葉を聞いた瞬間に口論をやめ、参加の姿勢を見せた。が、準備体操もせずに参加など危険極まりないのでやるべきでは無いと思う。まぁアイツらが溺れ死んだ方が俺にとっては後々ムカつかずに済むかもしれない。アイツらは初日なはずだがもう不快感を感じるぐらいには嫌いだからな。
「最もタイムが良かった者には、先生から特別に5000ポイント支給しよう。その代わり、男女ともに最下位のやつは、放課後に補習を受けてもらうから。な」
「5000ポイントは俺のもんだぜ!ヘヘヘ!」
赤髪ロック君、授業で当てられてたのを聞いたので彼の名前が須藤だと判明した彼が自信ありげにそう呟く。鍛えられた筋肉はアスリートのそれと同種であろう、普通のクラスであればそう断言するのも仕方無いのだが.......
「レッドボーイ、残念ながら私が優勝させてもらうよ。だから君には無理だろうねぇ。」
そう、うちのクラスには兄さんがいる。兄さんに勝てる人間なんて存在するはずも無いので彼の負けは確定した。ついでに俺の負けもだ。
「へへっ!すぐにその鼻っ柱叩きおってやるぜ!」
まずは第1レース、明らかに兄さんの勝ち確レースだろう。さっきまで堀北と呼ばれてたクール系美少女に昨日コンビニでセクハラしてた綾小路とか言うやつもなかなか鍛えられた体をしているがあれは見せ筋じゃない、本物だ。長年の俺の筋肉勘がそう言っている。恐らくは兄さんに次ぐ2位だろう。決勝に行く可能性があるのはこの2人って所か。
「よーい.......スタート!」
スタートの合図とともに兄さんが恐ろしいスピードで泳ぎ始める。オリンピックに出ても優勝するのではないかと言うぐらい圧巻のスピードだった。2位とは結局かなりの大差でゴール。
「記録.......21.99!!日本記録更新だと!?」
相変わらず兄さんは化け物だった。それにしてもセクハラ綾小路は3位で28秒ぐらいだった。お前見せ筋かよ.......綾小路改めて見せ筋小路かよ。俺の全筋肉勘に謝れよ!俺の心の中の悲しい叫びを込めて綾小路は睨んでおいた。
「どうだい七助?これが真の実力というものだよ。」
泳ぎ終わった兄さんから話しかけられるまで、見せ筋綾小路は睨んでおいた。堀北櫛田に絡まれていて、男達からも睨まれていたのだが彼は気付いてなさそうだった。なんか池山内みたいな匂いがする。
「兄さん、流石だね。」
「当たり前だろう七助?これが終わったら次は七助の番だし、期待して見させてもらうよ。」
俺の賛辞など気にする様子もなく、兄さんは楽しそうな表情で笑顔を浮かべていた。そしてどうやら第2グループでは須藤が一位、平田が二位のようだ。
「さて、やりますか。」
俺はそのままスタートの合図を構える。特に同じ組に速そうな奴は居ないが、全力で泳ぐ事にしよう。
俺はスタートの合図とともにまず飛び込んだ。放物線を描くなど論外、傾斜30°程度で水に入り、そのまま高円寺家直伝のクロールで泳いでいく。ペース配分など考えず、我武者羅に泳ぎ続ける。暫くして水でも空気でも無い固形物に手の先が当たった所で.......。
「記録は.......22.14だ。今年は一体どうなってるんだ.......」
兄さんにはやはり勝てなかったようだ。まぁ仕方ない。元々持っている才能が違うのだから。
そして最後は口論していた2人、池と山内が泳ぐらしいが結果は見え見えである。誰も応援してないのが彼等の人望を華奢に表していると言える。
「それでは.......よーいスタート!」
合図と共に彼らは泳ぎ出したが、2人揃ってスタートに失敗した。そのまま2人はのそのそと藻掻くように少しづつ前に進んでいくが、10m付近で池が止まり、ゴボゴボと言い出した。
「まずい!足を吊ったか。綾小路、悪いがタイマーを頼む。」
それだけ言い残してタイマーを置き、体育の先生は池をその場から担ぎ上げて、プールサイドの端に連れていった。そしてちょうど池を座らせたタイミングで、山内がゴールした。
「山内、お前のタイムだが65.56だ。」
まぁそんなもんが妥当だろう。恐らくは池を除けばぶっちぎりの最下位だろう。
「綾小路、30.56だ。いいな?」
良くねぇよ。何さらっと改竄しようとしてるんだコイツ。というかあの遅さじゃ誰だって嘘だって分かるだろうよ。
馬鹿みたいな心のツッコミをしていると先生が戻ってきた。池はそのまま櫛田によって保健室に連れていかれたらしい。
「綾小路、山内はいくつだ?」
「65.56.......じゃなくて30.56です。」
山内のよく分からない圧に負けた見せ筋綾小路は残念ながら嘘のタイムを報告してしまった。何をやってるんだお前!その見せ筋は何のためにあるんだよ!
「65.56だな。山内、記録を改竄しようとするな。」
「ちくしょぉ!」
当然だろう。何がちくしょぉ!だ。まだ初日なのにコイツにとても嫌悪感を感じ始めてきた。
「それでは各グループの1位だった高円寺兄弟、須藤。そしてこの3人に続き記録の高かった三宅と平田で決勝戦を行う。」
「ちょっと待てよ!各グループの1位なら俺もだろ!」
山内がそう叫ぶが同時にクラス最下位である。結果は火を見るより明らかだ。
「だが同時にクラス最下位だろ。」
体育の先生も全く同じ意見らしい。
「はぁ?ふざけんなよ!差別だ差別!」
初日だと言うのに、山内がギャーギャー騒ぎ出して、先生は少し呆れた顔をしていた。
「落ち着いて山内君。出たいなら僕の代わりに出ていいから。それでいいですか先生?」
「平田がいいと言うならいいが、本当にいいのか?」
それは暗にこんなゴミにチャンスを与えるつもりか?という念がこもってる気がしないでもない。
「はい。大丈夫です。」
平田は堂々と答えているが、こういったところが周りから好かれる要因なのかもしれないな。
「ありがとな平田!おっしゃ!これで優勝して女子からの点数稼いでやるぜ!」
女子からの点数は現在進行形でブラックマンデーと化している上に、平田に点数稼ぎとしてダシにされたことにすら気付いていない山内は息巻く。入学初日だが、既に全員山内の事は嫌いな様だ。
俺たちはそれぞれ位置に着く。優勝は恐らくは兄さんだろう。
「それでは5人は位置について.......よーいスタート!」
山内以外の4人は綺麗なスタートで入水する。やはり早いのは兄さんだろうか。ちなみに泳ぎ方だが、俺はクロール、兄さんはバタフライ、三宅は平泳ぎ、須藤もクロールで山内は犬掻きだ。一つ泳ぎ方じゃないのが混ざってる気がするが多分気のせいだろう。
俺は爆速で追い上げて行く。前にいるのはやはり兄さんだけ。だがやはり差が縮まりそうに無い。そのまま差が縮まることは無く俺の指の先はプールの石畳に触れてしまう。
「六助、21.59、七助、21.65だ。」
やはりダメだったか。とはいえ思っていたよりは縮まっていたらしい。
「流石だね兄さんは.......。」
「七助こそ流石と言うべきだろうねぇ。」
俺たちはお互いの健闘を讃え合い、結局2人で2500プライベートポイントずつ分け合う事にした。
ちなみに3位の須藤が22.15、4位の三宅が22.22、5位の山内が59.92だった。
そして次は女子だが、池を保健室に連れていった櫛田が帰って来ないので、合わせて5人しかいない。なのでいきなりの決勝戦である。ぶっちゃけ誰が早いか分からない。
「よーいスタート!」
泳ぎだしで早かったのは堀北と小野寺、時点で東か。逆に王と篠原は最下位争いだな。
「小野寺、水泳部らしいぜ?」
「櫛田ちゃん帰ってこねぇかなぁ。ふへへへへ。」
小野寺はどうやら水泳部だから早いらしい。後半に聞こえた山内の妄言は無視するとして、それに食いついている堀北も中々の実力である。見せ筋綾小路のセクハラに悩まされているだろうが頑張って欲しいものだ。
結果、一位は小野寺だった。まぁ当然だろう。そして2位が堀北、3位が東、4位が王で5位が篠原なので、補習行きは篠原に決定となった。足を吊った池はノーカウントらしいので、男子は山内が補習らしい。
「やっぱり小野寺の勝ちか。水泳部は強いな。」
「まぁ堀北はアソコの大きさでも負けてるからな。」
須藤の一言に、山内はそう言って自分の胸の上で弧を描く。ちなみにこの会話をしている真後ろに堀北が居るので山内は生きて帰って来ることは無いだろう。
俺はヘッドロックを決められている山内の事を無視して、更衣室へ行き着替えて帰るのだった。
Q初期池、山内が原作より劣悪になってませんか?
A原作でも4.5巻時点で盗撮を企てる奴らなんでフラストレーションが溜まったらこれぐらいはやりかねません
Q七助君のストレス溜まるの早すぎませんか?
A七助君はあんまりストレス耐性は強くないです。とはいえDクラスの面々が酷すぎるのでどっちもどっち
みたいキャラは?
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綾小路
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櫛田
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軽井沢
-
坂柳
-
高円寺
-
龍園
-
堀北
-
平田
-
一之瀬
-
ひより
-
それ以外(コメント欄へ是非)