結束バンド対She is Legend(戦うとは言ってない)

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結束バンド対 She is Legend

その出会いは偶然だった。

 

ギターを背負い、バイト先へ向かう。

そんないつも通りの行動をとろうとした私は、何故かその日は少し遠回りして行こうと思った。

ただなんとなく、本当に意味無く。しいて言うならその日はいつもより少しだけ早く学校が終わったから、なんて、理由をつけてみる。

そうして着いた場所は、初めて虹夏ちゃんと会った公園だった。

大きくはない、遊具は少しある程度の公園。

あそこのブランコに座ってるときに見つけられたんだよね……なんて思い出しながらブランコを見る。

 

そこには、棒状の、所謂タバコを咥えた女の人がいた。

 

ショートの金髪で、青い制服に赤いネクタイ、茶色っぽいスカート姿の美人。

クールそうっていうか、なんていうか、リョウさんっぽい……いや、それは失礼か。

正直言って、遠回りした過去の自分に一発ぶん殴ってやりたいくらい後悔していた。

だってどう見ても怖い人だし!目を合わせたら「何見てるの?喧嘩売ってるの?」なんて言われてボコボコにされるんじゃ……!

いや待てよ、こっちが勝手に見つけただけだし、さっさとSTARRYに行けば「ねえねえ」あああぁぁぁあああ!!!

 

「ヒィ!すいませんすいません早くこの場から離れますのでどうか命だけはぁぁぁ!」

「え!?あたしそんな野蛮な人に見える!?」

「ギターも置いていきますのでぇぇぇ……」

 

終わった……もうすでに見つかってた……虹夏ちゃん、リョウさん、喜多さん、皆さん、ごめんなさい……私後藤ひとりは本日をもって活動終了とさせていたただきます……

 

 

~完~

 

 

「待って待って、終わらないで!?うわっ、変形してる!」

「ぁぁああぁぁああぁぁ……」

「どうしよう……あそうだ、はい、これ食べて落ち着いて」

 

そう言って渡されたのは、タバコだった。

えっ、タバコ?この人タバコ食べろって言ってるの?ひえぇぇぇ!?い、いやでもこれを食べたら許してくれるかも!

 

「い、いただきます……はむ」

 

口に入れてみると、硬かった。タバコって、柔らかくないんだ……

そう思いながら噛んでみると、甘く、ちょっと苦い味がした。

というかこれ……

 

「ちょ、チョコ……?」

「うん、そだよ?もしかして、タバコだと思った?」

 

も、もしかして、私、とんでもない勘違いを?

この人が咥えてたのは、タバコじゃなくてチョコだったんだ……

 

「す、すいません勘違いしてました……て、てっきり、ふ、不良かと……」

「あはは、いいよ。よく勘違いされるし、騙すためやってたりするし」

 

ところで、と続ける謎の人。

 

「もしかして、ギター、やってる?」

「あっはい、い、一応バンドもしてて……」

 

ア"!、内なる承認欲求がつい出てしまった……!

 

「へー、すごいじゃん!どれくらい出来るの?」

「えっえっと、(人に合わせるのは苦手だから)そこそこ、ですかね……」

「ふーん、こんなことならギター持ってくればよかったな」

「ぁ、ぁあ、あなたも、ギター出来るんですか?」

 

そう聞くと、うん、と頷く謎の人。

……謎の人って(心の中で)呼んでるけど、ちょっと失礼だよね……でも名前を聞く勇気がない……!でも聞かないと……!

 

「あ、あああの、な、なま「おーい、月歌」イェ!?」

 

後ろから突然声が聞こえてきた。

 

「あ、ユッキー!」

「そろそろ時間だ、ほら、行くぞ」

「はーい。じゃ、またね!」

 

そう言って月歌と呼ばれた人はユッキーと呼んでいた人とどこかへ行ってしまった。

というか、見た目に反して、意外と明るいタイプだったな……

 

 

 

「ところで月歌、あれ誰だ?」

「え、もしかして嫉妬!?」

「ちげーよ!親しげに話してたから知り合いかと思ったんだよ」

「さっき会ったばっかの人。そういえば名前知らないな」

「お前、名前も知らない奴にあんな話しかけてたのか……いやそういうやつだったな……」

 

 

 

STARRYに着いて、さっきのことを思い出しながらバイトに勤しむ私。

いつまで経ってもまともに目を合わせられないけど、ドリンクを渡せてるだけ、進歩してる、はず……目指せ目合わせ!

……なんだか、いつものSTARRYと雰囲気違うような……

 

「ねぇ、ひとりちゃん、いつもよりお客さん多くないかしら?」

 

どうやら隣に立っていた喜多ちゃんもそう思ったようで、そう私に話す。

人が多かったから、雰囲気が違うかったんだ。どうりでいつもより圧迫される感じだったんだ。

と、周りが暗くなる。ライブが始まるみたいだ。

 

 

「行くぜ、Burn My Soul!ユッキー、カウント!」

 

 

あれ?この声聞いたことが……

ユッキーと呼ばれた人のカウントで曲が始まった。

 

始まった瞬間、私は圧倒された。

 

素晴らしい、そんな言葉では完結出来ない歌。私が褒めようとしても、言葉が出て来ない。

見たところ、六人のグループに見えるけど、その全てが私達と同じ高校生に見え……あれ、一人だけ小さい子がいる。ふたりよりちょっと大きいぐらいの。

いや、それでも皆、プロレベルの演奏をしてるし、楽器を弾いていないボーカルも、凄い歌声だ。途中のデスボイスも担当してるなんて、綺麗な顔に対して、凄い幅広いな。

 

でも、その中でも飛び抜けた人がいる。

公園で出会った月歌、と呼ばれた人だ。

ギターともう一人のボーカルを担当しているみたいだ。

何でここに、という戸惑いも、その歌声とギターの演奏でどこかへ飛んでいく。

 

間違いない、天才だ。

 

 

「……ふぅ、皆ありがとう!じゃあまたどっかで!」

 

 

三曲ほどやり終わり、彼女達の時間は終わった。

もう終わったの?という感情とスッキリしたという満足感。それら二つを同時に感じることなんて、ないと思ってた。

魅力、そのもののような、そんなバンドだった。

 

「……凄い……」

 

喜多ちゃんも、言葉が出ないみたいだ。

二人とも、飲み物を取りに来たお客さんが来るまで、動けないでいた。

 

 

 

その日のライブが終わったあと、私はボーッとしていた。

そんな私に話しかける人がいた。

 

「ぼっちちゃん、大丈夫?」

「あっ……虹夏ちゃん……」

 

虹夏ちゃんだった。

虹夏ちゃんは優しいから、まだバイト中なのに、動かず、ゴミ箱にも入らずにずっと立ったままの私を心配したんだろう。

 

「多分、さっきのバンド……だよね?あれ聴いたからでしょ?凄かったよね」

「あっはい、特にギターとボーカルの人、凄かったです。プロ……以上かもしれません」

「そう?そう言ってくれると嬉しいな!」

「は、はい……え?」

 

今ここにいるのは、私と虹夏ちゃんだけで、喜多ちゃんとリョウさんは買い出しで、店長さんとPAさんは、どこか行ってて……

 

「「うわぁ!?」」

 

だっ、誰!?

 

「やっほー」

 

そう軽い挨拶をするのは、話題に出していた、そのギター&ボーカルその人だった。

 

「きみ、さっき公園で会った子だよね。そういえば名前知らないなって思って、見つけたから声掛けに来たんだ。あたし茅森月歌、きみは?」

「あっあの、私は、えっと……」

「おい月歌。詰め寄りすぎだ。困ってるだろ」

 

テンパってしまって、声が詰まってしまってると、また新しい人がやってきた。

茅森さんに似た服を着ていて、銀色の髪で、眼鏡をかけた、ドラムをやっていた人だ。

 

「ユッキー!」

「悪いな、こいつ良くも悪くも距離感おかしいんだ。あたしは「ユッキーだよ」それはお前が付けたあだ名だろ!はぁ、和泉ユキだ」

「ど、どうも……後藤ひとりです……」

「私は伊地知虹夏って言います!えっと、さっきのライブの She is Legendさんですよね?凄かったです!」

「ああ、ありがとう、……意外と嬉しいなこれ」

「だろー?」

 

だろー?じゃねーよ、とツッコむ和泉さんの顔は微笑んでいた。

とても仲がいいんだな……

 

「あ、そういえばひとりってバンドやってるんだよね?もしかして、虹夏と?」

「あっはい、あと二人いるんですけど、そろそろ帰ってくるんじゃ……」

「ただいまー!って、あれ?その人達は……」

 

丁度良く喜多ちゃんとリョウさんが帰ってきた。

 

「さっきのバンドの人達ですよね!私も聴きました!もしかして、プロの方なんですか!?あっ、すいません私、喜多って言います!」

 

そう言いながら距離を詰める喜多ちゃん。

 

「うおっ、距離の詰め方えぐいな。……まぁどっかの誰かはもっとヤバかったけどな」

「え!?ユッキーそんな人と交流してたの!?もしかして引き抜きか!」

「オメーだよ!」

 

 

 

茅森さんと和泉さんは打ち上げがあると言って、帰っていった。

二人はSTARRYを出る時も、仲良さそうに喋りながら出ていった。

 

「いやー、凄かったね……」

「はい、意外と明るい人達でしたし、話していて楽しかったですし!」

「だねー、ってリョウ?どうしたの?」

「いや……She is Legendってどこかで聞いたような……」

 

結束バンドの皆は今日あったことを思い思いに話す。

私は……また会ってみたいと思った。

自分でも、珍しいと思ったけど、何か、新しいことを、掴めそうと思ったから。

 

 

 

 

 

「やっほー!来ちった!」

 

意外とすぐに出会うとは、思わなかったけど。


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