昔々の、昭和の時代。
城戸光政という、一人の大金持ちがおりました。
彼は財団を築き上げ、晩年にですが嫡男を得て
あとは死ぬまでにその育成を…… という人生の終活を始める段階にありました。
が。
何を とちくるった 思ったのか、突然子作りを開始したのです。
ほんの100人ほど。
しかもこれは息子だけなので、娘を含めると何人になるかは、たぶん本人にも判りません。
もちろん、一人の母親にこんなに生ませることは出来ませんし
クローンや人工授精なども、昭和ですから不可能です。
母親もたくさん用意しただけです。
城戸光政が何を考えていたのかは、もはや永遠の謎ですが
競馬で、名馬の後継を作るためには100頭以上に種付けするのーさー、と木村拓哉も昔CMで言っていた事ですし
そんなノリだったのかもしれません。
まあ、控えめに言って 外道 かなって。
そんな外道のところへ何の運命か、地上の守護者を自称する女神、その転生体が転がり込んできます。
しかもまだ赤子です。
本拠地をクーデターで乗っ取られて、何とか女神だけでもと
アイオロスという人が、自分の命と引き換えに、ギリシャ旅行中の城戸光政の目の前というピンポイントな位置まで連れてきたのです。
「この赤子は、鍛えぬいた超人の
「な、なんだってー!?」
というやり取りが2人の間で行われ、なぜか即信じた城戸光政は決意します。
よっしゃ、ワシの息子ら
そして本当にそれは実行されます。
具体的には、まず母親の元から離されて、ほぼ全員が孤児院へ。
そこである程度育ったら、いったん城戸邸へと全員集合。アテナを、自分の孫娘として紹介します。
実の息子らを引き取った孤児とする事で、それを引き取ってやったという恩を売り
その恩人の孫娘へと忠誠を向けようという作戦でした。
控えめに言って、クソ外道かなって。
これには嫡男*1も絶望。
後継者の地位を放り投げて、自分も弟たちと同じく、聖闘士の修行に出る! と言い出しました。
それにオッケーを出して、送り出す城戸光政。
もう彼はダメだと思うんだ。
そんな外道な作戦に、まだ幼いアテナは気付きもせず、無邪気に孤児たちで遊んでおられました。
気付いてアテナ。打ち倒すべき邪悪はすぐそばよ。
そんな私の祈りは届かず、アテナは乗馬服にムチまで持って、一人の少年へと高飛車に命令します。
「馬におなりなさい星矢!」
おおアテナよ、寝ておられるのですか。
ほぼ同い年の少年を相手に、お馬さんごっこを強要するとは、なんという事を。
性癖 が歪んだらどうするんですか。
まあ、もしこの時点で
将来、彼がペガサス座の加護を持つ運命を感じ取っていたのならば、若干の情状酌量の余地はありますが。
「いやだ!」
少年、星矢はキッ!と顔に決意を込めて、断わりました。
良かった。Mに目覚める少年なんかいなかったんだ。
だが、すでに別のものに目覚めてしまった少年がここにいた。
「待てよぅ、星矢ぁ。
そこには、顔の筋肉だか血管を ビキッビキッ と言わせながら
いわゆる
彼の名は、邪武。
名前に邪悪の邪の文字が入っている事と
ジャブって弱いパンチの事だろ? という子供レベルの理解
幼くして親に捨てられたという境遇
そのトリプルによって、ひとケタにして立派にグレてしまった不良少年である!
しかも、そのせいで余計な ナニカ にも目覚めているぞ!
ユニコーン座の加護にも目覚めているが、その副作用、だったらいいな。
「お嬢様ぁ!?
アテナの前で、地面に手を突き四つんばいになる邪武。
その姿は、卑屈な姿勢なのになぜか輝いて見えた。
それはそれとして、その場の全員が引いていましたが。
もう、ドン引きだったそうです。
「ごめんなさい、星矢。私が悪かったわ」
「うん。俺もなんかゴメンな」
そのショックで、自分がしようとしていた事の醜さに気付いたアテナが、星矢に謝罪して
少しだけ、二人の仲が改善したりもしましたが
邪武の方には視線も向けようとしなかったのは、まあ、残当かなって。
その後も、邪武さんは
「お嬢様の
と一貫して主張。
十二宮への突入にも同行せず
ポセイドン神殿には、初手単騎
冥界編では……
「あら? 着いてきてはくれないのですか、邪武?」
いつもならば、呼んでもいないのに気付けばそこにいる邪武が、付いてこようとしない。
冥界へ行くには、一度死なないといけないので、さすがのこの男も諦めたんだろうか。
いや、平然と自分の首を飛ばすとかされても、怖かったけど。
アテナはそう考えていましたが、邪武が止まったのはまったく別の理由でした。
「ああ、お嬢様。
「は?」
お嬢様、渾身の「は?」でした。
いや、まだワタクシはヤッていませんが?
ぜんぜん清らかですがぁー?
という想いのこもった「は?」でした。
しかしユニコーン的にはアウトだったようです。
「
冥界へと同行するために、そこにいたシャカまで含めて
その場の全員の心がひとつになりました。
そして冥界へと
事態は、
まあ、悲しいけど
多少イジっても、邪武は邪武なんだなって。
<