千年戦争アイギスの世界にTS転生したオリ主。幼い頃から武に生きてきたが、この世界で武を極めるには原作主人公である王子と交流を深めて覚醒する必要があるのではと思い至る。しかし、本来の千年戦争アイギスはエロブラゲ。王子と交流を深めるということは、閨をともにすることを意味しているとオリ主は気づいた。

※2023年に執筆した作品のため、現行の原作とのキャラ名被りや設定の齟齬がある可能性があります。

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TS転生したけど王子に抱かれないとダメですか?

「剣と魔法のファンタジー世界に生まれ変わったとしたら、どんな人になりたい?」

 

 ……そんな問いかけを遠い昔に受けた記憶が、おぼろげにある。

 

 私は確かその時「剣と魔法を極めて、最強の魔法剣士になりたい」なんて答えた気がする。

 すると相手は笑って、「格闘技もスポーツもやってないのに、生まれ変わっただけで最強なんて目指せるのか?」みたいなことを言ってきて、私は「確かに」と笑い返したはずだ。

 

 そんな記憶がはるか昔に感じるくらい、時間は過ぎ去った。

 格闘技もスポーツもやっていなかった軟弱な男は病で死に、そして、今の私に生まれ変わった。記憶を残したままの輪廻転生ってやつだ。

 地球の日本で軟弱男をやっていた前世とは違い、今生の世界は剣と魔法のファンタジー世界で、今生の私は女だ。

 

 前世で言うところのTS転生をしたと物心ついたころに気づいた私は……魔法剣士をこころざした。

 倒したい敵がいるとか、目指すべき地位があるとか、そういうことは何もない。

 世界は平和だし、国の騎士団とかにも興味はない。

 ただ単純に、ロマンを追い求めて幼い私は剣を取った。

 

 目指すは最強。そう心に決めて剣を振るい、十歳になる頃には地元で一番の剣士と言われるまでになった。

 だが、私が目指したのは剣だけでなく魔法の力も含めた最強だ。でも、この世界の魔法使いは特別な才能を持つごく一部の者しかなれないらしく、私には魔法の素養がなかった。

 しかしだ。さすがファンタジー世界、魔法とは違う不思議な力が存在するらしい。なんでも、剣を極めることで星を天から落とす技を使えるようになる流派があるらしい。

 その噂を聞いた私は、すぐさま親元を離れ旅立ち、流派の門を叩いた。

 

 私は問題なくその流派に受け入れられた。

 流派の技はすごかった。まず基本の剣技からしておかしい。空気抵抗との摩擦で剣に炎をまとわせる、なんてどこの漫画の世界だって話だ。いや、剣と魔法のファンタジー世界だけどね、ここ!

 私はこの流派を極めることで最強になれると確信し、修行の日々を送った。

 

 修行を続けるうちに、弟弟子と妹弟子もできた。

 デシウスという少年と、ミーティアという少女だ。

 

 デシウスは勝つためにならなんでもするという感じの、勝利への執念が強い子。

 ミーティアは真っ直ぐな心を持つ、正義感の強い子。

 二人の相性は最悪で、よく喧嘩をした。そこで、姉弟子である私が間に立ち、二人とも叩きのめすことで喧嘩両成敗の仲裁をしていた。

 

 その一方で、私は二人を可愛がった。前世も今世も一人っ子だったので、二人を本当の弟と妹のように愛した。

 

 そんな修行生活が数年続き、あるとき師匠が言った。

 

「お前達三人に、奥義を授ける」

 

 私と、デシウスと、ミーティア。その三人が、奥義を伝授されることになった。

 奥義とは、すなわち星を天から落とす秘技。それが使えるようになると知らされ、私達三人は色めきだった。

 だが、奥義へ至る道は簡単ではなかった。

 

「お前達は、夜空に瞬く星の声が聞こえたことがあるか?」

 

 師匠の問いかけに、私達はそろって首をかしげた。

 

「流星の剣は、心に闇を持つ者には扱えぬ」

 

 そう告げた師匠は、私達に厳しい修行を課した。

 そして時は過ぎ、まずミーティアが奥義に目覚め、次にデシウスが星の声を聞けるようなった。

 だが、一向に私には星の力が目覚めない。

 それでも腐らず修行に明け暮れていると、師匠が言った。

 

「そなたはなんのために剣を取る」

 

 答えはもちろん、最強になるためだ。

 だが、師匠は顔を険しくして言った。

 

「正しき心なくして、星は応えぬ」

 

 そう言われても……と、困惑するしかなかった。師匠も、困ったように言う。

 

「平和な世では、正しき心は(つちか)われぬか」

 

 そんな師匠の台詞がフラグになったのだろうか。その翌日、おとぎ話に語られる魔王が復活したとの噂が人里に駆け巡った。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 魔王とは、千年前に存在したと言われる魔物達の王だ。

 おとぎ話では、英雄王なる存在が魔王に立ち向かい、女神がその身を捧げて魔王を封印したと語られる。

 その魔王が、復活したのだ。無数の魔物をともなって。

 

 人々は魔物に蹂躙された。その混乱に便乗して覇権主義の帝国が周辺国へ侵攻を開始し、世は乱れた。

 

 戦う力を持つ私達は、当然のように剣を取り、魔物を退治していった。

 ゴブリンを斬り、オーガを斬り、時には山賊も斬った。

 人を助け、村を助け、時には国も助けた。

 

 そうするうちに、私の心へ光が宿った。

 最強を目指す目的は変わらない。だが、その最強の力を他人のために使う。最強の力は人を守る力。そう定めることで、私は夜空に瞬く星の声を聞いた。

 

 奥義開眼。私はデシウスとミーティアが使う剣技、『天招流星剣』を使えるようになった。

 それに喜ぶ間もなく、私は突然、神の啓示を受け取った。

 

 星の声とは違う、神の声。

 聞いているだけでひれ伏したくなるような、荘厳な声が私へ道を示す。

 その内容は、魔王と戦う英雄王の末裔への助力を願うもの。

 

 神の声は、どうやら私だけでなく周囲にも響いていたらしく、私の周りに師匠や弟子達が集まってくる。

 その彼らに、私は言った。

 

「お師匠様、行ってまいります」

 

 すると、師匠は無言で深くうなずいた。

 

「姉様、ボクもすぐそっちに向かうよ!」

 

 ミーティアが私の手を握りながらそう言った。

 英雄王の末裔がいるという王国はそこまで遠い場所ではない。ミーティアの合流も問題はないはずだ。

 

「姉者、我輩はこの里を守るぞ!」

 

「デシウス、皆を頼みます」

 

 デシウスと私はそう言葉を交わし、私は彼に後を托した。

 それから私は急いで荷物を整えた。

 そして、神の示した声に従って待ち、やがて私は神の力で異国の地への召喚を受けた。

 

 夜空のごとく黒く輝く光をまといながら空間を跳躍した私は、目の前に立つ召喚者に向けて宣言した。

 

「流星の剣士コメット、まかり越しました。最強の剣技であなた様を助けましょう」

 

 召喚者は黒髪の男性で、あふれるカリスマをその身に宿していた。

 彼がおそらく、英雄王の末裔だろう。

 そして、その彼の隣には銀髪の女性が立っており、優しい笑みで私に向けて言った。

 

「アイギス様の求めに応じてくださり、ありがとうございます。こちらは私達の盟主である王子です」

 

 銀髪の女性は、英雄王の末裔であろう男性を示しながら言った。英雄王の末裔は王子様だったらしい。

 

「政務官のアンナと申します。私が実務を担当しますので、よろしくお願いします」

 

 銀髪の女性、アンナが一礼して、私に再度笑みを向けた。それに対し、私も努めて笑顔で応えようとした。

 

「よろしくお願いしま……す?」

 

「……どうかなさいましたか?」

 

「いえ、ちょっとした既視感が……」

 

 魔王。女神アイギス。王子。政務官アンナ。ミーティア。デシウス。

 

 年月の経過で大半を忘れ去ってしまった前世の記憶が、私の脳裏へ鮮明に蘇った。

 そして気づく。

 

 ここ、『千年戦争アイギス』の世界じゃん。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 それから目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。

 王国軍に所属した私は、王子と共に様々な場所を転戦した。

 

 暗黒騎士団の脅威に立ち向かい、民を助けに砂漠に遠征し、死者の王との激戦を繰り広げた。

 魔界ではデーモンを討伐し、デシウスの求めを受けて流派の里を助け、覇権主義の帝国に立ち向かい、冒険の果てに女神アイギスの神器を入手した。

 戦いの場は魔界に移り、また魔界から強大な力を持つ魔神が侵攻してくるようになった。

 

 その道程で、私は異なる流派の剣士達とも交流し、数々の戦いを経て私は最強への道を登り詰めていった。

 

 そして、現在。私は一つの問題に直面していた。

 数々の戦士達が戦いを通じて王国軍の仲間入りをしているが、先日とうとう我が軍へ『常闇聖霊オニキス』が正式に加わったのだ。

 

 常闇聖霊。別の名を闇の聖霊といい、『千年戦争アイギス』の原作ゲームでは、第二覚醒というシステムに必要になる素材であった。

 第二覚醒は仲間ユニットを強化する手段の一つである。

 第二覚醒をするには、まず第一覚醒というシステムでユニットを強化してやる必要がある。

 

 だが、待ってほしい。私、第一覚醒していないぞ!?

 そもそも、この世界に第一覚醒の概念があるのか分からないのだが……多分あるんじゃないかなぁ。だって、ある日突然、我が軍の怪力で有名な少女のディーナちゃんが、衣装チェンジしたと思ったら爆砕鉄球をぶん投げるようになったし。

 あれ、第一覚醒してできるようになるスキル覚醒の技だよ、絶対。

 

 であれば、私も覚醒しなければパワーインフレ環境に置いていかれることになる。私も早急に、第一覚醒してスキル覚醒して第二覚醒しなければ。

 

 だが、そうなると一つ問題が。

 この世界は『千年戦争アイギス』の世界なのだ。

 

 そもそも『千年戦争アイギス』とは何か。前世の日本で西暦二〇一三年に始まったエロブラウザゲームである。サービスを続けるうちに、エロを省いたバージョンができ、そちらが『千年戦争アイギス』になり、エロ版の名称が『千年戦争アイギスR』へと変わった。

 さらに非エロ版がスマホアプリに移植されて『千年戦争アイギスA』となり、スマホ用ブラウザ版もできた。

 

 つまりどういうことかというと……この世界、元々はエロゲ世界なのだ!

 主人公である英雄王の末裔、王子は仲間になった女性ユニットへ花束や宝石を与えることで好感度を上げることができる。

 好感度が上がったユニットはステータスが強化されていく。好感度が一定の値になると、『千年戦争アイギスR』では寝室、すなわちエロシーンが見られる。

 そして、好感度が一〇〇%となり、さらにレベルを最大まで成長させてようやく、第一覚醒ができるようになるというわけだ。

 

 ちなみに男性ユニットは宝石ではなく酒を与えることで好感度の代わりに信頼度を上げることができて、エロシーンの代わりに会話イベントが挟まれる。非エロ版だと女性ユニットも寝室の代わりに会話イベントが入るね。

 

 で、この世界が『千年戦争アイギス』だとするとだ。

 女性ユニットが第一覚醒するためには、王子と交流して好感度を上げる必要があるんじゃないかな?

 そして、『千年戦争アイギスR』だった場合、王子と閨をともにする必要があるんじゃないかな!?

 

 ゲームと現実を混同するなとは言うけどさ、私、知っているんだ。

 王国軍所属のめっちゃ強い女性達は、だいたいみんな王子のお手つきだってことにね!

 つまりあれだ。この世界って、『千年戦争アイギス』じゃなくて『千年戦争アイギスR』の世界なんじゃないかなって。

 

「最強を目指すには……王子と寝なきゃいけない……?」

 

 私は愕然(がくぜん)とした。

 いや、だってさ……。私は転生者なんだよ。しかもただの転生者じゃなくて、TS転生者なんだよ。もとは男なんだよ。つまり、性自認は男なんだよ!

 嫌だーッ! 男と寝るのは嫌だーッ! でも最強になるために覚醒はしたいッ!

 

 王子は好きだよ? 酒飲んで一緒にバカ騒ぎするのとか大好き。でもその好きは異性としての好きじゃなくて、同性の仲間としての好きだよ!?

 

 私はどうすればいいんだ!

 

「……姉様、頭抱えてどうしたの?」

 

「……ああ、ミーティアですか」

 

 苦悩する私の近くをミーティアが通りかかり、私に声をかけてきた。

 うん、ミーティアは今日も可愛い……って、あれ?

 

「ミーティア、どうしたんですか。いつもとマントの色が違いますね」

 

「えっ、分かる? えへへー、王子に新しいマントを貰っちゃったの。この刺繍、格好よくない?」

 

「……?」

 

 おかしいな。既視感がある。

 もしかしてこれって、ミーティアの第一覚醒衣装じゃない? サファイアユニット『剣士ミーティア』の第一覚醒の姿じゃない?

 

 ま、まさかミーティア……。

 

「か、覚醒したんか! ミーティア覚醒したんかッ!」

 

「えっ、えっ、なに? なんのこと?」

 

「したんか、ミーティアッ!」

 

「姉様、いきなりどうしたのさ!?」

 

「したんか、ミーティア! 王子とえちえちしたんか!?」

 

「え、えちえちって……?」

 

「王子に花束と宝石を貰って(ねや)をともにしたんかー!」

 

「……!? な、なんのことかなー?」

 

 この反応、王子としているッ! 王子(ブルーマン)九九%(えちえち)しているッ!

 

「う、うわあああああ……! 私のミーティアがーッ!」

 

「姉様!? ちょっと、どこに行くの!」

 

 私は王城内にある酒場に駆け込み、ひたすらに酒をあおった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ビールを大量に胃へ流し込み、ぐでんぐでんに酔った私は、カウンターに突っ伏していた。

 可愛い妹弟子が王子に食われたことに悲しみ、ひたすら泣いた。

 仕事を終えて酒場に来た兵士達は、そんな私のことをそっとしてくれたのか、近づく者はいなかった。

 

 そして夜遅く。酔いが醒めてきた私は、酒場の天井を見上げてボーッとしていた。

 すると、誰かがカウンターの私の隣へ座る。

 

 その人は、酒場のマスターに千年ワインを注文した。

 千年ワインはこの王城の酒場で一番高い酒だ。どんな御大尽が来たのか、と私は顔を下げて隣へ目を向ける。すると、そこに居たのは王子だった。

 

 まさかの人物に、私はギョッとする。

 だが、王子は笑ってもう一つ千年ワインを注文すると、私の前にグラスを置かせた。

 

 乾杯しよう。

 そう王子は言い、グラスを手に取った。思わず私はため息を吐き、王子をにらみつける。

 

 何か?

 と、王子は返してくる。この野郎。私は大事な妹弟子を食われたうらみをどうぶつけてやろうかと考え……とりあえず千年ワインのグラスを手に取った。

 そして、乾杯することなくグラスの中身を飲みこむ私。

 

 一気飲みでグラスを空にして、カウンターに叩きつけるように置く。

 

 すると、王子が驚いたように言った。

 どうした、機嫌が悪いな。と。

 

「機嫌も悪くなりますよ! 大事な妹弟子が、王子のお手つきになったんですから!」

 

 それはすまないことをした。

 王子は少しもすまなそうな顔をせずに、そう答えた。

 こ、この野郎……!

 

 そんなに妹が大事ならば、大切に仕舞っておいた方がよかったのでは。

 王子はそんなことを言ってくるが、それはできない。

 

「ミーティアは、もう一人前の戦う女です。戦場こそが彼女の立つべき場所。里に仕舞ってなんておけません」

 

 そう答えたら王子は笑って、一人前の女なら男の一人くらい許してやれ、と返してきた。

 確かにそうだけど、手を出した本人に言われるとイラッとくるね!

 イラッとくると言えばあれだ。私より先んじてミーティアが覚醒していたこともイラッとくるね!

 

 そのことを王子に伝えると、王子は驚き顔になった。

 曰く、コメットは他者である聖霊の力を借りて力をつけるような行為は、気にくわないのではないかと。

 

 待て、それは勘違いだ。

 

「私は借り物の力とか、付け足しの力とか、肯定派ですよ」

 

 すると、王子は驚き顔のまま答える。

 強さに対してストイックだから意外だ、と。

 

「なるほど、だいぶ私のことを勘違いしているようですね。そもそも、私はかなりの俗物ですよ? 何せ、師匠からずっと、お前には正しい心が身についていないと叱られていたくらいですからね」

 

 それから私は王子と酒場で語り合い、酒を何度も交わして一晩過ごした。

 

 そして、翌朝。

 私は政務官のアンナに呼ばれて、王城内の儀式場へとやってきていた。

 

「それでは、これよりコメットさんの覚醒の儀式を行ないます」

 

 アンナがそう宣言し、私は女神アイギス像の前で覚醒聖霊と常闇聖霊の力を受け取った。

 

 流星の剣士コメット、第二覚醒完了である。

 さらに私は独自の剣技に開眼し、『奥義 天来七星剣』を習得するに至った。

 

 そんなことがあった後の夜、私は自室で一人、酒を飲みながら考える。

 

「王子と一緒に飲み明かしてから覚醒……これって、男性ユニットの覚醒方法では?」

 

 もしかしたら……私って男性ユニット扱いされているのでは?

 私の身体は女のそれだが、性自認は男のままだ。

 つまり私は男性判定された状態で信頼度上昇アイテムである酒を王子から与えられ、信頼度が一〇〇%となって第一覚醒の条件がそろったということになる。

 

「……エロブラゲ世界も、LGBTに配慮する時代かぁ」

 

 自分の出した答えに、私は思わず笑ってしまった。

 


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