俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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 前話投稿時、お気に入りの減りかたが激しくて項垂れていた豆腐メンタルな投稿者。……それが私だ!!(白目)
 切りが悪くなったので予定より早めに投稿。次はホントに最低でも再来週に成ります。





イオリアの名においてこれを鋳造する 汝ら罪なし

 

 

 

 

 

 ──アレ?…ねぇ、聞こえる?ねぇってばっ!?」

 

 

 想定外の連続、通信の繋がらない仲間達、向こう側でも逼迫した事態に成っているのは情報源が途切れた千束でも分かる。もはや観光がどうとか言っていられる場合ではなく、執事の言葉に甘えるようで後ろ髪を引かれる思いだが“命には代えられない”、と、退却と合流を千束は選ぶ。

 

 

 「……ごめんなさい、松下さん。その………」

 

 「いえいえ、構いませんよ。仕方の無いことですから。……」

 

 

 困った様に笑いながら、言わなくともいいと、その言葉の先に続く予定を松下は穏やかに受け入れる。明らかに今までとは毛色の違う想定外の連続だったとはいえ、間違いなく今回はプロとして恥ずべき失態だろう。直ぐに緊急時の合流ポイントに向かう為、松下の車イスを押そうとする千束。依頼人を危険に晒した事、仲間の安否、様々な感情が彼女の許容スペースを瞬く間に埋めて行き、焦燥が脳裏を焼き焦がしていると、不意に松下が尋ねて来た。

 

 

 「───ところで、襲撃者を“殺し”たりはしないのですか?」

 

 「────えっ?─────」

 

 

 焦燥感で一杯になっていた頭の中が、突如 真っ白に塗り潰された。思慮外からの質問に思わず硬直した千束、それを気にせず松下は続ける。

 

 

 「相手は大義名分も無く殺人を生業とするような輩ですし、生かす価値もないでしょう。私や貴女方の安全を考慮すれば、それが一番、確実で合理的な方法では?」

 

 

 淡々と、何の気負いも感じさせず、まるで今日のランチメニューを聞くかの様に他者の命の正否を聞いてくる松下。表情こそ変わらず穏やかなままだが、その瞳は一切の温度を感じさせない無機質なモノに変わっており、一瞬、今まで喋っていた相手が誰なのか判らなくなった。確かに、その理屈は、今の状況、相手と自分の立場、物事を俯瞰した優先順位、それらを統合して値札を付けていけば、一番下に為るのは間違いなく襲撃者だろう。だが、つい先程まで朗らかに会話していた同一人物とは思えない程の、鋼の様に冷たく硬い空気と理論は、今までの出来事(楽しげにしていた観光)を夢幻だったのかと錯覚させる。じっと千束の目を見て聞いてきた質問には、誤魔化すことは許さないと念を込められており、その無言のプレッシャーに抗うように、静かに千束は口を開いた。

 

 

 「……ごめん、松下さん。それでも私は………」

 

 「………例え相手が、私の家族を奪った相手でもかい?」

 

 「──っ!?」

 

 

 思わず息を呑み、俯きかけた顔上げ、目を見開く。そこに冗談の色はなく、変わらず冷たい瞳を湛えている。

 

 

 「何もそこまで不思議ではありませんでしょう。事前にお話していた通り、私には非常に敵が多かった。そしてそのせいで私は家族を失っており、その相手は今回の観光をチャンスとし、仕留め損ねた私を今度こそ抹殺しに来た。……私は立場だけではなく、相手にとって都合の悪い情報もたくさん所持していますからね」

 

 

 変わらず淡々と唐突に事実を告白してくる松下。その語りに千束は無意識に足を退きそうになっていた。なにも言えないまま聞いていた千束は、瞳を揺らしながら何度か口を開いたり閉じたりして、すぐさま返事をする事が出来ず、時間だけが正確に過ぎていく。どんな言葉を作ればいいのか?どう言えば、相手を傷付けないか?と、少しの間逡巡する、が直ぐに答えは出た。どんな言葉を書き起こしても意味は無い、と。コレはそういった答えの無い問い掛けで、どれだけ論理的な言葉も、優れた言葉も、優しい言葉も、意味を成さない話だ。ならば自分も嘘偽りの無い言葉(本心)を送るのが一番誠意ある対応だろう。

 既に松下の顔からは表情が抜け落ちており、能面のような無表情のその奥には、ここには居ない誰かに向けた、ほの暗い感情が灯っている。千束は少し時間を開け、儚く微笑みながら口を開いた。

 

 

 「ごめんなさい、松下さん。それでも私は誰かを殺したくない……。私はね、誰かが時間を……命をくれたから今こうして生きていられるんです。だからこそ、誰かの時間を奪う様な事はしたくない。………だから、ごめんなさい。……勿論、松下さんをそのままになんてしませんし、そいつらは きっちりがっちり ふん縛って、警察に突き出しますから!」

 

 

 松下に真っ直ぐに返答し、頭を下げる。松下の言外の護衛に託つけた報復依頼は、それは確かに正当な復讐だろう。だがそれを千束は受け入れる事はしたくなかった。例え悪人だとしても、大事な時間を奪う様な真似は、どうしてもしたくなかったのだ。子供のワガママと言われればそれまでだが、誰よりも時間の大事さを知っている(寿命が限られている)からこその無垢なワガママ。……松下にどれだけ伝わったのか正直分からない、詳しく話すには時間が無い為省いた部分もある………だがそれでも誠心誠意を込めて紡いだ言葉は、松下の纏っていた空気を霧散させた。

 

 

 「……いえ、こちらこそ不躾な事を言い、大変 失礼しました。どうか、顔を御上げください」

 

 

 そう言い、松下も頭を下げるのを、慌てて取り成す千束。謝罪合戦も程々にし、直ぐ様退却準備に掛かる為、松下の車椅子を押し始める。先程の雰囲気が無くなり一先ずは安心する千束だったが、しかし、松下の瞳は変わらず氷のような温度を保っており、必死に車椅子を押す彼女には見えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………そん……な…」

 

 

 ミズキと合流すべく、走っていた たきなが観たものは絶望の第一歩め。遠目からでも判った異変とその結末は、彼女の膝を折るには充分な光景だった。なんとかミズキが地上に最後に居た場所へ辿り着けたが既に手遅れ。

 今も尚、豪快な音を立て、目の前の水面から吹き出る気泡は、彼女が助けを求める声の様にも たきなには聞こえた。

 どこで間違えた?どこで失敗した?どこで読み違えた?グルグルと無意味な間違い探しに思考が空回る。こんなはずでは、と、言い訳染みた言葉が頭の中で木霊し、思い起こされたのは依頼日前日─────

 

 

 

 

 

 

 ─────ねぇ、たきな。私の事を助けてくれるんならさ、序でにミズキ達も助けてよ』

 

 『うぉい!私は序でか!?というか子供か!?』

 

 『僕には是非ともそうして欲しいな。出来れば優先で』

 

 

 お前には聞いてねぇよ!と外野が突っ込む背景での一幕にて、一瞬何を言っているのか分からなかった。助けるも何も、同じリコリコ店員である以上、援護するのは当たり前の共通認識だと思っていたからだ。そんな胸懐を読まれたのか不思議そうな顔をしていると、千束は苦笑しながら続ける。

 

 

 『ほら、私ってさ、戦闘でピンチになることほぼ無いじゃん?その分をミズキ達に回して欲しいんだ』

 

 『……それは、勿論適宜に行うつもりですが……』

 

 『いやいや、たきなって結構私にベタベタっしょ?』

 

 『なっ!?!?』

 

 

 顔を紅潮させ、体を盛大に跳ねさせる たきな。それを観ていた外野達は“え?自分で気付いてらっしゃらなかった?”という顔をする。その後に続く言では、基本的には裏方だから大丈夫だとは思うけどね~、と、話を締め括る。

 

 ……そうだ…そうだった…。千束にとって此処は家であり、リコリコメンバーは家族のようなものだった。千束は愛情深く、思いやり溢れる人間だ。出会った当初は、事務的な対応しかしなかった余裕の無い私にだって、千束は何処までも寄り添って考えてくれた。本部から左遷され、私の目標であり、夢とも言えるあの場所が遠退いたあの時。私に、“まだ全てが終わった訳じゃない、やり直すことも、他の居場所も在るよ”、と教えてくれた。そんな千束に救われたからこそ、此所が特別な場所なんだと思え、いつの間にか心から安らぐ事の出来る居場所になった。そしてこの居場所は、千束を始めとしたリコリコメンバー全員が笑って過ごせて、初めてこの場所は完成する。

 

 

 『問題ない(ノープロブレム)。当機の支援・護衛対象は()()()()()()()()()()()()だと宣言する』

 

 『WHOOOO!!⤴期待してマッセ、旦那!!──────

 

 

 だから絶対に此所は死守する。ナニヲシテデモ───

 

 

 

 

 

 

 次第に水面に上がってくる気泡の数も大きさも減っていく。今、千束はどうなっているのだろうか?直ぐに行かなければ、と思うが、此所からじゃ千束が居てるで在ろう場所は遠すぎるし、そもそも連絡不能に為った時点で、千束達の正確な現在地すら把握出来ていない。なんの確証もなしに動けば、寧ろより事態が悪化するだけでは?と頭の中で弁明が出る………。

 いや、ソレも言い訳だろう……。“千束に合わせる顔がない”、……この感情が一番大きいと思う。……千束に任されたのにも関わらず護りきれなかったどころか、千束をも危険に曝した。もし千束がこの事を知ったらドウナルノダロウカ?嫌われる?悲しむ?怒る?恨まれる?今迄で感じた事がない程の名前の知らない感情の波が押し寄せて来る。気が付けば、全身から力が抜けてその場でペタリと座り込み、水中で溺れているかの様に、体が必死に空気を求めて下手くそな呼吸を繰り返していた。

 “仲間を死なせた”という絶対にしてはいけないミスに、千束は“護衛という名の足手纏いを抱えたまま手練れと交戦しなければいけない”という絶望的な安否状況。事態が好転するイメージがまるで湧かず、様々な情報が残酷に現実を教えてくれる。

 車と仲間はせめてものこの状況下で、移動手段と千束達に駆け付ける事が出来るかもしれないという最後の希望…………それが今、目の前で潰えた。

 

 

 『………俯いている暇は無いぞ たきな、反撃の時間だ………』

 

 「……………………………」

 

 

 唯一繋がる通信相手のクルミが声を掛けてくるが、どこか遠くで空気が震えているだけの様にしか思えず、まるで現実感がない。たきな はソレを、底無しの空虚な心模様で聞くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────我らのスーパーマンが御到着だぞ』

 

 

 何を言っているのか?そんな疑問は聞く間も、思案する時間も無く、答えは直ぐに()()()()()()

 

 水面が急に薄暗く為ったと思えば、突如爆発。大きく歪なシルエットがたきなを太陽から隠す。巨大な物体が急速に浮上した事によって発生した水飛沫は、クリアグリーンの輝きと溶け合う事によって、時外れのイルミネーションを描く。日輪を背にした巨影は()()()()()()()をより一層煌めかせ、耳心地の良い高い駆動音を強めつつ水中から飛び出し更に上昇、適当な所で止まるとその姿を白日の下に晒した。たきなは巻き上げられ霧状に成った水とG()N()()()を肌に受けながら、その正体に目を見開き脳で理解する。

 

 

 『まさか、水中でも活動できるとはな………』

 

 

 無線機越しからのクルミが発した言葉には、呆れ半分も含んだ喜色の声色で、その場を観測していた全員の驚倒を代弁していた。

 ソコに居たのは、水底に沈んだはずのミズキの乗った車を、車底から二本の腕で頭上に持ち上げた翡翠だった。翡翠は直ぐ様 車を陸地に降ろすと、ビームダガー以下の刀身にしたGNビームサーベルで車のドアのロックとヒンジの部分を素早く溶断し、馬力任せに片腕で前部のドアパネルを強引に引っ剝がす。すると、浸水していた水と共にミズキが嘔吐きながらまろび出て来た。

 

 

 「……エホッ、ゲホッゲホッゲホッゲホッ!…神様仏様翡翠様ありがとうございますぅっ!!ガハッ、ゴホッエホッ………!」

 

 「救助が遅れた事に、深く謝罪。ミス・ミズキに直ちに適切な診療を強く要求。ミス・クルミに応援要請」

 

 『もう、手配してる。ちょっと待ってろよ』

 

 「感謝」

 

 

 見えない何者かが仕掛けてきた絶死の罠を、車ごと持ち上げ浮上させるという常識外の方法で突破。未だに逼迫した状況は続いているし、敵の仕掛けてきた罠もこれが全てではないだろう。だが、それでも、今と さっき迄でとは明確に違う。咽びながら早口で捲し立てるミズキを介抱しつつ、翡翠は発言する。

 

 

 「当機から提案──」

 (私にいい考えがある)

 

 

反抗作戦(アベンジ)は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 






 某所・某国の海にて────


  ────……は?……」

 「あん?、どうした?」

 「……いや……なんか、ソナーにな?……人型?ポイッ何か?……が魚雷みたいな速度で動いてんのが映ってな?………」

 「はぁ?なんじゃそりゃ?アトランティス人でも見つけたってか?いや、この場合魚人か?クソッ、ちょっと前にオーバーホールに出したばっかだろーが………。で?水深は?」

 「………500メートル……」

 「……………整備してた連中は何やってたんだよ……ったく……」




投稿間隔と文章量について:今回のアンケートは文章が短く切りが悪くても良いから少しでも早い投稿が良いか、がっつり読みたいから時間が掛かっても切り良く読みたいか、のアンケートです。他にも、単純に短い方が読みやすいか、長い方が良いか等でも選んでいただければ、と。ただ、リアルでの生活の状況でどうしても遅れたり、ストーリーの進行具合の関係で、一気に投稿したいが為に書き留めする事が有るのをご了承ください。

  • 切り悪くても早い投稿の方が良い
  • 時間が掛かっても良いからガッツリ読みたい
  • 単純に短い方が良い
  • 単純に長い方が良い
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