俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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 何時も感想、評価、お気に入り、ここすきや誤字修正等ありがとうございます!それらを励みに、遅筆ですがエタらずに完結を目指します!
 ※今回は切りの関係で、短めでお送りいたします。




逃げたら一つ、進めば二つ、止まればオルガ 前編

 

 

───リコリコ、現場突入直前───

 

 

 

 

「負傷者が出なかったのは幸いだな………」

 

 

 モールエリア内、とあるビルの高層階の一室にて、フキを始めとしたリコリス達は息を潜めて集まっていた。突如現れたイレギュラーを目撃したフキは、即座に退却を選択。つい最近増えた特殊事例マニュアルに従って、時間は掛かりながらもなんとか全員を拾い、一先ず窮地を切り抜けはしたのだが……。

 

 

「確かに怪我人は出ませんでしたけど、ねぇ…………」

 

 

 渋面でボヤくサクラが窓から外をチラリと窺い、視界に映るは遠巻きにウロチョロと飛ぶ報道ヘリと、自分達の退路を塞ぐように歩き回っている異形の闖入者。

 

 邪魔くさい。現状を表すならこの一言に尽きた。

 

 リコリスは国から殺人許可(マーダーライセンス)こそ貰っているが非公式、というか成り立ちからして表沙汰に出来ない組織だ。当然目立つのはご法度で、マスメディアに見つかるなんて以ての外。

 にも関わらず下りてくる任務は必要性が高く、ハードで複雑なモノが大半。それはリコリスの階級が上がれば上がるほど顕著になり、今回の任務なんかは特にその典型例。

 そんな任務であの傍迷惑なチンドン屋に、巧まずしてだろうがリコリス達は首根っこを押さえ付けられてしまっていた。

 

 

「……まぁ、あのどうしようもない連中は置いといて、だ」

 

「今一番の問題はあのブリキ軍団と、()()ッスね………」

 

 

 そして問題はまだ在る。装備とマップの確認を行いつつ、現状の要因の1つである()()()()()()()()()()を掌に乗せて補足する。そう、この状況に陥った一番の理由、一切の通信断絶を。

 

 どんな分野でも情報とは非常に大きな要因になりうる。勿論それはリコリスのような暗殺に重きを置いた組織でも変わらず、たとえ民間用携帯1つでも有るか無いかでも成否が決まる、と言っても過言ではない。その現場で通信手段を奪われたのは彼女達にとって致命傷に等しかった。

 

 

「んで、『若しもの場合は個々の判断で撤退』っつっても、()()がアレですしねぇ……」

 

「警官と交戦してた時も、9mm程度じゃ牽制にもなって無かったね…………」

 

 

 広がる議題にエリカも入り、持ち上がるはもう1つの無視できない問題。人型戦闘用ドローン(イレギュラー)について。

 本来リコリスの活動思想は、『市街地等の民間人が多数居る現場にて、テロ等の喫緊の案件を未然防止、又は、迅速且つ密かに処理する対人の隠密作戦』にある。故に、あのような分類すら難しい未知の兵器との交戦も応対も完全に管轄外で、その場しのぎの急造された教本では後手後手に為るのは自明の理だった。

 

 

「で、どうするの?続行するにしても撤退するにしても、あの連中をどうにかしないと話すら進めないよ?」

 

「………………」

 

 

 だが、時間は待ってはくれない。皆の議論に結論を求めたヒバナの問いへ、フキは答えを持ち合わせてはいなかった。

 

 どの選択をしても交戦必至のあの相手は、今の自分達の火器だと破壊は困難だし、そもそもそんな事をすれば間違いなく報道陣の目に留まる。

 かといってこのまま待機も有り得ない。この無線封鎖もあの無人機も敵の作戦の一部と考えるのが妥当で、だとすれば絶対に次の動き、否、それどころか既に動いていると見た方がいい状況。座して待てば更なる事態悪化を招くのは明白。

 それに上記の問題を横に置いても、手ぶらで帰還するのは()()()()()()()()()()()宜しくない理由も有る。

 

(司令はああ言って下さっているが、()()()が納得してくれるかは甚だ疑問だな………)

 

 フキのみに与えられた楠木越しの密命。『もしもの場合はガンダムデュナメスに関する情報取得を優先せよ』、という、多数の上位者の思惑が絡み合った無茶振りが。

 

(今回の件、恐らくは()()()……それが明らかなのに真っ直ぐ帰るのは、正直かなり(こえ)ぇ………)

 

 楠木からは『少しでも情報を()()()()()が最優先だ』、と、真っ当で有難いお指示を頂いてはいるが、今回の任務の発端が発端だけに楠木越しのお相手はそれで到底納得するとは思えない。

 フキに対しての処分だけで済めば御の字、最悪の場合、全リコリス隊員の消耗を度外視した指令が下ってもおかしくない。

 

 そしてそれは現に一度それに近い作戦が展開された事がある以上、十二分にあり得る可能性。

 

(………どうする?………どうすればいい?………)

 

 進んでも地獄、逃げても地獄、そも根本的な話があの無人機の(センサー)を掻い潜る事が出来なかったからの結果が今。

 

 ベテランと呼ぶには若すぎる齢のリーダー、その小さな背に、無数の(21グラム)の重さが伸し掛かる。

 

 知らず知らずの内に握り締められる拳。

 しかし───────

 

 

 

────────ガタン────────

 

 

 

「「「「「「「ッ!?」」」」」」」

 

 

 ────状況はフキの苦悩を汲んではくれない。

 

 即席のバリケードで塞いだ扉の向こう側。そこからもう2、3度続いた明け開こうとする動き。それに対し、リコリス達は無音で配置に就いて迎撃態勢に入る。

 

 

「……因みに先輩……()()が相手だった場合、何か良い作戦とか在ったります?」

 

「……高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に退却を目指す、だな」

 

「それは……完璧な作戦ッスねぇ……」

 

 

 フキとサクラの遣り取りに、全員の警戒レベルが一段上がる。重い足音がしなかったのであの重厚だがトロそうな無人機では無いと思う、が、それが安心出来る材料とはならない。現状ではあの『ガンダムデュナメス』に比肩するモンスターが出てきても可笑しくは無く、そして此処に居る者はその性能を肌身で体感した者ばかり。だから知っている、もしそうなら戦闘にすら成らないという事を。

 

 相手が人間なら即座に無力化して此処を引き払う。相手が外の奴と同じなら遅滞戦闘に務めて遁走。相手がもし翡翠(アレ)の同型機なら─────神に祈れ。

 

 耳鳴りが聞こえてきそうな程の静寂。高まり合う緊張感と集中力。濃縮された時間の中、釣り合っていた趨勢が傾く、その間際───────

 

 

────────バコン────────

 

 

「「「「「「「ッ!!」」」」」」」

 

 

 ───一糸乱れぬ動きで天井の空気ダクト(音の発生源)へ構え直される射線。

 撃鉄が叩き起こされようとする寸前で────

 

 

「─────よっ、と!………よし!居た居た!」

 

 

 ────無造作に転がるダクトの蓋と、スルリと着地した千束を認識した。

 

 

「────ハァ!?────おまっ───なんっ!?」

 

「あーー、フキは後でね。取りあえず……ひー、ふー、みー、よー……────うん、全員居るね……んじゃあ、ハイ、コレ」

 

「へ?」

 

 

 トリガーに掛けていた指が止まり、一気に弛緩する空気。上手く言葉を形成出来ないフキと唖然と固まるその他のリコリス達。

 しかし千束はそんな彼女達を他所に、テキパキと何事かを進め、適当に近くに居たリコリスへ端末を渡す。

 

 

「コレに脱出ルートとか現在の概況とかも入っているから」

 

「───はい?──え??あの、ちょっ───」

 

「フキ以外の人はコレで現場を離脱してね。そのゴール地点に逃走用のトラックが在るから。それに乗ったら任務完了だから宜しく───」

 

「─────ッ、ここは私の現場だぞ!!って言うか──声くらい掛けろクソバカ!!」

 

 

 と、此処で漸く理解が追い付いたフキが吠える。現在のシチュエーションに、今自分達が一番欲しいモノを携えて現れた同僚。流石にここまでヒントが揃えば説明されなくとも何となく解る、何故千束が現れたのかを。が、それでも我慢出来なかったのは脊髄反射か、彼女達の仲ゆえか。いとかなし。

 

 そんな気の抜ける見世物を観せられていた他のリコリスも次第に再起動を果たし、外へ気を回せる者も出てくる。

 

 

「────!例の無人機に動き在り……!!」

 

 

 その言葉を皮切りに事実を確認した彼女達にも、年相応の表情が戻り始める。四方を囲んでいた無人機が、何処かの施設内へ移動する様が。遠目だがハッキリと観えた事態の好転。だが────

 

 

「───ん?……()()()は居ないんスか?」

 

 

 不意に投げ掛けられた何て事の無い疑問。それに対し多くのリコリスは頭上疑問符を浮かべるだけだが、聞かれた本人の反応は激的だった。そこでフキも漸く気付く、明らかに余裕の無い千束の様子に。

 

 

「………っ……たきなは今─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

───とあるモール内ショピングエリアにて───

 

 

 

 

 誰も居ないショピング通りを青い影が駆け抜ける。青い影は手頃な陳列棚をヒラリと飛び越えると、青のスカートが舞い、しなやかな脚線美が大胆に露になる。だが本人はそんな事は気にも留めず、素早く棚に背を預けて身を屈める。すると間髪いれずその後を追うのは、秒速700メートルを軽く超す鉛の飛来物の群れ。

 

 

「──ッ!!──」

 

 

1発でも掠れば人体を豆腐のように抉るそれが、肉の代わりに店の商品を始めとした障害物をガリガリと削り壊して行く。

 

 青い影は、自身の息は整え、敵の息はズラすように、物陰から飛び出して再び疾走。

 

 

「(───……後、少し……!!────)」

 

 

 たきなは今。

 

 孤独な戦いに身を投じていた。

 

 

 

 

 






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