俺 自身がガンダムになることだ 作:解毒剤からビームサーベル
大変お待たせしました!
体調不良や私生活荒れなど(後、普通に文章を整えるのに手間取った)、色々有りましたが、私は元気な気がします。
そして、これからもこんな感じで不定期になるかもしれめせんが、お読みいただければ幸いです。
※追伸:皆さんも季節の変わり目には気を付けましょう。
────それは、突入より少し前の事。
その爆弾は、作戦の大まかな流れも決まり、其々の準備も大詰めに入るといった頃に───投下されました。────
「───うへぇ、ゴッツゥ………選り取り見取りの至れり尽くせりだぁ………」
「後が無い、というのもあるとは思いますが、それだけ本部も本気なのでしょう。
それに相手が相手です。火力は幾らあっても困りません」
「まぁ、ねぇ…………ところでたきな。コレ、自信有る?」
「………私も何度か触った事が有るくらいですね」
残りの細かな作業は他の方々に任せて、千束と私は慣れない装備に揃って首を捻っていました。今回の任務は徹頭徹尾に非常識、どれだけ入念な備えをしても足りません。加えてこれだけの規模の事件です、例え首尾よく事が運んでも激戦は必至でしょう。
そんな風に未知の敵へ私達が議論していると、空いた作業スペースで放置されていたふざけた置物は、唐突に何時ものマシンボイスで全員の注目を集めました。
「───報告。当該エリアにて、『
よって、今作戦ではマスター:錦木 千束の参加を拒絶。後方待機を強く推奨」
「──…………はぁ?…何言ってんの?」
「──……みの……何ですか……?」
何処か焦ったように繰り出された内容は、我々の作業の手を止めるには十分な効力を持っていて、千束に至ってはうっすらと不快感をも滲ませていました。
当然、千束だけでなく他の人達も事情を求めれば、裏で進めていた調査で今先ほど解った事らしく────極めて強力な電波妨害能力と、
「………使い勝手の良いEMPという訳か……凶悪だな……」
『それ、お前は大丈夫なのか?』
「
「ああ~、そりゃそうよねぇ。ソレでダメに成るんなら私達が呼ばれる訳無いし……」
ただ、今回検知したソレは、翡翠が知っている物とは似て非なる物だそうで、電子機器への悪影響も大幅に落ちて残留時間も短く成っており、今現在も外縁部から薄まり続けているそうです。………視界の端で物申したげたにチラ付いている連絡員の方々には心苦しいのですが…………ともかく、その話が本当なら千束を絶対に前へ出す訳にいかないのは確か、直ぐにその話を進めなければいけません。
しかし─────
「……ソレ、どれくらいの確率で機器を駄目にするの?」
「不明。情報不足の為、正確な数値の算出は不可」
「それでもいいから」
「…………現在までの解析結果では、9%未満と推測…」
「──なんだ、そのくらいか。
じゃあ問題無いね、私も行くから」
が、やはりと言いますか。
千束の反応は予想通りでした。
分かってはいました。
千束ならそう言う事は。
ましてや今回は大勢の市民と千束の同僚の安否が懸かった任務。例え提示された数字が高かったとしても千束が引く事は想像できません。
「あくまでその程度の確率でしょ?だったら普段の仕事と大差無いよ」
「否定。先程の数値は不確定要素を計算から排除した希望的観測にすぎず、更に、今回の戦域では無数の懸念事項が潜んでいる事は確定的である。よって、
「あのねぇ───そんな余裕無いし、だったら尚更急がなきゃいけないでしょがっ…。
中にはペースメーカーの人だって居るかも知れないんだよ………!」
少しずつ、千束の語気が強くなっていく……。
どちらの言い分も私情ありきですが、軽んじていい内容ではないのも事実。人員も手段も限定されている今の環境では、今更大きく変更する時間も無く、かといって浮上した懸念を放置すれば任務そのものの破綻に繋がりかねない。
店長もミズキさんも、誰もが眉間にシワを寄せて口を閉ざしたまま……。
だから────
「───私が──奴らを引き付けます」
────時間が有る内に、
今回の作戦の心臓部は“時間”。
“翡翠に周囲の陽動と人質の保護を任せてる間に、片方がリコリス達の退却幇助とキルゾーンの作成を、もう片方が周辺を囲っていた残りのMDをそこへ誘導し、撃破を。”というのが私達の主な役割です。
翡翠突入後は全てが迅速に進み、最後はDAの息の掛かった後詰めの人員で痕跡もろとも揉み消す強襲戦。
それは相手の目的も手札も判らない以上、相手が何かをする前に畳み掛けようという考えから来た作戦で、本来なら千束が矢面に立つ工程でした。
それを、私が代わる。
「───何言ってんの?───今回はチンピラを相手にしている訳じゃ無いんだよ?」
「だからこそです。ほんの少しでも
「っ───たきなは躱せないでしょ!?」
解っています。どれだけ危険な役割なのかくらい。
ただ単に逃げれば良いだけじゃなく、ちょっかいを掛けながら付かず離れずの距離を維持し続けなければいけない。あの機動力も打撃力も、歩兵とは比較にならない人間大サイズの装甲車相手に。だからこそ銃撃を躱せる千束が担当する筈でした。
ですので─────
「……私の方が──射撃の精度は上ですよね?」
「………だったら何さ?」
「相手は方々に散っています。
「~~~~ッ───翡翠からも何か言ってよ!?」
「………回答不可……」
(……な、何も言えねぇ)
────
前提として───
一つ、マスメディアに見付かってはいけない。
2つ、MD達は各々それなりに離れた位置に居る。
3つ、
────というのが有ります。
その為、そういった制約下での行動になるので、予定ではかなりシビアな
「千束は言っていましたよね?──『私でも奴らの射撃は躱し辛い』、と───」
キルゾーンの作成も、リコリス達を逃がす時間も、本当なら強行軍になる所をひっくり返す事が出来る。これは大きなアドバンテージです。それに未知の兵器と相対する以上、入念な工作をしたいのが本音、作戦の性質上も早ければ早いほど都合が良い。
「───翡翠も、『
「……………」
(う、うぅ~~ん………)
そして何より、任務の進行速度は
「私に───やらせてください………!!」
「っ………………」
「………………」
そう言って、全員に見えるよう頭を下げる。
………分かっています………。懲りないですね、私は………。
何のかんのと理屈を捏ねてますが、この提案の胸底に有るのは“逃げたくない”──
………正直なところ、どちらが囮を引き受けても総合的な危険度は大差無いでしょう。
それどころか、翡翠の言う
……悔しいですが、
思い付く限りの利点を出し切って、判決の沙汰を待つ事1分程。過去の失態が脳裏を過り、諦念が溢れそうになった頃。
判決は、意識外の横合いから下されました。────
「───………そうだな。───たきな、お前に頼む」
「先生……!?」
悲鳴にも似た千束の抗議の声に顔を上げれば、千束を見ていた店長の姿が映り───
「今回はたきなの方が適任だろう───」
「それに」、と、言葉を区切って、今度は私の方を向いて────
「────たきなも立派な
ハッキリと。
されど神妙に。
真っ直ぐに見つめる視線と交差する事数秒。
私の欲しかった言葉が、周囲に響く。
「………宣言。当機が緊急事態と判断した時点で、当機は
「ああ構わん。寧ろ俺からも頼む」
「………いいの?」
「どのみちコイツが出張らなければいけない状況に成った時点で隠蔽は不可能だ。
それに、このタイミングで市民に犠牲が出るのは上にとって面子が潰れるどころの話じゃない。ならそれさえ防げれば最低限の言い訳は付くだろう」
その発言でギョッとした視線を向ける連絡員の方々を流し、「まぁ……今はたきなが活躍する場面だろうしな……」と店長達は遣り取りを続けてますが、千束は今度こそ何も言えなくなり俯いていました………。すると、クルミのドローンがフワフワと私に寄って来たのが視界の端に映りました。
『じゃあ僕はその方向でマップと資料を作っておく。
たきな、無茶するなよ───というのは難しいだろうが、気を付けろよ』
「……ありがとう、ございます………」
無線越しから届く心遣いに、私は苦笑するしか出来ません。………バカみたいですね……。これではまるで、一人相撲を取っていたみたいではないですか……。いえ、実際に取っていたのでしょう。皆さんは私が考えるほど、狭量な人達では無いと、知っていた筈なのに……………。
「…………翡翠。もしもの時は─────」
「
及び、補足。今回の起用案は、あくまで現在の特殊な環境に対応する為であり、マスター・千束の技能を疑問視したからではない」
「………分かってるよ………」
向かい側での千束と翡翠の遣り取りもそうです。認められてなかった訳ではない。ただ単に心配だっただけ。そっちの方が合理的だっただけ。ただ、それだけだった………。
本当にバカですね、私は………。
───そして恙無く仕度は進み、送り出される直前。
「────たきな。千束。
気を付けろよ?相手はマシンだ。ダメージで鈍る事は有っても
店長の語った言葉を胸に刻み、最後に私は隣へ向き直ります。
「千束───任せて下さい」
『あの時』と、奇しくも似た遣り取り。しかし今度は何となく、あの時の千束の心情が、解った気がしました。─────
□
「───んで、戦力外通告を受けた訳か……」
「ちゃうわ!適・材・適・所!ただの合理的判断!!」
「………とちって無きゃいいっスけどね、アイツ」
などと走りながらコントを繰り広げる千束とフキの後ろ付いてきていたサクラは、苦いような、呆れたような、どちらとも言えない表情になっていた。それは、この状況下でもちちくり合える上司達に対してなのか、それともたきなの無謀さに対してなのか、はたまたその両方か………。
まぁ、兎も角。今までの経緯を話つつ奔走していた千束達一同は、予定通りフキ
何故フキを連れてきたのかと言えば、偏に、『少しでも急ぐ為に頭数を欲したから』、である。
交戦するにしても何にしても、数の優位性というモノは極めて強力なカード。しかし、作戦の都合上大勢を引き連れるのは本末転倒だし、例え連れていけたとしても生半可戦力では犠牲者に為りかねない。そこで、『千束目線で信用できて即戦力に成り得る者』、を、徴用した結果が今である、のだが───
「というか。なぁんでお前まで着いてきた?」
「そりゃあ、こんな
と、千束がジットリとした目を御呼びでない者に向ければ、返ってきた返答は非常に勤勉且つ野心に充ちた答え。
そう。千束は当初、サクラを連れていくつもりは無かった。
あの時、説明する時間も勿体無いと焦っていた千束は、フキを他のリコリス達から強引に拐ってい行ったのだが、
「………はぁ、コイツの実力は私が保証する。…それよりも、だ。
「ああ~~……クルミ──ウチの後方担当と、翡翠が協力して割り出してくれた
「それホントに大丈夫かぁ?」という疑問をすんでのところで飲み込むフキ。まぁ、どうするにせよ、ただでさえ翡翠関連のインチキ技術は専門家ですら匙を投げる程で、対策もクソも無いのが実情だ。ならその技術の出所本人である翡翠と、その翡翠から一番多くの情報引き出す事に成功した一個人、雇われ凄腕ITエンジニア(表向きはそれで通してる)を信じるしかない。
「───………急ぐよ……!」
千束はチラリと腕時計を流し見ると、その一言だけを発し更に足の回転数を上げる。待つ事の歯痒さを、紛らわせるように。
説明不足を補う捕捉っぽいモノ:
翡翠が全てのMDを引き受けなかったのは、作中でも語った制限時間。人質に張り付いてるのは兎も角、周辺を警邏していてた奴らは、その後どの様な行動を採るか不明瞭。嫌なパターンとして、翡翠、又は、政府側の人間に確保させてた後、ひたすら遅滞戦闘を仕掛けてきたり、とか。更に、作戦上派手な変化を表側の人間に観測させるので、警察等もある程度は動かさざるを得なくなるのも理由。(ただし、DAの息の掛かった人間で処理させるが)
まぁ、情報漏洩を最小限に抑えたいとか、もしもを考えて翡翠をフルで戦える様にフィールドと装備を整えたいとか、そんな理由も有ったり無かったりします。
ガンダム用語ザックリ解説と御都合設定
ミノフスキー粒子:
初代ガンダムから登場している過労死寸前まで擦られ続けたインチキ粒子。これが散布されると電波はほぼほぼカットされ、集積回路は機能障害に陥り(MSのような大型の機体になら対策システムを搭載出来る)、更に高濃度になると赤外線も遮断されるとか(媒体によって設定があやふや)。
他にもビームに成ったり、バリアに成ったり、200m超えの巨大構造物(初代ガンダムの戦艦とか)を浮かしたり、核融合炉に成ったり、超能力者モドキ(ニュータイプ)のテレパシー媒体っぽいのに成ったりする便利な奴。
働きすぎだ。もう休め。
疑似ミノフスキー反応:
反応が非常にソレっぽい何か。『博士』の血の滲む努力で何とか再現した代物の一つ。非常に不安定。しかも、そもそも根本的にミノ粉と色々違うので(物質を透過し辛いとか)、範囲内でも電子機器へのダメージ能力も小さい。
当然、別物なのでビームにも成れないし核融合炉にも成れない。MDの出力が低いのもこれが理由。ただし、電波妨害の性質だけはそこそこ強力。