俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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 実銃の事とかを調べていたら非常に遅くなりました。普通に戦闘描写で難産したのも有りますが………。(多分5:5くらい)

 そして恥ずかしながら、投稿者は実際の銃火器とかについては毛の生えた程度しか知らないので、妙な部分が在っても『演出の問題かな?』で、流せて頂けれた有り難いです(吐血)。
 勿論、直せる所は直したい所存ですので、やんわりと御教えて頂けたら直せる範囲で頑張ります(白目)。
(※設定上の問題でちょっと無理、みたいな事も多々ある事もご納得頂けれたら幸いです。)




やられメカの宿命

 

 

 

 

 

「───………ふ~~ん……一応はセカンド相応、って訳っすか……」

 

 

 上階から一番デカイ奴に御熱いのをキメた私は、アイツへの評価を改める。正直なところ、失敗までとはいかなくとも、何処かで何かしらのミスはしてくるとは思っていた。ただでさえ色々と規格外な相手、かなり無茶な作戦だったのも合わせれば、自分や先輩でもかなり厳しい役割。

 

 それを、アイツはやり遂げた……。

 

 

「……こりゃあ…ダサい所は見せられないっすね………!」

 

 

 奴等にブチ込んだ84mm無反動砲を、隠れながら再装填しつつ気を引き締め直す。元より任務で手を抜くことは無いし、今回だってそれ相応の意識で臨んでいた。でもそれ以上に───()()()()()()()()()()

 

 任務はゲームじゃ無いのも、コレが私の役割なのも、全部判っている………ただそれでも、納得出来ない。このまま終われば、自分が、アイツよりも、劣っているようだと───

 

 

「(──完璧に熟すのは当たり前………その上で、全機自分が平らげるっす………!)」

 

 

 一番危険な役回りをアイツらにさせるのだから、自分もアタッカーとして完璧以上に仕上げなければいけない。そう自分自身に誓いを立てて、次の狙撃ポイントへと私は急ぐ。

 

 

「………んじぁ、此処はお任せっすかね……歴代最強……!」

 

 

 離れる間際。振り返り、一応の武運を祈って、私はその場を後にした────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 振り向いた姿勢で放心したように固まる、荒い呼吸のたきなへ、KSGを携えた千束が歩み寄る。

 

 

「ほら、何してんの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そう言いながらたきなの隣に並び立つ千束。顔は敵の方へ向いているのでどんな表情なのか詳しくは窺えない───だがその声には、先程のまでなら僅かに混ざっていた憂いは既に無く、快活な気迫一色に満ち溢れていた。故に─────

 

 

「────…ええ、任せました……!」

 

「任された!────」

 

 

 ────それ以上の言葉は不要。

 すれ違いざまに交わされるハイタッチ。吹き散らされる黒煙から散り散りに飛び出す3機のアンフ。それらの出来事が第2ラウンドへの嚆矢となり、二人は互い違いに走り出す─────

 

 

 

 

 ────千束は敵へ接近するさなか、未だ黒煙の中で蹲るドムへチラリと視線を送る。

 

 

「(───うわ……アレ食らってまーだ原形在るな……───)」

 

 

 そう思わず苦心が溢れたのは、敵機の想定以上の固さについてだ。

 先程仕掛けた奇襲は此方が持ちうる手札の中でも最高の打撃力を持つ一撃。それが直撃した奴はともかく、その周囲に居たアンフ達へのダメージは皆無で、全機煤けた程度。そして肝心の直撃を受けたドムも、装甲が比較的薄い背部から受けたにも関わらず外観の大部分を残す始末。

 

 歩兵ならば余波だけで確殺を狙えるものがダメージにすらなり得ない。人間とは根本から違うタフネスに千束は辟易さを覚える。

 

 

「(───とはいえ……暫くは動けそうにない感じかね……────)」

 

 

 しかし、奇襲の成果も確かに在った。現に最大の脅威であるドムは黒煙を上げて沈黙し続けており、担いでいたジャイアント・バズも損壊。損傷具合も煙のせいで正確には推し量れないが、着弾箇所の装甲は大きく歪み弾け、小さいながら一部の前面装甲までにも変形や断裂痕が及んでいる。そして内部の損傷も激しいのか、モノアイを力無く明滅させて今にも消え入りそうな様子で、それなり以上の深刻な被害を与えれたのは確実。

 結果までみれば、完全に無警戒とはいかないが暫くの間は相手にしなくていい大金星だ。

 

 そうやって手早く分析を進めていると、向こう側でも動きがあったのが見える。飛び出した位置から動かず、ずっと四方を警戒するように忙しなく揺らしていた単眼を、千束(こちら)へ向けたのが。

 

 一斉に構えられる銃口。形成される濃密な射線。先ずは目の前の敵から処理すると決めたのだろう────

 

 ───そうして振り下ろされるは無感情の殺意。

 

 大型機関銃らしい重低音が連続して重なり合う発砲音。マッハの速度で飛来する回避不能の凶器の群れが、たった一人の少女に対して殺到。普通なら間違いなく『死』、在るのみ。

 

 だが────目標は普通ではなかった。

 

 少女の体がほんの少し揺れる。たったそれだけで向けられた無数の死は、目標を掠めることすら出来ずに不発に終わった。

 

 

「(───んー……やっぱり()()のと違って素直過ぎるね……これなら…………!────)」

 

 

 確かに、千束の技能は対人でこそ真価を発揮する。しかし、“相手が人外だから”、と、その程度で底を突くほど彼女の能力は浅くはないのだ。

 多少人間より正確なだけの射撃なら───機械由縁の読み難いだけの動きなら───齢に見合わぬ多くの修羅場で研きあげられてきた経験則に、常人離れした反射神経と動体視力をもつ千束にとっては充分に対処可能な範囲だった。

 

 ひらりひらりと舞う緋の踊り子。ダンスホールと言うには些か物騒にコーディネートされたこの場所で、マドンナはダンス相手の視線を一人占めにする。端から観れば瞬間の一つ一つが九死に一生を得ているような綱渡り。そんな場面でも踊り子は焦らず、臆さず、多少のペースダウンこそすれど淀み無く最も近い一機へ距離を詰め、軈て、自分の有効射程距離(ボーダーライン)まで辿り着き────弾幕の切れ間を縫うように発砲。

 

 鋭く射し込まれた散弾は吸い込まれるように顔部へ命中。しかし───所詮は散弾。対人用の弾では精々メインカメラ(脆い部分)の破壊くらいしか期待できず、そしてその結果も予見した通り、否、それ以下の結果だ。

 

 目を潰されたアンフは、ほんの数瞬の動作と引き換えに淡々とサブカメラ(予備の眼)へ切り替え問題なく戦闘を続行。再度弾幕を形成され、戦況を盛り返すどころか敵の目の前で無駄に弾薬を消費したような形になる。

 

 僅かな手傷は負わせれた。敵のリズムも微かに乱せた。だがそれだけ。此方の攻撃は通じないと実演され、戦況も変わらず向こうが優勢。『──相手はマシンだ。ダメージで鈍る事は有っても怯む事は無いからな──』その言葉が脳裏でリフレインする。

 

 だから────千束にはそれで充分だった。

 

 

「───よっ、と!───」

 

 

 隙と呼ぶにはあまりに短い、手負いのアンフから波及し広がった切れ間を利用して、千束は更に踏み込むともう一度KSGを数発発砲。ただし、今度は先程とは違い弾種をスラグ弾へと切り替え、かつ、狙いは腕部の銃器へ。狙い済まされた弾頭は見事、薄く脆い部分へ命中し、盛大に火器の形を変える。

 アンフは異音と共に発射が止まった銃器を捨て、大振りに腕を振り回して少女を迎撃。

 

 

「ほらほら、ちゃーんと狙わないと♪最新鋭兵器の名が泣くよ?」

 

 

 しかし、振るわれた腕型鈍器は空を切るばかりで一向にヒットする気配が無く、しかも両者が接敵し過ぎたせいで他の2機も射線が通らなくなった。

 

 友軍同士での潰し合いを避けるよう与えられていたプログラム(知識)。千束の狙いはそれだった。

 

 手段を選ばされた他のアンフは言い付け通りに戦術を格闘戦へ移行。()()()()()()行動に入り、使命を果たすべく誘われるがまま千束に接近。

 

 

「───よっ、ほっ、Wow、熱烈ぅ~~!───」

 

 

 振り抜かれた腕を回るように避け、繰り出されたぶちかましを跳び箱の要領でやり過ごし、着地を狙ったストンプを股下をすり抜けて回避する。四方から迫るアンフをアスレチックにして縦横無尽に駈ける千束。どの場面もスレスレで躱している筈なのに危うさを感じさせない華麗な動きは、互いに示し合わせた殺陣を彷彿させる。

 無論、その間も躱すだけでは無い。すれ違いざまに一発、また一発と射撃を挟み、継続して敵の装備破壊を目論む。しかし、流石に敵の猛攻と装弾数の問題もありアンフ達への損害は軽微、奪えたのも1つ2つ。

 

 

「(───なーんか妙な動き………何か狙ってる……?───)」

 

 

 怒涛の攻撃を凌ぎながらも進めていた考察で、若干の当たりの弱さや薄っすらと感じる違和感に警戒が高まる。だがだからと言って千束の成すべき事は変わらない。此方も出来ることが限られているのだから。

 

 

「───鬼さん此方♪手の鳴る方へ♪───」

 

 

 そうこうしてアンフ達を誘導した千束は、最後の弾薬を撃ち切ると素早く背中のバッグからデジタルタイマーの付いた長方形の何かを取り出し、そして敵の攻撃を捌きつつ装備類目掛けてそれをベタベタと貼り付け────

 

 

「───んじゃ、()()お土産!───」

 

 

 そう言うや否や、アンフ達に脇目も振らず真っ直ぐ背を向けて距離を取る千束。今まで絶対に犯さなかった敵に背後を見せるという愚行は、千束の最大の武器である高度な先読みを捨てる事と同義であり、同時に『攻撃してください』と言っているようなものだ。

 当然、AI制御の機体(単純一途な思考の持ち主)とはいえそんな隙を見逃す筈が無く、千束が離れてくれたお陰でまた出来るようになった制圧射撃で押し込めようとし─────時間がきた爆弾が次々起動。

 

 

「うひゃ~〜。ド派手ぇ〜!」

 

 

 爆発に次ぐ爆発。その元凶である千束は近くの柱へ滑り込んで自身は無傷で防ぎ、そうして煙が晴れれば本体は無事でも更に装備を失ったアンフ達が現れる。

 

 

「───流石、最強!」

 

 

 ───絶好のチャンス。位置替えを終えたサクラがそう判断し、このまま畳み掛けると再び上階から身を乗り出して得物を構えた瞬間────奴らと目が合う────

 

 

「────げ────」

 

 

 直後、サクラを狙った集中砲火が開始。そう、なにも機を窺っていたのはリコリス達だけではない。アンフ達も探していたのだ、自分達の頭目を手に掛けた下手人を。

 

 

「───あっ──ぶねぇぇーーっ!?───」

 

 

 間一髪で頭を引っ込めれたサクラだが、まだ危機は続いている。弾幕の密度こそ大幅に薄まっているが銃弾は銃弾。千束のように躱すことが出来ない只人にとってたった一発でも致命傷へと繋がりかねない攻撃なのは間違いなく、必然的にその場へ押さえつけられる。

 そしてアンフの使っている弾頭は貫通力のある大口径の代物、まごまごしていれば壁ごと射抜かれるのは時間の問題だ。だが─────

 

 

「───コッチも構えよ、粗悪品……!───」

 

 

────リコリスはまだ他にも居る(フキも居る)

 

 背後(意識外)から飛来した弾丸が鈍い金切り音を奏でて一機のアンフを跪かせる。

 リコリスの仕事では先ず使わない過剰火器。その巨大な銃身──対物ライフル──バレットM82の弾丸がアンフの膝を砕き、直立能力を奪ったのだ。

 

 

「──くたばりやがれ……!──」

 

 

 一階の比較的近い位置から身を乗り出していたフキは、丁寧に、一発一発に確殺の真心を込めて乱射。次々撃ち出された弾の殆どが一発に付き一つの穴を拵え、その度にアンフ達の巨体を揺らして衝撃の凄まじさを視覚で解説。

 

 

「──ぐっ…!?重てぇなぁっ……クソっ!──」

 

 

 しかし、()()()()()()()()()()()を優先したツケが回ってくる。幾ら訓練されているとはいえフキは華奢な女子供、その上同年同性よりかなり小柄な部類だ。慣れない装備なのも手伝い、無理を通して採った攻めの代償である負荷はかなりのもの。そして敵もやられっぱなしではない。フキが撃ち切ったのを境目に一転攻勢が仕掛けられる。

 

 

「───ッ!?チィッ!───」

 

 

 背や脇腹を中心にボコボコと穴だらけにされていたがそこはマシン。痛みも恐怖も無い兵士にとって自身の状態なぞ二の次三の次で、ただ敵を討つことのみが本懐。ダメージが(コア)にまで届かなければ止まるわけがないのだ。

 

 2人目の下手人を確認したアンフ達は無言のコミュニケーションで役割(ポジション)を変え、まだ銃器が2つとも生きている機体が前衛を張るように前へ、跪かされた機体が後衛に付くように後ろから。其々が使用可能な火器でフキへ応射。

 フキもそれに対し咄嗟に身を潜めて待避したが、サクラと同様にその場へ釘付けにされる。

 

 

「バカスカボコスカ撃ちやがって……!マジで反則クセェんだよっ……コイツらっ………!」

 

 

 フキを守る遮蔽物()をガリガリと削りつつ躙り寄ろうと体勢を変える一機のアンフ。確実に事を成す為に危険を承知で近付いていたリスクが表面化した。

 センサー類も壊れたのか反応も精度も当初からすると見る影も無い程酷いが、それでもこのままでは磨り潰されるのは目にえている。

 何せ敵の防御を抜くにはこの取り回し最悪の対物ライフル(デカブツ)で漸くっといったところ、ソレを抱えながら現在の環境下で反撃を行うのはあまりにも非現実的なのだから。

 

 此方の攻撃はどれだけ上手く叩き込んでも微々たる物なのに、向こうの攻撃は単なる打撃でも致命傷へと成りかねないクソゲー。

 

 

「────ッ……!──フキっ!────」

 

 

 そんな事態を打開するべく今度は千束がカバーに動く、が、()()3()()()()事を忘れてはいけない。

 

 足が死んでいる機体はフキへの対処を取り止め今度は千束に圧を掛け、サクラを顔部の銃器で押さえていた機体は腕だけを千束の方へ向けてネットランチャーを発射。

 

 

「────いぃ!?おいおいおいおいおい!?────」

 

 

 ここに来て予想外の攻撃に千束は目を剥く。本来ならネットランチャーのような遅い攻撃なんてなんの脅威も感じないが、今の状況下では極めて有効な一手。

 点ではなく面の攻撃。殺傷力は無くとも回避の為に大きく迂回させられるその攻撃は、次への対処が出来る猶予を大きく潰し、千束本来のパフォーマンスを抑制したのだ。

 

 迫る投網。自身を追いかける雑な射線。濃縮された瞬きの中で、瞬時に()()()()()()()千束は即座に直前の行動をキャンセルして引き返す。だが数瞬出だしが遅れた事もありその顔に余裕は無い。

 

 

「────加減ってもんがあるでしょーがっ!?───」

 

 

 ───ただし、その理由は───

 

 

「────フキっ!!────」

 

 

 ───敵の行動だけではなかった。

 

 視界の端で山なりを描いて宙を征く、幾つかの手榴弾。ソレが固まっていたアンフ達の真ん中へホールインワン。爆風がアンフ達を包み、白い網は捲り上げられ、敵の攻勢が止む。

 

 

「────助けてもらっといて文句言ってんじゃねぇよ………!」

 

「ハァ!?⤴ 私がカバーに入ったんですけど!?」

 

「出来てねぇから言ってんだろ、ゴム頭!!」

 

「私が気を引いたからソレ投げれたんだろがい!!───」

 

 

 再び黒煙に巻かれるアンフ達をそっちのけに乳繰り合う二人。いや、二人とも並外れた強者だからこその余裕かも知れないが…………兎も角、ソレに付き合わされる者にとっては堪ったものではない訳で、仲が良いのは結構だか時と場合を見てもらいたい。

 そして案の定、煙が晴れまた無事だったアンフ達が足を踏み出し────上階から放たれた砲弾がフキを狙っていたアンフの背を貫き爆炎を上げる。

 

 

「────遊んでないでマジメにやってくれませんかね!?」

 

 

 再開された仕上げの一撃でサクラは予定通り二機目のアンフを屠って、階下の二人へ怒り混じりの嘆願を述べる。これには二人も悪いと思ったのかバツの悪そうな反応で意識を向け直し、そうして見据えるは手負いの獣となった二機。

 

 一機目は辛うじて火器は生きているものの脚部の損傷故に射角の限定された固定砲台で、二機目は様子を見るからに全ての飛び道具に何かしらの不具合をきたして使用する気配が一切無い状態。

 

 流石に弾薬を撃ち切ったのか、はたまた度重なる爆撃でイカれたのか、どちらなのか判断し辛い外観だが攻め時なのは間違いなく───

 

 

「──フキ!!」

 

「指図すんな!!──」

 

 

 ───リコリス達は仕留めに掛かる。

 最後の抵抗を奪う為千束はワイヤーガンへと持ち替えてアンフ達へ、フキは仕込みを用意していた物陰へ、其々が最大戦速で駆け出す。それに対しアンフ達も呆然と見ているだけではない、が、落ちに落ちた反応速度で追いつける道理は無かった。

 

 

「ハァイ、動かなぁ〜〜い」

 

 

 足の死んだ機体が射角内を走るフキへ弾丸を浴びせるべく腕を上げ狙いを合わせようとするが、その前に飛んで来た千束の援護射撃がアンフの出鼻を挫く。速射されたケーブルがデタラメに腕と体へ絡みついてフキへの射線をズラし、撃ち出された弾丸が明後日の方向へと飛んでいく。

 

 

「ダァメ♡レディはもっと優しくエスコートしないと。そんなんじゃモテないよ?」

 

 

 そしてもう一機のアンフは向かって来ていた千束にまたもや格闘戦を仕掛けていたが、その結果も語るまでもない。万全の状態ですら手玉に取られていたのだ、数も動きも悪くなった今ではどうにもならなず、それどころかフキの援護の片手間に御仲間と同様グルグル巻きにされ転がされ、終幕へのカウントダウンが始まる。

 

 

「いい加減死ね、鉄屑ども………!!」

 

 

 物陰へ辿り着いたフキは対MD用特殊装備────特異な形状の大型ネットランチャーを引っ張り出し発射。

 千束が離れたタイミングで投射された鈍色の網は固まっていた2機をすっぽりと覆い、ソレを確認したフキは素早く銃器を操作してアンフ達へと繋がるケーブルを、後ろに置いてある四方へ伸びるタコ足配線コードが刺さった大型バッテリーへと繋げ直す。

 

 ────そうして押されるのは処刑スイッチ。

 

 巻きつけられたケーブルやら網をマシンらしい馬鹿力で軋ませていたアンフ達に、ケーブルを通して施設からの力も合わせた巨大の電撃、ソレが惜しみなく流された。

 

 とはいえ、幾ら高電圧といっても現環境下では限界があるし、そも相手は腐ってもMDだ。万全の状態なら柳に風よと問題無く受け流せるくらいのカタログスペックは持っている。───しかし今回は、ソレをするには破損箇所(傷口)が多すぎた。

 

 体中の傷口から強烈な電流が雪崩れ込み、アンフ達の体内で無秩序に暴れ回る。彼らの視界内ではエラーやエマージェンシーが飛び交って、本来機能する筈のダメージコントロールすら儘ならない異常事態の連続に陥っていた。

 軈て、メインコンピュータ()にまで達した電流は制御基板(神経)をも焼き切り、アンフ達はガクガクと不自然な挙動でアイカメラを数回明滅させた後、力尽きたように脱力。硝煙とは異なる異臭を妊む煙を吹き出し、全てのアンフはこれにて完全停止した。

 

 

「うしっ!」

 

「いや、未だだよ」

 

 

 だが、まだ終わりではない。

 

 フキが思わず漏らした小さな勝鬨に、千束がタイトに注意を促す。視線の先を追えば、黒煙を上げギィギィと不安を煽る動作ながらも再起動を果たした(息を吹き返した)ドムが居た。

 

 

「ちっ………まだ動けんのかよ………!」

 

 

 ───全員の顔が険しくなる。───だが────

 

 

「────といっても、もうチェックメイト済みだけどね────」

 

 

 ───リコリスはまだ他にも居る(ヒーローは遅れてやって来る)

 

 千束が何の気に無しに呟いた言葉を、一発の弾丸がかき消す。

 

 フキが使用した物よりも更なる大口径のモンスターライフル───たきなの放ったダネル NTW-20の焼夷徹甲弾が、ドムの襟元から体内へ侵入しその心臓(コア)を貫いた。

 

 一瞬の痙攣の後、バチバチと青白い放電が弾け、鈍く、重い、メタリックな音を立てて崩れる巨体。

 

 

「流石は相棒。完璧な仕事だね────」

 

 

 その光景は、酷くゆっくりに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───あーあ~〜、こりゃ駄目っぽそうっすねぇ〜〜……」

 

()()()()()も想定してたろ。寧ろ自爆してこなかっただけ御の字だ」

 

 

 時間にして数分も経たない内に、階下まで降りてきたサクラのボヤキをフキが窘める。二人の視線の先には、煙では無く火を噴き出すMD達。あの後、事後処理と撤収準備を進めていた千束達なのだが唐突にMD達が内部から発火し始めた事に、一同は唖然とする羽目になっていた。

 

 今回の件、敵の目的が不明なのも理由に有るが、相手はMDという全くの未知で油断のならない相手だ。もしもまた再起動なんてされたら洒落に成らない事態になるのは明白で、それを防止する為にも軽い検分の意味も含めた死亡確認を実施していたのだが………その結果がこのザマだ。

 

 

「ま、確かに腑には落ちないけど、コレで一安心なんだから『良かった』、で良いんじゃない?」

 

「良かねぇよ。コレだとどれだけ情報吸い出せるか分かんねぇんだぞ……」

 

 

 千束は肩の荷が降りたように腕を回しながら辺りを見回し、フキは適当に携帯で写真を撮りながら問題を論う。

 フキとしてはコレは始まりに過ぎず次も必ず有ると予想出来る以上、個人的にもそれに備えて少しでも情報が欲しいのが本音だ。しかし、千束もその事について同感だったが実際問題の『これ以上の継戦は不可』も共有するところであり、それ故に強くは言えず気持ち語気が窄む返答になっていた。

 

 

「んじゃ、たきなが戻り次第撤収するよ〜〜」

 

「指揮んな、此処は元々私の現場だぞ」

 

「へっ、その現場でピンチに陥っていたのは誰で、救助と作戦の変更を伝えたのは誰なのかな〜〜?」

 

「……元気っすねぇ…………───」

 

 

 隙あらばじゃれ合う2人に(本人達は激しく否定するが)サクラはジト目を向けて溜め息を吐き出そうとしていた頃────

 

 

 ──────爆音が響き渡る。

 

 

 軽口を叩きながらも残心を忘れていなかったリコリス達は即座に臨戦態勢に入り、異変の方向へ構えてその原因を目撃する。

 

 たきなが居た位置とは真反対の上階の一角から飛び出し、その轟風と粉塵に乗ってフロアの地面をブレーキをかけるように削り割りながら降りてきた人型の異型。

 

 

『………お前かぁ?…アランリコリスってのはぁ………!!』

 

 

 まだ、終わりではない。

 

 

 

 

 






設定と作中での補足文


:持ち出した武器の種類多くね?の理由&何故ロケランとかを2本用意しなかったの?の理由

 実際問題、通信は勿論、モニタリング不能に敵総数不明、更にどんな機能を搭載してるのか?何が有効なのか?など、判らない部分が多く状況予測も困難な為、種類を優先して積まれていたから。という理由。


:対・MD用超電磁ネットランチャー

 コレも例の如く元は『対ガンダムデュナメス用に』、と、開発されていた代物。『過剰な火力を抑えつつ歩兵でも有効打を与えれる物を』、というコンセプトの実験品で、敵の装甲を抜いての撃破ではなく、電流による内部の電子機器類の破壊、又は、阻害を狙った実験品。まぁ、『出来るなら鹵獲したい』という下心も多分に含まれて開発されたものだが。
 しかし実のところ、必要不可欠な要項として巨大なバッテリーの携帯に、電量を補助する為の電源を引っ張ってこれる環境。加えて極めて短い射程にそもそも電流を通しやすくするため敵装甲のある程度の破壊が必要など、無理くりな上に本末転倒な前提条件を要求される産廃兵器、もとい趣き品。しかも実際には効力がどれくらいなのかも疑問視されていた。
 更にそれら以外の問題も今回の運用で浮き彫りになり、もとより望み薄だったが正式採用の見送りは決定的になる。今後は使われる事は多分無い。多分。

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