俺 自身がガンダムになることだ 作:解毒剤からビームサーベル
何時も感想、お気に入り、高評価や誤字報告ありがとうございます。
つい最近になって替え歌はどこでも全般使用禁止を知り、確認出来た範囲で修正させて頂きました。今後はこのような事が無いように注意する所存でございます。
お騒がせし申し訳有りませんでした。
最後に、私生活の変化や既投稿話の修正など行いたいので、次回は非常に遅くなる事をご報告させて頂きます。
───…ああ、良い……最高だ……。
無数の計器でほんのりと明かりを灯す、この薄暗く窮屈な空間で、僕はかつてないほどに澄み渡っていた。
当初はこんな陰険で、ましてやこんな怪しい機械群の中なんて金を貰ってもゴメンだと思っていたが………入ってみればなかなかどうして………悪くないじゃないか………!
前日ではやれ適性がどうだの、やれ僕にしか出来ないだのと、耳当たりの良い事しか並べない奴らには疑心しか湧かず……確かに、シミュレーターでは僕が一番の成績だったが、当然僕は拒否した。
………まぁ、その後、半ば強引に押し込められたが…………。
(※このままだと自分の
…………だがしかし……成る程と……触ってみて静かに納得する。確かにコレは、選ばれし天才だけが使い熟せる兵器だと………!
──数値では判らない微妙な機体のコンディションが、僕なら僅かな動作で逃さず読み取れる………!──
──常人ならヨチヨチ歩きさせるのも一苦労な複雑極まる機体管制システムが、僕なら淀み無く処理出来る………!──
──普通なら混乱必至なディスプレイ内で飛び交う夥しい量のカーソルや表記が──僕なら初めから知っていたように解る!──
そう──そうさ…!
真島のようなガサツな男でも、吉松のような履歴だけっぽそうな奴でも、『博士』のような知識だけの頭でっかちでも、コイツを使い熟せはしない!
……フフ、自分で言うのもなんだが、僕はこう見えて謙虚な部類の人間だ。その僕が、敢えて断言する…!このマシンを乗りこなした事で、僕は今、人類の1つ上のステージに至った生き物だということをっ!!
………フフフ、ご要望では、『
………にも拘わらず、それどころか奴らは、僕が出来ないとすら思っている節が有る……!
………甚だ遺憾だが、どうやら知らしめてやる必要が有るな………この、僕が……!どれだけ有能で、どれだけ稀有な人材なのかをっ!!!
……フフフフ……今回の仕事が全て終われば、この機材も含めた異端の高性能設備も報酬として手に入る……そうなれば、もう誰も僕というスーパーハッカーに敵う者は居ない………それこそ、あのウォールナットすらもだ!……フッ、残念だよ。お前に新しくなった僕の力を見せ付ける事が出来ないのは…………ああ、見える、見えるぞぉ……!政府が、世界中が、僕という偉人に恐れ慄く姿が!………フッ、フフフ……ハーハッハッハッ!!!!───
■
「──……おい、一応聞くが、アレは
立ち煙る土煙の中で、未だに動く気配のない敵を見据えていたフキは、軽口を叩きながらも拳銃を構えたまま通信を試みる。しかし、返ってくるのは変わらずノイズ音だけな事にジワリと汗が滲み、心做しか銃を持つ手の力みが強くなってしまう。
『───ニューラルインターフェース、同調率安定。
パワーフロー、正常───』
そして煙の中から聴こえて来たのは、デジタル変換された若い男の声で
「そりゃそうでしょ。………翡翠ってば、ああ見えてかなり良い子ちゃんだからね……あんな『悪そうなの』とかあり得ないから……」
「そりゃあ……意外っすね………」
二人もフキの軽口に軽いノリで返すが、その姿に一切の油断は無い。それどころか緊張感で張り詰めた様子で、其々に
『───白兵用火器制御プログラム、及び、FCS、最終調整。
友軍機より取得した
そうしていると、漸く露わになってきた敵の全容に、無意識の内に誰かの喉が鳴る。
翡翠と違い青藤と群青を主体としたカラーに、アンフ達よりもずっと細身ながらもマッシヴな曲線を描くメリハリのある人型。
頭部はヘルメットのような丸いシルエットに額から雄々しい1本角が生え、四角く飛び出したエアインテークの口からは髭を彷彿させる蛇腹のメタルパイプが後頭部までグルリと巻き付いた、鋭いアイラインの威圧的な単眼フェイス。
肩部には幾本かの厳つい衝角を備えており、特に外に向かって一際太く長く伸ばされた物は雄牛の角のように威圧的に天へと折れ曲がって勇壮なイメージを印象付ける。
背部も本体同様に物々しい外観で、黒のベースカラーの巨大な2器の推進機を上下違う角度で配置し、その両脇から下へ傾斜強めに取り付けられた長大な小型推進器付きウイングの雄々しい後ろ姿。
そして装備も負けず劣らず厳つい武装の数々。右腕にはコンパクトだが3つの銃口を持つ銃器を前腕部に、腰部右側にはボウイナイフを適当な長さまで延長した肉厚の剣を佩いている。
左腕には縦長で片腕なら全体を覆えるか?といったサイズの分厚く重厚な造りの盾を装備し、下部から歩兵では絶対に運用不可能だと一目で判るサイズの単銃身の火砲らしき物。上部にも腰に佩いた剣と同型と思われる柄が飛び出して、野蛮な気配しかしない重武装な構成。
表するなら差し詰め───機械仕掛けのバーバリアンかヴァイキング、と言ったところか───
『───全コンバットシステムの
───そしてとうとう全ての準備を終えた蒼き強襲者は、見せ付けるようにゆっくりと盾から剣を引き抜き、無形の構えを取る。
「───残弾は?」
「ゼロっす」
「1マガジン。だが今は持ってねぇ───」
それに対し、千束達は必要最低限の単語だけで
『───グフ・ドーントレス…
揺らめくよう水平に持ち上げた剣から耳障りな甲高い振動音が鳴り、強襲者は静かに各部のアポジモーターに火を溜め始める───
『───試してやるよ──お前が本当に……───』
「───っ!?散開しろ!!───」
『天才なのかなぁぁぁっ!!!』
アンフ達とは比べ物にならない瞬発力で真っ直ぐ迫る敵機に、リコリス達は一にも二にもなく退避を選択。
散り散りに逃げたのが良かったのか、それとも相手の練度不足かは分からないが、予想以上の速度で繰り出された剣撃を見事躱せた千束達。だがその結果を目撃して楽観視出来る者は誰もいなかった。
ただの振り下ろし。技術もクソも無い馬力に物を言わせた棒振りが、爆弾でも使ったかのような破壊痕と轟音を作り出した光景に。
「───ーーっ!?おいおいおいおいおい!?冗談じゃないっすよっ!!?───」
転がった先で戦きながらも間髪入れず牽制射を行うサクラ。しかし───
『──…フン、コバエめ……』
分かっていた事とはいえ、余りにも非力な豆鉄砲では装甲表面を滑るだけ。相手にもしてもらえない。グフはサクラ達へ一瞥だけするとそのまま千束へと剣を振るい出し、千束もその連撃を躱して応対を開始する。
「(──っ!?──さっきの奴らより数段速い……!
けど、人間臭い動きに攻め方が雑……!──)」
右へ、左へ、華麗に往なして間合いを推し測る千束。しかし、見た目とは裏腹に実情はかなりの綱渡りだった。
相手は素人臭く単調で術理も何も無いチャンバラ攻めだが、先程の連中と違い明らかに
『ハハハハハハ!どうしたどうしたぁ!?避けるだけかぁ!?アランリコリスゥッ!!』
そう判断したのは極自然な流れで、多少の危険を飲み込んでも動きを止める必要性を求められた千束は、ステップを踏んで既に鎮火しかかっていたアンフ達の死骸付近へとさり気なく移動。相手の攻め手の緩急を読み切り身を屈め、流れ来た剣線を背後の鉄塊へと当てさせ────濁音の付いた短い金切り音で鉄塊が切れ飛ぶ。
「───なぁっ!?───」
千切れたのでは無く、両断。誰が叫んだのか、火花を散らし、ガラガラとフロアを滑る残骸に全員がギョッとする。
あの分厚く異常なまでの頑強さを誇るMDの装甲を、豆腐みたく刃が通り抜けた事実にリコリス達はドッ、と冷や汗が噴き出す。
「ッ!!」
だがソレくらいの脅威、千束は
『───遅いぃ…!───』
敵も普通ではない。ビデオを早送りしたかのような異様な速度で盾を間へと挟み込まれ、嘲りの混じったボイスが響く。渾身の反撃すらも防がれた。しかし───
───
───
「───沈め……!」
『───
全身の推進器から火を噴き、蒼い巨躯が死に体の体勢から残像を残してブレる。気がつけば、必中だった弾頭は2つに別れ、グフの背後へと着弾していた。
「──……〜〜〜〜ッ!!?!?………」
「──……ははー、マジ冗談キツイっすよ〜……!!??」
「──……うそぉ〜〜………!!??」
銃弾を斬る。度々フィクションで見かけるソレは、事細かな条件や前提を横に置いて可能か不可能かを論ずるなら、一応は可能である。
ただしその注釈には、
『──見えるっ…見えるぞぉ……!』
リコリス達は噴き出た動揺を気力で押さえ込み、第二の矢へと繋ぐ為目標を『敵機の釘付け』に変更。数少ないダメージリソースであるフキの対物ライフルをも牽制射に投入し、サクラも補助するように目眩まし狙いで継戦を考えず乱射。
『……ハ、ハハッ、ハハハハハハッ!!』
しかしグフは大小入り乱れて撃ち込まれる弾丸の悉くを切り捨てて無力化。千束からフキの方へと向きを変え、ズンズンと歩を進める姿に全員が嫌な予感を覚える。
『──なぁにが無冠の天才の忘れ形見よ…なぁにがアランチルドレンよ……!ドイツもコイツも、肩書きだけの三流ばかりじゃないかぁっ!!──』
千束も位置変えのせいで遅らせばながら牽制射に参加するが、その影響は殆ど有って無いようなもの、少々歩みが遅くなった程度で焼け石に水だった。最早敵機のネジの外れた言動に思慮を回す余裕は無く、凄まじい勢いで軽くなっていく銃器と反比例して焦りは重くなっていくばかり。
『そう──そうさ!どれだけ革新的で、どれだけ画期的な技術を創り出そうとも、使い熟せれる者がいなければ所詮は木偶…!そして!そんな道具を使い熟せるのは、この、僕!!──この僕だけなんだよぉっ!!!』
「──こーゆーのと戦うのはフツー警察か軍隊が相場じゃないっすか!?」
「残念ながら私らもソレに含まれるらしーぞ…!クソがっ!──」
グフは次第に取捨選択を行い、対物ライフルの弾は切り払うか回避し、それ以外の不味そうな弾は叩き落とすか装甲へ当てに行って防ぐ等、より動きを洗練させていく。
千束も加わった3方向からの濃密な弾幕でも、秒刻みで悪化する悪夢から脱せない────だが此処で、
千束達と離れていたせいで碌な話も聞けていないたきなだったが、たきなは理解していた。自身のやるべき事を。
だから待っていた。最も
「──ッッ!!──」
離れた上階の一角から、声無き猿叫を乗せて撃ち出される大口径の必殺。
激しく動く標的。慣れない装備に万全から程遠い環境とコンディション。それでも
「
ぐいん、とグフが大きく体を傾ける。それだけで死角から飛来した必殺は薄皮を削って火花が散っただけで終わり、あらぬ方向へと消えていく。それどころかグフは傾けた勢いを乗せて体を大きく振り回し、シールドに取り付けられた火砲──短射程特殊貫徹砲──を下手人へ向け、発射。
「──っっ!?たきなぁぁぁーーーっ!!?」
大気を、鼓膜を、臓腑を、気概を、全てを揺さぶる轟砲が響き渡る。
唖然とする暇すらなく瓦解する戦局。人へ使うには過剰すぎる破壊力の砲弾が、たきなの居たであろう場所を瓦礫の山へと変え、ゾワリとした悪寒が千束を貫く。
「──クソッ!」
それを見ていたフキは直ぐ様ライフルから離れ、幾つかのスモークグレネードを取り出し手当たり次第に投擲。
「──撤退だ!ポイントDまで後退っ!」
もはや作戦継続不可能なのは明白。無線が使えないのもあり、リコリス達には取り繕う時間すら無かった。フキは未だ動きが鈍い千束へ檄を飛ばす。が───
「ボサッとすんな!とっととアイツをか「先輩っっ!!───」
この程度の妨害で止まってくれる甘い相手ではない。相手の
かなりの速度で迫っていた何かだったが、近くまで寄れていたお陰で間一髪に割り込む事へ成功。しかし、それで防げたのは最悪だけ。
煙の向こう側から飛び出したワイヤーに繋がる分銅状の物が、空気の盾ごと2人を強く打ち据え、くぐもった悲鳴を溢させて吹き飛ばす。
「───ッッ!!?フキッ!!!」
『ダメじゃないかぁ、
煙の中へ戻っていく分銅の出処を睨み、既に撃ちきっていたKSGを悟らせぬ為構え直す千束。
「──ッ!用があんのは私でしょうが!浮気すんな!!」
もう一刻の猶予も無い。装備はほぼ喪失、撤退も不可。
『フフッ……そうだ…僕に慄け、僕を讃えろぉ……!』
再び聴こえ始めるバーニアの唸り声。敵は尻上がりに調子を上げ続け既に動きは人間の範疇を超えており、対して此方はどう控えめに見ても刀折れ矢尽きた状態。勝機は限りなくゼロだろう。
だがだからといって、『はい、そうですか』と大人しく受け入れるつもりも毛頭無い。たとえどれだけか細くとも喰らいつく。その生き汚さを有する者だけが活路を開けるのを千束は知っているし、何より、仲間の命が懸かっているのだから。
「(──兎に角時間を稼ぐ。拘束銃のカートリッジはまだ有るけど、アイツを行動不能に出来るほど有るわけじゃない。そも相当デカい隙を作らないと確実に叩っ斬られる──)」
──大丈夫。まだ皆きっと生きてる──
そう自分に言い聞かせ、眼前の敵へと意識を没入させる。
千束は余分な力みを抜いて傍目からは分からぬよう重心を浮かせ、グフは煙を掃くように数回剣を振って粗雑に構えを取った。
レフェリータイムの役割を担っていたスモークも消え始め、奇しくも会敵時と同じ構図の中、ジリリと両者の視線が交差。
「フゥゥ………───」
深く、沈むように息を吐く千束。
決死の覚悟と仄暗い害意がぶつかり合う───
『──……!……──』
─────突如、グフは構えを解き、溜めていた火を消す。
『───……来たなぁ────』
何処かの宙へと視線を投げるグフ。
“何を見ているのか?何を言っているのか?”その疑問への答えが出るよりも早く、千束も意識を引っ張られ、視線を追えば─────
────地鳴りを伴う崩落音を見た。グフが放った火砲の着弾地点────たきなを埋めた瓦礫の山が吹き飛び、輝く深緑の風が吹き荒ぶ、その光景に。
『───ガンダム・タイプ……!!』
粉塵を突き抜け、本来の姿に戻ってたきなを姫抱きで飛翔する翡翠。それに対し、真っ先に反応したのはグフだ。
グフは腕部に取り付けられた3連装機銃を挨拶代わりと言わんばかりに掃射。進行方向へ夥しい密度の弾幕が置かれる、が、そのどれもが1つとして目標へ当たることはなかった。
稲妻の如き鋭角な軌道を描いたと思えば、次の瞬間には躍るように滑らかな円を描き、ホールの縁を沿って翔ける翡翠。
時に優雅に、時に鋭く、縦軸横軸関係なしのバレルロールも織り交ぜ、スルリスルリと宙を泳いで鉛玉の群をすり抜ける。既存の航空力学では絶対に不可能な次元の違う空中軌道は、煌めく粒子も合わさりさながらミュージカルのようだ。
そんな具合にグフが業を煮やしている頃、サクラはフキに肩を貸りて物陰へ退避しようとしていた。のだが───
「───ワリィ…助かった…」
「はは、ちょっとカッコ付かなかったっすけど………って、ん?───」
大外周りコース且つ蛇行飛行にも関わらず、瞬く間に貴我との距離を縮める翡翠。その進行方向の違和感。それに漸く気付く。
「───……何かコッチ来てません…!?」
「…なんか来てんな…!?───」
徐々に高度を落とし地面スレスレの飛行で此方へ迫ってくる機影と、その後ろを蛇のようにしつこく追う銃弾の嵐。
たきなを抱えているアレが援軍なのは理解していても非常にお近づきになりたくない光景は、今の2人には刺激が強過ぎる。しかし、そんなフキ達への配慮なんてある筈も無く、事態は無情に進行された。
翡翠は速度そのままで姿勢を直し、両足でフロアを削り割って急制動を掛けると、グフからの射線を遮るようにアタフタしている二人の前で止まる、と、同時に、GNフルシールドを背面へ可動───
「GNフィールド、局所展開、
そうして瞬時に現るは分厚い光の壁。翡翠の背後へ展開された眩い防壁は、一発一発が人を殺すのに充分過ぎる殺傷力を秘めた凶器の奔流を堰き止め、欠片1つ通さない。先程からの掃射は勿論、リコリス達に戦慄を刻み付けたシールドの火砲も、分け隔てなく阻み、逸らす。溜まってゆくのは粉塵と薬莢だけだ。
『……チッ、流石に硬いな』
軈て、無駄を悟った敵機が両腕を下ろし、煙が晴れる頃、無傷の背中と、翡翠の背後を境目に半円状に抉れた床が彼女達の無事を証明した。
静止した時間が経つ事約十数秒、ついさっきまでの激しさが嘘のように静まり返るグフ。
未だ動く気配もなく、何が理由で、何を意企してなのか全く想像が付かないが、翡翠を警戒しての行動なのは一目瞭然だった。現にリコリス達へのマークは外しており、先程からずっと何かの行動を見せようとも全くの無反応、眼中に無しといった様子なのに、翡翠からは絶対に目を離さなかった。
正直なところ、それについて悔しい感情は有るし、思うものも無い訳ではない。しかし、そんな事よりも大事なモノが在る。居ても立っても居られなくなった千束は、グフへの警戒をそのままに翡翠達へと駆け寄る。
「たきな!!みんな!!」
「……大丈夫、です……少々…頭を打っただけですから……それと、翡翠……次はもう少し、動きを抑えてくれると助かります……」
「……謝罪……」
「私らはおまけっすか?………」
「……はぁ、疲れるからケンカすんなよ……」
「ソレ先輩が言うっすか…!?」
頭を抑え、消耗した様子ながらも特に大きな怪我も見当たらないたきなに、げっそりとした顔で翡翠を睨らんでたかと思えば雑談に興じだすフキとサクラのコンビ。そこには無事、とはやや言い難いものの、確かに何時もの仲間達がおり、それを確認できた千束は思わず気が抜けたように綻んでいた。
「謝罪……」
「ううん、たきな達をありがとう。捕まっていた人たちは?」
「
仲間達も無事で、後顧の憂いとなる事柄も解決した。これほど嬉しい吉報は無い。だが、忘れてはいけない。まだ、1番の脅威が残っている事に。
『AI風情が……随分と余裕綽々だなぁ?ガンダム・タイプ───』
苛立ちや侮蔑を多分に含んだ声。傲慢さを隠しもせず睥睨していたグフは、『不愉快ですアピール』をMDで行うという器用な事をしており、その後も此方が何の返事もしていないのにガチャガチャと聞くに堪えない雑音を吐き出し続けていた。
パッと見では隙だらけの佇まい。敵を目の前にして無駄ばかりの行動をする、そんなド3流も良いところな敵なんて、普通ならカカシかボーナスバルーン以外の何者でもないだろう。
───絶対強者。敵のその振る舞いは、その傲慢さが許されるだけの強さを湛えていた事に他ならなかった。
「──……翡翠」
「
だが、千束達にもう先程までの焦燥感は無い。翡翠がたきなを千束に預け、グフへと向き直る。それだけで城壁で隔たれたかのような安心感が溢れる。
千束はたった一言だけの交わし言葉を受け取り、足早に物陰へ向かう。目を合わせる必要も、確認も必要無かった。
「………御指名だ、キッチリ
「
フキ達も言いたい事や不機嫌顔を引っ込め、必要な指令だけ言い渡して千束の後を追う。
業腹だし翡翠の事はとことん気に食わないが、不思議と憂懼も無い。先程の戦闘とも言えない蹂躙劇でもあの蒼い化け物は露骨に遊んでいたし、隠し玉を用意しているのも明らか。しかしそれでも尚、翡翠が負けるヴィジョンをフキも想像できなかったのだ。
『───ああ、そう言えば、お前は唯一にして最後の完成品だったな?今は亡き無冠の天才の遺物───』
「所属不明MDを確認。外観、装備から、グフ・モデルと推定──」
向かい合う2機。互いが互いを見つめ、互いが互いを意識して言葉を発しているのにも関わらず、会話が成立する事はない。
『───つまりは、だ。お前さえ居なければ、僕を
「───
それは両者にとって、『敵』以外の情報を必要としていないからだ。
『───フッ、フフッ、そう、そうさ……!こんなにも…こんなにも簡単な事だったんじゃないか……!───』
「───
ユラリと構えを取り直し、煌煌とした青い火を貯め始めるグフ。翡翠も身に纏う若緑の燐光を増大させ、ビームサーベルを引き抜いて敵意に応じる。
『───そう…そうだ……お前さえ……お前さえ居なければぁ……!!───』
「デュナメス、目標を───」
何処までも平行線の2機だが、互いが互いに“相手をどうしたいか?”この考えだけはピタリと一致していた。
『───消えろぉっ!!亡霊っっ!!!』
「───駆逐する」
モール外れの一角にて、叡智が創り出した鋼鉄の怪物達が───今、激突する。
今回の植林された設定集:
グフ・ドーントレス
これもアンフやドム同様に『博士』なりのアレンジを加えられた機体。ただし、この機体は前回の2機とは違いとある男が残した遺物をサルベージ&レストアした物を素体にしている為、アンフ達とは別格の性能を有している。
対デュナメス(狙撃機体)という事で、主に屋内での白兵戦を想定。極めて高い運動性と機動力を持ち、近接戦では無類の強さを誇る。のだが、動力炉関連が未成熟且つ非常に高燃費なので、連続稼働時間が非常に短い欠点を持つ。加えて、柔軟な機体制御に特異な武装の数々のせいで必然的にオペレート前提&高度な操縦能力まで要求された問題機体と成ってしまった。
その為、博士は『自分視点でサイコミュに類する』と思われるデバイスなどを用いて、通信強度の確保と操縦難度の緩和を行っている。
因みに、『博士』は当然グフ本来の思想やらなんやらを知らないので、本体自体も『博士から見て類似性の有る、又は、相性の良さそうな機体群』で継ぎ接ぎ穴埋め設計された、実態はグフぽいっ機体のごちゃ混ぜMD。
外観はグフカスタムをベースに各部へ小型バーニアを追加。バックパックの機動戦補助用バインダーは、グフイグナイデットのウイングをやや小ぶりにしたモノが縦に垂れ下がった感じ。
武装:
右腕部に3連装機銃(見た目は3連35mmガトリング砲のグリップをオミットしたもの。勿論そのまま撃てる)。
ソニックソード×2(これも見た目はグフのヒートサーベル。イナクトやフラッグのソニックブレイドが大型化しちゃった物)
右腕にはワイヤー式の高電磁鞭に(海蛇タイプのヒートロッド)
左腕部にはやや小型化されたグフのシールドと短射程特殊貫徹機関砲。
短射程特殊貫徹砲
対ガンダム・タイプ用に開発された装備で、ガトリング砲の変わりに搭載されている。無防備な状態にヒットさせる事が出来ればガンダム・タイプ相手でも有効打になり得る火器。しかし、名前の通り有効射程が非常に短く、一定の距離を越えると著しく命中率と威力が下がる上、決して取り回しが良いとは言えない銃身と少ない装弾数という問題を抱えており、必然的に運用方法が限られるキワモノ装備。
ガンダム用語簡単解説:
サイコミュ
特定の脳波を送受信したり増幅したりするデバイスで、遠隔無線兵器になったり(主にファンネル等)OS等に仕立て直せばモブパイロットがスーパーエース級の動きが出来るように成ったりなど(どちらかと言うと強制だが)、非常に強力な装置群の総称。勿論ミノフスキー粒子等のインチキ粒子にも対応している。
ただし、大抵が碌でもない副作用やデメリットを抱えており、特定の人種しか使えないのは序の口で、モノによっては精神汚染や搭乗者を分単位で殺したりなど、問題しかない側面が目立つアイテム。
予断だが、ガンダムワールドではこういった非人道的兵器がニュルニュル生えてくるんだ☆偉い人にとって『兵士は鉄砲玉』、って考えが透けて見える道具だね☆歪みねぇな☆
尚、よく物語のキーパーソンにもなる模様。