俺 自身がガンダムになることだ 作:解毒剤からビームサーベル
大変お待たせしました。体調不良だの私生活だのと色々と理由はありますが、一番の理由は矢張り力不足でございます。これからも安定しない投稿になると思いますが、お付き合い頂けたら幸いです。
それから、最後になりましたが毎度の感想や評価、鋭い御指摘ありがとうございます。それらを燃料と参考とし、これからもチマチマと書いていく所存です。
階下の広場から響いた、寂寥な地響。戦々恐々とさせられ、あれだけ激しかった筈の戦闘の、余りにも呆気ない幕切れ。
「───……〜〜〜〜ッ…はぁぁ〜〜………!」
それは、誰のため息だったのか……私だったのかも知れませんし、もしかしたら、全員だったのかも知れません………。
破裂寸前まで膨らみきっていた緊張感が、穴の空いた風船のように萎んでいきます……。
「…あの野郎……焦らせやがって………!」
隣りのフキさんが洩らしたセリフには同意しかありません。仕方がなかったのも、決して手を抜いていた訳でもないのも解ってはいます、いますが………受け入れれるかは別問題。少なくとも私は、何か一言くらいは言わねば気が済みそうにありませんでした。
「…はぁ…とりあえず……これで打ち止めっすよね?」
「まぁ、流石にね…」
千束とサクラも私達と同じような顔をしていましたが、直ぐ様表情を引っ込めて撤収準備を始めます。
……一先ず、私も翡翠へのお話は此処を出てからにしましょう……。ただでさえこのイレギュラー続き。これ以上長引けば、それこそ私達が来た本来の意味、事態の沈静化が本末転倒に成りかねません。そう自分を戒め、私も撤収準備に同道します。
「んで? 私らの脱出ルートは?」
「んぁ〜〜……かなり時間も経ってるし…此処なら翡翠に中継して貰えば通信出来るかも?らしいから………話はそこからかなぁ~~」
「んだよそのフワフワした回答は…!」
「しょーがないでしょーが。あんなインチキ技術、翡翠以外理解出来ないんだし……!」
などとフキさんと千束の会話を尻目に聞いていると、フヨフヨと私達の居る階まで飛んできた翡翠が視界に入り、自然と全員の足がそちらに向きます。
──もう終わった。
──戦力の逐次投入なんて有り得ない。
──だから後は静かに帰還するだけ。
「んじゃあ、翡翠。通信宜し───」
そんな考えだったからか───
何が起きたのか、理解するのに時間がかかり───
(───げ、ヤバ)
「───え?」
気がつけば───
「うおっ!?」
「アグッ!?」
「グエッ!?」
「うぐッ!?」
1番前に出ていた千束が私達を巻き込むように投げ飛ばされ────
「──……ぇ?」
────翡翠は
幾多の強力な兵器の悉くを弾き返し、どんな攻撃も絶対に通さなかった鉄壁の盾。目に映ったのは、ソレが本体にこそ届かせていないものの深々と貫かれ、火花を散らしていたという思慮外の光景。
そしてソレが何なのか?何処からやって来たのか?そういった諸々の情報を処理する前に──
(ぬ、ぬわーーーーっっ!!)
程無くして、銀槍は紅い光を撒き散らし爆発。翡翠は黒煙を上げて墜ちていきました。
「………翡翠……?」
乾いた音を立てて靴にぶつかる深緑の破片。
今すぐ隠れるべきだとか、状況把握に努めるべきだとか、そう言った当たり前の事は脳裏を滑るだけで一向に纏まらず、無敵の仲間が堕ちていった地点を眺めるばかり。
それはホールの向こう側で異変が起き始めても変わりません。
「───……ーー〜〜ッッ!?!──呆けてる場合じゃ
そんな私の意識を引き戻して下さったのはフキさんで、自身はサクラに肩を貸しつつ、呆然としていた私には肩を強く叩いて物陰へと指示。
「───ーー〜〜ッッ〜〜〜──千束っ……!!」
「…………ぇ、ぁ……!───」
そうして彼女のお陰で動けるようになった私も、私以上に呆然としていた千束を引っ張って遮蔽物の後ろへ急いで避難すれば、入れ替わる様に鉛玉の雨が周辺へと降り注ぎ、目測でも分かる程の勢いで周囲の地形が削り取られていきました。
何で?どうして?と、意味の無い問が渦巻く感情とは裏腹に、冷静であろうとする部分の私が遅過ぎる状況確認を行いますが、返って来たのは絶望的な情報だけ。
「────〜〜ッ!?──敵の──敵の数は!!?」
「見えた範囲では最初のデカブツどもと同型のが5機!それ以上は判らねぇ!」
「嘘っしょ!? もうナイフくらいしか無いっすよ!?!────」
翡翠は倒れ、敵の総数も不明で、装備も作戦も既に有って無いようなもの。
何かないか?何が出来る?翡翠はどうなった?脱出ルートは?と、空回り気味な思考で妙案を探すも、徐々に近付いてくる発砲音が猶予の無さを残酷に告げる。
余りにも今までと勝手の違う危機に捨鉢の考えが過り、否応にも決断を迫られた────そんな時でした。
『────聞こ──か?──お─答──しろ!───』
不意にインカムが雑音以外の音を拾い、耳を澄ませば───
『────ちさ───聞─えるか──たきな!千束!!』
「……………クルミですか……!?──」
聴こえてきたのは猛烈な鉛の雨声に負けぬよう力強く発された声で───
「───…クルミ…!!?───翡翠がっ…翡翠が……!」
『解ってる、その翡翠から“伝言”だ───』
ソレに飛び付くように反応した千束に、クルミはハッキリとこう言います。
『『
そして、幾重にも重なった騒音に紛れて微かに聴こえた───
「〈───La+■解除■件の■成を確認、第2■■クを解■。緊■事■につき、13番か■7■■迄の手順を■■、一部Systemを強制起動───〉」
────何時ぞやの電子音声。
「───GNマイクロミサイル、斉射」
ソレを認識した刹那、無数の青緑に輝く弾頭が黒煙を裂いて現れ、白煙の代わりに煌めく燐光で尾を引きながら瞬く間にMD達へ着弾。
弾頭が突き刺さったMD達は即座に金属とは思えないような勢いでボコボコと膨らみ、軈て、膨張に耐えきれなくなった装甲は裂け、その割れ目から大量の焰と粒子を噴き出し1機残らず爆散。
『───……全機撃破を確認…!
もう外の連中も我慢の限界だ! 脱出しろ!!────』
そうして私達は、逃げるようにその場を後にしました─────
■
事件から数日後。
DA関東本部、とある一室にて────
「────………明らかに凝った作りにも関わらず、“中々にガタが
「「「「「「……………」」」」」」
そんな風に胡乱な目を向けてくる楠木司令の周りには、助手を始めとした護衛、兼、重要参考人でもある千束ちゃん達4名のリコリスに、大掛かりな撮影機材を構えた幾人かの技術者らしき者達など、物々しい人集りが出来ていた。
「
そうしてたきなちゃんも司令殿とおんなじ目で凝視しているのは、
───そう、俺は今、皆の視線を釘付けにしている理由───
…………いや…うん……その……そこまでガッツリ見られると流石にやりにくいっていうかなんて言うか…あの………ああ…うん、デスヨネー…………。
はい。何でこうなってるか?って言うと、話は事件終了直後にまで遡る。
あの後流されるまま撤退してしまった俺達だが、あの最後っ屁が本当にラストだったらしく、事件は恙無く終息。
実はまだ『潜んでいたんですぅ』みたいな事も無く、放射能だの汚染物質だのみたいな厄介なのも確認されなかったので、事後処理は予想よりも早期に終了。
まぁ、裏の事後処理はまだまだ大量に残ってるらしいが………。
兎も角、そうなれば棚に上げていた問題にも着手しないといけない訳で、俺はそのまま軟禁(実質は幽閉だが)、千束ちゃん達も軟禁を兼ねた精密検査と聴取を受けて過ごしていた……いたのだが─────
「調査班の人達、『今度こそ取っ掛かりくらいは!』って、張り切ってたのにねぇ……」
しかし、当初の目論見であるMD(というか主に俺)の調査は見事に座礁しており、その主な原因こそが今回表面化した機能───『ナノマシン技術を応用した自己修復、兼、機密保護システム』───コレによって
「
んで、助手の人もボヤいていたが理由に関してもまさしくそのとおり。
この機能、たとえ破片であろうと“俺の制御下から離れたと判断されれば、即座に保全に使われていたナノマシンが反転し、原子レベルで対象を崩壊させる”、って徹底ぶりだ。
そのせいで俺の一部だった破片や残骸は全て消滅してしまい、ソレを知った調査班の人らは漏れなく虚無顔。
そのテンションの急降下具合は飼い主に連れられて『楽しいお出かけだ』と、ウキウキしていたワンちゃんが途中で病院だと分かったかのような姿だった。草生える。
因みに、肝心の修復機能についてはかなりギリギリの容量で稼働していて、基本的には機体の保全で手一杯。ナノマシン技術も∀ガンダム程の無法な性能じゃ無いし、月光蝶なんかも当然出来ない。
というかそもそもの技術系統が違うらしく、ナノマシンの稼働時間が何だとか人工金属細胞がどうだとか外部から摂取した物質の化合がウンタラカンタラだとか非常にゴチャゴチャした仕様で、ソレでも補いきれない時は内蔵された小型プラントで埋める複合型なんだとか。
で、ソレだけやっても実際の性能は小さな凹みや切り傷でも2、3日掛かり、パーツごとの欠損なら単純な構造でも数カ月、規模によっては年単位の時間が必要になる等かなり重い制限。
更に一部の希少資材を使用した部位だと不足分を補給しなければ修復すらままならず、動力炉や頭脳に当たるパーツに至っては損傷次第で一発アウトにだって成りかねない感じだ。
「……たきな、今の話し解る?」
「……私が解るわけ無いじゃないですか………」
「…………つくづく巫山戯たマシンだ……。
まぁいい、ソレで?
最後の
とまぁ、ある程度(例の如く話せる部分だけ)話した所で、あの時千束ちゃん達を襲ったアレについても議論する。
……先ずぶっちゃけると、アレについては全く解らん。というか、あんなモン原作じゃ見たことねぇ。無論、俺の知らない外伝作品から来た可能性は有るが、ソレだとどの道知らないのと大差ねぇしアレ自体に然程重要そうな技術は使われてなさそうだから一旦横に置いとく。
そんな事より問題なのはアレが紅い粒子、
GNドライヴ
勿論、性能据え置きのままとはいかず幾つもの機能が犠牲になっているが、ソレでも10倍以上の機体数にも拘らず蹂躙されていた戦闘が互角、場合によっては優勢にまで持ち込める程の性能は推して知るところ。故にもしそんな奴らと戦闘になれば、こんなお淑やかな被害範囲じゃ絶対に済まない。
そして問題はソレだけじゃねぇ。GN粒子は調整次第によって毒性を発揮する性質があり、あの紅い粒子カラーはまさしくソレを意味するモノ。
幸い、その毒性はビームレベルまで圧縮されない限り発揮する事は無いが、ソレはつまり奴らのビームは掠り当たりでも死に至りかねない危険な毒ビームという事だ。出来るなら発砲すらさせたくねぇ、戦闘能力以外も厄介極まる連中なのは間違いない。
「…………お前の
「
「「「「「「……………」」」」」」
と、腹部の簡易プラント(本来ならコクピットブロックだった箇所)からミサイルを取り出して装填しつつ俺の安全性を語ると、皆して微妙な顔をする。まぁ、肝心の証言者が俺だけだからね、根拠とするにはいささか以上に信用出来ないか。
そんな事より話を戻して───奴さんらの目的、及び俺の開発元か?って話だが、正直な所、色んな意味で判らん。
先ず今回の事件の行動からして意図が分からねぇ、ってのが感想だ。
相手は、明らかに『ガンダム』を知っていた。にも拘らず、出てきたのは安上がりなスペックのばっかで多少マシだったのはあのパッチワークグフくらい。一応最後にはGN兵器らしき物も出てきたが、コレも微妙な性能っぽいの一発ポッキリだったし本体が追撃してくることも無かった。手傷を与えて、明らかに弱ってるであろう『俺』対してな。とても俺を仕留めきるための作戦だったとは思えねぇ。『俺』撃破以外の目的が有った行動なのは確かだ。
「そんな事は分かっている。あれだけ投入したにも関わらず、結局は大半を貴様に撃破された………その事実だけでも連中の狙いが別にある事くらいはな」
まぁ、それはそうか……。
……ん~~……やっぱ最後のアレ、完全に蛇足だよな?鹵獲目的、じゃ無さそうだし………送ってきた戦力も中途半端、結果は手札を見せただけだ。……なら威力偵察…いや、陽動とかか?…だがソレだと何で店にいる時に襲いに来ねぇのよ。いや、その前に気付くかもしれねぇけどよ……。
「………はぁ……もういい…貴様の出せる情報を洗いざらい出して退出しろ……話しは以上だ───」
■
『──ご苦労さま』
「いえ、職務ですので……」
そう言って、電話越しに労い言葉を掛けたミカ。
あの後、翡翠から搾り取れるだけ情報を搾った楠木は、全員を帰投させて小休憩も兼ねた情報整理をミカと行っていた。
『こうやって話せるという事は、
「一応は、ですが………」
そもそも今回の事件、幾ら混乱していたとはいえ、現場の実働員に作戦を丸投げするというのは少々どころではないおかしい話。それでもそんな妙な話で押し進められたのには、面倒で如何ともし難い事情があった。
「今回の騒動……前回のラジアータの件も深く影響したのでしょうが、それよりも強引な介入が色濃く裏目に出ました……。
ただでさえ人型ドローン、もとい、MDの事でヒリついていた関係各所が、
そのせいで痛くもない──かは言及しませんが、延々と終わらない腹の探り合いに水掛け論、居もしない
というのが一連の騒動の全容。
そう、今回の事件、本当になんてことはない。ただひたすらにタイミングが悪かった、ソレだけなのだ。
DAの機密組織としての体質が、ここ最近の連続して起きた周囲も含めた不祥事が、世界をも揺るがしかねない技術の出現が、今回の事件で絶妙に噛み合い連鎖爆発。それが、顛末。
『ご苦労な事だ……既に俺達にもDAにも、散々メスを入れた結果が今だろうに』
「私も同感です───が、上が神経質になるのも当然でしょう………アレは、余りにも
両者とも深い疲れの籠もった声色。しかし、起こるべくして起きたのも同感だった。上は何も目の前の事だけを見て畏怖しているのではない。マルチロール機としての完成度───MDが内包する、潜在能力そのものにも危惧していたのだ。
従来のドローン兵器は強力ではあるが、技術的課題の関係上その運用方法はどうしても限られやすい。電波や天気の影響は勿論、専属パイロットの必要性、センサーやAIの誤認の危険性、そういった無人機故の強みと弱みを考慮して活かそうとすれば、大抵は使い捨て前提の特攻か偵察が主になる。
その為、現場というありとあらゆる不確定要素を孕んだ環境だとソレ一辺倒で対応するのはどうしても無理があり、特に今回のような
「今までは不可能だとされていたAIによる
文字通りの意味での強力な機械化歩兵が、コンパクト且つ場所を選ばす迅速に展開出来た今回の事例……。
この意味が判らない貴方では無いでしょう?」
『…………』
楠木の言葉に何も言えず声なく唸るミカ。ソレは、まさしく上が恐れていた悪夢そのもの。現行武力、及び戦術の陳腐化だった。
無論、明日明後日にはそんな時代が来るとはならないだろうが、ソレも時間の問題なのは想像に難くない。
何せ、その完成形と
……深く、長くも短い沈黙が降りる。今回の件で全く進展が無かった訳では無いが、ソレでも突き付けられた事実は軽くない。
『──………まぁ、とは言え…そんな怖い話ばかりじゃないんだろ?』
「……ええ、面倒事も付随しますが、コレを機に予算の増額や一部権限の上昇、更に残骸からも幾らかの情報抽出に成功してます───」
しかしだからこそ、項垂れている暇は無い。組織としても個人としても、これ以上連中に好き勝手させるつもりは毛頭ない。“必ず落とし前をつけさせる”。その一念を胸に、次に備えて二人は話を進める。そう湛えていた楠木は、フと、視線をある画像に落とす。
今回の事件、人的被害ゼロという結果で処理されているが、ソレは民間人、並びに、日本政府側の人間のみという意味でだ───
『遊ぼうぜ、リコリス』
───その画像に写っていたのは、身元不明の外国人が凄惨な姿で息絶えて、その血をもってデカデカと壁に書かれた
外国のスパイ?と思われる人物:
今回の公安の事件側の関係者。準備が整い次第汚職議員コロコロしようとスタンバっていたが、コソコソしていた姿を真島に目撃され『ちょうどいいや☆』な感じで通り魔的にサックリぶっ転がされた。今回の一番運が悪かった人。
歩兵用特殊粒子滞留型ロケット推進式貫徹砲:
コレもとある男の遺産をサルベージ&レストアして魔改造されたもの。
銃身は無反動砲等に近い発射筒で、弾頭は槍のように鋭く長い。弾頭尖端にはGNブレイド等の技術を流用して極めて高い突破力を誇り、特に、機能を絞ったお陰で『穿つ』事に関しては流用元よりも優れた貫通力を獲得。
早い話が歩兵でも使えるようにしたGNランサーダート。
しかし、『博士』の技術不足、というより、色々な意味でどうしようも無い問題を抱えた代物でもある。
先ずその1、GN粒子をその場に
その上、粒子による飛行機能に関してはまだまだ未成熟なので、既存の推進装置で飛ばすという力技の仕様。その為、粉砕用の爆薬や突破用の機能の維持などの兼合いの結果、飛翔距離も短い。
その2、べらぼうなコスト。GN粒子技術を盛り込む為には、大量の希少資材が必要であり、物によっては地球外の物質も必要など色々な意味で調達自体が難しい。
その3、そもそも照準が糞。当然GN粒子などの特殊粒子散布下での想定兵器なのだが、それらの問題も全く解決していない(というか元々は人間が使うことを想定していない)ので、非常に命中精度が悪い。射程距離が短いは上記の理由とこの理由が抱き合った結果でも有る。
しかし、真島からのお強請りもあり、情報収集の一環として歩兵用火器へとマイナーチェンジされた次第。要約すればMD用として開発されたものが上記の理由でポッシャッたのでリサイクルした品。