俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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ガンダム・リアリティ・ショック

 

 

 

 

 

 

 「───っと、いった感じでしたね」

 

 DA本部にて───千束はタブレット越しのミカも交えながら、DA総責任者である楠木と指令用執務室で向かい合い、謎の機動兵器、『ガンダムデュナメス』との邂逅について詳らかに話していた。そしてソレを聴き終えた二人は揃って頭痛があるかのように渋面で眉間を指で揉んでいた。ちなみに、千束も揉んでいた。

 事の発端は翡翠がリコリスの現場に乱入してDAにバレた所からだ。作戦自体は売人捕縛という最優先目的を達成して終えることが出来たが、現場に乱入した謎の兵器を当然見逃す訳が無く、本人(?)同意の下、直ぐに厳格な調査が行われた。

 これが多少図体がデカくて頑丈な程度の代物なら指令が直々に出張ってくる事は無かっただろう。が、蓋を開けてみれば次々と出てくるオーバーテクノロジー全開な超性能に本格的な危機を感じ、上も下もてんやわんやの大騒ぎになっていたのだ。

 

 「一応聞くが、『アレ』は()()()()()()()、拾った物なんだな?」

 

 「………そうですよ。流石に私もあそこまでぶっ飛んだスペックしてた、なんて解りませんでしたからね……?」

 

 鋭い口調で言外に『本当の事を話せ』と、言われるが、千束自身も今の今まで『ガンダムデュナメス』の性能については完全に理外そのもの。寧ろ千束自身も聞きたいくらいだ。しかし、既に千束が拾った、もとい、第一発見者だということは確定しているし、当の本人談(※人では無い)でも千束がマスター及び所有者と申告している。楠木は千束が謀反を企んでるとか買収されたとか考えてはいないし、それらを隠しながら器用に立ち回れる奴でも無いことは知っている。が、リコリス、というかプロならば絶対遵守な連絡や報告も無かった以上、指令の立場としてはこうして疑い強めで詰問せざるを得なかった………。

 

 「……はぁ……もういい。それよりも……何なんだ、このふざけた玩具は?」

 

 そう言って、いい加減有意義さを感じられない質疑応答を打ち切り、手元に置かれた『ガンダムデュナメス』の機能調査報告書を憎々しげに睨み付ける。

 

 曰く、ジェット機に迫る速度で飛行が可能であり、加速性は勿論、制動性、運動性など、飛行制御能力は軍用機でも比較にならない程高く、最高速もマッハを越える可能性が出て来た為、周辺被害と秘匿性を考慮して測定できなかった。

 

 曰く、未知の物質で構成された合金らしき鋼材と既存の理論からかけ離れた構造で製造された機体で、極めて頑強な耐久性を誇り、最新鋭の主力戦車をも破壊する兵器を多数浴びせても一切の損傷が見られなかった。

 

 曰く、小型ながらも拳銃型ビーム投射機は装甲車程度なら紙や飴細工のように貫通、溶解させ、格闘兵装と申告されたビームを剣のように留めるものは現行技術の装甲材ならば全てを溶断してみせた。そして、大型の狙撃銃型ビーム投射機に至ってはそれらの最新装甲材類を全て数メートル単位で貫通可能。中には十数メートルに達した物も有るとか。

 

 曰く、異次元レベルの高度な人工知能を搭載していると思われ、幾つもの保険を掛けた上でラジアータクラスの電子防御力のあるスパコンで解析を試みた結果、数秒でファイアウォールと保険を突破され、咄嗟に危険と判断され中止になった。

 

 曰く、未知の粒子らしきものを生成しているらしく(ほぼ観測が出来ないため自己申告のみに留まる)、現行理論のありとあらゆるレーダーや探知機類を阻害、どんな機器も無力化。その為、向こう側から姿を現すように動いてくれなければおおよその場所すら捕捉困難なステルス性能を持ち、しかもその機能を転用してほぼ全ての通信機器類も遮断するジャミングを広げることも可能。

 

 曰く、本体自身は超長距離戦を主目的に設計されているらしく、専用兵装を合わせる事で確認された有効射程は20キロメートル以上(それ以上は秘匿性の維持をしながらテストを行うことが難しかった為)で、その距離から高速で動く目標に誤差コンマ0000以下の狙撃に成功。さらに、極めて柔軟で有機的なAIの為、狙撃だけではなく緊急時にも様々な対応が出来る。

 

 等々と……なんだそれは?漫画やアニメの設定か?と聞き返したくなるような性能が次々と判明していった。現在DAでは、1000丁もの取り逃がした銃の行方を追っているという喫緊の案件があるというのに、 ココで既存の兵器や戦力では逆立ちしても対処不能なトンデモ兵器に密入国(?)されていたという事が判明した結果、かつてないほど混迷に直面していた。

 

 『それで…分かったことはあるのか?』

 

 「……残念ながら、一切不明です。………製造元はおろか、密輸経路すら毛ほどの情報も出てきませんでした………」 

 

 ミカにそう問われ、重苦しく返すしかない楠木は未だに手元の書類を親の仇の如く睨んでいた。‘何処からやって来たのか?’は勿論、そもそもハードウェア(機体)ソフトウェア(プログラム)共に、どういった原理の取っ掛かりが使われているか?すらも解らないのが現状。幾人もの研究者や科学者を様々な分野からかき集めて調べさせたが、解かったのは‘未知の技術が使われている事’、 だけであり、その道のプロですら匙を投げる始末。科学捜査以外の面でも手懸かりになりそうな情報も一切無く、捜査は今も絶賛難航中。

 

 『………なら上層部はコイツをどうするつもりなんだ?『そのまま放置』、は無いんだろう?』

 

 そうこうして二人の議論を半分上の空で聴いていた渋面の千束だが、隣から出たその質問にハッ、と我に返り、今置かれた立場を思い出す。()()()は疑われている事を。このままではどうなるか?、なんてのは考えるまでも無く、ソレを避けるため擁護や提案の言葉を直ぐ様探す。しかし、始まりが始まりだけに旗色が悪すぎで、思考は滑るばかり。焦燥感が千束の顔を歪ませ、自棄っぱちの暴論が喉から出そうになる。しかし、それよりも早く話は妙な方向へ転がった。

 

 「……本来なら、即座に解体処分して研究所送り───と、言いたいのですが、ソレをするには今回はあまりに()()()()()()()()と判断された為、現在は保留という形になりました」

 

 「……どういうこと?楠木さん」

 

 上層部でもこれだけの超兵器を野放しにしたくないのは満場一致。可能な限り情報収集した後に解体、破棄はごく自然な流れだ。そして見聞での機能調査も早々に限界が来た事もあり、直ぐに解体しようとしたのだが──────

 

 

 『警告、当機の許可無く分解、ハッキングを行おうとした場合。情報秘匿の為、戦闘、自爆を含めた対応を当機の人格プログラムを無視した上で強制起動される。

  今回の場合、当機の持ちうる性能の限界を超えて圧縮したGN粒子による自爆が行われる。

  繰り返す、これは脅迫では無く、警告である───』

 

 (意訳:おいっ、俺に妙な事を少しでもしてみろ!こっちだって無抵抗で殺られるつもりは無いからな!!

 具体的には、お前らが散々ビビリ散らかしている、謎粒子を力の限りばら蒔いて‘なんの光!?’になってやるからな!!脅しじゃないぞ、良いのか!?勇気ある自爆をする準備があるからな!?)

 

 

 ───と警告(おど)された。普通なら虚仮威しと鼻白むが、それを行うのが謎の超技術で造られたマシンなら一笑に付すことは出来ない。

 ビーム兵器という、どう考えても電力をバカ食いする事間違い無しの代物を気兼ねなく使用したにも関わらず未だに元気に無補給で活動可能な謎動力炉に、未知の物質を多量に含んだ機体と謎粒子。もしそんな物が自爆した場合の被害はどれだけになるのか?被害範囲が小規模と考えるのは楽観視し過ぎだろう。仮に爆破範囲がさほど広くなかったとしても、確実に内包されているであろう正体不明の物質の事がある。

 コイツが自爆するということは、物理法則を大きく逸脱した性能に関係しているであろう未知の物質をばら蒔くと同義語で、それが周辺にも広がる可能性が有ることを意味するのだ。現状では未知の粒子(本人が漏らした名称ではGN粒子)によって人体へ影響は確認されていないが、強力なジャミング効果を持つだけとは思えない。

 常に機体から漂っていることからこの機体の性能に密接に関係してるであろうと推測されており、この粒子が遅効性の猛毒を発生させる可能性があるかも知れないし、放射能のような……否、放射能より始末の悪い現象を発生させられるかもしれない。もしそうなれば国家権力でも隠蔽するのは余りにも難しく、上層部ではその時の責任の押し付け合いが起こり、現在は保留という形で放り投げられていたのだ。

 

 「──この報告書に書いてある耐久実験は一部の過激派が強行策に出た結果だが……結局は『()()()』の異常性を知らしめるだけで終わった……」

 

 怒れば良いのか、喜べば良いのか………そう話を締めくくる楠木を、微妙な顔で睨んでいた千束だが、この流れを殺さない為にも肝心な事を聞く。

 

 「なら、家で預かっても良いよね?」

 

 この言葉に「………調査記録は必ず寄越せ。これは命令だ」そう言って楠木は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────とっ、言うことで。今日から新たにリコリコメンバーになる翡翠君でーーす!皆、拍手ーーー!!」

 

 そう高らかに紹介される、店の外観を盛大にぶち壊す翡翠に色んな視線が刺さる。ある者は呆れたような目で、ある者は疑わしそうな目で、ある者は非常に興味深そうな目で、ある者は深く何かを探るような目で。とりあえずはこの謎ロボットについての情報は分かってる範囲でリコリコメンバーにも共有され、これからはリコリコメンバーにも調査記録の仕事が降りた事も伝えられた。

 

 「いや、こんな物騒なもんどう扱えってんだよ。第三次世界大戦でもおっ始める気か!?」

 

 「まぁ来たものは仕方がないじゃないかミズキ。じゃあ早速、ソフトウェアの方も見せてもらいたいな」

 

 「それ、お前が見たいだけだろ!?」

 

 「報告。当機の開示可能なプログラムは制限があり、当機にもこれは変更出来ず又、当機にも内容は不明な為、教授するのは不可能である」

 

 「構わないさ。ミズキ、ソコの机空けてくれ」

 

 ふざけんな、自分でやれ!とやいのやいのと騒ぎ始めた二人と一機を横目にたきなはミカに近付き耳打ちをしていた。

 

 「良いのですか?危険では………」

 

 「ん?あー、確かに、言いたい事も分かるが上からの命令だしな。

  それにコレは、撒き餌でもある」

 

 実際のところ、翡翠自体はまだまだ要監視対象で、千束も含まれている。だがこの警戒は内通者としてでは無く、()()()からのリアクションを見るためだ。

 千束は確かに、機密組織リコリスの最上位クラス、ファーストという他のリコリス達より遥かに上の立場だが、所詮は末端。しかも千束は組織の意向に反発し不殺の理念を貫いた結果、本部から大きく離れた立場になっていた。当然、そんな者が持つ情報なんて非常に限られて宛にならず、それなら同じファーストの春川 フキに接近した方がより多くのモノを引き出せる。そもそもの話、翡翠の驚異的な性能ならば例え完全武装の正規の軍隊でも止めることがほぼ不可能なのだ。情報が欲しいなら文字通りまっすぐ本部だの基地だのを強襲して、データベースや保管庫なんかを物理的にクラックしてしまえばそれだけで済む。わざわざ今みたいに手の内を晒すような真似をするのは、余りにも非合理的。

 そして気になるのが誰が何の為に造り送ってきたのか?という話だ。これ程の機体を造るには最低でも国家規模の予算と人員を動員してようやく足掛かりが見えるかも、といったレベル。当然、そんじょそこらの組織では造れるものでは無いし、個人なぞもっての他。いずれにしろそんな物を造ったまま放置とは考え辛く、多くの者がこれを造った組織や機関が接触してくるのではないか?という結論を出し、こうして今に至った。

 

 「撒き餌……ですか」

 

 「そうだ。といってもこの場合、此処に居る全員が対象だがな。

  本部には置きたくないし、監視もしたい、となったら必然と此処に為ってな」

 

 「心配し過ぎだって~、たきなさんや」

 

 警戒が消えたわけでは無い、が、本部からの仕事となれば帰属意識の強いなたきなにこれ以上言えることは無かった。周りの者が思い思いのままに行動している以上、自分がしっかりせねばと内心で奮起したところで今後、翡翠をどうするのか?という話にシフトしていく。

 

 「っていうか、こんなデカブツ何処に仕舞うんだよ。後、電気代もどうすんだ?『もう電池が無くなるからこの店で充電させろ』とか言わないよな!?」

 

 「問題ない(ノープロブレム)、当機は()()()()()で稼働しているため、外部からのエネルギー補給は緊急時を除いて必要ない」

 

 「「「「「…………は?」」」」」

 

 唐突に暴露された衝撃の真実に、固まる一同に更なる追撃を入れる。

 

 「更に当機には()()()()()()が搭載されており、機密性を維持したまま野外での活動も可能と宣言」

 

 言うと同時にGNフルシールドを前面に可動させ、翡翠から空気が急速に膨張したような空電音がすると、空間に虫食い穴が拡がる様に姿が溶けて消えていく。影も形も見えない翡翠が居たで在ろう場所から、続く解説を聞かされるが、一同が動き出せたのは少し時間がかかった。

 

 「この機能を使用中は出力を大幅に制限される為、一部の装備は使用不能になるが、飛行、及び移動は可能なため、民間人に発見される恐れはない」

 

 ………本部の調査でも色々凄まじい情報の暴力を振るっていたそうだが………どうやらまだまだ隠し持っているな、と、自然と全員の想像が一致した。

 

 「…………………コイツを造った奴って実はスッゲー馬鹿なんじゃないか?」

 

 ミズキは一周回った答えを導きだし。

 

 「……………光学迷彩もすごいが、今の機関の話が本当だとすると、技術躍進、なんて程度じゃすまない。…世界がひっくり返るぞ………」

 

 クルミはこの超技術になまじ知識が有るからこそパンドラの箱を見ており。

 

 「……………これも要報告対象ですね」

 

 「………そうだな……」

 

 たきな とミカはこれから来るであろう仕事の山に想いを馳せ。

 

 「スッゲーー!………じゃなくて!ソレ、何で今まで話さなかった!?」

 

 千束は、素直な感嘆からのツッコミに移った。

 

 「…………当機は完全独立稼働型機動人形、当機の根底プログラムはマスターや、マスターの縁者の護衛であるため────」

 

 翡翠は、会話で気を引きつつ逃走を図った。

 

「おいっ、コイツロボットのくせして言い訳しようとしてないか!?」

 

 そんなこんなで、今日もリコリコは平和だ。

 

 

 

 

 




ストックが切れました。
せめて失踪しないようにしますのでお許しください!

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