俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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 毎度毎度 誤字、脱字報告ありがとうございます。

※2/22追記 
 友人に、いい加減コメ返し位しろよ、と怒られました。
遅らせばながら、少しづつですが、返信させて頂きたいと思います!情けない作者で申し訳ありませんでした!



これがガンダム!悪魔の力よ!!

 

 

 

 

 

 

 ───喫茶リコリコ。ありふれた町並みに佇む何処にでも在りそうなこの店は、知る人ぞ知る名店でもある。和洋折衷をコンセプトにデザインされたこの店は、一見、相性の悪そうなコーヒーと和菓子を見事に調和させており、店主の確かな研鑽と丁寧な仕事ぶりを証明している。そしてそれは、外観にもしっかり出ており、落ち着いた雰囲気でありながらも、流行りのスイーツ店のような洒落た雰囲気も持ち合わせていた。

 

 そんな店の景観をぶち壊す、明らかな()()が忙しなく動き回る。

 

 「報告、お待たせしました、お客様。こちらが御注文の品です。当機と違い、非常に柔らかな品を、是非御堪能下さい」

 

 「フフッ、確かに貴方よりも柔らかそうね。店員さん」

 

 「肯定、当機は世界一硬い店員であると自負しております」

 

 翡翠が来て約一週間と少し、翡翠は店員をしていた。現在の姿は、外せる装備は全て外して素体のような姿になっており、腰部後方のGNバーニアも外して可能な限りに店のスペースを圧迫しないようにした姿だ。そんな店の風景でたきな達はと言うと───

 

 「接客も出来る戦闘ロボットとか………属性盛りすぎだろ」

 

 「………本当に凄いAIだ、ほとんど口頭のあやふやな情報ばかりだったのにここまで柔軟に対応するとは」

 

 「クルミは観察して驚く前に、せめて後始末くらいは自分で出来るようになってください」

 

 「いやぁ、景観には合わないけどコレなら馴染めそうだねぇ」

 

 思い思いの感想を口にしながら翡翠の仕事ぶりを観察していた。

 武骨な外観からは想像出来ないほど、臨機応変に仕事をこなしており、オーダーから始め、接客、調理、掃除、レジ打ち、片付け、凡そ飲食店で必要な技能をほぼ網羅し、先程もクルミがやらかしたミスも手早く、且つ周りを傷付けないように処理して、本来の機能から逸脱した性能を見せつけていた。

 何故、ガンダムメイドカフェが爆誕したのか?それは初日まで遡る。

 

 当初は翡翠を何処に置くか等を決めようとしていたが、翡翠自身がソレを拒否。曰く、自身の使命は千束とその縁者の護衛と支援であると主張し、閉じ込められる事を拒んだ。だが、いくら姿を消せるとはいえ、無闇矢鱈に活動をさせるのは余り好ましくなく、せめて依頼や限定的なDAからの仕事、リコリコメンバーの送り迎え等の時だけと言う話になった。しかしそうなると今度は、ソレ以外の時間は何処に居てもらうかと言う話になる。一応は人間と同程度の大きさだがそれでも人間よりかは面積を喰っており、装備も含めればかなりの容積。機密の事もありどうするか?と考えていると本人からの提案で今に至った。当初は不安視されていがここまで実績を出されるとは思わず、今は苦笑いを浮かべるだけである。

 

 「なんか、今回の新しい従業員さんは随分と毛色が違うねぇ」

 

 そう言って茶化すのはカウンター席に座った常連客の阿部刑事だ。一応常連客達には『店長の古い知り合いのロボットサークルから縁を辿って流れてきた物で、好き勝手に作ったは良いが置く場所が無く、渋々手放したのが翡翠。思いのほか高性能だからこのまま店で使ってみるか』という、少々、いや、かなり強引な設定で通している。まぁ、日本の裏事情を知らない一般人位なら、多少疑わしくとも自身の生活に深く干渉しなければ最終的には‘そういうもんか’と納得するものだ。刑事は判らんが。

 

 「最近の技術って凄いっすねぇ……」

 

 そう言ってキラキラとした童心に帰った目で翡翠を追っていたのは阿倍の同伴、三谷だった。男子の心を擽るシャープでスマートな造形とシルエットに初めて見た時は非常にハイテンション。大きなお友達状態だった。

 

 「そういや、お前さんの世代はこんな感じのが流行りだったもんなぁ………」

 

 

 阿部もカッコいいデザインだ、というところ迄は同意するが、そこまで夢中になれるかねぇ…と、しみじみとジェネレーションギャップを感じつつミカに向き直り、少々込みいった話を振る。

 

 「しかし大丈夫かい?アレ。元はタダだったのは聞いたけど、電気代とか壊れた時大変じゃないか?」

 

 「あー、アレな、ああ見えて、意外と()()()()()で作られているんだよ。それに、壊れた時は()()()()()へ修理に出すさ」

 

 当然真っ赤な嘘だ。

 もし翡翠が壊れた場合、『バラして研究したい』と思っている連中は山ほど居る。その時はネジの一本すら残さず回収されて分解されるだろうし、そもそも現代科学を大きく上回るオーバーテクノロジーの塊を修理出来る者なぞそれこそ製作者(アンノウン)位だろう。無論、そんな事は話せない為、ミカは適当に流して翡翠を見ていた。しかし、視ているのはその裏側にいるであろう()()。一応、本部での調査報告では‘AIで動いている’と結論付けられているが、ここまで意味不明な性能だとどうとでも出来そうに思え、余り信用できない。

 

(何故千束に近付いたのか?害意の様なモノは今のところ見受けられないが、だからこそ疑問が尽きん。千束がアランチルドレンだからか?もしそうなら、()()()───)

 

 思考を回し、その奥に要るであろうモノを視ようと探る。だが、映るのは何者も見えない霞がかった背景だけ。ならばやはりと、自分の知っている知識から見えない()()を創ろうとした時、店の端から大きな声が聞こえ、意識が引き戻される。

 見れば小さな男の子が何かしらの不満を訴え泣いていた。実を言うとここ最近、親子客がこの店に良く来るようになっていて、その理由は翡翠にある。民間用品で出回っている物と違い、フィクションで見るような鋭角で力強い姿は画面写りが良く、非常に映えており、SNS等で細やかながらもバズっていたのだ。そしてそこから物珍しさとそれを見た子供にせがまれてやって来た保護者達。と、いった流れで客足が増えているのだが、たまに『僕の知ってるヤツじゃない!』と子供にありがちな理由で泣いて抗議されるのもしばしば。幸い、現在店にいる人間はその程度の事で目くじらを立てる様な者はいないが、当の子供の母親は周りを気にして非常に申し訳無さそうにしており、必死に宥めようと苦心していた。そうこうしていると、逆に見ていられなくなったカウンター席の一団から動く者が現れる。

 

 「………うしっ、ここらで刑事っぽい(カッコいい)所見せましょう!」

 

 ニヒルな笑みでそう言いながら、席を立った阿部は子供に近づいていく。ポケットをまさぐりつつ子供に目線を合わせるように膝を突いて、怖がらせないよう優しく語りかける。

 

 

 「どうしたんだい、僕?甘いの食べて機嫌直しな」

 

 「…いらない」

 

 

 ポケットから出した黒飴をほぼノータイムで突き返され、笑顔のまま固まる阿部と、顔面を青くした母親。それを後ろから見ていた一部の者(三谷も含む)は、顔を覆いプルプルと震えていた。

 子供からすればさっきこの店でより美味しいものを食べていたし、何より、肝心のロボットが自分の好きな番組のモノじゃなくて抗議していたのだ。本来なら観れたはずの楽しみにしていてたヒーローショーを、色々な事情が重なって見れなくなったが為に埋め合わせとして此処に連れられていたのだが、どうやらそれは黒飴一つで埋まるほど浅くなかったらしい。

 必死に謝ってくる母親を逆に宥めながら、敗戦兵さながらに戻ってきた阿部。後で面倒な書類仕事を三谷に押し付けようと心に固く誓いながら座り直す。その姿は、行きと違ってとてもカッコ悪かった。

 

 「………なら、次は私が!」

 

 そう言って静かに声を挙げながらも確かな意思で選手(たきな)が交代。子供に近づいて目線を合わせる所までは一緒だが、大柄な阿部とは違い、たきなは可憐な少女。それだけで子供に圧迫感を与えずに接触出来るという優位性を、阿部はなんとも言えない悔しさと不条理さを感じながら戦局を窺う。

 すると、徐に手で顔を隠していたたきなが、ぱっ、と顔を覗かせるように手を開いて言いはなつ。

 

 

 「にらめっこしましょ、 あっぷっぷ!」

 

 

 ………ソコには真顔で子供と、見つめ合うたきなが居た。

 なんとなくやろうとしたことが分かったのはミカ、クルミ、千束のみで、ソレ以外の人間は彼女と同じ様に真顔になる。その空気は、完全に滑った芸人のソレであった。恐らく、下手に変顔をするよりも真顔の方が受ける、という話を何処かで聞き、ソレを実践したのだろう。が、そういうものは時と場合を選ばなければいけないし、脈絡が無さすぎて理解不能だ。現に子供はキョトンとした顔をして首を傾げており、逆に母親は先程の一部の者達のように顔を手で隠しプルプルと震えていた。

 そしてそれと反比例して時間経過でたきなの顔が赤くなっていき、蚊の鳴くような声で「失礼しました。」と、そそくさと退却。

 それをドンマイと千束が肩を叩く光景を見ながら、失敗しても絵になる美少女はやはりズルいな、と世の真理の一つを阿部は学んだ。

 

 

 「………店長・ミカに要望。これより当機に30分の自由時間を要求する」

 

 そんな中、いつの間にか戻ってきた翡翠から意外なモノを望まれる。今まで黙々と仕事をこなしていただけに想定外の要求物だったが、何をするのか気になったのも確か、要求通り了承すると、先程の敗戦兵達(阿部&たきな)のように例の子供の前まで移動。ミカを遥かに越す全高に、人間とは違う重圧感は中々にクルものがあり、その威圧感ともとれるソレを前にした親子は若干の恐怖を感じる。

 

 「報告、当機は『ギャラクシーレンジャーズ』でも無ければ『コズミックエンペラー』でも無い………」

 

 そう言いながら、深く座って目線を落とす。抑揚の無いマシンボイスは冷たく淡々としており、言葉の内容によっては怒っているようにも聞こえる声色に、母親の顔に再び陰が落ちそうになる。が───

 

 「しかし、貴官となら、『マーベラス・ドッキング』が可能である。

  故に()()()()()()()()()()()()()()は速やかに搭乗されたし

 

 言うや否や、自身の両腕を前に交互の高さ違いで配置する。すると、やや子供ぽいっながらもヒロイックな音楽が翡翠から流れ始めた。それに合わせて各部のセンサーらしき所もカラフルにピコピコと色を変え、トドメとばかり、これまたアニメなどで聞きそうな効果音を流しながら、首を可能な限り前方へスライド。その光景が進む度に子供の顔色は嬉色に変わっていった。もはや彼にはそれがコクピットと階段にしか見えなかったのだろう。母親が止める間もなく翡翠の手足を階段代わりにし、嬉々として乗り込む。翡翠の首の後ろに腰を下ろし、頭部のブレードアンテナをハンドルのように握った。そして翡翠は片方の手で、優しく後ろから子供の背中を支え、静かに立ち上がる。

 

 「合体っ! 発進だーーっ!!」

 

 「了解(ラジャー)

 

 その間も子供の好きそうな番組の主題歌や効果音、BGMを流し、()()()()()の指示通りに店内を練り歩く。それを見て察した千束が彼等の前に立ち塞がり、悪の名乗りを挙げる。

 

 「ワーッハッハッハッ!ここから先を通りたくば、私を倒してからにするがいい!!」

 

 「出たな、秘密結社ダークネスプルート!お前たちの好きにはさせない、攻撃だ!!」

 

 「了解(ラジャー)

 

 そんな即興ヒーローショーを見ていた面々は───

 

 

 

 

 「最近の技術って凄いっすねぇ…………」

 

 と謎の技術の無駄遣いに素直な感嘆を漏らし、

 

 

 

 「……なぁ、アレって本当に中に人が入って無いんだよな?」

 

 「俺も今、本気で疑っている…………」

 

 世の中の不条理を垣間見た者や、

 

 

 

 「そっ、そんな……ロボットに負けた……!?」

 

 敗北に打ちひしがれる者や、

 

 

 

 「………だから属性盛りすぎだろ…………」

 

 「………オーバーテクノロジーの無駄遣いもいい所だな」

 

 真っ当な意見と反応をしている者達が居た。

 

 

 その後、母親は平謝りとお礼をして、子供は満面の笑みで手を振りながら一緒に帰って行った。

 

 今日も喫茶リコリコは平和である。

 

 

 

 

 

 




※その時のデュナメスの中の人の声

 「ガッハッハッハッ!!
  これがガンダム!悪魔の力よ!!」
  たきなを見ながら言った模様。

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