俺 自身がガンダムになることだ   作:解毒剤からビームサーベル

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 いつもブクマ、評価、誤字・脱字報告、感想ありがとうございます!

 ただ、非常に言いにくいのですが、出来れば予想コメなどは、お控えして頂けるとありがたいです。

 返信に難しいので(汗)………。

 それでは見苦しい投稿者からのコメント失礼しました。





大人に反省を促すダンス 前編

 

 

 

 

 

 

──────×月××日、喫茶リコリコにて─────

 

 「あれ?今日は()()()()()()お休みなの?」

 

 入店してすぐにそんな声を掛けてきたのは常連客の一人で、店の奥に居てもすぐに見つけれる大型新人(物理)の見当たらない様子に、そんな言葉が出た。

 翡翠の出勤当初のインパクトは凄まじく、厳ついビジュアルと見た目を裏切る実務能力の高さで、あっという間に喫茶リコリコに馴染んだ家政婦ロボット(そういう設定、というか自然とそう思われた)は、非常に目立つ。今日もそんな場所で憩いの時間(ネームも描きに来たとも言う)を過ごそうとやって来た伊藤は、近くに通りかかった千束を引き留めた。

 

 「あぁ~~、今日は()()()()()に出してるんですよ」

 

 「あぁ、なるほど。明らかに手間かかりそうな見た目だもんねぇ」

 

 まぁ、すぐに戻ってくるけどねぇ、と表向きの設定で返しながら喫茶店としての業務に齷齪と戻っていく。翡翠は現在、DA本部に居る。何でも、機材を新調したから再び調査したい、と話が下りて来たそうだ。

 当初は“当機は護衛と支援の使命がある”と抵抗していたが、()()と千束の()()で渋々了承。その後は、送迎時の監視員として来たリコリスに連れられて行った、という顛末だ。

 

 「はぁぁ……気になんのは分かるけど、別に今日じゃなくてもいいでしょうに………」

 

 そう愚痴を漏らしたミズキは、シンクから溢れそうになっている洗い物を必死に処理していた。現在、喫茶リコリコは非常に忙しかった。翡翠の影響も多少は有るが、ソレ抜きにしても偶にある客ラッシュで、店はてんてこ舞いになっていのだ。今までもこういった事はあったのだが、翡翠が来てからは少々事情が違う。人間とは違い、疲労とは無縁のボディは、喫茶店の業務でも遺憾なく発揮し、一切のパフォーマンスを落とさず流れるように処理していく姿は、正しく喫茶リコリコに舞い降りた救世主、否、天使(デュミナス)だった。そんな理由で、非常に楽をさせて貰っていたミズキは、翡翠にとても頼っていた(寄り掛かるとも言う)。

 

 「そう言うな、あんな不思議の塊だ。連中が気にするのも当然だろう」

 

 ミズキの愚痴を、宥める様に声を掛けたのはクルミだ。翡翠自身が興味対象なのも理由に有るが、彼女も翡翠を非常に頼っており(自分は喫茶の業務が苦手な為)、千束の次に翡翠を受け入れている人物でもある。

 

 「ん~……私としてはだからこそ、不安なんだよね~」

 

 その会話に入ってきた千束は率直な感情を述べる。何せ上層部は翡翠を異常に警戒しており、一部の暴走とはいえ、一度は破壊しようした経緯がある以上、又やるのではないのか?という疑惑が、彼女の中では晴れないのだ。その敵愾心にも似た猜疑心は、ある意味真っ当ではあるが、ソレを納得出来るかは別問題である。

 今日まで此方の味方はしても、敵対的な行動はしていないのだからもうちょっと信用してくれても良いのに、と話に付け足す。

 

 「千束はもう少し警戒するべきです。そもそも、勝手に動き回る出所不明の高性能戦闘ロボットなんて普通に怪し過ぎます」

 

 下げて来た食器をシンクに入れながら、横から千束に注意を促すのは たきな だ。彼女の言葉からは余り信用していないのが端から滲み出ており、普段からの対応もやや素っ気ない様子。尤も、なぜ機械相手にムキになって対抗したり、無意識に警戒しているのかは、自分でも気付いてない様子で、モヤモヤとした感情が今も彼女の胸中でゆっくりと渦巻いている。

 

 「まぁ、それはそうなんだけどねぇ……」

 

 「ふっ、心配するだけ無駄だろう。アイツも言っていたぞ?()()()()って」

 

 心配する千束にするのは無駄な行為だとクルミは諭しており、そしてその言葉はそのままの意味で真実だ。現状、本気で翡翠が抵抗した場合、それを止める方法がDAに存在しないのは、翡翠の調査に関わった者には周知の事実である。しかし、だからこそ千束は、上層部が再び強行策に出た場合に翡翠がどんな行動に出るのか?という不安を覚えていた。ちなみにミズキとクルミは、“まぁ、成るようにしかならんだろう”と諦念にも似た認識をしている。そんな事を裏側で駄弁っていれば、苦言を飛ばす者が現れた。

 

 「気になるのは俺もだが、今は店の業務を頼む。

  唯でさえ今は忙しいからな?」

 

 ジト目で千束達を睥睨しながら、ミカは手の止まった従業員達にお叱りを飛ばす。

 

 今日も喫茶リコリコは平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───深夜。多くの者が明日に備えて布団にくるまる頃、夜の住人達の時間がやって来た。

 

 人気が消えた町を行く1人の男は、派手な装いというわけでも無いのにとても目立っており、暗い夜道の中でもまるで飛び出す絵本の仕掛け絵部のように浮いていた。

 普段人でゴッタ返す場所は、人が居ないというだけで途端に別世界に早替り。喧騒や人の熱気とは真反対のカラーでキャンバスを塗りつぶし、唯一違うカラーの雫が落ちたように、無人の町を歩く男の姿は目立ち過ぎた。

 

 そんな男を追跡する小柄な影は、付かず離れずの位置を維持する。

 男を見失わないように、しかしバレないようにと一定の距離を保ちながら今か今かと隙を伺っており、視線は次第に鋭く為っていく。今回の任務はターゲットの確保。“抹殺よりも難易度が高い以上、気張らなければ”と必要以上に力んでいた。ある時は物陰に、ある時は男の死角に入り、男の視界から姿を消すように動く。本来なら都市迷彩効果を発揮する制服も、()()()()()()()()()()()()()()()()では全くの無力。故に、慎重に動く。

 

 不意に男が大きく開けた歩道を渡り始め、自身も行くか少し迷いが出る。流石に遮蔽物もない()()では身を曝すしかないが、相手に不審な様子は見られないし、と少しの逡巡の後、任務続行を判断。

 距離にして3~4メートルと言った所まで接近。相手にうっすらと気配を悟らせたか、と焦燥感が顔を覗かせるが相手の様子が変わら無い結果に少しの安堵を覚え、この任務の後の事に想いを馳せていた。

 これが成功した暁にはセカンドに上がれるかもしれない、本店に移店出来るかも知れない、考えない様にしていた期待がチラリと脳裏に過り、無意識に胸が高鳴る。

 そんなささやかな祈りにも似た憧憬を、“バチが当たったな”とでもいうように悪意が踏みにじった。

 

 

 

 「ーーーッ!?」

 

 突如、強烈な光が視界を塗り潰した、と、そう正しく認識できる前に衝撃が彼女の全身を叩く、口からは空気と声にもならない悲鳴が漏れた。

 一瞬の意識の空白と、その後に来たスローモーションになった世界が、単文的な考えを挟む隙間を作り、自分がどうなったのかを認識させる。視界の端には、恐らく自分をはねたのであろう車が走り抜けていて、自身は宙を舞っているのだろう。そこまで判った後、再び衝撃によって意識の空白が通りすぎる。……攻撃を受けたのだろうとは分かったが、それ以外は彼女には分からなかった。その答えは、電気自動車 特有の静音性による意識外からの不意打ちと、明確な害意の速度で生まれた衝突だ。

 受身も取れず宙を舞い、そのままの硬いコンクリートに叩きつけられた彼女は道路のド真ん中に倒れ伏す。こうなった原因はなんて事はない、相手は初めから分かっていたのだ。彼女が追っていたのはただの誘導役で、それを監視していた者からすればその姿は餌に食いついた獲物だ。どれだけ慎重に動いていても今 ココは絶好の()()()()()()である以上すべて無駄。

 ちゃんとバレないようにしていたのに何故?と、疑問と後悔がダメージによって大半を削られた思考のリソースを埋め尽くす。彼女がもう少し、上からちゃんと情報を貰えていれば結果は変わったかもしれないが、所詮はタラレバの話。今になっては意味がない。

 

 回りからは半死半生になった少女を囲むようにゾロゾロと男達が出てくる。それを眺めながら少女をはねた張本人である、この一団の頭目の男は車に乗ったまま獰猛に笑い、結果の推移を見定める。

 

 「……さぁて、()()()()()()()()()()……ココらでドカンと派手に往こうぜ?───」

 

 出てきた男達は一部の隙も無いように少女を囲み、平然と、或いは遊び半分の様子でその手に火薬と鉄で出来た凶器を構える。その中心にいる少女の状態は思考すら判然とせず、力の入らない体に視線すら動かすのも億劫な様子だ。唯一見える範囲からは“何となく最後なんだな”と思わせる光景が拡がっており、その間際に零れた思考は“家に帰りたい”だった。

 

焦点の合わない目で事態を見つめ────

 

 「─────始まりぃ…始まりぃ──」

 

 ─────少女の視界が光に染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……は?」

 

 …それは誰の声だったのか?……気が付けば男の手にもっていた拳銃が半ばまで融けていた。その男は一番に少女に近付いて発砲しようとしたはずだが、いつの間にか使用不可になった銃を少女に向けたまま唖然としながら見ていた。自身の持つ()()()が、遅ればせながらじんわりと手を焼いて焦げた臭いを鼻で知覚した頃、漸く男は痛みを感じて小さな悲鳴と共に手に持つ()()()()()()()()を放り投げる───

 ──その一連の動作が開幕の合図と成る。

 

 

 

 

 大気を焼く空電音がどこからか聞こえた気がする。

 

 「っ゙!!?あ゙あ゙あ゙っ゙!!??」

 

 悲鳴がした方に全員の視線が集まり、後ろを振り返れば足を押さえ、のたうち回る男がいた。その男の付近の道路には小さくキレイな円を描いて融けた穴が空いており、男の足には少量の血が滲んでいた。()()()()()()()()()()()()()()()が、それが何を意味しているのかは説明されなくても瞬時に理解できた。

 

 「───って、敵───」

 

 その言葉は最後まで続かない。何処からかやって来た無数の光の雨が、その場に集まった男達に次々と無様な()()()を踊らせる。もはやその場は混乱と激痛に喘ぐコンサートホールと化しており、先程迄あった野犬の群れの様な統率力は既に無い。その事態に唯一回答を得れた者は、一団から離れた()()()()()()だけだった。

 

 

 「………レーザー!?」

 

 

 今宵、人の視力では捉えることが出来ない程の上空から───

 

 

 

 「作戦(ミッション)の第三フェーズに移行と当機は判断。

  デュナメス、白兵戦闘へ移行する

 

 

───天使が舞い降りる。───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、ちょっと長めの為時間が掛かります。

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