フシギナセンセイ   作:聖剣エクスカリ棒

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遅くなりました。
これからも暫く、3日おきの投稿は出来ないと思われます。 申し訳ございません。


無力な自分にできること

「ホシノ、右!」

 

先生の声を聞いて、半分無意識で体を捻りつつ地面に伏せる。

私を狙っていた銃弾が体を掠めて地面を抉った。

 

敵は1人。

相手の視線が伏せる私に向くと同時に、構えたショットガンが敵の右足へと火を噴く。

 

バランスを崩して倒れた相手に追加で2発散弾を浴びせると、パタリと動かなくなった。

 

即座に顔を上げると、奥に見えていた数人は背中を向けている。

 

「ヘルメット団、撤退していきます」

 

「追撃する?」

 

「いや、必要無いよ。 倒れてる子達も直に目を覚ますだろうし、装備だけ奪っておこう」

 

苦々しげに立ち去っていくカタカタヘルメット団の残党。

不意をついての襲撃は成功したと言っていいだろう。

 

倒れているヘルメット団から銃火器や防具を回収し、離れたところに投げ捨てる。

 

「これで終わりかな」

 

「はい。 周囲に敵影は見えません」

 

通信機越しのアヤネちゃんの返答。 それを聞いて、タブレットを仕舞った先生が大きく伸びをする。 首から下げられた古いネックストラップが揺れた。

 

かなり疲れた様子だけど、無理もない。

今日は朝から戦闘で、それが終わればシロコちゃんの背中で揺られて数十分。 そしてすぐに戦闘だ。

私たちならともかく、キヴォトスの外から来た先生には負担だろう。

 

常に浮かんでいる隈も、今はより濃く見える。

 

「ホシノ、相談があるんだけど」

 

「どうしたの? 先生」

 

「建物は燃やす? コンクリート製だけど、念を入れておくなら燃やした方がいいと思う」

 

「……あ〜」

 

先生って、意外とそういう発想が出るんだね。 そう口から出かけて、飲み込む。

 

拠点として使われていた以上、中には物資の類もあるはずで、それらを燃やすのが効果的なのは理解出来る。

そして、それを相談しに来たのは、私がアビドスを大切にしていると知っているからだろう。

 

だけど、私を気遣えるような先生から、平然と建物に火を放つ発想が出るのは、何かが噛み合わない不自然さがあった。

 

「やめとこっか。 他に燃え移ったら大変だし」

 

「そっか。 それじゃ、帰る前にトラップを仕掛けて、扉や窓も念入りに塞いでおこう。 ヘルメット団はまた戻ってこようとするはずだから」

 

「確かに、またここを使われると面倒だもんねぇ」

 

先生の指示に従って、全員で作業を分担。

私はセリカちゃんと一緒に、ここにある全ての施設の封鎖だ。

 

扉の前には大きめの家具を幾つも置いて、窓は瓦礫や板で念入りに塞ぐ。

トラップに関しても、残された潤沢な資材を使えばそれなりのものが完成した。

 

額から落ちる汗を拭いながら、セリカちゃんと2人で建物の影に腰を下ろす。

 

「セリカちゃんは先生のこと、どう思ってる?」

 

「いきなりどうしたの? もしかしてホシノ先輩、何かされた!?」

 

「あはは、違う違う。 ちょっと気になっただけ」

 

今のところ毎日、休む間もなくアビドスの手伝いをしている先生。

そんな先生の事を皆がどう見ているのか、気になる所はある。

 

……それに、この前のアレ(運搬の時の不調)も気になるし。

 

じっと顔を眺めていると、頬を赤くしたセリカちゃんは視線をずらしながら控えめな声で答える。

 

「……悪いやつじゃ無いとは思う。 真剣に私たちのこと考えてるのは、この数日でわかったから」

 

「うへ、やっぱりそう見えるよね〜」

 

簡素な焚き火のそばで、奪ってきたであろうリュックに何かを詰めている先生。

すぐ近くに物の山が出来ているところから考えて、残された物資を処理しているのだと思う。

 

「帰ったら、借金のこと、先生に話そうと思うんだ」

 

私の言葉を聞いて、セリカちゃんが目を見開く。

パクパクと口が開閉し、私と先生を視線が往復する。

 

「ホシノ先輩、本気なの?」

 

「本気だよ。 先生ならきっと、最後までアビドスのこと助けてくれる」

 

そう言って、思わず笑いそうになった。

自分だって信じきれていないのにどの口が言うのだろう。

 

「今まで誰も助けてくれなかったのに、今更大人に頼るの!? そりゃ、先生は良い人かもしれないけど……っ」

 

「気持ちも分かるけどさ、たまには誰かを信じてみるのも悪くないかもよ?」

 

優しく語りかけると、セリカちゃんは下を向いて黙り込む。

セリカちゃんがいつも通りなら、納得できない時は全力で拒否の姿勢を示すだろう。 それが無いという事が、セリカちゃんが先生を相応に信頼している証拠だ。

 

先生が来てから、状況は着実に変わり始めている。

 

 

 

★★★

 

 

 

屋上に寝そべり夜空を眺める。

アビドスは街の明かりの少ない事もあり、広がる星々が綺麗に見える。

 

『推理通りではあったが、まさか9億とは。 間違いなく細工はあるだろうが、途方も無い』

 

「俺の貯金全部でも大して力になれないよね。 話してくれた以上は力になりたいんだけどなぁ」

 

『こうなりゃパーッと略奪でもしたらどうだ? 相手のカイザーっつー会社はデケェんだろ?』

 

『悪くない。 君が望むならば、完全犯罪の計画を立てて見せるとも』

 

「そういうのは極力無し。 責任ある立場だし、リスクは冒したくない」

 

カタカタヘルメット団の基地からアビドスに帰ってきた後、対策委員会に呼ばれた俺は、アビドスの現状を明かされた。

 

生徒が少ない事や、自治区に対して校舎が小さい事。 それは学校が負った9億を超える膨大な借金が原因で。

残った5人は、無謀なレベルの借金を返済しようと奮闘している。

 

自分達の居場所を守る為に。

 

『こうなっては、今のアビドスに何が残っているかも怪しい。 彼女達が知らないだけで、色々と売られている可能性も高いだろう』

 

「……その辺も調べなきゃね」

 

現状、みんなを助けるために何が出来るかも分からない。

シャーレの権限でも借金を無くすのは不可能だし、返済するだけのお金も用意できない。

俺はもう、戦うことでしか役に立てない。

夜風の中でただ星を見上げていると、階段を登る足音が聞こえ始めた。

視線を向けた先で、金属製の扉が開く。

 

「ここに居たんですね、先生。 お帰りにならないんですか?」

 

亜麻色の髪が風に揺れる。

扉の奥から姿を現したのは、部屋着のようなラフな姿へと装いを変えたノノミだった。

 

「ちょっと考え事してて。 ノノミは帰らないの?」

 

「ローテーションで、いつも1人は当直することになってるんです。 ほら、夜中にヘルメット団が来ないとも限らないので」

 

「言われてみれば、そっか」

 

元々ヘルメット団はいつ来るか分からなかったし、今だって警戒はしておいて損は無い。

 

立ち上がってズボンに付いた砂を払う。

 

「俺も帰るよ。 何かあったら連絡して、すぐに駆けつけるから」

 

「ありがとうございます。 それでは、また明日☆」

 

「うん、また明日」

 

室内灯で照らされた階段を降り、荷物を持って校舎を後にする。

俺が校門を出るまで、ノノミは教室の窓から手を振ってくれていた。

 

砂に塗れたコンクリートの上でキャリーバッグを引く。

 

ゴツゴツした地面はキャリーバッグを進めづらく、たまにガタンと揺れて金属音を鳴らした。

 

「ホテル暮しも何とかしないと、お代が馬鹿にならないな。 貯金はアビドスの返済に使うかもだし」

 

『その問題、マスターが私に住めば解決では……?』

 

「悪くないけど、俺じゃ魔力がね」

 

『でしたら砂漠に城を建てましょう。 なに、魔力はこちらで負担します』

 

『ほう、となれば余も神殿を建てねばなるまい。 砂漠に城があってピラミッドが無いのでは話にならんからな。

この砂漠にもファラオの威光を示してやろう!』

 

「全部だめ!」

 

自分で魔力を生み出せる組は、微かな魔力供給でも動けるので制御に困る。 今は俺を尊重してくれているけど、いざと言う時には止める手段がないのだ。

 

本来の令呪はサーヴァントに命令できるらしいけれど、カルデアの令呪は基本魔力供給の役割しか無い。

 

人気の無い住宅街を抜け、人工の光が照らす市街地へと入り込む。

 

ここでも人通りはとても少なく、改めてアビドスの状態の悪さが見て取れる。

 

『マスター、なにかヤバそうだ』

 

「……え?」

 

『ここから西の方角、戦車が動いてるのが見えた。 距離はざっと5キロ程の場所、砂漠に向かってる。 このへんを戦車が通るのは異常だろ?』

 

「だね」

 

スマホで対策委員会のグループ画面を開き、グループ通話を開始する。

 

「アーラシュ、そのまま見てて」

 

『了解。 狙撃は?』

 

「向こうの目的が分からないからナシ。 大元を叩きたい」

 

今出せる最後速度で西へと進む。

通話を始めて間もなく、画面から一つのホログラムが投影された。

 

『どしたの、先生? こんな時間に』

 

「市街地で、砂漠に向かう戦車を見かけたんだ。 なにか起きてるかも」

 

『うへ〜、なるほどね〜。 グループにもメッセージ打っとく。 どこで落ち合う?』

 

「土地勘があるホシノに任せる。 位置情報送って」

 

『りょうかーい』

 

震えて通知を知らせるスマホ。

簡潔な状況説明のメッセージと添付された位置情報が、モモトークのグループに貼られている。

 

『ごめん、気付くのが遅くなった。 今すぐ向かう』

 

『私もすぐに向かいます!』

 

『でしたら私は学校に向かいます。 学校に着き次第ドローンも動かします!』

 

数分も立たぬ間に、続々とグループに集まるアビドスのメンバー。

だが、1人だけ一向に通話に出る気配が無い生徒が居た。

 

『セリカちゃんに何かあったと考えていいかもね。 DMしたけど返事が無い』

 

『もしかして、誘拐でしょうか……』

 

黒見セリカ。

猫耳が特徴的な1年生の少女と連絡が取れない。

 

単に入浴していたり寝ていたりすれば良いのだが、最悪の可能性も浮かびつつある。

 

「戦車なんて使ってる以上、何かしらの目的はあるはずだ。 注意しよう」

 

疲弊した体に鞭を打ち、先を急いだ。




今回の√分岐
・相変わらず前線に出るとお説教イベント
・サーヴァントと話しすぎると当直の生徒に会話を聞かれる。 聞かれた内容と後の選択によっては道場行き
・ホシノ以外の最初に出会った生徒が当直になる。 ホシノの場合はランダム
・戦車を見かけた時、急ぎすぎると原作ルート。 場合によっては道場行き
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