おとうとはセカイのバグ   作:カタカタタカタ

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誤字報告ありがとうございます。
助かります。

短い。でも、これが書きたかった


EX7.だから、ドーピングはダメなんだって、あれほど(言ってない)/救われない運命2

 

「四分の一の効果、ねぇ……」

 

 

ミドガル王国王都の夜。

 

とあるホテルの一室。

 

 

「不自然ここに(きわ)まれり。――これまで(かたく)なに安全策を打ってきた教団が、安定して覚醒者を生み出せる手法を放置するなんて」

 

 

少年が腰掛ける椅子は窓際に置かれ、月光が差しこむ。

 

 

ベッドの上には少しまえまで生きていた、何かの残骸。

 

 

「不老不死を手に入れた私たちは、魔人の力を求めて来た。ならば、魔人の力が得られたならば、その次に求めるのは――さらなる力だ」

 

 

少年は椅子から立ち上がる。

 

 

「普通の人間より悪魔憑き、悪魔憑きより同じ鬼。食えば食うほど、鬼は強くなる。――ラウンズの中に、鬼になったやつが何人いるのだか」

 

 

部屋の惨状(さんじょう)(かえり)みることなく、退室する。

 

 

「決別のときは近い、か」

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

人間、特に貴人の治療を行うために、運営されている施設(しせつ)

 

 

庭に()わった樹木のまえに、車いすに(すわ)る男が一人。

 

 

男の包帯が巻かれた両腕の先は、不自然に短い。

 

男の右脚があるべき場所には、ズボンの布がひらひらと揺れるのみ。

 

首も頭も包帯まみれで、わずかにのぞく肌の色は悪い。

 

 

樹木を見上げる男の目は(うつ)ろ。

 

 

男は死にかけだった。

 

身体も、心も。

奇跡的に生きているだけで、いまにも死にそうだった。

 

 

男の名はオルバ。

 

 

ある日、妻を失い、

 

ある日、娘を失い、

 

ある日、未来を失った、

 

このミドガル王国の貴族である。

 

 

 

「あ……」

 

半開きの口から声が漏れる。

 

 

ぼーっとしているとふいに思い出す、()()()()に打ちひしがれているのだ。

 

突然、化けものになり、暴走し、自分を負かして血肉を()らい――()()()()()()()()()()娘の最期(さいご)を。

 

 

虚ろな目から涙がこぼれた。

 

流れた涙はすぐに包帯に吸われ、姿を消す。

 

 

 

そんなオルバに近付く者がいた。

 

 

「――どうやら、私は長く生き過ぎたらしい。そのせいで、遺伝子が劣化(れっか)していたんだ」

 

 

オルバに近付く少年が喋り始めるが、オルバは反応しない。

 

 

風に揺れる樹木のほうが大事とばかりに、目を向けさえしない。

 

 

「鬼になってから、太陽の下に出られなくなってしまった。(ただ)でさえ鬼になれば遺伝子が劣化するのに、それをもとから劣化した遺伝子で鬼になったものだから、さもありなん」

 

 

オルバの無反応を少年は気にしない。

 

独白するがごとく、語り続ける。

 

 

「だが、希望はある。血にね、記憶が宿るんだ、鬼になると。――(しか)るべき()(しろ)があれば、生まれ変われる」

 

 

少年の腕が形を変える。

 

(にご)った血の色の、剣の形を取った。

 

 

そこでようやく、オルバはピクリと少年に目を()った。

 

 

「ただの依り代ではダメだ。私の存在が大きすぎて、食らい()くしてしまう。――最高の依り代が必要だ」

 

 

ついにオルバにたどり着いた少年に、オルバは反射的に構える。

 

 

しかし、オルバが構えた両腕には剣はなく、手もなく、魔力は(かろ)うじて弱い光を放つのみだった。

 

 

少年の剣の形の腕が、オルバの頭を正面から向こう側へ(つらぬ)く。

 

 

「さて、お前は、与えられるこの血の量に耐えられるかな?」

 

「もう、どうでもいい、すべて、が……」

 

 

いざ、殺されてしまえば、オルバは簡単に命を手放せた。

 

生きていてもいいことはない、生きていたいわけではない。

なら、死んでいいではないか。

 

オルバの心には、(あきら)めだけが満ちていた。

 

 

「報告では、お前の娘は大そう丈夫で、鬼になってすぐ術を発現した逸材(いつざい)だったらしい。――()しいことをしたよ。どうせ与えるのなら、私の血にすればよかった」

 

 

「ぁ……ミリ、ア……」

 

 

少年の言葉に、力なく()れていたオルバの腕が持ち上がるが、それもすぐにだらんと落ちた。

 

 

「そうすれば、真祖教のやつらに回収されることも、なかっただろうに。まったく」

 





狛治(はくじ)猗窩座(あかざ))鬼化イベント『お前は、与えられるこの血の量に耐えられるかな?』のパロディ

回収


『ミドガルの悪鬼』鬼化
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