おとうとはセカイのバグ   作:カタカタタカタ

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連投。

本日二話目です、ご注意ください。



EX9.いいぞ! もっと治安悪くなれ/救われる運命2

 

鬼は、もともとひとだった。

 

つまり、なんか色々あって、ひとが突然変異を起こした存在が、鬼なのだ。

 

――ってことを、クレアが言っていたのを、なんとなく思い出した。

 

鋭く爪を伸ばした金髪エルフの女の子――みたいな見た目をした、鬼を見つけたときに。

 

 

それで僕は考えたわけだ。

 

ひとから鬼になったんだから、鬼からひとに戻すこともできるよね、と。

 

僕が信じる不思議パワー(まりょく)なら、それくらいやってのけるよね、と。

 

 

やることは、研究中の、魔力を使ったなんでも全回復を試すだけなんだけども。

 

 

まぁ、もともと死にたがっていたし、いいだろう。

 

かわいそうだから、最善を尽くすけどね。

 

 

 

で、無事に(たぶん)、金髪エルフの女の子(鬼)を金髪エルフの女の子(人)に戻せた。

 

 

うむ、一件落着だな。

 

 

ちょっと強い鬼とその下僕っぽいやつらに圧倒的実力を見せつけられたし。

金髪エルフの女の子も助けられた(?)し。

 

 

さて、ところで。

 

この子、どうしようか?

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

(うち)を聞いても、「帰れない」。

 

名前を聞いても、「なくなった」。

 

 

目を覚ました金髪エルフの女の子に、さぁ鬼じゃなくなったよ、君は自由だよ、と故郷へ帰そうとしたら(こば)まれた。

 

 

その日の夜は、とりあえずカゲノー領の、とある廃村に作った秘密基地で寝かせた。

 

 

そして、翌日。

まる一日考えた僕は、断固として郷帰(さとがえ)りしないというロックな彼女を、配下役にすることに決めた。

 

 

陰の実力者の配下A。

 

なんか助けてもらった恩を返すとか言っているし、デキる女って感じのオーラがあるし、補佐役にぴったりだろう。

 

 

「覚悟があるなら、受け取るといい。――アルファ。それが君の新しい名前だ」

 

「わかったわ。今日から私は、アルファ」

 

 

ということで、仲間ができた。

 

しかし、ここで満足はしない。

 

 

かねてより考えていた、陰の実力者的設定をここで披露(ひろう)して、アルファを深遠なる陰の世界へ招待するのだ。

 

 

陰の実力者ごっこやりながら、アドリブで設定を考えるのも楽しいんだけどね。

 

やはり、ここは先輩陰の実力者として、温めていた設定を明らかにしなければ。

 

 

「君の仕事は――世界の支配を目論(もくろ)む、新たなる魔人を滅ぼすことだ」

 

「新たなる魔人……?」

 

 

「君にはわかるだろう? 鬼のことだよ」

 

「?!」

 

 

「突然、そんなことを言われても、わからないだろう。まずは始まりから話さなければならない――」

 

 

「――始まりは遥か昔。

 

魔人――魔人ディアボロスの力を、我がものにしようとした人間たちが行った、実験だった。

 

彼らは、魔人ディアボロスの肉体を研究し、

魔人の力を自分たちのものにしようとする過程で、

多くの人々を()(にえ)にしながら、

たくさんの実験を行った。

 

 

そうした研究と実験の果てに生み出された実験体――それが、鬼と英雄だ。

 

 

実験体の中でより深い魔を持つ者を鬼と呼んだ、そして、より人に近い者を英雄と呼んだ。

 

 

そう、この二者はもともとどちらも、魔人ディアボロスの力を宿して作られた、実験体。

 

だから、鬼は英雄に、英雄は鬼になれる、素質があったのだ。

 

 

アルファが鬼になったのも、きっとそのせいだろう。

 

条件さえ満たせば、英雄の子孫は鬼になることができる。

 

 

あるいは、この二者はこうも呼ばれる。

 

鬼はヴァンパイアやグール、英雄は悪魔憑き、とね。

 

鬼の血に耐えられなければ人はグールになり、英雄の血に耐えられなければ人は悪魔憑きになるんだ。

 

 

これがこの世界の真実さ」

 

 

「鬼……英雄……。ヴァンパイアと悪魔憑きにそんな歴史が……」

 

 

僕の長々とした説明を律儀(りちぎ)に聞いてくれていた、アルファ。

目から鱗が落ちた、というような顔をしている。

 

 

うん、いい子だね。

 

正直、こんな長い設定いきなり話されたら、僕なら逃げる。もしくは、寝る。

 

アルファにはそんな様子はないし、まじで頭いいんだな。

 

 

年齢はいまの僕と同じ10歳って言っていたから、絶対故郷で神童とかって呼ばれていたタイプだね。

 

 

これなら、陰の真実第二章に進んでも問題なさそうだ。

 

といっても、一章ほど長くないんだけど。

 

 

「歴史じゃあ、ないんだ」

 

「え?」

 

「いま語った世界の真実は、歴史じゃないんだよ、アルファ」

 

「歴史じゃない? お伽話(とぎばなし)ってこと?」

 

「違う」

 

陰の実力者的設定だ。

 

口には出さないけど。

 

 

「おかしいとは思わないかい?

――彼らは、魔人の力を我がものにするための実験をしていたんだ。

――まがりなりにも、その魔人の力を体現させることに成功した実験体を、野放(のばな)しにするなんて」

 

「?!」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「?!!」

 

 

「彼らは実験体を野に放ち、鬼は鬼なりに、英雄は英雄なりに。力を付け、数を増やし、どのような変化を起こすのか、ずっと観察をしている。――この世界という箱庭(はこにわ)の中で」

 

 

「?!! まさか……そんなこと……どれほどの権力や組織力があれば……ハッ! 

――英雄の子孫……悪魔憑き……。まさか……でも、それなら大陸中を観察できる……!」

 

 

アルファは僕の話を聞いて、ハッとして、何かに気が付いた様子を見せる。

 

 

どうやら、いい刺激になったようだ。

 

自分の中でどんどん陰の実力者的設定が構築されていく、得も言われぬ感覚に身を(ふる)わせている。

 

 

「さっき、僕は鬼のことを、新たなる魔人と呼んだ。けど、それは正確ではないんだ。鬼は未完成だったんだ、彼らにとっては、魔人として」

 

 

馬鹿だもんね、鬼って、基本的に。

 

まともに会話ができそうな鬼に会ったのは、アルファとアルファと戦っていた鬼が初めてだ。

 

 

「だから、実験を続けている。魔人の力を、真に我がものにするために。

そして、彼らが本当の意味で魔人の力を手に入れたとき。そのあとに待ち受けるのは――」

 

「新たなる魔人による世界の支配?」

 

 

「そう。彼らはもう、あと一歩のところまで来てしまっている。

だから、新たなる魔人――鬼の誕生の阻止(そし)、そして、誕生してしまった鬼の討滅(とうめつ)

――アルファ、君にはそれの協力をしてほしい。できるかい?」

 

「あなたがそれを望むなら」

 

 

よし、これで、エンカウントした鬼を倒すときのモチベーションはMAXだ。

 

 

「彼らは、ディアボロス教団。魔人ディアボロスの力を我がものにして、いずれ魔人による世界の支配を目指す者」

 

「ディアボロス教団……。それが聖教の裏に潜む闇……」

 

ん? アルファのセリフの後半部分が小声すぎて、聞き逃した。

 

 

まぁいいや。

 

 

「野良の鬼は目くらまし、もしくは、(おとり)首魁(しゅかい)は表舞台には決して出て来ない。だから、僕らも陰に潜むんだ。

――我らはシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者」

 

「シャドウガーデン。いい名ね」

 

 

そうだろう。

 

前世から、熟考(じゅっこう)に熟考を重ねて来た名前だからね。

 

前世の僕と今世の僕、実質僕二人分の知恵が詰まった、パーフェクトなネーミングだ。

 

 





ということで、シドくんは無事にアルファを拾いました。

ちなみに、鬼からちゃんと人(エルフ)に戻ったし、奇跡的に後遺症はなし。

やったね。
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