そして女神様から貰ったチート能力で異世界生活!
……と思いきや、謎の女から「どんな世界に転生するか、貴方たちには選べません」と言われ…?
ある日、通学途中だった俺はトラックにはねられた………
「うっ……いってぇ……あれ?ここはいったい……」
目を覚ますと俺は冷たい床の上でうつ伏せになっていた。
「これは……大理石の床?俺は横断歩道を渡ってる途中でトラックにはねられたハズなのに………」
俺は立ち上がって周囲を見渡す。頭上から差す光が俺とその周囲の大理石の床だけを照らしており、それ以外は闇に包まれている。
光源装置はどこにも見当たらない。人工の光というよりは天高くから差す自然の光のようだった。
「おーい!誰か!誰か居ないのか!?」
闇に向かって呼びかけるが返事はない。非現実的な状況に不安が募る。
「誰か返事をしてくれよ!誰か!」
何度呼びかけても、物音一つ返ってこない。
恐怖に吐き出しそうになっていた時、ふとブレザーの内ポケットにスマホを入れていたことを思い出した。
すぐさまスマホを取り出す。スマホは幸いにも壊れていなかったので、照明機能をONにし、周囲を照らしてみた。
しかし周囲を照らしても、無機質な大理石の床が続いているばかりだ。
それでもこの状況を知る手がかりを少しでも掴もうと必死に周囲を照らしていると、大きな黒い物体が床に落ちているのを見つけた。
その物体を照らしてよく見てみる。
それには肌色の手が生えており、頭からは頭髪が伸びている。上半身には金色のボタンが付いた黒い学ランを羽織っており、下半身も黒いズボンで覆われている。
その物体が床に倒れている人間だと気づいた。
「…………!! あんた、大丈夫か!?」
倒れている人間に近づき、肩を揺すってみるが反応は無い。
俺と同じ年の高校生だろうか。小太りでメガネを掛けた男だった。
もう一度肩を揺すってみる。
「おい!起きろ!大丈夫か!?」
「うーん……… あれ?僕はたしか海で溺れて………」
その男はようやく反応を示し、体を床から起こした。
「あんた!怪我とかは無いか?」
「怪我…?あなたは一体………というか、ここ何処ですか……?」
「ここが何処なのかは俺も分からない。気づいた時には床に倒れていて───
その瞬間、空気を震わせるほど大きな声が響き渡る。
「皆さまああアアアアア!!!紳士も淑女もお集まりいただき、誠に嬉しゅうございましてよ!!!」
不愉快なほど明るくて甲高い女の声。
「なっ…!?誰だ!?」
「ひい!?デスゲーム開始の合図!?!?」
天から一筋の光が差し込み、暗闇の中から声の主を照らし出した。
線の細い女が立っていた。
右手に握られたレース編みの扇子、ベルサイユ宮殿の王女のような豪華なドレス、バネのように巻かれた金髪………まるで絵に描いたお嬢様だ。
困惑する俺たちをチラリと見てから、女はまた言葉を発した。
「言っときますがデスゲームでは無くってよ〜!今から始まるのは………"オークション"ッッ!!!」
「オークションだと……?」
突然、全ての闇が光でかき消される。
俺の開いた瞳孔に大量の光が入り込んで、目が眩んでしまう。
数秒経ち、目が慣れてくる。俺の目にハッキリと捉えられた光景に、愕然の感情を隠すことができなかった。
どこまでも続く大理石の床以外、何もなかったからだ。
壁も柱も天井も………何もない。
ただクリーム色の明るい空が、床以外の空間を占めていた。
「なっ………なんだここはアアアアア!?」
「なにこれ!?僕たち何処に連れ去られの!?」
「元気が宜しくて宜しいこと〜。混乱あそばせる貴方たちに、ワタクシが状況を説明してさしあげますわ〜!」
「コホン、え〜貴方たちは不運な事故によってご臨終なさいました〜!!」
「そちらにいらっしゃいます殿方は通学途中にトラックにはねられて、そちらの殿方は漫画研究部の合宿中に海で溺れて……ご臨終ですわね!」
………は?俺達がご臨終………"死んだ"って?
……この女はイカレてるのか?俺達が死んでるなら、ここに存在するこの肉体は何なんだ?こいつ馬鹿じゃないのか?
「あっ!今ワタクシのこと馬鹿って思いましたわね!?心外ですわ〜!」
えっ?
「しかしながら!それも仕方のないこと…。突然こんなこと言われて、信じるなんて無理でしょうから」
こいつ今、俺の心の声を読んだよな?
「貴方がちゃ〜〜んと死んでいること、今から教えて差し上げますわ」
「おい、何するつもり──」
俺がうろたえた声を出した瞬間だった。
ドスン、という衝撃が背中から突き抜けた。
いったい何が起きたのか。
俺の前に立っていた女が一瞬で消えて、かわりにハイヒールを履いた脚が視界の下から伸びている。
顔を下に向けてみる。
………俺の胸を、女の脚が貫通していた。
「────あっ、あ………ぅぁぁあああアア!!!!」
「ふふっ、瞬間移動で背後から攻撃するくらい朝飯前ですわ〜」
殺されてしまう。俺はこの女に殺されてしまうのだ。
心臓を貫かれた。次は頭か、手足か、それとも内臓の全てを一つ一つ丁寧に握り潰されるか。あるいは全身の骨をバキバキに折られて………
………あれ?そういえば心臓ブチ抜かれてるわりに痛くねえな。何でだ?
「それじゃあ脚抜きますわよ!じっとしておいて下さいまし!」
目にも留まらぬ速さで女が脚を抜くと、俺の胸に開いたはずの風穴はどこにも見当たらなかった。
「あれっ?たしかに貫通してたのに…」
「傷跡が残らないのは、貴方がこの世成らざる存在………"幽霊"である証。これで貴方たちが死んでいることは理解していただけましたか?」
「…………………マジかよ」
多大な困惑がありつつも、この異常な現象を見せつけられて、この女の言うことが本当なのだと信じる他なかった。
「あっ、あの!それで、僕たちに何をさせるつもりなんですか?『オークション』って一体なんなんですか!?」
彼の言葉に、女が答える。
「ああそうそう、その説明がまだでしたわね。簡単に説明いたしますわ」
「貴方たちは現世で悲劇の死を遂げましたが、偉大なる神々の思し召しにより第二の人生を歩むチャンスが与えられました」
「これから貴方たちには"異世界に転生"していただきます。ただし、どんな世界に行くかは貴方たちには選べません」
「そして、どの世界に行くかは神々による『オークション』で決定いたします。
…以上。お分かりいただけましたか?」
………説明は理解したが、受け止めきることができない。
"異世界に転生"?
"どの世界に行くかは『オークション』で決定"?
全てが非現実的すぎる。
困惑した俺達をしり目に、女は言い放つ。
「さあて説明も終わりましたので………。只今より『転生者オークション』を開催いたしますわ!!!」
「え?ちょ………おい!そんな突然………」
俺が言葉を発すると同時に、天空から数百席ものパイプ椅子が落下してきたかと思えば、地面に着いた瞬間ピタリと止まり、キレイな長方形の列席を作った。
「うわ!!!」
「パイプ椅子ぅ!?…あっ!なんか飛んで来ましたよ!!」
椅子が落下してから数秒もしないうちに、遠く地平線から椅子と同じ数の影が飛翔してきた。
ソレらの影は戦闘機のような速度で俺達に接近してきたため、はっきりとした形がすぐに見えた。
ある者は白い翼を生やした天使の姿をしていた。またある者は六本脚の馬が引くチャリオットに乗った老人だった。
人型だけではない。水晶を握った龍、タコの頭とコウモリの翼を持つ怪物、頭の上半分が欠けた青いマネキン、白い髪の毛が生えた饅頭。
ずいぶんとバリエーション豊かだ。
女が俺達に語りかける。
「ご覧の通り神々は多種多様。良い神に買われたら、チート能力を付与されて勝ちまくりヤリまくりのお気楽人生!
逆に酷い神に買われたら、死ぬより辛い目にあって虫ケラのように死んでいくことでしょう。
ですから自己アピールを頑張って、自分の望む世界に行けるよう尽力してくださいませ」
魑魅魍魎のような神々は、列席の近くで急減速するとそれぞれの席に座った。
「皆さまご着席いただけましたわね〜?それでは………」
全観客の視線が俺達に向けられた。
「…今回ご紹介いたします転生者はこの二人!」
「一人目はこの男!トラックにはねられ転生!オーソドックスな性格とステータスでどんな役でもバッチオーライ!高校生の『タナカ ダイキ』ですわ〜!!!」
会場に拍手が響き渡る。
「二人目も男!海で脚つっちゃって溺死!漫画研究部で培ったオタク知識でチートハーレ厶なるか!?高校生の『カツダ ドンタ』ですわ〜!!!」
「あっ、僕ドンタです。宜しくお願いします……」
「まずオークションに掛けられるのは『カツダ ドンタ』君!皆さま、ご準備はよろしいですわね〜!?」
割れんばかりの拍手と歓声が空気を震わせる。
「天下分け目の異世界転生!見るのは地獄か天国か!?アピールしちゃって幸福掴め!!
まずは価格20ソリドゥス金貨から!それでは───
オークション、スタート!!!!!」