シャカール⇆ファイトレ…ファインモーション こんなのね 作:ふぁらんどーる
4んで…♥
間隔あけまくりかつくそ短いけどゆるして
ゆるせ
あと川崎競馬場はゆるすけど
船橋競馬場はゆるさねぇ
三千円返して下さい
仕事やめて旅打ちしてぇなぁ…
高級ホテルのラウンジルーム。
普段の自分とは縁遠い場所。
眼の前に広がる黒檀のテーブルも、備え付けられたシャンデリア風の照明器具も、従業員が身につける統一されたネクタイピンでさえ、その全てが普段見慣れた物よりも格式の高い事が伺える。
現役時代は重賞で良い成績だとこんな雰囲気の場所に通される事も多々あったので動じる事などないんだが…
隣に座る担当は縮こまり完全に上がってしまっている。
「あっすみません…」
外套を預かりに来たウェイトレに開口一番、謝罪の声。
反射的に上げた物なのだろうがかえって、向こうが恐縮してしまっている。
…まぁ、オレの教え子だ。
その内こういった機会にも慣れていくだろう。
「上のラウンジを抑えてあるの?良ければ一緒にどうかしら?」
不意な再開の後、ファインに誘われるがままやってきたVIPルーム。
だが、この場にオレ達二人はどこまでも不釣り合いだった。
「ふふっこういった所は初めてかしら?まだ若いものね。まるで昔の私をみているみたい。」
「オマエは最初から余裕綽々だっただろーがよ。」
「あれ?そうだったかしら?」
王族様が慣れてない訳ないだろうに。
現役最後の有マ記念の前日イベント。
そこで、記者団を前に全く動揺していなかった昔の姿を思い出す。
「それにしても…シャカールの担当さん?」
「はっはいっ…!?」
「貴女、明日の意気込みはどう?」
「…いっ…いっいっちゃくを取らさせていただきたいいと思ぃます?」
ファインの質問に目に見えて動揺する教え子。
普段は万事動じない性格なのだがこの時ばかりは仕方ねぇな。
「初々しいわね本当に…?」
クスリと笑う王女殿下。
「おいおい、あんまりイジメてやらないでくれ。オレもこいつも平凡な一般人なんだからよ。」
「別にイジメてたつもりはないのだけれど…。もと二冠バとそのシャカールの教え子さんならもう一般人ではないのではなくて?」
「あのなぁ…。」
のほほんとした返答に思わず後ろ髪を掻く。
そうだったこいつは…ファインはこういう奴なのだ。
上品だけどマイペースでどんなに気張って会話しても、いつの間にか手綱は向こうに移ってしまう。
どんな相手でも自分のペースに引きずり込む。
そんな食えない奴なんだ。
「こういう所は慣れない?」
「すみません、正直慣れません。」
恐る恐る返答する教え子。
「では、場所をかえましょうか。」
ファインはそう言って満面の笑みで立ち上がった。
「日本に来たら是非とも言ってみたい場所があったの!お二人共、ご一緒してくださる?」
───
とそんなこんなでオレとファインは現在、ハリウッド映画でしか見た事のない様な大きな要人専用者に載せられ、夜の市街地を移動していた。
教え子はこの専用車を見た瞬間。
「私には敷居が高過ぎです!もう無理です!ごめんなさい!シャカールトレーナー!王女殿下!」
と絶叫し自室へ引き返してしまったのだ。
だから今この空間にはあのバ鹿はいない。
黒塗りの大型車の座席は向かい合わせになっていて、オレに相対する形でファインとsp隊長が座っている。
隊長も久し振りに見たが、ファインに比べこちらは時間通りに齢を重ねた印象を受ける。
それ程までに眼前のファインは思い出の中のままだった。
そんな王女サマは鼻歌交じりにご機嫌で、ラーメン専門雑誌を広げている。
行きたかった場所。
そこを問う必要はもうないだろう。
アイルランドにはラーメン屋なんてないのかもしんねぇな。
「それにしても…」
パタンッと唐突に王女は雑誌を閉じる。
「シャカールは私がいなくて寂しかった?」
そう声を上げた。
「…言いたくねぇ。」
思わず声が上擦るオレ。
もうとっくに思春期も反抗期も卒業した筈なのに。
なんだかそれを認めてしまうのがとても恥ずかしかったから。
「あれ?あら?あらあらあら?それってどういう意味かしら?」
そんな反応を見逃さずファインは嬉しそうに微笑む。
「それって私の想像通りの意味かしら?シャカールってツンデレ?さんだものね?その反応だけでもうれしいけれど直接貴女から聞きたいわ!?」
「しつけぇなぁ…。」
「そんなこと言わずに…言ってくれないのかしら?ね?ね?」
「ハイハイ」
「うーん聞こえない?私の耳が遠いの?」
「あーッもう!寂しかったよ!お前がいなくて!」
たまらずそう怒鳴る。
お転婆お姫様。
その、押しの強さは顕在だ。
「ふふっ私もシャカールがいなくて寂しかったよ。」
満面の笑みでそう言われると何とも言えない気持ちになる。
「あっそーかい。」
ぶっきらぼう返答する。
我ながら素直じゃない。
でも、とても…とても嬉しく思えてしまう。
だってつまり、それは…。
「相思相愛ね!私達!」
そういう事なのだから。
「でも、びっくりしたわ。」
一拍置きファインは言葉を続ける。
「何が?」
「だってあの娘、現役の時の私に本当にそっくりなんですもの!」
「…」
その言葉に思わずオレは押し黙った。
「喋り方はそうでもなかったかしら。でも、鹿毛色の髪の毛も見た目もまるで昔の私みたい。貴女がトレーナーをしていると知ってからあの娘のレースを見てみたのだけれど、脚質、フォーム…現役の頃の私にそっくり。勝負服のデザインまで似ていた時はびっくりしちゃった。」
「なにが言いてぇんだ?」
「ねぇ、シャカール?私に似ている娘を選んでスカウトしたの?それとも貴女が私そっくりに走る様に担当の娘へ指導しているのかしら?」
ファインの眼。
全てを見透かした様に鋭い緑がかったその瞳。
「どっち?」
それがまるで俺の身体を貫く様に感じられた。
───どっちもだよ
「オメェのレースを良く見せている。その答えじゃあ不満か?」
本音はとても言えなかった。
「じゃあ…そういう事にしておいてあげます。」
キキッ…
この段になってオレとファインと隊長さんを載せた車がブレーキをかける。
どうやら目的の場所に着いた様だった。
「さぁっ!シャカール!昔みたいにラーメンに付き合って!アイルランドにもあるのだけれどなかなか日本みたいなお店がなくて、ずっと楽しみにしていたの!エスコートして下さる?」
そう言ってオレの前に差し出された手。
この手を取れって事らしい。
「あぁ、喜んでお姫様。」
彼女の手をとろうとしたその瞬間
「うん!くるしゅうない…。ってえ!?」
ひときわ大きな声を出すファイン。
「おっおい…なんだよ?」
「あれっシャカール…その指輪って…?」
社外に出そうと下車した運転手車によりひらかれた扉。
透き間から差し込んだ街灯により、俺の左手の結婚指輪がキラリと反射したらしい。
それがファインの目に止まったのだ。
「その位置…只のアクセサリーじゃないわよね?」
目をまんまるにする第二王女。
「あぁ…そうだけど?」
「シャカール!貴女、結婚していたの!いつの間に!?」
「はっはぁ…!?」
そう言って逆に俺の手を握るファインの手。
彼女の指にもオレと同様、銀の指輪が光っていて…
「おめでとう!シャカール!私の事のように嬉しいわ!」
彼女の満面の笑みは闇夜の街灯にも負けない位まぶしかった。
───なんだよ、式で祝いの言葉くれたのって。
オマエじゃなかったんだな。