女王の女王─2年生編─   作:アスランLS

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【桐葉&有栖のバカップルへの質問コーナー】

Q.6 中学時代で一番思い出に残ってることは何ですか?

桐葉「3年の文化祭で有栖と2人でライブやったことかなー」

有栖「ああ、あれは楽しかったですね。スモークだの火薬だのレーザーライトだの、桐葉はいつにも増してやりたい放題だでしたね」

桐葉「先生方へ許可貰うための説得はほんと苦労したよね。今思うと俺と有栖があそこまで苦労したのってそうそう無いんじゃないかな」

有栖「詭弁と言いくるめをあそこまで駆使したのは、後にも先にもあのときだけでしたね」

 



最初の関門

【side:桐花】

 

「……ねえ翼」

「なんでしょうか桐花さん」

「あいつら団体行動向いてなさ過ぎない?」

「ええと、まあ……そうですね」

 

 第一次キリハ・ショックの影響を受け呆然としている同級生達を何人か追い抜きながら、私達はようやく指定エリアD7へ辿り着いた。タブレットを取り出し確認してみると、到着した順番は7番目だったので残念ながら着順報酬は貰えなかったが、その一方で到着ボーナスが1人1点ずつ加算されており、私達のグループはこれで計4点となっていた。

 ……ここまでは順調だったのだが、到着し手から5分も経たない内に一夏と宝泉君の我儘が炸裂し、2人とも周囲を調べると言い残して我々の静止する声にも耳に貸さずどこかへ行ってしまった。次の指定エリア解放まであと3時間以上、課題が解禁されるのもあと30分以上あるし、体力温存するため不用意にうろつくなど愚策も愚策だと言うのに、あのド腐れエゴイスト共め……。

 

「仕方ない、今ある時間を有効に使わせてもらうか。……バカ兄貴のせいで先行き不安になってるクラスメイト達のメンタルケアしてくるから、翼も好きに行動していいよ」

「……いえ、私は特にすることも無いので桐花さんについていきます。グループを組んだからには離れて行動するのは得策だとは思えませんし」

「真面目だね君は。あの二人にも爪垢を煎じて飲ませてやりたいよ。30リットルくらい」

「死にますよ?」

 

 うーむ、流石にそう簡単に尻尾は出さないか。いや、そもそも現状では行動を起こすつもりがないのかな。

 三者三様で何かしら企んでいるであろう我がグループメンバーの中で、私が一番警戒しているのは実を言うと翼だ。単なる勘だけど一夏や宝泉君に比べて真剣というか自暴自棄というか、どこか鬼気迫るものを感じる。何かとんでもないことをやらかすんじゃないかという危険な気配がプンプンする。

 問題を起こそうとしているなら、私は生徒会副会長取り締まらなければならない。それに普段は敵同士とはいえ今はグループを組んだ仲間である以上、間違った道に進もうというなら止めてやらなきゃね。……たとえ余計なお節介と思われようとも。

 

 

 

 

「ふぇえええん桐花ちゃあああん……」

「おーよしよし怖かったね凪沙。でも私のジャージに鼻水つけようとするのはやめてね。衛生面的に割と洒落になんないから」

「桐花……アンタのお兄さんってほんとに人間?」

「気持ちはわかるよ瑞穂。でも兄貴が人間じゃないと必然的に私も違うってことになるから、私の名誉の為にどうか人間ということにしといて。お願いだから」

「すっげー速くてカッコよかった! アタシもあんなんやりてー! とかっちやり方教えてくれよ!」

「純粋無垢なのは杏奈の美点だけど無茶を言うな無茶を。あんなん真似したら2秒で大怪我するわ。……千颯、3人の手綱はこのグループ唯一の頭脳派である君に任せたよ」

「頭脳派って言っても、私の学力せいぜいB−なんだけど……」 

「君は機転思考力もBあるでしょ。自信を持ちなさいな」

「……その理屈で言うなら桐花さんが入るべきだったんじゃ? 普段仲良し4人組だし、学力も機転志も評価私より上なんだから」

「それについては心底すまないと思ってる」

 

 私がいつも特に仲良くしてる3人は、同じ小グループに所属している。初めは能力に応じて振り分けようと思っていたが、アルティメット内向的こと凪沙が心細さに耐えきれず引くほどグズったので、私を除いた3人に頭脳労働要員として萩原千颯(はぎわらちはや)を加えたグループを組ませた。

 瑞穂はともかく杏奈と凪沙は運動系の課題で結果を出してくれるだろうし、入賞はたぶん無理だろうけどそこそこ上位は狙えそうなバランスのグループだ。

 とはいえ千颯の指摘はもっともなので正直心苦しい。つくづくあんな身勝手ゴリラの口車に乗るんじゃなかったな。

 さて、こんなところかな。うちのクラスの子達は私が諸悪の根源の妹だからかは知らんが、他所のクラスの子達よりかはある程度冷静さを保っていたようでよかった。

 

「すみません桐花さん、顔見知りの先輩がいたので挨拶してきてもよろしいでしょうか?」

「ん? そりゃ勿論構わないけど、誰に?」

「綾小路先輩という方で……」

「ああ、2年Dクラスのあの人か。私も知り合いだからせっかくだしついてくよ」

「桐花さんも、ですか。……どういう経緯で知り合ったのか伺っても?」

「1回目は最初の特別試験。帆波先輩主催の交友会で、鈴音先輩と須藤って先輩のパートナーを探している途中で声をかけられたのがファーストコンタクト。それから鈴音先輩が生徒会に入る際に何故か一緒にいたときが2回目かな」

「なるほど……」

 

 ……改めて思い返すと、鈴音先輩といることが多いなぁ。もう少し私が恋愛脳ならさぞ大盛り上がりしたんだろうけど、正直鈴音先輩って高校生らしい惚れた腫れたとは無縁そうだし多分違うよね。

 それにしても……いや、まだ確定したわけじゃないし今は様子を見よう。

 私と翼が近づくと、綾小路先輩は結構早い段階で気づいてこちらに向き直る。たぶんパーソナルスペース相当広いなこの人。

 

「おはようございます綾小路先輩」

「七瀬に、本条の妹か。……宝泉と天沢はどうしたんだ? こんな序盤からグループ別行動は賢い選択とは思えないが」

「そんなの私達とて重々承知してます。全部あのバカ共の協調性が無さ過ぎるせいです。ええそうですとも」

「周辺を調べてくると言って、それでバラバラに。次の指定エリアが解放される頃には合流するでしょうし、その間私達は同じテーブルらしきグループの確認をしていたんです」

「あとバカ兄貴のやらかしのフォローも少々」

「オレは結構後からスタートしたから目撃しなかったんだが、本条が何をしたかはだいたい想像がつく」

 

 ……そうか、あれを目撃したのは最初のチェックポイントがD7の一年生グループだけなんだ。あんな曲芸移動、実際にこの目で見なきゃ説明されてもいまいちピンとこないだろう。それでも兄貴と同期の2年生ならこれまで散々被害に遭ってきただろうからちゃんと警戒するだろうけど、3年の先輩達はそうもいかない。あれは直接目の当たりにしないとピンと来ないだろう。……私が兄貴なら、勝負所の終盤まではあのトンデモワイヤー移動は温存しておく。おそらくトップ争いに関わってくる南雲先輩に対しての切り札になり得るだろうから。

 

「周囲を見ておきたいんで、オレはそろそろ移動しようと思う」

「はい。先輩もお一人は大変だと思いますのでお気をつけください」

「それじゃあまたご縁があれば」

 

 軽く挨拶を交わして私達は綾小路先輩と別れた。……おかしいな。あの先輩を目にした途端、翼の意識が急に張り詰めた気がしたんだが。ただ私の思い過ごしなのか、それとも私が警戒してることに勘づいて行動を起こせなかったのか……。くそっ、私は兄貴と違ってある程度予想はできても断定はできないんだよなあ。……ああもう面倒くさい、とりあえず今は試験に集中しよう。

 綾小路先輩と別れた後、今後の方針について翼と軽く話し合っている内に午前10時を迎える。タブレットを取り出しチェックすると、島全体で計14か所の課題が設置されたようだ。今いるD7エリアから人数制限を満たすまでに間に合いそうな可能性のある課題は……近い順で『火起こし』、『英語テスト』、『地理テスト』、『握力測定』あたりか。

 

「次の指定エリアが出るまで3時間も猶予がありますし、今のうちに得点を稼いでおきたいところですね」

「そだね。じゃあ『火起こし』行ってみよっか」

「火起こし、ですか? たしかにここから一番近いですが、いち早く火を起こせたグループに5点で2位以下は無報酬ですよ? 3位まで報酬がある英語テストの方が堅実なのでは?」

「自慢じゃないがサバイバル経験はそれなりに豊富でね。バカ兄貴が参加してこない限り、たぶんいち早く火がつけられると自負しているんだ」

「その本条先輩が参加する可能性も十分にあるのでは? 同じテーブルかもしれないわけですし」

「ああそれは大丈夫。きっと兄貴はここにいるから」

 

 私はタブレットに表示された島の地図の一部分……F9エリアを指差す。そのエリアに設置されてる課題は1位報酬10点の雑学クイズで、そのすぐ隣のG9エリアには砲丸投げと100メートル走の課題が設置されている。

 

「兄貴の機動力ならこの3つの課題全て受けられるだろうし、全て1位を獲れば計20点だから狙わない理由が無い」

「えっと、あの……何故本条先輩がF9エリアにいると? たしかに先ほどから見かけませんが、指定エリアは私達と同じD7でしたよね?」

「結構後に到着した私達ですら課題が解禁されるまで結構かかったでしょ? 5分やそこらで着いた兄貴は相当暇だっただろうから、間違いなくこのエリアから出て適当かつ無軌道に動き回った筈だよ」

 

 普通なら今後のことを考えると目的もなく動き回るなど愚策中の愚策だが、あのスタミナクリーチャーに体力温存なんてまったく必要無いからね。ましてやここは大自然環境だし、三日三晩くらいは飲まず食わずで動いてもたぶん問題無いだろう。

 

「でも、それだけではF9にいるとは断定できないのでは?」

「それがわかるんだよ、これまでの経験則で。こういうランダム要素がある勝負事の最中に兄貴が何も考えず無計画に行動すると、決まって最も都合の良い結果に着地するってね」

 

 具体例を挙げると私達が小学生くらいのとき、家族で動物園に行ったときのこと。そこで開催されていたスタンプラリーで私は兄貴と勝負したんだが……そのスタンプラリー、園内にランダムに散らばった1〜10の動物スタンプを番号順に押していかなければいけないルールだったんだが、あの野郎一度も躓くことなくストレートにスタンプを揃えやがったからな。私はまだ2か3くらいまでしか集めてなかったときに自慢しに来られたもんだから、悔しがることもできなかったよ畜生め。

 

「とにかく善は急げだよ。グズグズしてたら人数制限で参加できなくなっちゃうかもだからね」

「わ、わかりました」

「一夏や宝泉君とは次の指定エリア解放される30分前にこの辺りで落ち合う取り決めだけどさ、せっかくだから点数をザクザク稼いで、あの自己中バカ共にこれでもかってくらいマウントを取ろう!」

「動機が不純じゃないですか!?」

 

 別にいいんだよ、動機なんてなんだってさ。少なくともあまり真面目にこの試験に取り組んでない君達よりかは幾分か上等だろうよ。

 

 その後、火起こしの課題に挑戦して私達はものの数分で火をつけることに成功し、見事5点を獲得した。ふふふ、年季が違うんだよ年季が。私がこれまでどれだけ兄貴にキャンプに付き合わされてきたと思ってるんだい? 

 

 

 

 

 

 

 

【side:桐葉】

 

「第10問……世界で一番強い磁力の強い磁石はネオジム磁石ですが、地球上で最も─」

 

 回答ボタンを押す。

 

「地球」

「せ、正解。地球上で最も大きな磁石は地球だ。得点が10点に到達したのでここで終了。本条に10点それ以外の参加者は皆同率2位なのでそれぞれに5点。さらに1位の本条には報酬として果物詰め合わせを贈呈する」

「あざーっす」

 

 現在ただ今F9。10時になり課題が解禁されるや否や、幸運(笑)にも俺の目の前で雑学テストの課題が設置されたので当然それに参加したのだけど……俺の眼は少し先の未来さえ見通すので、クイズを答える際の正解確定ポイントが他の人よりかなり早い。またありがちなフェイントも出題する先生の脈拍の乱れを見抜くので引っかからない。正直負ける要素が微塵も無かったね。

 6問目くらいであまりにも俺がフライング正解を連発するものだから、不正を疑った3年の先輩が俺に噛みついてきたけど……

 

「「いくらなんでもおかしいだろ!? 本条お前、もしやなにか不正してるんじゃないだろうな!」……っ!?!?」

 

 このように一言一句違わずハモってあげたら押し黙っちゃった。これまで色々とはっちゃけ過ぎたせいで2年にはもう驚いてくれる人いないから、ああいう新鮮な反応はありがたいね。

 さて、貰うもん貰ったことだし善は急げだ。

 俺は支給された果物を口内を通じて胃袋に投入しながら、次なる課題の設置されているエリアG9へ向けて走り出す。

 軽量化を優先し水も食料も溜め込まずその場で全て平らげるのが桐葉流サバイバルだ。健やかな成長を促すべく普段は徹底管理された食生活を営んでいるが、ぶっちゃけ3日くらいは何も食べずとも何の支障も無いし、水なんて適当に川のを飲めばいいしね。浄水器は持ち込んでないけどこの島学校側の衛生管理が徹底的に行き届いているのでヤバい細菌なんかは事前に駆除されてるだろうし、それでも運が悪いとリタイヤしなきゃならない程度の病気にはなるだろうけど、俺に限ってそれはありえない。……もっと言うなら俺、物心ついてから病気になったこと全然ないしなあ。最後に病気になったのいつだったっけ。なんかパピーとマミーが珍しく慌てた記憶が朧気にあるだけで全然覚えてないや。

 まあどうでもいいか。本条桐葉は過去を振り返らず、先々のことだけを見ていればいい。

 急ぐ理由もないのでワイヤー駆動は温存し、フリーランニングスキルのみで無人島を駆け抜ける。有栖に出された2つの指示の1つを実行する為、駆け抜けながらとある物を探して採取していく。目当てのものがこうあっさり見つかったってことは、月城さん達もちゃんとリスクヘッジは怠らなかったらしい。

 

「……おっ、瀬川先輩じゃん」

 

 およそ10m先で瀬川先輩を含む3年Aクラスの小グループが、トランシーバー片手に何かを話している。ここからじゃあ聞き取りにくいが通話相手はみやびん先輩に違いない。まずは、1人目。

 俺はF9にて仕入れたブツを握りしめ、音と気配を消して先輩達がよりかかっている木の上に登り、トランシーバーによる通話が終わった直後に木から飛び降り瀬川先輩の目の前に着地する。

 

「せーがわ先輩っ!」

「うおわあっ!? ……んだよ本条かよ、ビビらせんじゃねーよ馬鹿野郎」

「キャプテンビビってるーへいへいへいー♪」

「このクソガキがぁっ!」

「おっとあぶねっ」

 

 怒れる瀬川先輩のヘッドロックを華麗に躱し、俺は再びG9エリアへ向かって駆け抜ける。

 ……よしよし、まったく気づかれてないな。この仕込みをあと何十回も繰り返さなきゃならないのか……面倒だな。

 

 

 

 

 

 約15分弱かけてG9に到着し、課題を担当している坂上先生を発見。むむ、もう結構人数いるけどまだ人数に空きがあるのかね? 

 

「砲丸投げの課題まだ枠ありますかー」

「本条君ですか。はい、2人ほど空いています。あと10分経って誰も来なければ締め切り課題を始めます」

 

 割とギリギリだったよあぶねーあぶねー。

 しかし砲丸投げか。以前測ったときは、たしか18メートルくらいだったっけ。まあざっと見渡した限り俺が負けそうな相手はいなさそうだし、特に問題なく1位取れそうだ。……が、流石にこうも順調過ぎるとつまらねーな。そろそろ骨のある奴と闘いたいんだが─

 

 

 

 

「やあ、友よ。こんなところで奇遇だねえ」

 

 

 

 ……ここで君が出てくるか。いいね、相手にとって何ら不足が無いや。

 今回の特別試験、最初に関門として立ち上がったのは……2年Dクラスきっての問題児にして自由人。自分が最高にして最強と公言して憚らず、そしてそれが自信過剰でも不遜でもない、正真正銘の怪物にして麒麟児……

 

「クールガールと賭けをした手前、もとより今回は手を抜くつもりはなかったんだが……そんな賭けが無くとも、君を相手にするなら手を抜くわけにはいかないねえ。去年の体育祭での借りはここで返してもらうよ、桐葉」

「随分と昔のことを持ち出してきたね。だけど俺だってもう負けたくはないんだよね。もう一度土の味を噛み締めさせてあげるよ、六助」

 

 

 高円寺六助その人だった、

 

 

 




【無人島試験注目生徒キャラデータその②】

龍園翔
知力……65
判断力……85
運動能力……79
武力……80
統率力……87
体力……72
精神力……90
人徳……10

悪魔の頭脳……悪だくみ中、知力50%UPと人徳50%Down。
蛇の如き竜……精神力が低下しにくい。負傷してもステータスが下がらない。以前敗北した相手との戦闘時、人徳以外のステータス+5。
サバイバル適性C……体力消費10%減、怪我や病気になる確率が30%減、睡眠時回復率10%UP。

一之瀬帆波
知力……85
判断力……88
運動能力……53
武力……10
統率力……75
体力……55
精神力……72
人徳……100

純粋善……自クラスのみで構成された集団を率いるとき、統率力の数値を人徳の数値で換算する。
率先躬行……仲間の全ステータス+2
謹厳実直……精神力が低下しにくい


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