ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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「チートのクソガキ……!? 黒霧!! なんで、こいつ連れてきた!?」

「申し訳ありません……! 凄まじいスピードでワープゲートに潜り込まれました……!」

「おいおいおいおい! リトル・オールマイトとかマジかよ!?」

「対抗戦力はどうしたのよ!?」

 

 魔美子を見てパニックに陥るヴィラン連合。

 所詮はチンピラの集まりかと、魔美子は目の前の集団の評価を定めた。

 だが、こいつらに使い魔の大多数がやられたのも事実。

 統率は取れていなくとも、個々の力は強いのだろうと油断を廃する。

 

「黒霧! トゥワイス! 脳無出せ!!」

「了解!」

「あ、そ、そうだった! 忘れてねーし!」

 

 死柄木の指示によって、黒霧とラバースーツの男、トゥワイスが動く。

 黒霧はワープゲートを広げ、トゥワイスは掌から泥のようなものを出して、それが合宿先を襲った戦闘機脳無の形を……。

 

 個性解放部位『両足』 出力70%

 

「ぐっ!?」

「ぶげっ!?」

 

 だが、2人が行動を終える前に、魔美子の拳が彼らを黙らせた。

 特別頑丈そうには見えなかったから腕に個性は使わなかったが、それを差し引けば手加減なしの腹パンを食らわせて。

 足には個性を使って加速したので、今の攻撃を目で追えた者はいない。

 

「黒い靄の方は、ワープゲートになれるのは手足と頭だけで実体部分がある。だから殴れる。

 ラバースーツの方は増やす個性か。施設を襲撃した火傷男を出したのは君だね」

 

 魔美子は冷静に、冷徹に沈めた2人の分析をした。

 黒霧の方は、USJで父と相澤が一度戦っていたから情報がある。

 トゥワイスは初見だったが、何かされる前に速攻で潰せた。

 仮に戦闘機脳無のコピーが完成していたとしても、足手まといがいないこの場なら問題無かっただろう。

 

「次」

「あぅ!?」

「ぐぇ!?」

「ごはっ!?」

「きゃ!?」

 

 魔美子が動く。目にも留まらぬスピードで動く。

 一度見失う度に誰かがやられた。

 マグネ、スピナー、コンプレス、トガ。

 圧倒的な速度差で結構な威力の拳を叩き込まれ、何もできずに次々と気絶していく。

 残るは死柄木ただ一人。

 

「ありゃ? 思ったより弱いね。でも使い魔……うーん、相性差かな?」

「ふざけんな……!」

 

 優勢のはずだった盤面が、チートで一気に覆っていく。

 まるでUSJの時の再演。

 トラウマを刺激する光景に、死柄木は血が出るほどに首筋を掻きむしる。

 

「塵になれ!!」

「おっと」

 

 死柄木が怒りのままに、両手を前に突き出して突撃してきた。

 拳は握らず、指を広げて掴みにくるような挙動。

 魔美子は死柄木の手首を掴んで攻撃を止め、個性を解除した足による蹴り上げで顎を捉えた。

 

「かっ……!?」

「掌か、あるいは指で触れて発動する個性と見た。塵になれって言ってたし、触れた部分を塵にする個性?」

「くそっ……!!」

 

 蹲る死柄木に対し、もがく虫でも観察するように分析をする魔美子。

 冷淡な目だった。

 ヒーローという枷が無ければ、なんの躊躇もなく死柄木を殺してしまいそうな冷たい目だった。

 

「さて、なんにしても、これでジ・エンドだぜ、ヴィラン連合。

 まあ、君らを潰したところで本丸までは遠いんだろうけど、せいぜいお巡りさんのところで、黒幕の情報をキビキビ吐いて……」

『その必要はないさ。僕ならここにいる』

「ッ!?」

 

 唐突に聞こえてきた男の声。

 聞いただけで心の底から憎悪が湧き出してくるような声。

 見れば、バーに設置されたモニターから、あのクソ野郎の声が聞こえてきていた。

 

『久しぶりだね、八木魔美子ちゃん。また会えて嬉しいよ』

「……私はちっとも嬉しくないよ。━━オールフォーワン」

 

 ドスの利いた声が出た。

 エンデヴァーのことを語る轟以上に怨嗟に満ちた声。

 それを聞いてモニターの先にいる男は、宿敵オールフォーワンは、何故か楽しそうに笑う。

 

『ハハハ。随分嫌われたものだ。やっぱり僕が憎いのかな?』

「憎いに決まってんでしょ。むしろ、なんで憎まれてないと思った?」

 

 魔美子に呪われた人生をプレゼントし、(オールマイト)の腹に風穴を空け、彼女にとって唯一の大切な存在を奪いかけた相手だ。

 憎んで当然。恨んで当然。

 なのに、

 

『いや、正直、君に憎悪が宿ったのは誤算だったよ。

 本来なら嬉しい誤算だ。君に唯一欠けていたピースが埋まった。

 これで憎悪の向き先が僕個人でさえなければ、あるいは、もう一人の君の衝動の大部分が獣同然のそれでさえなければ、君は次の僕足り得たかもしれないのにね』

「はぁ?」

 

 オールフォーワンは、そんな奇妙なことを言う。

 どういう意味だと一瞬思いかけ、すぐにこいつの言葉に聞く価値なんて無いと思い直した。

 こいつが口にするのは、大抵こっちの意識を乱してくる挑発だけだ。

 

「先生……!」

『ああ、弔。また失敗したね。可哀想に。でも大丈夫。

 決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい』

「ハッ! やり直し? 変なこと言うじゃん。この詰み状態からどうすると?」

 

 魔美子はオールフォーワンの言葉を嘲笑った。

 とはいえ、決して油断はしない。

 他はともかくとして、あの黒霧とかいうワープ個性だけは、向こうにとっても重要な駒だろう。

 損切りすることなく、取り返すために何かしら仕掛けてくる可能性は充分にあった。

 

『そうだね。まずはオールマイトに倣って、平和的に交渉でもしようか』

「あぁ? 交渉ぉ?」

 

 またお得意の口車だろうかと、魔美子は警戒を高めた。

 

『そこにいる弔は、僕の大切な教え子なんだ。

 君が彼を捕まえるというのなら、僕もなりふり構わず救けないといけない』

「教え子? ハッ! 冗談が下手になったね。使い捨ての駒の間違いでしょうが」

『いいや、彼は本当に大切な大切な教え子なんだ。

 弔達を連れていくというのなら、僕自身が出向いて全力で戦うことも辞さない』

「見え見えのブラフかましてんじゃねぇよ」

 

 こいつのやり口は知っている。

 いつだって部下を使い捨て、自分は安全圏でニヤニヤしてるような奴だ。

 自分の安全が保証されない限り、絶対に出てこない。

 そんな姑息野郎をどうにか追い詰めようとしていた父達の苦労を間近で見てきた。

 これで本当に出てくるようなら、昔あんなに苦労しなかっただろう。

 

『見え見えのブラフか。たとえ君がそう思っていたとしても、万が一の可能性がある限り、君は動けない。そうだろう?』

「何を根拠に……」

『わかるさ、チャーミーデビル(・・・・・・・・)。だって、君はヒーロー候補生だからね』

 

 その時、オールフォーワンはニヤリと笑った。

 

『立場が、規則が、君の行動を縛る。今の君の立場は、攫われた生徒だ。

 そんな君が独断で動いて僕とぶつかり、余波で周囲に被害が出たらどうなる?

 責任を問われるのは、世間から責められるのは誰だろうね?』

 

(…………チッ!)

 

 その言葉に、魔美子は内心で舌打ちをした。

 癪だが、本当に癪だが、今の言葉だけは無視できない。

 仮に本当にオールフォーワンが出てきて魔美子とぶつかった場合、周囲はまず間違いなく瓦礫の山と化す。

 ここがどこかはわからないが、バーなんて小洒落た場所である以上、まさか無人島なんてことは無いだろう。

 

 そして、被害が出ればマスコミが騒ぐ。

 責められるのは好き勝手してくれやがったヴィラン連合……ではなく、合宿への襲撃を許した雄英だ。

 ひいては雄英に勤める父にも非難の矛先は向かう。

 襲撃されたという事実があるだけでも頭が痛いのに、更に魔美子の浅慮のせいで大勢死んだなんてことになったら最悪も最悪だ。

 

 傷口をこれ以上広げないためには、可能な限り被害を抑えて事件を解決するしかない。

 しかし、現状孤立無援な上に、使い魔召喚のインターバルすら終わっていない今の魔美子に、そんなことは不可能。

 ヴィラン連合だけならどうとでもなるどころか既に制圧済みだが、オールフォーワンが出てくるなら絶対に無理だ。

 というか、勝てるかどうかすら怪しい。

 6年前に父が与えた大ダメージが、もし万が一完治していたりしたら、一か八かの個性全解放を使ったとしても敗色濃厚である。

 

(まあ、まず間違いなくブラフだとは思うけど)

 

 最終的に負けるにしても、魔美子なら相当の時間を稼いで、相当のダメージを与えることが可能だ。

 そこへ父やエンデヴァーやホークスが駆けつけてくれば、いくらオールフォーワンでもやられる可能性はそれなりに高い。

 安全が保証されない。

 すなわち、出てこない。

 

(でも、ワープ奪還のための戦力くらいは差し向けてきそう)

 

 どうせ秘蔵の脳無とかを隠し持っていたりするのだろう。

 それが大挙して押し寄せてきたら、洒落にならない被害が出る。

 せめて、Mr.キックブレイクのコスチュームがあれば色々とごまかせたかもしれないが、あんなものを合宿に持ってくるわけがなく、仮に持ってきていたとしても、ワープゲートの中にまで持ち込めるわけがない。

 正体不明のイリーガルヒーローには頼れない。

 なら、この状況で魔美子が取れる最善手は……。

 

「チッ!」

 

 魔美子は舌打ちしながら、バーのカウンターに音を立てて座った。

 

「不本意。本当に不本意だけど、乗ってやるよ一時休戦」

『ありがとう。きかん坊なオールマイトと違って、君が話の通じる子で助かるよ』

 

 遠回しに父と似ていないと言われて、魔美子のイライラカウンターが振り切れそうになった。

 その減らず口、いつか必ず永遠に封じてやると心に誓う。

 

「そこのチンピラ! お茶! コンビニでロイヤルミルクティー買ってこい!」

「は!? ふざけんな! 何様のつもりだ!?」

『弔。黒霧あたりを起こして、言う通りにご馳走してあげなさい。時には憎い相手と交渉で渡り合うことも大切だよ』

 

 そんなバカなやり取りの裏で、魔美子とオールフォーワンはお互いに準備を進めていく。

 この束の間の休戦状態は長続きしない。

 

(一応、このまま帰るっていうのも一つの手だけど……)

 

 魔美子はその選択肢を捨てる。

 今はチャンスなのだ。

 敵の懐に潜り込めた、千載一遇のチャンスなのだ。

 

(せめて、厄介すぎるワープだけでも、ここで仕留める)

 

 あれがいる限り襲撃されたい放題、スキャンダルが積み上がるばかりだ。

 いや、いずれ確実にスキャンダルでは済まなくなる。

 今回の襲撃も、USJも、下手しなくとも生徒が死んでいてもおかしくなかった。

 そんな危ない橋を何度も何度も渡ってられるか。

 

 奴だけは、どうにかしてオールフォーワンの裏をかいて潰しておきたい。

 そのためには、戦力が揃うのを待つしかない。

 

(壊れるような攻撃は受けてないし、チョーカーは多分正常に機能してる。

 電波妨害があったとしても、私はラグドールに見られてるから、居場所はわかるはず。

 救助隊はすぐにでも来る)

 

 位置情報とバイタルを常に父の携帯に送信し続けているチョーカーは健在。

 加えて、ラグドールも使い魔に運ばれて宿泊施設まで逃げ切っているのを見た。

 恐らく、一日としないうちに救助隊が駆けつけてくるだろう。

 魔美子が動けていないという状況を鑑みれば、かなりの精鋭部隊が送られてくるはず。

 その戦力があれば、どうにか。

 

(……多分、というか絶対、パパも来るよね)

 

 それだけが魔美子の懸念事項だ。

 できれば、父にはもうオールフォーワンと対峙してほしくない。

 最悪あと数年は野放しにしてもいいから、成長した緑谷にその役目をぶん投げたい。

 まあ、十中八九、今回の一件でオールフォーワン本人が出張ってくることは無いと思うので、杞憂で終わるとは思うが。

 

(パパ……)

 

 それでも万が一の事態を恐れて、魔美子は不安に思う心を仮面の下に封じ込めた。




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