さくっと読めるので暇つぶしになれたら幸いです。
死柄木弔による蛇腔市崩壊――その後に起きたオール・フォー・ワンのタルタロス脱出。日本中がヴィランの脅威に晒される中、僕、緑谷出久は雄英高校を中退してオール・フォー・ワンの行方を追っていた。
国中の刑務所から脱獄したヴィランと闘いながら満身創痍になった僕の前の現れたのは――。
「緑谷君!! やっと見つけた!! 探したよ!!」
振り返るとそこにいたのは、ヒーロー名「インゲニウム」飯田天哉だった。
「雄英に一緒に帰ろう!! 先生が心配している!!」
そう諭す飯田君の言葉に僕は首を横に振った。
「帰らないよ・・・。僕はオール・フォー・ワンを探さなければいけないんだ」
「そんなこと言うなよ! 先生が帰ってくるように言っているんだ!」
「だけど・・・」
「先生が君を・・・」
「先生先生ってなんだよ!!!!」
思わず語気が強くなった。立て続けに僕は飯田君に怒鳴った。
「先生が心配している! 先生が帰ってくるように言っている! 先生先生先生先生! 飯田君は先生に言われて仕方なく来たんだろ!! 飯田君はクラス委員だからね! 本当は来たくなかったんだよね!!」
飯田君は黙り込んでしまった。そんな彼の様子に我に返った僕は必死に謝罪の言葉を並べた。
「ごめん・・・飯田君。来てくれてありがとう。君にはずっと感謝しているんだ。クラスで一人ぼっちの僕に話しかけてくれたのは君だった。クラス委員の君は、相沢先生に友達になるように言われたんだよね。その事は知ってたけど、それでも助かったよ。ありがとう、飯田君。だけど、僕は雄英には戻らない。いくら先生が心配していても」
「心配しているのは先生だけじゃない。A組のみんなも心配している」
「三人じゃないか!! 君を入れて!!!」
飯田君の後ろには峰田君と青山君がいる。これまで黙っていた峰田君が口を開いた。
「雄英に戻ってこいよ! 緑谷! お前がいないと体育の時間に先生と準備運動をする事になるんだよ!!」
僕と同じくクラスに馴染めていない峰田君は必死である。彼の言葉に心を動かされそうになったが、僕は心を鬼にしてガン無視する事にした。
青山君は口を閉ざしたまま無表情で僕を見つめている。本当に何を考えているか分からない。ベランダにチーズを置いたりと意味不明な事をする気味の悪い男だ。今も何しに来たのか全く分からない。
「他のみんなはどうしたのさ!?」という僕の質問に答えたのは飯田君だった。
「他のみんなは雄英でUNOをやってる。君も頼めばきっと混ぜてくれるさ。いや、君はトランプでソリティアをする方が好きかな。昼休みにいつも独りでやっていたもんな」
好きでやってたんじゃない!! と叫びたい衝動を必死で抑えていると、一人の少女が目の前に現れた。麗日さんである。
「デク君! 君が雄英に帰らないと飯田君が先生に怒られるの! だから帰ってきて!」
そう懇願する麗日さんは飯田君に体を密着させている。
「もしかして二人は付き合ってるの?」という僕の質問に飯田君が答えた。
「ああ。交際を始めて半年に――」
ワン・フォー・オール・フルカウル――。
地面を思いきり蹴った僕は大空へ飛立ち、ビルの屋上を蹴って更に跳躍した。
必ずオール・フォー・ワンを見つけ出してやる。そしてワン・フォー・オールの力を彼に託し、この腐ったヒーロー社会を破滅へと導びいてもらうのだ――。
―完―