VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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問題発生




摩天越えて、世界を震わせ 〜其の十六〜

「のぎょわああああああああ!!?!」

 

持てる物を擲ち、覇国兇嵐(アガトレオ)で『サンラク』を首チョンパしたまでは良かったが、待っていたのは超高速の落下死の危機という当然過ぎる顛末。

 

此れが仮に其のままライブラリに渡ったなら、あ(・)の(・)『バリツ事件』同様サービス終了まで笑い話にされかねないという結末が、脳裏にハッキリ浮かんだサンラクは撃鉄解除を並行し、インベントリアからライブラリ厳選の使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)を取り出して開く。

 

「ああああああああ頼むぞへそくり【エア・クッション】!!!」

 

対衝撃緩和魔法として魔法職プレイヤーに知られている魔法(其れ)は、サンラクというプレイヤーが最速の称号:最大速度(スピードホルダー)の現保持者であり、本人は知らないが『ヨシッ景気良く一回死んでみっか!を嬉々として行える人物(プレイヤー)』である事を加味して選ばれ。

 

土属性の壁魔法やプロテクト系列魔法に該当する『耐久値』を備えており、其の効果が続く間は衝撃で発生するダメージを抑えると共に、其の効力も使い捨て魔術媒体の中では高い出力を誇り。

 

崩壊する高速道路のコンクリート柱との激突の数瞬、乗用車事故から運転手の死を軽減せんとする安全装置が働く様に、開かれ膨らんだ魔力で作られた空気風船がサンラクと柱の間に割り込み、ぼふん!という音(SE)を立てて彼を受け止める。

 

「おぐぇ、た、助か………あぼべべべべべへぶっ!?ちょまっごぶん!?」

 

が、其処からズルズルと落下する中でコンクリートの欠片が卸金の如くエア・クッションの耐久値がゴリゴリ削り、地面に叩き付けられると同時に耐久値を失い、サンラクはべチャリと地面に落下する事になったが、其の体力は魔法補助によって一割弱も残っていた。

 

「ゆ、有能魔ぼぶぐっ!?!」

 

直後、頭上から落ちた拳骨大のコンクリート塊がサンラクの脳天に文字通り拳骨と言わんばかりに直撃し、ギャグ漫画で見る視界を星々が巡り回る光景を体感すれば、眼前に倒壊する高速道路と一緒に落ちるデコトラの津波が押し寄せる。

 

落下死を避けたは良かったがコンクリート塊の頭直撃によるスタンと食い縛りは、彼から撃鉄を点火の隙もバッサリと奪い去っており、分霊サンラクが空中を駆け走って来るが此の距離では撃鉄を切っても間に合わない距離。

 

即ちサンラク残されたのは、死を前に遺言を一言言わせるのみの状況で─────────

 

「な、ナムサン………!」

 

─────────だが、そんな状況は突如として終わりを告げる。

 

エルマ=317(サイナ)とエリーゼ・ジッタードール、其処からエルマ・サキシマにバトンタッチして行われたビッグスケール紅白歌合戦。

 

互いが世界を作り上げ、象徴にリソースを注ぎ込み、幾度にも渡る戦士達の激突の果て、其れ等が始めから無かったかの様に『綺麗さっぱりと消滅した』のだ。

 

摩天楼も、高速道路(ハイウェイ)も、デコトラも、そして首を斬り落とされた『サンラク』までも消えて…………此の場に残されたのは、浮遊する隕鉄鏡にサンラクとサイナ、分霊サンラクと其の手に持つ覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)とサンラクが戦いの中で投げたり落としたりした武器達、そして『サンラク』が着けていたペストマスク状の奇妙な仮面のみ。

 

「契約者(マスター)」

『危うく死ぬ所だったな、サンラクよ』

「おぉ、サイナにドラグマにエピタフ君。ギリッちょんだったが、生きてるなら儲けもんだぜ」

 

先程まで居たエルマ・サキシマの姿は無く、周りを見渡せば『電気が消えて薄暗くなった一昔前の小洒落た、地下に作った秘密基地的な隠れたバー』であり、カウンターやらキープされた多種多様な酒類とグラスが棚に並び、レトロチックなテーブル席やホーン付きのレコードプレーヤーやらが置かれている。

 

「さぁてと、だ。どうやらコ(・)レ(・)が、オルケストラの『最後の謎解き』みたいだな」

 

此の場合のNG行動は『ステージに落ちてる仮面を拾う事』、クターニッドの真理書の様に『妄想態を撃破した瞬間ユニークシナリオ終了』に成り兼ねないので、避けるのは絶対必須と考えた方が妥当だろう。

 

「取り敢えず座ろうぜ皆。席は全部空いてるから何処でも座れっぞ」

「……いえ、しかしあの仮面は」

「まぁ待て、急いては事を仕損じる。誰の目にも近道と解る時は、大抵が行き止まりって相場が決まってるんだ」

『ペッパーもそう考えるだろうな』

 

分霊サンラクと共に武器を回収し、サイナ達がカウンターに座って一通りの容器やらを取り出した後、注文を聞いて器に酒を注ぎ入れて渡し、カクテルを作る。

 

モーションは見様見真似で作り、自分用はファミレス・カクテル(ファミレスのドリンクバーで色々混ぜた物)を作ってグラスに注いで飲んだ後、一呼吸置いて謎解きに挑む。

 

「…………其れじゃ本題に入ろう。此度のオルケストラ攻略に置いて重要なのは、オルケストラが『何を主軸』として動いていたかって事だ。さてサイナ、何だと思う?」

「解答:神代以前人類の遺志かと」

「うん正解、だけど百点の内三十点って所だ。其れは冥響のオルケストラを構成する上で『三分の一』であり、先ず一つ目は神代の更に先の古代を超えて『現代に生きる者達の生き様を見る』ってのが、オルケストラを構築する意思の一つだ」

 

オルケストラの分岐に共通する点たる『プレイヤーを戦わせる事』。

 

古代ローマの時代にコロッセオでの剣闘士による戦いを見ていた市民達に似た物か、或いはもっと別の物なのか………其の動機まではサンラクにも解らないが、今は亡き神代以前人類(歴代所持者)達は『其れを見たがっている事』だけは確かだと解る。

 

「二つ目だが…………まぁコレはぶっちゃけ『アンドリュー・ジッタードール本人の意思』だと思う。というか俺は『ほぼ』確信してる」

 

アンドリュー・ジッタードール………頭のオカシイ天才であり、シュテルンブルームを神格化している奇人(ドルオタ)であり、其のアイドルグループメンバーそっくりのアンドロイドを造り出した創造主であり、そして『神代含めた人類の歩みたる文化保全に人生を掛けた人間』であった。

 

ジュリウス・シャングリラやアリス・フロンティア、エドワード・オールドクリングにファルナ・シェリー、天津気(アマツキ) 刹那(セツナ)やウェザエモン・天津気(アマツキ)にジーク・リンドヴルムを含めて、彼等彼女等は何かしらの形で現在のプレイヤー達に影響を与えているし、ウェザエモンに至ってはペッパーに天津気の襲名許可を出した。

 

冥響のオルケストラが音楽プレーヤーであり、音楽プレーヤーの所有者としてアンドリューの名が在る事に加え、其の攻略に征服人形(コンキスタ・ドール)が必須である点と、シュテルンブルームの残影が最終楽章で立ち塞がった点を含めて、該当要素が散見したのも此の説に力を与えている。

 

「で、本題が此処から。オルケストラを構築している三つ目の意思…………即ち『オルケストラの正体』だ」

 

オルケストラとは音楽プレーヤーであり、サンラクは長い旅路の先で二つのバハムートを巡り、データベースを調べ上げ、そしてオルケストラの正体を知った。

 

だからこそ『エリーゼ・ジッタードール』と『音楽プレーヤー』の矛盾に気付く事が出来たのだから。

 

「オルケストラの正体………まさか」

「はいサイナ、答えをどうぞ」

「解答:エリーゼ・ジッタードールの意思、ですか?」

 

サイナの回答はオルケストラが神代人類含めた歴代所持者達の遺志の集合体で、アンドリュー・ジッタードールの意思が強く込められた存在で、エリーゼ・ジッタードールを歌姫としている点を踏まえれば『そう答えるだろう』。

 

だからこそサンラクは少しだけ沈黙し、まるでクイズ番組で億万長者か無一文かの最終問題にて司会者兼出題者が解答者の正解か不正解を伝える(運命を通告する)前の、あの言い知れぬ緊迫感に満ち満ちた独特な空白を置いて。

 

「─────不正解っっっっ!!!」

「………!?」

 

鳥面の内に隠した口元でニンマァと弧を描き、ドヤ顔特有の視線でインテリジェンス擦りをするメカガールに言ったのだった。

 

 






真実を解き明かせ

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