答えを解く
冥響のオルケストラを構築する三つの要素、其の最後の一つを外したサイナをサンラクは見つつ、自分含めた面々全員が写る位置に隕鉄鏡を置いて推理を進める。
「エリーゼ・ジッタードール。確かに奴は歌姫として出てくる………が、彼女はオルケストラには『絶対に』関われない。何故ならオルケストラに関わる事が出来るのは過去にオルケストラ、いや『あの音楽プレーヤーを保有した事のある者のみ』であり、そしてベヒーモスのデータベースに在った歴代所持者のリストにエリーゼ・ジッタードールの名前は『無かった』んだ」
エリーゼ・ジッタードールはあの音楽プレーヤーの所有者になった事が無く、シュテルンブルームのメンバー達にアンドリュー、神代以前人類もオルケストラに関われる最大の理由は、彼等彼女等が『音楽プレーヤーの所有者だった事』が要因なのだろう。
「オルケストラに関わる事が出来るのは、過去にオルケストラ………音楽プレーヤーを保有した事の有る者のみ。だからエリーゼ・ジッタードールは『絶対に』オルケストラに関与していない」
「疑問:では何故、エリーゼ・ジッタードールが『歌姫』として出現するのですか?」
『……………確かに、何故だ?』
「そう。何故『音楽プレーヤーに関わってないエリーゼが、歌姫としてプレイヤーの前に現れるのか?』───────其れこそ、冥響のオルケストラというユニークを攻略する為の鍵が有る」
最終楽章の最中、一度は追い詰めた時にエルマと交代したエリーゼの顔には『納得出来ずに悔し気な顔をしていた』。
シャンフロのユニークシナリオとは『物語の完結を目指す物』が大前提であり、ユニークモンスター達のシナリオは納得と共に撃破されたり、ユニークモンスター達は自身が納得する為に動いている
シャングリラ・フロンティアというゲームは、現実世界さながらの
だからこそ見え透いた、地面に落ちている
「さてサイナ。音楽プレーヤーは『何の為』に在ると思う?」
「………解答:主な用途としては音楽鑑賞の為かと」
「そう、音楽プレーヤーは『音楽を聴く為』の物だ。そして言い換えれば『歌を再生する物』のが音楽プレーヤーだ」
音楽プレーヤーの電撃を入れ、プレイリストより再生し流れたエリーゼの歌。見方を変えれば其れは『嘗て存在した物を同じ状態で再度生まれさせる』という事。
然してエリーゼはサンラクからしても原理不明のオカルト的オブジェクトであり、オルケストラ=音楽プレーヤーという観点と人々のバトンタッチによる結晶存在という方程式。
蘇るのは本当に『歌』だけなのか?と。本人の、仮に此れを『霊魂』と定義した場合、所持者として関わる事の無い『歌姫』を──────エリーゼ・ジッタードールを
「…………よし、いっちょドレスコードしとくか」
バーと言ったらバニーガール、バニーガールと言ったらバニースーツは鉄板ネタなので、サクッと青の聖杯を使って性別反転からサクッとバニースーツに着替える。
「さてサイナ、エピタフ君、ドラグマ。オーケストラは終わったが訳だが、やっぱ此れで終わりは名残惜しいだろ?」
「疑問:一体何を……」
「何をするって………コンサートの最後にする事なんて決まってるだろ?」
『決まっている………開拓者達が言う『おんど』やら『こーれーぎょーじ』なる物か?』
「ドラグマ正解、エピタフ君………は解ってるっぽいな」
と言う訳で御手を拝借と、両手を広げてサンラクはコールする。
「エリーゼさんのちょっと良い
「……アンコール、アンコール」
『アンコール、アンコール…………で良いのか』
「そうそう!さぁもっともっとぅ!」
「『「アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!」』」
サイナとドラグマも声を合わせ、仮面が置かれているバーの不自然な空白…………或いはステージに声を掛け続け、そうして三十秒程の時間が経った頃。
ステージには青白い炎が虚空に浮かび上がった。
『…………』
「おっ」
「これ、は」
『エリーゼ………む?』
小さな炎が虚空に揺らぎ、種火であるか様にぼんやりとした影を照らして輪郭を固め、現れたのは最終楽章で悔し気な顔とエルマ・サキシマにバトンタッチして消えた『エリーゼ・ジッタードール』で。
一つ違う点が有るとするならば、彼女の胸元にはネックレスの様に『あの音楽プレーヤー』を掛けている事であり。
「エリーゼ・ジッタードールは現れない。であれば其処に居るエリーゼの正体は『何者かが
嘗ての日より先の未来を、此の目で確かめたいと願う者達が居て。
人類が繋いだ栄光と、素晴らしき文化を知って欲しいと願う者が居て。
そして───────
「エリーゼ・ジッタードール……否っ!『嘗ての地球で
『…………』
ビシッ!と利き手の人差し指で彼女を指差し、真実を突き付ける名探偵の如くサンラクは格好付けて決めて。
対して
「…………なぁサイナ」
「
「唯の音楽プレーヤーが、
「……………はいっ」
冥響のオルケストラの
『───私は観測者』
『───私は歌う、歌う。私は得た、得た。紡ぐ旋律は命の螺旋、叫ぶ歌声に答えが返る、響く言葉に英傑を見た』
『
最終楽章時の寂しさを内封した歌声と明確に異なる、晴れやかな歌声を響かせる歌姫が突き出した右手に光が集まり、同時にステージに置かれていた仮面もまた、彼女の右手の光へと誘われる様に浮遊する。
『───遠く、遠く、明日を
ペストマスクのような嘴を持つ、金色の輝きを宿す鳥の仮面。其れが歌姫の翳した柔らかな光に包まれ、其の輝きをより強い物に変えていく。
『───さぁ進んで、サンラク。そして人ならざれど人の輝きを持つ貴女も、強き意思を持ちて己を貫く龍の刃も、サンラクより生まれた魂の君も…………』
───ありがとう。
其の言葉を以て、此処に歌姫の
楽器の伴奏も無い歌姫による静かな独奏だが、まるで此のバーの空いた席に見えはせずとも何十人の客が居て、歌姫のメロディを一緒に聞いている…………そんな充足に満ちた感覚がサンラク達を満たしていたのだった。
「…………サイナ、泣いてるぞ」
「こ、これは………そう、インテリジェンスな………」
「感情は本能の側じゃねーかなぁ………。まぁ随分と洒落たエンディングだ」
『強き意思を持ちて己を貫く龍の刃、か。フッ………悪い気分はしないな』
「サイナ共々、エピタフ君含めて一存在と認められたってこったろうな………。まぁだが、攻略達成の感触は悪くないね」
ステージにて未だ淡く光る金装飾の鳥面を拾い上げれば、掌と指先に仄かで優しい暖かさを伝えてくる。
そして何時の間か注がれていたカクテルが入ったグラスは空となっており、サンラクの前には冥響のオルケストラ攻略を報せるユニークシナリオクリアを意味する、金色のウィンドウが表示されたのだった…………。
『遠く、問い掛けは答えを得た』
『御来場、誠にありがとうございました』
『楽団一同、心よりの感謝を』
『ユニークシナリオEX【あなたに捧ぐ
『称号【堂々終劇】を獲得しました』
『称号【正典制覇】を獲得しました』
『称号【渡り鳥の唄】を獲得しました』
『称号【エルマの太鼓判】を獲得しました』
『Loading………』
『称号【嵐帝謁見】を獲得しました』
『頭装備【
『アイテム【バー『マスカレード』のキープグラス】を手に入れました』
『アイテム【世界の真理書「冥響編」:正典】を獲得しました』
真のエンディング
※尚原作と同じくエリーゼが現れてサンラクが真実を突き付ける前に、生配信では『此のシーンは配信できません』表示になった事でコメント欄は阿鼻叫喚になってる。
要するにオルケストラのネタバレ寸止め事件