VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクの戦いを見届けて

※少し短いです




外の世より勇姿を見届け、勇者もまた決意を固める

「……………いやぁ~此れは本当に凄いな…………」

 

10/16──────携帯端末の時刻が深夜二時過ぎを示し、張り詰めた全身の力を抜いて感嘆と共に息と言葉を吐いた梓は、すっかり冷めてしまったインスタントコーヒーを一息に飲み干した。

 

シャンフロにてペッパー・天津気(アマツキ)の名を掲げる彼は、冥響のオルケストラ攻略の準備をしていたサンラクをサポート後、自身もまたオルケストラ攻略の為に魚人族(マーマーン)で名匠と古匠の鍛冶師たるル・ジニシィの元に預けていた赫煌剣(かくこうけん)アスカロンと冥府の王水入りの宝淵瓶(ほうえんべい)アビスポットを受け取りに行き。

 

彼女の手によって赫煌剣アスカロンは次段階で新たなる姿───────其の銘(な)を『赫蒼海剣(かくそうかいけん)アスカロン』に改め、深き海の底に住まう最強の冥王の血を受け止める器の段階に到達した。

 

赫蒼海剣アスカロンは赫煌剣アスカロンの出力が調整され、水棲・海洋・始源存在への特効補正と特効倍率は低下したが、攻撃時に炎熱効果と氷結効果を同時に付与し、斬撃及び刺突によってクリティカルが発生した場合、直撃箇所の運動エネルギーを食らって炎熱と氷結由来の効果が上がり、時間経過による対象へのダメージ補正が更に強化されている武器だ。

 

『後は此の赫蒼海剣アスカロンの剣身が冥王の血で満たされた状態で、名匠及び古匠鍛冶師の手による武装神化(ゴッデスライズ)の成功と神化完遂が成された時、魚人族の英傑武器(グレイトフル)たるアスカロンは嘗ての姿を完全に取り戻す事が出来、自身は神匠鍛冶師に到れる』…………そう彼女は自信を持って言い切ったのである。

 

そうして彼はオルケストラ攻略に絶対必須となるだろう『ある物』の確保の為、梟の伝書鳥(メールバード)を使ってある人物に…………シャンフロで最強の防御を証明する称号:最大防御(ディフェンスホルダー)を持つ『ジョゼット』と、彼女のクラン:聖盾輝士団(聖女ちゃん親衛隊)に連絡を入れてから来訪し。

 

彼は輝士団が崇め仕える『慈愛の聖女イリステラ』との謁見を成し、己が全費用と共に前々から準備した聖水に必要な材料を全て渡した上で、彼女に『聖女の聖水』の製作を依頼した後、己の恋人達からのメールで『サンラクがオルケストラ攻略のライブ配信をしている』との文面を目視から、ラビッツに速攻帰還からのセーブ&ログアウトでシャンフロを終え。

 

こうして今の時間まで眠気防止のインスタントホットコーヒーを横に置き、遅れる形で配信開始地点から追い掛け視聴を始め、最終的に飲む間すら惜しいと思える程の、サンラクという一人プレイヤーによる世界(シャンフロ)で積み重ね、研鑽された極限と極致の映像の数々を目の当たりにしたのだった。

 

「肝心のオルケストラの正体部分は運営側から『見せられないよ!』な判定で、シーン差し替えになってたが………。オルケストラの正体は既に掴んでるし、後は其のオルケストラの一式装備がどうすれば手に入るかについては、大方の『予想は付いてる』んだよね」

 

あの日に手に入れた物品達、ベヒーモスで調べた情報、アンドリューの証言………オルケストラ相手に一度激突して確かめんとしたが、左方始源眷属の嵩増(かさま)す大黒繊(だいこくせん)との遭遇戦で回り道になった物の、サンラクのオルケストラ攻略のライブ配信を観つつ、並行してオルケストラ関係の情報を脳内思考で回し続けた果てに、彼は大体の予想を立てる事が出来たのである。

 

(此方もオルケストラを見据えた色々な準備をして、一発クリアを目指すつもりで行こう。もしライブラリからオルケストラのライブ配信を御願いされた時は、事前にペンシルゴンに連絡入れてって事になるか。…………いや、こういう時はいっそ『サプライズ的な感じ』でやった方が絶対楽しい気がするな、うん)

 

梓からすれば自身の自己顕示欲を満たしたい訳でも無く、ゲームで全員が関わり得る可能性が高い情報以外は基本外に出す事は無い物の、彼個人としては『冥響のオルケストラが再現したペッパー・天津気(アマツキ)と自分が戦った際、第三者視点でどんな風に映るのかを記録として残し、手元に置いておきたい』といった考えが有る。

 

仮に後々自分以(・)上(・)の読みを持つ相手が現れた時、自身のステータスや思考に置いて『上位互換の相手と戦った事実入りのデータを保有』していれば、先々で色々と役立つ時が来ると密かに確信して居るからに他ならない。

 

「…………次のバイトと講義の休みは、えーと………10/22と10/27、其れから10/31ね。とすれば、だ…………10/21の夕方を第一候補にして第二に10/28の夕方、第三を10/30に設定し、冥響のオルケストラを攻略する。後は必要な物資を揃えて、矢に関してはラピスさんとダルニャータさんに相談の、回復アイテムも忘れずに………だね」

 

神代の大いなる遺産達を其の手に担いて世界を駆け、数多の強敵難敵を其の手で屠りて幾度と無く戦い続けて来た男は、自身が挑む冥響の歌姫との決戦がサンラクの攻略戦とは『別角度で凄まじき物』になると確信しながら。

 

然して其の心に宿した、消える事の無い挑戦心という不滅のモチベーションを内にて燃やし、猛る血潮を巡らせながら決意を強く固めたのである…………。

 

 

 






彼もまた、挑む為に動き出す


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