VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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己という存在を示す時




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の四〜

10/21、遂に此の時がやって来た。

 

オルケストラ攻略戦:第一候補(X1 Day)であり、夕方から動ける&ユニークモンスター攻略後の反動で寝落ちを噛ましても安心出来る日と共に、此処数日で重ねて来た準備と成果を示す日でも有る。

 

講義とバイトを終えて、ハンバーガーショップでハンバーガーセットで夕飯を取り、アパートに帰って手洗い嗽に歯磨きからの筋トレにシャワーを浴びて髪を乾かし、シャンフロにログイン。

 

此の数日の準備期間中にオルケストラが居る事務所(ドールベース)にランドマークを更新したり、始源存在(レイドモンスター)の一柱・焠(にら)がる大赤翅(だいせきし)がオイカッツォを始めとした、古参及び廃人主体のパーティー達に討伐されたというアナウンスがシャンフロ中に響いたり。

 

シャンフロで培い、繋いだ縁で作って貰った物を受け取ったり、補充したアイテムに装備していくアクセサリーや修繕した武器装備の耐久値確認の全てを終え、身形を改めて整え直した彼は兎御殿からアイトゥイルが開いたゲートで出立する。

 

「…………よし、行くか」

「行くのさ」

「うむ、行こう」

「同意:」

『ワンッ』

 

契約した征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=103(ヒトミ)の案内でランドマーク更新の為に訪れたが、一昔前の秘密基地的な外見と中身はレトロ味に近未来好きな少年ハートを擽る要素の数々は、ペッパーも好きなスポットの一つとして『彼の太鼓判』を押したりした。

 

そんな一行はゲートを越えて事務所内の一区画に在る、考察クラン:ライブラリが作った一昔前の教室に歩を進め、今尚其処で新たな挑戦者達にアドバイスや情報提供を行っているライブラリのメンバー達と、ペッパーが事前にランドマーク更新で此の地を訪ねた事をメンバーより聞いて、大急ぎでスッ飛んで来たケケケーラと出会う。

 

「ペッパーさん。オルケストラに挑戦ですか?」

「はい、此れから。其の為の準備は済ませましたし、ちょっとしたサプライズもやるつもりなので」

 

数日の訓練でアトロフォスの白蒼翼(はくそうよく)無しでも動ける様に特訓し、身体が其の動きに慣れる程度には重ねた其れをアクセサリースロットから外して空きを作り、新たにインベントリアから出した配信可能アイテムの別天律(ことあまつ)の隕鉄鏡(いんてつきょう)をセットする。

 

「チャンネル名はシンプルに『P・THE・C』、名称は『ペッパー・ザ・チャンネル』で行きます。開始時刻は午後六時半から、配信はプライベートの隕鉄鏡はチャンネルに紐付け完了済、起動すれば何時でも開始出来る状態です」

「成程。キョージュやセートさんにもメールで伝えます、其れから対オルケストラを想定したアイテムや使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)も此方で調達したので、どうぞ御好きに持って行って下さい。期待してます」

「程々に頑張りますね………」

 

ライブラリ視点ペッパーというプレイヤーがシャンフロで成した偉業の数々をして、冥響のオルケストラの正典ルート突入可能なプレイヤーである可能性が高い認識と、神代の大いなる遺産を探し出せる唯一無二のプレイヤーの為にオルケストラの特殊ルートと特殊エンディングを見れる、そんな期待を抱くが故の興味と連盟の頭を張るプレイヤーという観点も絡んでいる。

 

用意されたアイテムと魔術媒体の内容と名称を確認後、インベントリ&インベントリアのアイテムの位置を入れ替え、武器装備の耐久値の再確認含めた最終調整を行って、時刻は午後六時半の五分前を指す。

 

「ライブラリの皆さん、アイトゥイルとディアレさんにノワを頼みます」

「任せて下さい」

「戦果を期待してますよ〜」

 

アイトゥイルにディアレとノワを撫で撫でし、インベントリアにヒトミを収納からオルケストラが居る扉の前へと向かい。

 

階段を降り、回収された様々な異物が飾られたエリアを抜けて、一昔前のコンサートに似た扉が視界に映る中、嘗てヒトミに渡されたオルケストラからの招待状を取り出した後、再び収納して隕鉄鏡の起動と共に扉の前に立つ。

 

重々しい音と共に扉が開かれ、意識が遠退く中で彼は此の先に待つオルケストラとの死闘に心を躍らせるのだった………。

 

 

 

 

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夕方とは俗世間で言う所の昼と夜の境界線であり、定時に仕事を終えた会社員達が家へ帰ったり、友達と遊んだ子供は家へ帰って晩御飯を食べたりする時間帯でもある。

 

日本にとっては夕方だが、他の地域では夜だったり深夜だったり或いは朝っぱらだったりと、地球が球体故に成り立つ光景は宇宙から見れば神秘の星とも言えるだろう。

 

「此のチャンネル…………其れに配信者…………ペッパーさんだ!姉さん姉さん、ペッパーさんが配信やってるよ!」

 

日本某所に建つ二階建ての家、階段を駆け下りてタブレットを持って来た厳島(いつくしま) 光(ひかる)は姉である厳島(いつくしま) 真里亜(まりあ)の元に走ってやって来た。

 

「あらホントだわ。タイトルは…………『オルケストラ決戦』、シンプルで解り易い」

「サンラクさんの配信も凄かったけど、ペッパーさんのは『プライベート配信』になってる。………やっぱりサンラクさんの配信から対策してる、って見て良いんだよね?」

「おそらくね。其れにしても視聴者数が配信開始から少しずつ上がり始めてる…………あ、もう千人越えたわ。まだ五分も経ってないのに」

「わぁ、凄い…………!」

 

姉弟が一つの画面に映るシャンフロの世界で五指に入るネームバリュー持ちのプレイヤーを観ている中、チャンネル登録者に比例して右肩上がりで増えていく視聴者数は、ペッパー・天津気(アマツキ)という存在の持つ出力を更に高め続ける追い風になっていく。

 

此の二人は知る由も無いが、シャンフロの有名人のペッパーが配信を開始したという極僅かな、些細な情報の一欠片は電子の海にて一気に拡散され、其れを見た者達の目により本当だと確信された瞬間から更なる波と化し。

 

波はより大きく、より強く、より強大な衝撃となって、世界中を駆け巡り始め─────────

 

 

 

『ネェ、ケイ!メグ!アメリア!ペッパーが配信してるヨ!!しかもオルケストラだって、ユニークモンスターってヤツ?』

「えっ、マジで!?うわマジじゃん!」

「………今さっき、家のチームのトップからもメール来たんだけど………」

『敵情視察にゃあなるが………此奴はリベンジに向けた良い情報収集になるな』

「チャンネル登録者増えてるし、視聴者数も伸びてる………。しかも此れ何がヤバいって、パブリックじゃなくてプライベート配信なんだよな………」

『コレは皆に広めなきゃ、ダヨね!』

『そりゃ流石に………。いや、やりようによっちゃ色々と利用出来そうだよなコレは』

「オイオイオイオイ…………!流石に其れは…………いやアリかな…………!」

「ケイ!?!」

 

別の場所では応援という名目の裏で、自身の陣営に引き込む『大義名分作り』の為に画策するプロゲーマー達が居たり。

 

 

 

 

「なぁーーーーーーーーーーー…………………にやってんのかなぁ、私(・)の(・)あーくんはさぁ……………」

 

トップオブカリスマモデルたる己の恋人が、まさしく今オルケストラに挑戦する配信をマネージャー経由で知り、そして配信を観た彼女は其れは其れは大きな溜息を付いた。

 

「サンラク君に続けてあーくんまでもオルケストラに挑戦、あーくんのタイトルはオルケストラ決戦…………プライベート配信してるのはパブリック配信したサンラク君の失敗を学んだのと、多分他の理由には『此のオルケストラの戦いをデータとして手元に残す事かな』?

じゃあ何の為…………此れは多分、あーくんが『自分と同格以上の読み相手を攻略する際の第三者視点』が欲しいから…………だよね」

 

バラバラの情報と現在の行動の意図を踏まえ、恋人の考えの八割以上を読み解いた彼女はチャンネル登録を済ませた後、SNSのタイムラインには『#ペッパーのオルケストラ決戦』のタグ付きのコメントが溢れ、次から次に流れてスクロールされて行くのが見えて。

 

「……………頑張れ、私(・)の(・)あーくん」

 

動画投稿サイトを開いてチャンネル登録を済ませた彼女は、一大決戦に挑む恋人の配信をリツイート及び引用ツイートを放ち、急ぎ足で自分の住むマンションへと向かいながら、自分と同じく彼の愛を受ける悪友に着電の連打を叩きつけるのだった………。

 

 

 






帯びる熱はより高く、より熱く


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