VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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開演の時




歌よ響け、英雄譚を讃え 〜其の五〜

嘗て影法師の試練で四度招かれた中世の劇場、アレとは形状や雰囲気こそ似てはいるが、広さと大きさはアレと比較にならないくらいにデカい。

 

其れがオルケストラの居る扉を潜った先で目覚めたペッパーが、此の空間を見て一番最初に抱いた感想だった。

 

「……………コホン。えっと、サンラクの配信を観ていた人も居るとは思いますが、御覧の通り冥響のオルケストラさんとの戦いは第一から第四楽章のボスラッシュと、最終楽章で契約した征服人形(コンキスタ・ドール)と共に戦う事になります」

 

録映(ろくえい)の眼珠(めだま)を使って自分視点の録画を開始、隕鉄鏡を思考操作で目線を合わせる位置に置き、サンラクが会敵した音楽プレーヤー(オルケストラ)の大体の位置を配信を観た時の記憶から割り出し、其処に向かいつつ話をする。

 

「此のオルケストラの戦いなんですが、プレイヤーが嘲り嗤う影法師(グルナー・グリンセリン)のドロップアイテムで胴装備の影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)を着けた上で、逢魔時にファステイアからフィフティシアの路地裏に入ると地面に引きずり込まれて、此のフィールドの様な中世劇場でプレイヤーを模倣した嘲り嗤う影法師と戦う事になり。

敗れても再戦可能な此れに四回勝利すると、愉快合羽は装備者と相性の良い征服人形を捜す際に優位になる、今の自分が着ている胴・腰・脚の三部位一体の装備奏でる者の旋律羽衣(ダ・カーポ・シェイルンコート)を獲得出来ます」

 

自分が着ている三部位一体の装備、オルケストラが送り込んだ影法師との四度に渡るセッションを越えた先に在る報酬を説明しつつ、壁に埋め込まれた音楽プレーヤーの前に立つ。

 

「さて…………冥響のオルケストラさんとは、過去に此の音楽プレーヤーの所有権を持っていた者達の遺志と、最後に持っていたアンドリュー・ジッタードールさん、そしてもう一つ………ある存在の意志が宿っている存在だ。歴代所持者をベヒーモスのデータベースで調べて、其の御蔭で矛盾にも気付けた。

あの日サンラクが此の戦いで見出した答えを、今度は俺が此の戦いを以て証明しよう───────!」

 

電源を入れ操作を行い、『エリーゼ・ジッタードール』プレイリストより『Your Orchestra』を選択して再生すれば、スポットライトが一つ灯ってペッパーを照らし、次から次へと彼に光を注いでいく。

 

続いてステージでも変化が起きて、歌姫もとい音楽プレーヤー(オルケストラ)によって再(・)現(・)されたエリーゼ・ジッタードールが現れ、唯一人へと歌うソプラノボイスと共に様々な楽器を携えた音楽団員が現れ、管楽器が先行してベースを作る中で劇場も変化していく。

 

中世劇場のステージは嘗ての機械や鉄にゴーレム等の残骸転がる、夜闇に浮かびし月と星と黒い雲の流れる空の下、周りに現れた見覚えの在る勇士の数々に眼前に構築されるは『夜が形を持った狼の女帝の身姿』。

 

「此れは…………成程、第一楽章から俺に全力全開(フルスロットル)を要求しに来たって訳だ、オルケストラさんは!!」

『ペッパーの紡いだ物語。第一章………【夜影纏う黒狼王】』

 

四度に渡るオルケストラの小手調べという名の『ボスラッシュ』。

 

其の開幕戦からカッ飛ばすが如く繰り出した『ユニークモンスター・夜襲のリュカオーン(影狼)』を相手に、周りに再現される様に現れたサンラク達から『シャンフロでクターニッドのユニークシナリオ受注にフィフティシアを目指した際の遭遇戦の状況再現』と認識したペッパー。

 

当時の戦闘状況と用いた品々と類似品を脳内演算でピックアップしつつ、其の状況をほぼ再現する為に即座に動き出したのであった。

 

 

 

 

 

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ペッパーというプレイヤーは、シャンフロのプレイヤーの中でも五指に入るレベルの知名度(ネームバリュー)を誇る存在であり、彼の真髄は圧倒的な思考震度と戦闘時間を重ね掛ける程に相対者の思考や行動を読み切り、最終的には敵の行動全てを己の掌の内に収めてしまえる程の、怪物とも化物とも言える強さを持つ。

 

「リュカオーンの攻撃は狼の持つ挙動に等しくも、彼女自身も闇を固めて作った分身体に紛れて自分でも仕掛けたり、光源が点在する場合は影踏みの要領で相対してる存在の影を縛り動けなくさせる事も出来る、影狼とは言えど狡猾さを併せ持ったユニークモンスターだ。

確か此の影踏み、何処かで見た様な…………あぁ思い出した【黒楔の槍(シャドウ・ウェッジ)】の原理に近しい物みたいな印象かな」

 

撃鉄を打ち鳴らし緋色の炎を纏いながら、リュカオーンの分身の中に潜む影狼本体を見定め、寵愛によって目覚めた視覚スキルで捕捉し、影狼を踏み越え肉薄からスキルを叩き込む。

 

「ただ此の影踏み縛りは複数のリュカオーン………正確には『フィールドに出現している分身体含めたリュカオーンの数が奇数である場合に高確率で狙って来て、更に言うと2と3と5と7の素数の場合は確定で放って来る』一種の思考ルーティーンが有る。

フィールドの雲の状況でリュカオーンの分身攻撃やステルスアタックは襲い掛かるけど、今みたいに再現されたサンラクが朱雀を使って物理的に雲を排除した様に、飛翔可能な戦術機や風属性魔法で代用するとかの方法を取れば、此れを封じる事は可能になる」

 

リュカオーンの分身波状攻撃を『既に想定していた』と言わんばかりに回避してダメージを稼ぎ、隕鉄を思考操作で再現サンラクと朱雀を映しつつも、エリーゼの歌声が響いて。

 

『──────掲げし星の剣、光を奪いし復讐の証。勇者は一人、女帝の視線を独占す………』というワードから、ペッパーは此の楽章で『何を使わなければならないか』を瞬時に理解するのに十分過ぎる物だった。

 

「オルケストラに挑む以上、元よりコレも使わなきゃならないってのは理解してたし、やるからには全力でぶつかって謎解きしてこそ、ユニークモンスターの攻略は価値が有るッ──────!」

 

何時か星帝剣(せいていけん)グランシャリオを大々的に御披露目する事になり、そうなった先でも割り切って使うと覚悟を決めた上で其の剣を取り出し、右手を鞘に当てて愛呪の装備不可の権能(チカラ)を一時的に封じ込め。

 

左手に勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)たる聖盾イーディスを握り、右手でグランシャリオの柄を握って一気に抜剣すれば、七つの穴が空いた剣身からドス黒いオーラが業火の如く放たれ、再現リュカオーンの全ての視線がペッパー唯一人に向けられる光景が、電子世界と現実世界で観る者達の眼前に顕わとなり。

 

「再現体とは言え、あの頃から随分鍛えたからな。久し振りに鬼ごっこしようぜ、リュカオーンの影よ」

 

黒いオーラを吹き出し続ける剣の鋒を添え、貴族のパーティーにて姫君の前に立つ王子様の如く、彼は笑顔で『Shall we dance?』と誘うかの様に黒狼達を挑発したのだった。

 

 

 






演じ示す、我が道を


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