チルノは家の模様替えを計画していた。湖の妖精に誘われてやった悪戯からヒントを得て、凍結して飾るに相応しい花を探していると、珍しい妖精に出会う――

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これはとある組織が秘密裏に開催している東方物書綴の第14回に出した作品です。

テーマは「植物」でネタ自体は結構前に思いついていて、あとは書くだけだったんですが、色々用事ややりたいことが重なり、文字数1万近くで今投稿となります。

これまでとはまた少し違った文体にしてみました。
砕けた表現を多めに入れようとして失敗した感じがします(笑)

今回はチルノが主役のガールミーツガールです。


青いバラと青氷

れきしにのこしたいから。

しんぶんにかいてもらいたいから。

あまりわすれたくないから。

きょうのことをかきのこしとく。

それだけだいじなことだから。

 

ーー「チルノの手記」原本、冒頭

 

 

 

「うーん、どうしよっかなー」

 

その日はそろそろかまくらの模様替えをしようと思って、デザインを考えてた。

でも、いい感じのものが思いつかなかった。

正直、今ので十分というか、カエルの氷漬けを増やすくらいしか思いつかない。

 

「チルノちゃーん! あそぼー!」

「なんか近くで人間がうろうろしてるの!」

「おどかしに行こうよ!」

 

考えていると湖の妖精たちがやってきた。

模様替えは後でいっか。

 

「ようし! こんな所まで来る人間には、あたいがせんれーしてやろう!」

 

 

 

湖からちょっと森に入ったところにその人間はいた。

あたいは木の影からその人間の様子をみていた。

人間の子供だと思った。

本を持ってしゃがんでる。

何を見てるんだろと思っていた。

 

「ねぇ、まだやっちゃダメ?」

「まだよ。あの子が動かないと始まらないんだから」

 

前からここに来る知らない人間にやろうと思ってた悪戯の1つ。

それを見せてあげようと動き始めた。

まずは1人が目の前に急に現れることで驚かす。

驚いて後退りしたところをもう1人が地面をびちゃびちゃにして転ばす。

最後はあたいが濡れた地面を凍らせてシュート!

 

スィーーーー

 

「あわわわわわ」

 

人間が向こうまで滑っていく。

悪戯は成功!

 

「うわー、すごい滑っていってるー」

「あはは! スイーって」

「さっすがチルノちゃん!」

 

湖の妖精も褒めてくれた。

あたいは最強だからね!

そう得意になっていると、あの人間が持っていた本が落ちているのに気づいた。

お花の絵がたくさん描いてある本だった。

 

ペラッ

 

頁をめくっていると何かが落ちた。

たしか、『おしばな』という花を紙に固めたものだったはず。

下には "遊蝶花" と書かれてた。

とても青く、見たことない花だった。

 

ポロッ

 

見ていたら花が落ちてしまった。

 

「本を返して〜!」

 

タイミング悪く人間が戻ってきた。

あたいは花のことがばれないように懐にしまった。

 

「要らないから返すわ。あたいはこんなのなくても花は沢山見てきてるからね!」

 

本を返すと逃げるように帰って行った。

隠してた花を取り出した。

その花を見てたら、模様替えの良いアイデアが浮かんだ。

たまたまそこに生えていた黄色い花を摘んで、持ち帰ることにした。

 

 

 

かまくらに帰って、黄色い花と壁を見比べながら配置を考えた。

シンプルな造り故にどこに置くべきか迷った。

とりあえず適当な位置に花を押し当てて凍らせた。

部屋に華やかさが増したように思えたが、何か違うような気がする。

 

「色がちがうのかなぁ…… 別のお花を探しに行こう」

 

そこで、近くのお花畑に行くことにした。

途中、花の妖精たちに聞いて回って、最強のあたいに相応しい最高の花を探した。

 

「このお花、いいと思わない?」

「いいえ! こっちの方が美しいわ!」

「こっちの方がかわいいとおもうの~」

 

ちょっと聞こうとしただけなのに、花の妖精たちは我こそはと花を勧めて来た。

けど、どれもピンとこない。

しつこくてなかなか奥の方に行かせてくれなかったけど、花の事しゃべってるうちに、あたいのことを差し置いて品評会を始めちゃった。

しかたないから、ひとりでその辺にいくつか咲いている花を見て回ることにした。

 

「これも違う、あれも違う……あれ?」

 

外れの方に日がよく当たる場所があった。

そこだけ木々が避けるように生えていて、ちょっとした広場のようになっていた。

そこで草花に埋もれて誰かが寝ているのを見つけた。

とても鮮やかな青の髪で、沢山の花びらが付いているような華やかな服を着てた。

あそこにいる花の妖精たちと似たような羽を持ってるけど、それにしては身体が大きい。

多分、見たことない妖精だ。

 

「おい、起きろ! 聞きたいことがあるんだから!」

 

この子ならきっとあたいにピッタリな花を知ってるはずよね。

 

「ふわぁ……」

 

折角あたいが期待して話しかけてるのに、呑気に伸びをしている。

状況を飲み込めていないのか、ぽかんとした表情をする。

 

「あの、あなたは……」

「あたいはチルノ! 湖に住む氷の妖精よ! あんたも名乗りなさい!」

「私は……ローズマリン」

「ローズマリンというのね。あたいに相応しい花を探してるんだけど、いい花知らない?」

「……」

 

早速聞いてみても反応が薄い。

名乗りはしたけど、他の質問には答えてくれない。

そうだ、この子も花の妖精の1人だろうし、家に行けばいい花の1つや2つはあるでしょ。

 

「あなた、ここら辺の妖精じゃないでしょ? どこに住んでいるのよ?」

「うーん?」

 

何故か頭を抱えてる。

もしかして、帰る場所が分からない?

結構なバカね。

 

「お家がわからないの?」

 

コクリ

 

「仕方ないわね。あたいも一緒に探してあげるわ!」

 

こうしてあたいはローズマリンを連れてお家探しをすることになった。

善は急げ。あたいはローズマリンの手を取る。

 

「ほら、さっさと起きて行くわよ!」

「ヒャッ、冷たい」

 

とりあえず、花の妖精たちが品評会をやっている隙にお花畑に行こう。

そう進路を向けたら、目の前に何かがひらひら落ちてきた。

手に取ると、それは青い花びらのように見えたが、すぐに溶けるようにして消えてしまった。

 

「なんだこれ。まあいっか」

 

改めてお花畑の方に向かう。

端で何かが動いたような気がしたけど、気にせず飛んで行った。

 

 

 

近くのお花畑についた。

上から探してみるけど、それっぽいものは見つからない。

ローズマリンにも確認してみたけど、首を横に振る。

流石にすぐそこに家があるのに迷うような子ではないみたい。

それなら、適当に飛んで家がありそうな所を見つけよう。

 

「どこなら家ありそう?」

「うーん……」

 

しばらく周りを眺めた後、ローズマリンはある別のお花畑の方を自信なさげに指した。

あたいは指された方向に真っ直ぐ向かった。

 

次のお花畑はさっきより広く、さっきとは違った花がいっぱい咲いてた。

近づいていくと、大勢の妖精が遊んでいるのが見えた。

こんなに栄えていれば家があってもおかしくない。

 

「え、何その服、すごい!」

「とてもきれいね!」

「ねえ、私たちと遊びましょう!」

 

ここにいる妖精たちがローズマリンに気付いて次々に集まってきた。

あたいも一緒に遊びに誘われた。

最強のあたいについで扱いされるのは癪だけど、付き合ってやろうじゃない。

そうしてお家探しなんて忘れて皆で遊んだ。

追いかけっこしたり、かくれんぼしたり、花占いしたり、沢山遊んだ。

皆で花冠を作ったりもした。

ローズマリンにはさらにあたいが作ったとっておきの花冠をあげた。

凍結させてるから、キラキラしててお姫様感が倍増ね!

 

沢山の妖精たちと遊んでいると、遠くで誰かがこちらを見ているのが見えた。

よく見てみると、緑髪に白いシャツ、そして赤いチェックのロングスカート。

過去の苦い思い出が蘇る。

警戒するより先に口の方が動いた。

 

「あ! 向日葵のドS妖怪!」

 

皆があたいの指さす先を見る。

すると、あの妖怪がこっちに寄ってきた。

他の妖精たちが散り散りに去っていく中、ローズマリンはあたいに引っ付いて離れない。

ここはあたいが守るしかない!

 

「あなたのことは覚えてるわ、氷の妖精さん。今日は同じ青い格好の妖精もいるのね」

「おまえ、何でここにいる? 目的は何?」

 

あたいの質問にあいつは僅かに笑みを浮かべる。

その直後、足元からツルが伸びてきて、ローズマリンを縛り上げた。

あたいは助けようと手を伸ばしたけど、同じようにツルで縛られて動けなくなってしまった。

あいつはローズマリンを引き寄せ、彼女の頬を擦りながら答える。

 

「私はね、この子に興味があるの。ふーん、青い薔薇の妖精なんて珍しいじゃない」

 

青い薔薇の妖精なんて聞いたことない。

そもそも青い薔薇自体見たことない。

でも、花びらのような服が薔薇に似ていると言われて納得した。

 

「じゃあ、私からも質問するけど、あなたはどうしてこの子と一緒にいるのかしら?」

「それに答えてどうする? ローズマリンは家を見つけるまで渡さないよ!」

 

それを聞いてあいつは吹き出すように笑った。

そして何故かツルを解いて、あたいたちをゆっくり降ろした。

 

「そうなのね。ただ、青い薔薇というのは、昔から『存在しない薔薇』として語り継がれているのよ。その子の家はあるとは思えないわね。でも、薔薇が咲いている所は知っているわ。ついてきなさい」

「いやよ。どうせ嘘に決まってる」

「それなら来なくてもいいのよ? その子が消えてしまってもいいならね」

 

あいつは踵を返して奥の方へ歩いていく。

あたいたち妖精は死んでも生き返る。

でも、その自然が無くなって存在できなくなると、消えてしまう。

それは、人間や動物のように死んでしまうということ。

もし、あいつが言っていることが本当なら、ローズマリンはいつ消えてもおかしくないということ。

どっちにしろ、ついて行く他無い。

あたいとローズマリンは警戒しながらついて行くことにした。

 

さっきのお花畑から少し行ったところに薔薇が生えている場所があった。

どうやら本当だったようね。

 

「ここならいくつかの種類の薔薇があるから、その子のお家もあるんじゃないかしら」

 

そう言って薔薇の花をひとつひとつ見ている。

妖精でもないのに家なんて見つかるわけないじゃない。

あたいがパパっと見つけてやるわ。

あいつより先見つけてやろうと、あたいはローズマリーと一緒に探す。

 

「あ、見つけた……」

 

すると、ローズマリンが茨に隠れて咲いていた青い薔薇を見つけた。

 

「あ……れ……」

 

ドサッ

 

でも、花はしおれかけてた。

 

 

 

ローズマリンを地面の柔らかい所に寝かせる。

あの妖怪は青い薔薇に力を込め、花を復活させた。

 

「とりあえずこれで少しは大丈夫ね。でもおかしいわ。花が青いのはこれだけで、同じ株の花は赤いのしかない」

 

薔薇が成長してもつく花は全て赤い。

このままじゃこの子の自然が無くなっちゃう……

あいつは青い薔薇が咲いている株を優しく掘り起こして、他の植物の枝で作った鉢植えにそれを植えた。

そして、寝かせていたローズマリンと一緒に抱きかかえた。

あたいはローズマリンだけでも背負っていきたかったけど、どちらも凍傷させちゃうから背負わせてくれなかった。

 

「私の力ではどうすればいいかわからないから、魔法使いを当たりましょうか」

 

魔法使いなら色々研究してるし、きっと青い薔薇を増やす方法も知っているはず。

そう思って近くの魔法使いの家に行ってみた。

まずは人形遣いとして有名な魔法使いを訪ねたけど、よくわかんないみたい。

 

「植物に関することはあまり詳しくないの。脅しても無駄よ。その代わり、水を保たせる魔法をかけてあげる」

 

人形遣いはそう言って薔薇に水をやってくれた。

次によくキノコを集めてる魔法使いを訪ねた。

青い薔薇については言い伝え程度しか知らないみたい。

 

「魔女に青い薔薇を渡せば願いを叶えてくれるって言っても、さすがに青い薔薇を増やせってのは無理だと思うぜ? まあ、もし増やすことに成功したんなら分けてくれよな」

 

そう勝手なことを言われた。

こっちもだめなら、他に残っているのは……誰がいたかな?

あの妖怪はまだ宛があるみたいで、次の所に行くみたい。

どこに行くか聞いたらすごくムカつく顔をされた。

 

行き着いた先は湖だった。

湖……ああ、そういえばなかなか外に出てこないレアな魔法使いがいたわね。

そのまま紅魔館の方に向かおうとしたとき、3人の妖精が立ち塞がった。

 

「やっと帰ってきたわね。待ちくたびれたわ」

「私たちの接近に気付いて逃げたのかと思ったけど」

「あの時のリベンジよ。覚悟しなさい!」

 

そう言ってきたから、あたいが3人まとめて相手してやろうと思って、前へ出る。

 

「あら、かわいくて虐めがいのありそうな妖精が3匹も。両手が塞がってなければ可愛がってあげられるのに」

 

その声を聞いて3人はやっとあの妖怪の存在に気付いたみたい。

少し後ずさりした後、あたいの方に寄ってきて何故一緒にいるか聞かれた。

事情を話したら、勝負するのは止めて協力してくれることになった。

 

「要は青くすればいいんでしょ? そんなの簡単よ」

 

そう言うと、あの妖怪が抱えている薔薇の花の色が全て青くなった。

あの妖怪も驚いてる。

屈折がどうのこうの言ってたけど、とりあえず青い薔薇が増えた。

そして、ローズマリンが目を覚ました。

 

「あれ……ここは……」

「やった! 目を覚ました! ほら、青い薔薇を増やすことができたぞ」

「……それ……違う」

「え?」

「この花も……この花も……皆赤いまま」

 

どういうことかわからなかった。

どっからどう見たってそれは青い薔薇だ。

でも、それが赤いって?

すると、さっきまで青かった花がまた赤に戻ってしまった。

どうやらこれもだめだったみたい。

 

「どうやら光を弄っただけじゃ解決しないみたいね」

「そう、それじゃああんたたちには責任をもって最後まで手伝ってもらおうかしら」

「「「ヒッ」」」

 

あの妖怪は茨を伸ばして3人を捕らえて先に進んだ。

あたいも後をついていった。

 

目的の場所は紅い館。

門の前には門番が立っている。

 

「なかなか珍しい客ですね。なんの御用で?」

「ちょっと魔法使いさんに用事がね。この氷精がこの子を助けたいっていうの」

「そうだ! 早く会わせろ!」

「うーん、本日はそのような来客の予定はありませんね……一旦お伺いしてからじゃないと」

 

ギギィ……

 

「あら? 珍しいお客さんね。レミィが呼んだのかしら」

「いえ、パチュリー様を訪ねて来たようですよ」

 

ローズマリンについて一通り説明すると、紫の魔法使いは青い薔薇とローズマリンをまじまじと見つめる。

少し考える仕草をした後、自分の用事を後回しにしてこちらの頼みを聞き入れてくれた。

そのまま館へと通してくれた。

中でメイドと少し話してから図書館へと向かった。

 

図書館に着くとすぐに紫の魔法使いが手を叩く。

やってきた使い魔に本を集めさせた。

 

「青い薔薇の言い伝えやお伽噺は知ってるけど、青い薔薇について書かれたものは無かったはず。だから新たに流れ着いた本から新たに情報を集めるしかないわ」

 

そう言って魔法使いはしばらく本を読み漁っていた。

あの妖怪もローズマリンを椅子に座らせてから、適当に一冊手に取ってはパラパラめくった。

あたいはもっと早くするよう頼んだけど、邪魔だから他の本でも読んでるよう言われた。

ついでに縛られていた3人組の妖精を押し付けられた。

仕方ないから、3人が邪魔しないよう見張った。

 

「私たちが邪魔だって?」

「そんなことよりここの本を読んだ方が楽しいわ」

「あなた自身が何かやらかさないか気を付けないといけないんじゃない?」

「なんだと!」

 

シュルシュルシュル

 

「「「「ぐえ」」」」

「ふーん、外の人間はなかなかえげつないことをするものね」

 

あの妖怪はあたい達を縛りながらそんなことを呟いた。

紫の魔法使いはあの妖怪が読んでいた本を受け取り、目を通した。

 

「これは、外の世界の科学ね。キメラか何かかしら?」

 

そんな感じでブツブツ独り言を始めた。

あたいも覗いてみたけど、遺伝子とか色素とか意味が分からない言葉ばかり。

聞いてみたら、どうやら薔薇とある青い花を掛け合わせると青い薔薇になるみたい。

こうなったらその花を見つけてきてやろうじゃない。

 

「ねえ、その花って何の花なの?」

「パンジーね。日本では胡蝶草とか呼ばれてたかしら。これよ」

「分かった! 見つけてくる!」

「あっ、ちょっとまだやり方が……」

 

あたいは館を飛び出した。

花が生えているところを片っ端から探してパンジーという花を見つけようとした。

でも、何処を探しても青いどころか他の色の花も見つけることができない。

こうしているうちにどんどん日が落ちてきている。

途中、館に居たはずの3人組に会った。

 

「私たちはいち早く見つけてやったわよ」

「全然青くないじゃん」

「良く見なさい。この花弁は青いわよ。この花は3色の花びらを持っているの」

「こんなんじゃあ青い薔薇はつくれないよ! じゃ、急いでるから!」

 

違う色の花は放って真っ青なパンジー探しを始める。

それでもやっぱり見つからない。

全力で飛んでいたら、ポロっと何かを落としてしまい、慌てて戻って拾った。

それはあの時隠した押し花と台紙だった。

 

「そういえばこれも青いわね……」

 

台紙も見ると、「遊蝶花」と書かれてる。

 

「あの魔法使いは胡蝶花とか言ってたっけ? 形も似てるし、これがそうかも!」

 

まさか自分がもう持ってたなんて思わなかった。

でも、この花は死んでいるだろうし、この状態じゃ使えないかも。

もっと良いものを探さないと。

これを持っていたあの子に聞けばわかるかも。

そこであたいは里に行くことにした。

 

 

 

人間の里は相変わらずたくさんの人が歩いてる。

子供を特に注意深く探した。

里は広いし人も多いからなかなか見つからない。

探し始めてからしばらくすると、また3人組がやってきた。

 

「はぁ、はぁ、やっと合流できた」

「今度はなによ」

「あんたがまだ探しているようだから、様子を見に来たのよ」

「さては、あの花はダメだったんだな?」

「そっ、それはどうでしょうね? あ! あそこよ、あの花屋で見つけたのよ」

 

1人が店の1つを指した。

確かに、そこにはたくさんの花があった。

真っ直ぐ降りて、花屋に近づく。

何の運命か、そこにはさっきまで探していた人間の子供も居た。

今もあの花がたくさん載っている本を抱えている。

花屋の店主と話しているようだった。

 

「あ! あの時の妖精!」

 

人間の子供はあたいに気づくと店主の後ろに隠れてしまった。

でも、聞かなきゃいけないことがある。

 

「あたいの強さを恐れるのは分かるけど、今回は怖がらせに来たんじゃないわよ。ほら、これ」

 

隠していた押し花を差し出す。

すると、隠れていた子供が出てきてそれを受け取った。

お礼もしてくれたけど、まだ用は終わってない。

その花がどこにあったか聞くと、子供はここで買った花だから分からないと答えた。

子供が店主に聞いてみたけど、人から仕入れたもので、詳しい場所は分からないみたい。

一応、大体の場所は教えてもらったけど、1人で探すのは難しいと思った。

ここは賢く、こいつらをこき使おう。

 

「あんた達も一緒に来なさい」

「はん、言われなくてもついて行くわよ。あのドS妖怪に追いかけられるよりマシだもの」

 

こうしてやっと1番有力な手がかりのある場所に着いた。

4人で手分けして探す。

 

「ねぇ、ここ本当にあの青い花なんてあるの?」

「青どころか花自体見当たらないのだけど」

「うるさい! このあたいが聞き出した手がかりが信じられないのか!」

「あんなフワッとした情報で信じられるかっての」

 

それでも一向に見つからず、互いに遠ざかりながら探し続けても、見つかるのは雑草ばかり。

もう、あの3人も見えなくなった。

日も見えづらくなり、直に沈むことが分かる。

日が沈んでしまえば、真っ暗になって、探し物が出来なくなってしまう。

ローズマリンだっていつまで持つか分からない。

それなのに、まだ見つからない。

もう、あの花は無いのだろうか。

 

その時、目の前にひらひらと何かが落ちてきた。

拾うと、それは青い花びらだった。

よく見たら、薔薇に似ているような気さえした。

あたいは顔を上げて辺りを見回す。

すると、奥の方で何枚かの花びらが光っているのが見えた。

後を追った。

追えばまた花びらが見えてくる。

ひたすらそれを辿って、先に向かった。

 

そこはとある廃屋だった。

その近くには庭と呼べるような空間があり、そこにはこの辺では見ない花が雑多に咲いてた。

その中に、目当てのものはあった。

 

「これだ……押し花のやつと同じ」

 

何故ここまで薔薇の花びらが続いていたかは分からないけど、見つかってよかった。

あたいはその花を掘り起こし、土で汚れるのも気にせず、また飛び出した。

 

館に戻ると、庭の端であの妖怪と魔法使いが何か準備をしていた。

3人組もいつの間にか戻ってた。

 

「遅かったわね。こっちの準備は終わってるわよ」

「何で先に戻ってるのさ」

「もう暗くなりそうだったし、仕方ないじゃない」

 

魔法使いの手伝いをしながらそう言われた。

あたいが見つけてこなかったらどうなってたことか。

魔法使いに例の花を渡すと、それは地面に書かれた魔法陣の上に植えられた。

傍には薔薇も植えられている。

 

「私でもこれを理解するのは難しかった。奇跡を起こせって言っているようなものよ」

 

魔法使いは魔道書を取り出し、詠唱のためのページを開く。

 

「ここからはもう、精霊に祈るしかないわ」

 

詠唱が始まる。

魔法陣から光が放たれ、辺りを明るくする。

それに呼応するように、ローズマリンの身体が光り始めた。

 

「ローズマリン!」

「大丈夫。この魔法には私の力も必要みたいだから」

 

しばらくその状態が続き、魔法使いにも疲れが見えてたけど、無事詠唱が終わって、光が収まっていく。

薔薇とパンジーの間には1粒の種があった。

 

「ここからは私がやるわ」

 

あの妖怪がその種をしっかり植えてから、力を込める仕草をする。

種をたちまち芽吹き、成長していく。

茎が伸び、葉が増え、先端に蕾がついた。

そして、花が開く。

その色はあたいの服に似た鮮やかな青だった。

 

「チルノちゃん!」

 

元気になったローズマリンが抱きついてきた。

 

「冷たっ」

「おい、そんなに抱きつくと凍死しちゃうよ」

「うん。……チルノちゃん、助けてくれてありがとう!」

 

ローズマリンは満面の笑みで感謝してくれた。

その美しさに流石のあたいもドキッとした。

 

「私ね、待っている間思い出してたの。チルノちゃんと会った時のこと、チルノちゃんとお家を探したこと、チルノちゃんと遊んだこと、チルノちゃんが私を心配してくれたこと。今日会ったばかりだけど、私のために色々してくれて嬉しかった。でも、悪いなとも思ってて、チルノちゃんが全然帰ってこなくて、そこまでしなくていいのにってもう諦めてた。そしたら、3人からチルノちゃんがあの花を見つけてくれたって聞いて、チルノちゃん凄いなって思った。多分、チルノちゃんに会わなかったら、私は今頃消えてたかも。今では本当に感謝してるんだ。だから、また遊んでくれると嬉しいな」

「うん!」

 

これでローズマリンを守ることが出来た。

魔法使いによれば、暫くはこの庭で青い薔薇を栽培するみたい。

だから、これからはあたいとローズマリンは同じ湖の妖精だ。

 

「ローズマリンと言ったっけ? そっちに着くのなら覚悟しておく事ね。私たちは新参相手でも容赦しないからね!」

「ふん、3人がかりでもあたいに敵わないんだから、次来たらボコボコになるよ?」

「なんですって?!」

 

シュルシュルシュル

 

「「「「ぐぇ」」」」

「やり合いたいなら外にしなさい」

 

ブンッ

ザブーン!

 

湖に沈みながらあたいはこれからローズマリンとやりたいことを考えてた。

 

――チルノ、射命丸文 著「青い薔薇と青氷」

 

 

 

パタン

 

「まさか、妖精が何かを書き残すなんてね……」

 

とある日の紅魔館の庭園。

そこには珍しく外部の妖精が飛び回っていた。

それはあの時も集まっていた5人。

そして少し離れたところで本を読んでいた魔女が1人。

 

(それにしても、あの青い薔薇はまだ謎が多いわね。何故1輪しか咲いていなかったのか、何故青いパンジーでないといけなかったのか、そもそも最初の青い薔薇はどうやって発生したのか……)

 

魔女は考えるが、それが分かるような文献は今のところ無い。

少なくとも、外の世界の学術書でも無ければ理解することが出来ないだろう。

そんな彼女の背後から声が聞こえる。

 

「ありがとうね……」

 

後ろを振り返っても誰もいない。

妖精達は遊びに夢中だ。

紫の魔女は再び本をパラパラめくり、文字を追う。

そして、何かを察したように呟く。

 

「なるほどね。偶然が積み重なっただけだと思ってたけど、どうやら事の立役者はもう1人いたようね」

 

花の名を持つ魔女は、庭の端の方で飛び回る6人を眺めながら紅茶を啜った。


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