R-15とアンチ・ヘイトは念の為。
※作者の原作知識は極めて朧げです。
あらかじめご了承ください。
我慢できない方はブラウザバック推奨。
あらかじめご了承ください。
我慢できない方はブラウザバック推奨。
突然だが、イノシシの肉を食べたことはあるだろうか。
イノシシ。
豚の仲間であり、トリュフ探しや突進力がえげつないイメージが強いことで有名である(当社比)。
そんなイノシシの、肉。
普通に生きていれば、それを食す機会などきっと無いであろう代物。
それが今、手元にある。
これは、どうしようか。
眺めながら一人ごち、ぼんやりと首をひねった。
「ジビエ料理か、良いんじゃないか?」
筋骨隆々という言葉が似合うスキンヘッドの大男が答える。
彼とはMMO――早い話がネットゲームで知り合った仲である。
初めて顔を合わせた時は見た目からの恐怖が先行していたが、今では気軽に世間話をできる関係にまで発展している。
よく見れば穏やかな顔つきをしており、身近な頼れる大人の代名詞と化している。
そんな彼の言葉に首をひねる。
じびえ。
自分はまだ料理に詳しい方ではないので、全くイメージがつかなかった。
ピンと来ていない顔を見て彼――エギルは言った。
「山や森に住む野生動物の肉を使った料理の総称でな。鳥や兎、熊なんかを使うこともある。
アヒージョ、ステーキ、シチュー。ああ、唐揚げなんかもあるな」
アヒージョは分からないが、ステーキやシチューなら想像がついた。
肉汁滴るイノシシ肉を使えば、さぞ美味しく出来上がるのだろう。
しかし、なぜかしっくりこなかった。
これには、もっと違う料理があるのではないだろうか、と。
「ぼたん鍋はどうだ?」
横からの声に振り向く。
そこには、野武士という言葉が似合う赤備えの男がいた。
彼の名はクライン。
彼ともまたネットゲームで知り合った仲であり、とても気さくな性格からすぐに仲良くなることが出来た。
よく彼女が欲しいといった旨のことをぼやいており、独り身の男たちを募って酒を呑んでいるところをたまに見かける。
「長ネギに豆腐、白菜なんかも入れてよ。それを食いながらくいーっと日本酒を一杯! 格別だぜ!」
鍋、か。
思わず呟き、カチリとピースがハマった感覚がする。
うん、しっくりくる。
酒の味は分からないので後半は聞き流すにしても、鍋ならイノシシ肉も美味しく食べられそうだ。
なにより、料理初心者の自分でも作れそうな気がする。
「そうか、ぼたん鍋か。それも良いな」
エギルからも賛同の声が上がる。
良し、とぼたん鍋にすることを決める。
そこでふと、手に入れたイノシシ肉の量を確認する。
少し考えた後、二人に声をかける。
せっかくなので、この三人で食べないか、と。
「良いのか?」
「良いのか!?」
エギルとクラインの声が重なる。
一人で食べるより、複数人で食べたほうが美味しく感じる…というのもあるが、何よりも。
レシピが分からない。
二人はポカンとした顔を浮かべた。
その後に笑いだし、笑顔で了承した。
「かんぱーい!!」
三人で鍋を囲み、グラスを鳴らす。
「…ぷはーっ! やっぱ鍋に日本酒は最高だな!」
「おお、上手く出来てるな。これは美味いぞ」
クラインが酒を煽り、エギルがぼたん鍋に舌鼓を打つ。
一度解散した後に二人の言う材料を買いそろえ、自分の宿で集合したのだ。
二人のアドバイスを受けながら三人で作り、現在に至る。
酒は味が分からないのでそこそこに、鍋からよそったイノシシの肉を頬張る。
美味い。
豚の仲間なだけあって、実に美味しい。
体中に肉汁がいきわたるかのような錯覚さえ覚えてしまう。
やはり鍋にして正解だった、と頷く。
「最近はあまり食ってなかったってのもあるが、やっぱり日本食は美味いな。味噌が良く合う」
「だろ!? 酒も進むし、肉も美味い。良いこと尽くめだぜ!」
なによりも、賑やかで良い。
戦い尽くめな日々を送っているのだから、これくらいの娯楽があっても良いだろう。
――そう、自分たちは今、死と隣り合わせの状況下に置かれている。
現代日本ではありえないことだが、現実は極めて残酷だ。
世界初のVRMMORPG、ソードアート・オンライン。通称SAO。
まるで実物かと見紛うほど精巧なグラフィック、現実と寸分違わない五感、下手な演奏会よりも綺麗な音源。全てにおいて高水準な、世界一のゲームと称されても不思議ではないであろうVRゲーム。
その中に、約一万の人間が閉じ込められている。
一つ。このゲーム内での死は、現実での死と同義である。
一つ。ゲームからの脱出方法はゲームの攻略、もしくは死の二つのみである。
要は、「生きて現実へと帰還したければ、剣を取って戦え」という事である。
もちろん、他のプレイヤーが攻略するのをただ待つのも選択肢の一つであり、大勢のプレイヤーがそうしている。
しかし自分は違う。剣を持ち、最前線へ足を運び、モンスターと戦う。
いち早く、現実へと帰還するために――
なんて、そんな重っ苦しいもの今は投げ捨てよう。
ただ皆で鍋を囲み、くだらない話をして、楽しく飯を食う。
今はただ、それだけで良い。
――これは、デスゲームを攻略する話ではない。
――これは、モンスターと戦う話ではない。
攻略の日々の中、手に入れた食材を調理し、それを食べる。
ただ、それだけの話である。
主人公
_攻略組。偶然手に入れたイノシシの肉を食べようとしたが、料理の経験が無かったので無難なところ(エギル)に相談しに行った。
20歳以上なので酒は飲めるが、味が分からないので余り飲まない。
男。名前が決まっていない。
エギル
_主人公にイノシシ肉の調理方法を教えた人その1。たしか料理スキルを持ってたと思うのできっとそれくらい出来る(希望的観測)。良い人。
クライン
_主人公にイノシシ肉の調理方法を教えた人その2。独り身だし自炊できるよねっていう希望的観測から料理スキルを描写外で付け足された人。良い人。
ちなみに、この作品内ではモンスターを倒せば食材が落ちる(ただし品質は問わない)し、料理スキルを持ってなかったり熟練度が低くてもレシピ通りなら美味しく作れるものとする。料理スキルはきっと、レベルが高ければ調理工程をすっ飛ばせるとかその辺り。