【完結済み】怪力な聖女様は伝説の魔王に愛されている~追放と称してダンジョンで突き落とされた私、最下層に封印されていた美少女魔王を力技で救ったので一緒に旅をしようと思います~   作:早乙女らいか

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第17話:ベッドで二人

「ど、どうするのじゃ……」

「と、とりあえず寝ない? もう遅いし」

「うむ……そうじゃな」

 

 誤魔化すようにベッドに入ろうとする。

 だが、

 

「「あ……」」

 

 寝室に用意されていたのは、ダブルベッド。二人で一緒に寝る為のものだ。

 あんな場面を聞いて二人一緒で寝るなんて想像したら……淫らな妄想が過ぎり、それらを頭から追い出すようぶんぶんと首を振る。

 

「な、何か変な事考えてない……?」

「お主こそ!! そう言うお主こそ変な事を……」

「仕方ないじゃん……あんなの聞いちゃったらさ……」

「む、むぅ……」

 

 変に意識するのは何故だろう。

 魔力供給という名のキスをしたから?

 恋人同士である二人の熱い場面を見たから?

 それともお互いが一つになる場面を聞いたから……

 

 いや、全部だね。

 これらを得てなんの事ー? って平気な面構え出来る方がおかしいと私は思う。

 

「まあ寝たら忘れるよ、きっと」

「そうだとよいな……」

「おやすみ、ムーナ」

「おやすみなのじゃ」

 

 色々考えたって時間が過ぎるだけ。

 布団に入りさえすれば、眠気も襲って自然と朝が来るはず。

 やや緊張した動きで私達はベッドへ入り、ゆっくりと目を閉じていく。

 

「「……」」

 

 暗い部屋に訪れる静かな時間。

 木のきしむ音や布が擦れる音がいつも以上に耳へと入り、雑音として脳内で処理されていく。

 

「っ……ぁ……」

「「っ!!」」

 

 その雑音の中に、私達ではない微かな声が入り込んだ。

 甲高くやけに色気の含んだ声。

 それは僅かな瞬間だったが、脳に焼き付けるには十分。

 声が頭の中でループし続け、記憶と共にぐるぐると駆け巡る。

 

((眠れるわけ無い……!!))  

 

 と、まあこんな状態で眠れる訳もなく。

 睡魔が訪れるどころかむしろ覚醒してしまう。

 何であんな事しちゃうのかなぁ……!!

 もう少し謹んで欲しいと思いながら、記憶に存在する艶かしい声の誤魔化しをするべく寝返りを打った。

 

「「……」」

 

 どうやらムーナも似たような考えだったらしい。

 私が寝返りを打ったタイミングで、ムーナもこちらを向いたのだ。

 暗がりの中で微かに輝く金色の瞳。

 状況が状況だからか私は見惚れてしまい、鼓動が少しだけ早くなるのを感じた。

 

「……寝れない?」

「あぁ……あんなのを聞いたら、な」

「だよね……」

 

 意識しなくてもしてしまう。

 感じたくなくても感じてしまう。

 困惑と緊張を引き起こす状況で、眠れる訳が無かった。

 

「ねぇ……お互いギュッてしない?」

「っ!? お、お主……奴らにあてられすぎじゃぞ……!?」

「ち、違うよ……その、何かを抱きしめると眠りやすいって聞いた事があるから……」

「そ、そうか……」

 

 意地でも寝たいと思って捻り出した策。

 何かに包まれたり温もりを感じると人は眠りやすい……らしい。

 

「後、ムーナって暖かそうだし……」

「んぅ……そ、それを言うならショコラも……」

「あはは……で、どうする?」

「物は試しじゃ……ん」

「ん……」

 

 お互いに近寄り、優しく抱きしめ合う。

 暖かくて柔らかい、桃のように甘い香りが漂っているムーナの身体。

 密接したからか、彼女の小刻みな鼓動がダイレクトに響いており、それが眠気とは違うふわふわとした気持ちにさせる。

 

「はぁ……」

「っ……」

 

 身体にかかる吐息にビクッと反応してしまう。

 全身でムーナという存在を感じ取り、自らの鼓動と熱を激しくさせていく。

 

「眠れるか?」

「わかんない……でも、安心はする」

「……そうじゃな」

  

 温もりによる安心感。

 それがどこか心地よく、私にとっても悪い時間じゃないと思わせた。

 

 なんだろう、この気持ちは。

 じわじわと沸き立つ感情に、幸せが満たされていく感覚。まだ出会ったばかりの彼女に抱いてるこの名前はなんだろう?

 目をつぶりながらムーナへと意識を集中させ、答えを見つけようとする。

 

「……ぁ」

「……ぅ」

 

 ただ同時に眠気も襲いかかる。

 後もう少し、もう少しなのに。

 ボーッとしていく意識の中、私は包まれた幸福を言葉にしたかった。

 

「ム……ナ……」

 

 そして意識がもうすぐ途切れると感じた瞬間だった。

 

「す……き……」

 

 僅かな気力で口を動かした後、それを合図にしたかのように睡魔が私を支配し、そのまま眠りについた。

 

〜〜〜

 

「……ぇ?」

 

 鳥のさえずりが耳に入る。

 ゆっくりと目を開け柔らかな感触に視線を移すと、そこにはすやすやと気持ちよさそうに眠るムーナの姿があった。

 

「あー……そっか、私がギュッてしようって……」

 

 あまりに淫らな雰囲気だったから、何とかして寝ようと私が提案したんだ。

 初めはお互い緊張してたけど、段々心地よくていつの間にか意識が無くなって……

 まあちゃんと眠れたんだしいいでしょ。

 

「……あ」

 

 ふと蘇ったあの言葉。

 僅かな意識の中、高ぶる気持ちを形にしようと捻り出した……好きという思い。

 

(え、待って……ムーナに聞かれてないよね? え? え?)

 

 自らが口にした言葉に顔を熱くする。

 別に告白とか恋愛的な意味とかそういうのでは無い。

 もっとこう、思いの全てを表したかったというか、そこまで深い意味はないと言うか……

 

「ん……もう、朝か?」

「っ……おはよ、ムーナ」

「あぁ……おはよう」

 

 私が動いたからかムーナも目を覚ました。そしてゆっくりと私の方へと視線を移し、自らがどういう状況であるかを再認識した後、

 

「っ!! わ、わわわわ……!!」

 

 恥ずかしそうな声と表情で私から離れていった。

 

「そ、その……昨日はよく眠れた?」

「うむ……おかげさまでな……」

「そ……ならよかった」

 

 無理やり平静を保つ。

 そもそも私が考えすぎなんだって。

 友達同士でも好きって言い合うことあるし別に変な事じゃない。

 

 それに……多分ムーナは聞いていないだろうし。

 

「とりあえずステラ達の所に行こっか……起こさないと一緒あのままだと思うし」

「あぁ……」

 

 エメラルはともかく、ステラは起こさないと夜まで寝ていそうだ。

 ムーナとしてもステラの生活改善をしたいと思うので、私は着替えやらなんやらの準備を整えた。

 

(でもムーナ……凄く可愛かった)

 

 昨夜、全身で感じ取ったムーナの全てに私は愛おしいと感じ、その温もりを忘れる事はなかった。

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